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「脳性麻痺」の症状や原因はご存知ですか?医師が監修!

 更新日:2024/01/09
「脳性麻痺」の症状や原因はご存知ですか?医師が監修!

脳性麻痺は、脳の障害により筋肉の動きや姿勢に影響を及ぼす疾患です。出生前、出生時、または出生後の脳の損傷が原因となり、症状は多岐にわたります。
また、二次障害として関節の変形や痛みが生じることもあり、早期の対応が重要です。
本記事では脳性麻痺について以下の点を中心にご紹介します。

・脳性麻痺について
・脳性麻痺の治療方法
・脳性麻痺の二次障害

脳性麻痺について理解するためにもご参考いただけますと幸いです。
ぜひ最後までお読みください。

脳性麻痺とは

脳性麻痺とは

脳性麻痺とはどのような病気ですか?

脳性麻痺は、受胎から生後4週間までの間に生じた脳の損傷によって、脳機能が障害され、体の動きや感覚が不自由になる後遺症を指します。
脳は私たちの身体の動きや感覚、言語、記憶、思考などの高次機能を制御しています。そのため、脳が損傷すると、これらの機能が障害され、さまざまな症状が現れます。
 
具体的な症状は、脳の損傷部位によって異なります。
例として、筋肉がこわばる“痙直型”、手足が勝手に動く“アテトーゼ型”、体のバランスが悪くなる“運動失調型”、そして2つ以上の型が混在する“混合型”が挙げられます。
 
脳性麻痺の主な原因としては、酸素欠乏、感染症、脳血管障害、核黄疸などが考えられます。
特に、妊娠中の風疹やトキソプラズマ症、サイトメガロウイルス感染症、ジカウイルス感染症が原因となることもあります。

脳性麻痺の原因は何ですか?

脳性麻痺の主な原因として、胎生期における母体の感染症、例えば風疹トキソプラズマ症などが挙げられます。
また、出生前後の酸欠や低酸素状態、核黄疸(新生児期に見られる重度の黄疸)による脳の障害も脳性麻痺の原因となり得ます。
さらに、遺伝子異常による脳の奇形も脳性麻痺を引き起こす可能性があります。

しかし、全ての脳性麻痺の原因が明確に特定されるわけではありません。具体的な原因が特定できない場合も存在します。
多くの場合、複数の要因が絡み合い、その結果として脳性麻痺が発症すると考えられています。

脳性麻痺の症状にはどのようなものがありますか?

脳性麻痺の症状は、損傷した脳神経細胞の部位や程度によって異なります。
運動機能を担う部分の損傷が特に多く、運動能力の発達に遅れが見られます。
以下は、脳性麻痺の主な症状として知られているものです。
 
・運動機能の障害
 手足の麻痺、筋肉の硬直、不随意運動、歩行障害などが挙げられます。
・筋肉の症状
 筋肉の強直や痙攣、筋力の低下が見られることが多いようです。
・感覚の障害
 触覚や痛覚、体の位置感覚の異常(体のバランスが上手く取れないなど)が生じることがあります。
・合併症
 知的障害、てんかん、行動異常、情緒の問題や、視覚・言語・認知の障害などが伴うことがあります。また、心肺や嚥下などの生命維持機能の障害も見られる場合があります。
 
脳性麻痺の症状は、脳の障害の位置や程度によって異なります。そのため、患者さんごとに症状の現れ方や重度が異なります。
脳性麻痺は、早期の診断と適切な治療・リハビリテーションが、患者さんの日常生活の質を向上させる鍵となります。

脳性麻痺の治療について

脳性麻痺の治療について

脳性麻痺の診断方法について教えてください

脳性麻痺は、「胎児から新生児の間に受けた脳の損傷によって、運動や姿勢に障害が生じた状態」と定義されます。
この疾患は進行性ではなく、主な原因としては、赤ちゃんの脳に酸素や血液が十分に供給されない状態、仮死、早産、黄疸、先天的な脳の形の異常、遺伝子異常などが考えられます。
 
脳性麻痺の診断には特定できる検査は存在しないものの、脳の障害がどのような原因で生じたのかを明らかにするための検査が行われます。
具体的には、画像検査(頭部CT検査・頭部MRI検査)、血液検査、尿検査などが実施されることが多いようです。
さらに、より詳細な検査が必要とされる場合もあります。
 
診断の際、医師は充分な時間をかけて患者さんの身体の動きを観察し、知能やコミュニケーションの発達も評価します。このような詳細な診察により、脳性麻痺のタイプや原因、脳の病変の程度を特定し、適切な治療方針を立てます。
詳細や具体的な診断方法については、専門の医療機関や医師への相談をおすすめします。

脳性麻痺の主な治療法はどのようなものですか?

