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「洗剤中毒」の症状や原因・予防法はご存知ですか?医師が監修!

 更新日:2024/01/09
「洗剤中毒」の症状や原因・予防法はご存知ですか?医師が監修!

皆さんは洗剤中毒をご存知ですか?洗剤と聞くと身近な病気であるようにも感じますが、しっかりと工夫することで簡単に予防できる病気でもあります。本記事では洗剤中毒について以下の点を中心にご紹介します。

・洗剤中毒とは
・洗剤中毒の症状
・洗剤中毒の治療方法や予防法

洗剤中毒について理解するためにもご参考いただけますと幸いです。ぜひ最後までお読みください。

甲斐沼 孟

監修医師
甲斐沼 孟(上場企業産業医)

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大阪市立大学(現・大阪公立大学)医学部医学科卒業。大阪急性期・総合医療センター外科後期臨床研修医、大阪労災病院心臓血管外科後期臨床研修医、国立病院機構大阪医療センター心臓血管外科医員、大阪大学医学部附属病院心臓血管外科非常勤医師、大手前病院救急科医長。上場企業産業医。日本外科学会専門医、日本病院総合診療医学会認定医など。著書は「都市部二次救急1病院における高齢者救急医療の現状と今後の展望」「高齢化社会における大阪市中心部の二次救急1病院での救急医療の現状」「播種性血管内凝固症候群を合併した急性壊死性胆嚢炎に対してrTM投与および腹腔鏡下胆嚢摘出術を施行し良好な経過を得た一例」など。

洗剤中毒とは

洗剤中毒とは

洗剤中毒について教えてください

洗剤中毒とは、多くの量の洗剤が、何らかの理由により体内に取り込まれてしまった際に起きる中毒症状です。洗剤と一口にいっても、固体から液体まで幅広い種類の洗剤があります。これらの洗剤を誤飲してしまったり、目や皮膚に大量にかかってしまったりした場合に洗剤中毒になってしまいます。

洗剤中毒の原因となる物を誤飲してしまう事例では、特に子供や認知症を患っている方に多くみられます。つまり、ジュースなどの飲料と間違えて口に含んでしまう事例があり、簡単に洗剤中毒になってしまう危険性もありますが、注意をしていれば防ぐことのできる病気であるともいえるでしょう。

洗剤中毒の原因について教えてください

洗剤中毒は、洗剤に含まれる界面活性剤という化学物質が原因となって引き起こされます。界面活性剤は、水と馴染みやすい性質をもっている反面、油を内側に留めておく性質も持ち合わせているため、油落としによく使用される物でもあります。そのため、油分を多く含む人体の皮膚などの細胞膜は、界面活性剤に触れることで破壊されてしまう可能性があります。また、細胞膜だけではなく、消化管や目の粘膜、血管の損傷に繋がる恐れのある物でもあり、洗剤中毒の原因となりえます。

誤嚥による洗剤中毒のリスクについて教えてください

誤嚥は、1〜4歳の子供に多くみられる症状です。化粧品や小さい物など、食品ではない物を口に含み、体内に取り入れる事態になることが考えられます。また、界面活性剤は、口紅などの化粧品にも含有されている場合があるため、注意が必要です。

万が一、界面活性剤を含む製品を誤嚥してしまった場合は、消化管の粘膜が傷つき、ただれてしまう恐れがあります。界面活性剤が含まれている製品は様々ですが、例えばタバコや何らかの化学物質を誤嚥してしまった場合には、急性中毒が起きる恐れがあります。また、金属類などの体内で消化できない物を取り入れてしまった場合、腹痛や嘔吐などの症状が現れる可能性があります。他には、プラスチック製の小さい玩具やシールなどは口に含まれやすく、窒息を引き起こす原因にもなります。

上記に挙げた嘔吐や腹痛などの症状が仮に現れず、無症状であった場合には、肺炎を発症する恐れがあります。つまり、子供の誤嚥に関しては、症状の有無に関わらず、常に身の回りの置物の配置を確認しておくべき必要があり、仮に先ほどまであった物がなくなり見当たらない場合には、誤嚥を疑うことも必要であると考えられます。

洗剤中毒の症状

洗剤中毒の症状

口から洗剤等を摂取した場合にどのような症状が現れますか?

洗剤中毒は体内に取り入れてしまった量と、体内に取り入れることになった経路によって異なる症状が現れます。

口から洗剤等を摂取してしまった場合、まず口や喉などに痛みを感じ、吐き気をもよおすといった症状が起こります。また、腹部に不快感を感じたり、しゃっくりが出たりすることもあります。症状が重い場合は、腸閉塞や消化管出血を起こすことや、血圧の低下によりショック状態に陥ることも考えられます。

目に洗剤等が接触した場合にどのような症状が現れますか?