脳性麻痺の治療は、患者さんの症状や状態に応じて多岐にわたります。
 
・リハビリテーション
 理学療法や作業療法などを行います。患者さんの運動機能や日常生活動作の改善を目指します。
・薬物治療
 筋肉の緊張を和らげるための薬剤(ジアゼパム、フェノバルビタールや、塩酸エペリゾン、塩酸チザニジン、エチゾラム、バクロフェンなど)の投与を行います。
・整形外科的治療
 ギプスや装具の使用、選択的緊張筋解離術などの手術を行います。これにより、骨格の変形や関節の改善を目指します。
・ボツリヌス毒素治療
 脳性麻痺児の痙縮に対する筋注治療として、ボツリヌス毒素を製剤化したボトックス®を使用します。これにより、筋肉の痙縮や緊張を抑制します。
・バクロフェン髄腔内投与
 腹部の皮下にポンプを埋め込み、脊髄髄腔内に薬剤(バクロフェン)を持続的に投与することで、痙縮を軽減させます。
・脳外科的治療
 選択的脊髄後根切除術や深部脳刺激術などが行われることもあります。

脳性麻痺に手術は必要ですか?

手術の必要性や適切な時期は、患者さんの症状や障害の程度に応じて変わってきます。
脳性麻痺の原因となる脳の障害自体は、現在の医学の力では治療できません。しかし、障害が生じている手足の部分の問題を軽減するための手術が行われることがあります。
具体的には、筋肉の緊張を和らげるための手術や、関節の位置を正すための手術などが考えられます。

脳性麻痺のリハビリは何歳からできますか?

脳性麻痺のリハビリテーションは、早期の開始が推奨されています。
特に、赤ちゃんの頃からの運動訓練が非常に重要であり、早期訓練により、日常生活で必要な能力が向上していきます。
 
脳性麻痺は、胎児や乳児の脳に起こる非進行性の病変による運動・姿勢の発達の異常を指します。
リハビリテーションの目的は、障害の状態を評価し、日常生活の質を向上させることです。
 
具体的な治療方法としては、神経発達学的治療や痙縮に対する治療、補装具や座位保持装置の使用、摂食・嚥下に対する治療などが挙げられます。
神経発達学的治療では、異常な運動反応を抑制し、正常な運動発達を促進する訓練が行われます。
痙縮治療では、薬物療法や装具療法、神経ブロックという注射療法が用いられることがあります。
また、飲み込みに問題がある場合は、嚥下造影という検査を通じて、摂取方法のアドバイスを受けます。

大人の脳性麻痺について

大人の脳性麻痺について

二次障害の症状を教えてください

脳性麻痺の「二次障害」とは、脳性麻痺の主症状である運動機能の障害が原因となり、時間の経過とともに生じる身体的な変化や合併症を指します。
これは、脳性麻痺自体の症状ではなく、主症状に起因する結果としての障害や症状です。
 
脳性麻痺の大人、特に成人障害者において、二次障害は一次障害の増悪や新たに出現した障害として現れます。
まず肩などの凝りを感じるようになり、次第に手足のしびれ、腰痛、関節痛、頸の痛み、頻繁につまずく、物を落とす、排尿の不具合など、感覚が変化していきます。
 
具体的な症状としては、下記のとおりです。
 
関節の変形や変位:筋肉の硬直や痙攣により、関節が正常な位置を保てなくなることがあります。
筋肉の萎縮:使用されない筋肉が次第に衰えます。
骨折:骨の変形や骨密度の低下により、軽度の外傷でも骨折しやすくなります。
疼痛:筋肉や関節の異常による痛み、または体位の異常による圧迫感や痛みが起こる場合があります。
皮膚の問題:長時間同じ姿勢をとることで、圧迫された皮膚部位に褥瘡が生じることがあります。
精神的な疲労:イライラや物忘れ等が挙げられます。特に中度以上の障害を持つ方や、高齢者に多く見られる傾向があります。
 
二次障害は、脳性麻痺の患者さんが成長し、年齢を重ねるにつれて顕著になることが多いようです。そのため、早期の予防や適切な治療が重要となります。
リハビリテーションや日常生活のサポート、適切な体位の確保などが、二次障害の予防や進行の遅延に役立ちます。

二次障害の原因はなんですか?

脳性麻痺の「二次障害」は、主症状である運動機能の障害が原因となり、時間の経過とともに生じる身体的な変化や合併症を指します。
脳性麻痺の二次障害の原因となる二次的疾患は多岐にわたります。
例えば、頸や肩、腕の痛みがある場合、頚椎症や頸肩腕障害が考えられます。
また、脊柱側わん症、変形性股関節症、関節拘縮、ポストポリオ症候群なども二次障害の原因として知られています。
30歳前後から二次障害の症状を感じる方が多いようですが、20歳代から症状が出る方もいます。
 
脳性麻痺の二次障害の主な原因は下記の通りです。
 
筋肉の硬直や痙攣:関節が正常な位置を保てなくなり、関節の変形や変位が生じることがあります。
使用されない筋肉:筋肉が使用されないことで、筋肉の萎縮や衰えが生じます。
骨の変形や骨密度の低下:脳性麻痺の患者さんは骨折しやすくなることがあります。
長時間同じ姿勢を取る:皮膚の圧迫や褥瘡が生じるリスクが高まります。特に、中度以上の障害を持つ人や年齢が高くなるほど、二次障害のリスクが高まる傾向があります。
 
また、就労している方の場合、職種や労働条件によっても二次障害の症状が異なることが指摘されています。

二次障害は予防できますか?

二次障害の予防には、疾患や機能障害に対する治療だけでなく、生活や労働の環境を整えることが重要です。
 
二次障害の具体的な予防方法は、下記のとおりです。
 
運動不足の解消:筋力の低下で二次障害を招かないためにも、体力づくりが重要です。
定期的な健康診断:脳性麻痺の患者さんは、定期的に健康診断を受けることで、二次障害の早期発見や進行を防ぎます。
適切なリハビリテーション:個別の症状や状態に合わせたリハビリテーションを受けることで、筋力の低下や関節の変形を予防します。
適切な姿勢の維持:正しい姿勢を維持することで、筋肉や関節への負担を減少させ、変形や痛みの予防につながります。
日常生活の工夫:職場や家庭での生活環境を工夫し、過度な負担を避けることで、二次障害のリスクを低減します。規則正しい生活を心掛け、労働は適切な休憩を取りながら行うことが重要です。
情報の収集と共有:脳性麻痺に関する最新の情報を収集し、医師とのコミュニケーションを密にすることで、適切なケアや治療を受けましょう。
 
二次障害の予防は、早期の発見や適切なケアが鍵となります。
日常生活の中での小さな工夫や、医療機関との連携も欠かせません。
症状が出た場合は、早期に医療機関での診断と治療を受けることが推奨されています。

最後に、読者へメッセージをお願いします。

現代の医療技術やリハビリテーションは日々進歩しています。それでも、解明されていないことも多く、社会全体としての理解やサポートがまだまだ不足しているのも事実です。
私たち一人ひとりが、脳性麻痺についての知識を深め、理解し、そして支援することで、より良い社会を築いていきましょう。

編集部まとめ

脳性麻痺
ここまで脳性麻痺についてお伝えしてきました。
脳性麻痺の要点をまとめると以下の通りです。
 
・脳性麻痺は、胎児期、新生児期、または幼児期に脳に損傷が生じることで発症する運動機能障害のこと。進行性ではなく、原因としては酸欠や感染症、先天的な異常などが考えられる
・脳性麻痺の治療は、物理療法、作業療法、言語療法などのリハビリテーションが中心となる。必要に応じて薬物療法や手術も行われる
・脳性麻痺の患者は、主な障害に加えて二次障害を経験することがある。これには関節の変形、筋肉の拘縮、疼痛などが含まれ、適切な治療やケアによって管理や予防が必要である
 
これらの情報が少しでも皆さまのお役に立てば幸いです。
最後までお読みいただき、ありがとうございました。

この記事の監修医師