目に洗剤等が接触してしまった場合、例えばまず、目が充血するといった症状が現れます。他に、目の周囲がむくむことで腫れ上がったり、涙が出てしまったりといった症状があります。また、目に洗剤が接触したとき、角膜が傷つけられてしまっている恐れもあり、視力にも影響が及んでいる可能性があります。

皮膚に洗剤等が接触した場合にどのような症状が現れますか?

次に、皮膚に洗剤等が接触してしまった場合、皮膚が赤くなったり、痒みを伴ったりする可能性があります。また症状が重い場合、皮膚がただれたり、火傷をしたかのように腫れ上がったり、ひきつりを感じたりするといった症状が現れる場合があります。

洗剤中毒の診断と治療

洗剤中毒の診断と治療

洗剤中毒の診断について教えてください

洗剤中毒になってしまったかどうかの診断方法は、まず中毒の原因となった毒物を特定することから始まります。また、尿検査や血液検査を行うことで、体内に取り込んでしまった毒物の濃度などを調べることもあります。加えて、全ての毒物を対象にすることはできませんが、種類によっては、腹部X線検査を行うことにより、体内のどの位置に存在するのかを確認できます。

洗剤中毒を疑った場合にどのような検査を受けますか?

洗剤中毒を疑った場合には、薬物検査をする必要があります。この薬物検査では、尿中の薬物を特定できます。正確さは異なるものの、市販の薬物検査キットもあるため、自身でキットを用いて検査をすることも可能です。

洗剤中毒の治療法について教えてください

洗剤中毒になってしまった場合、入院の必要性が高まります。まず、体内に取り込まれた毒物がなくなるか、あるいは不活性化するまでの間、血圧や心臓、呼吸や体温などを安定させる治療を施します。

また、体内にある毒素の排出や、身体に吸収されるのを防ぐための治療を施します。人体に大きな悪影響を及ぼすであろう毒物は、人体にとどまっている状態が続くと合併症を起こす危険性もあるため、胃洗浄を行う場合もあります。

毒物を排出する際には、血液透析を用いて直接毒物を排出する手段をとることがあります。他には、活性炭吸着療法といって、活性炭を使用して毒物の排出を促す手段や、全腸管洗浄といって、毒物を消化管から排出する手段などがあります。

洗剤中毒の予防と注意点

洗剤中毒の予防と注意点

家庭でできる洗剤中毒の予防策を教えてください

洗剤中毒は、家庭で簡単に予防できます。例えば、洗剤中毒になる成分を含有している商品と、飲食物とで似ている容器であった場合に、しっかり見分けて区別ができるようにシールなどの目印となるものを貼り付けておくと良いでしょう。

普段使用しない新しい商品を購入した場合には、誤って体内に取り込むことがないように、家族で確認しておく必要もあると思われます。また、ボトルなどに関しては、洗剤や漂白剤などといった表記に印をつけて強調することで、飲食物との見分けをはっきりできるようになります。

加えて、子供や高齢者と一緒に暮らしている家庭では、ただ容器に印をつけて区別をするだけではなく、飲食物と区別するために印をつけたことや、新しい商品を実際に見せながら注意を促す必要性があると思われます。

洗剤中毒を予防するために知っておくべきことを教えてください

洗剤中毒を予防する際、子供に関して知っておくべきことは、子どもの手の届かないところに配置する、よじ登れる台をそばに置いておかないといったことを確認する必要があります。また、高齢者に関しては、知らない間に普段使用している容器を別の容器に移しかえることをしないようにする、薬などは家族が管理することで一定量以上の服用を避けるなどの工夫をとることが重要であると思われます。

特に乳幼児に関して、床や畳などの低い場所に置かれている物を口に入れてしまう傾向があります。例えば、よく口に誤って入れてしまう物として、蚊取りマットやタバコ、ホウ酸団子などが挙げられます。また、歩ける段階になった子どもに関して、化粧をしている姿を真似て、化粧品で遊ぶ可能性もあり、時には誤って化粧品を口に入れてしまう事例もあります。口紅といった化粧品にも、洗剤と同様に界面活性剤が含まれており、体内に取り入れると身体に危険を及ぼす恐れがありますので、注意する必要があります。

洗剤の誤嚥に対する応急処置の方法を教えてください

洗剤を誤嚥してしまった際には、体内に取り入れてしまった量に応じて応急処置の方法をとる必要があります。少し舐めてしまった場合は、口をよくすすいだ後に、コップ1杯分の水か牛乳、あるいは生卵を飲み込むと良いとされています。

少しばかりの原液や、希釈された洗剤を多く摂取してしまった場合、コップ1〜2杯分の水や牛乳、または生卵を摂取する必要性があります。洗剤を摂取してしまった際には、すぐに吐き出させようとすると、気管に吐しゃ物や泡が入る危険性があり、肺炎を起こす可能性があるため注意が必要です。

最後に、多量の洗剤を原液の状態で摂取してしまった場合にも、同じようにコップ1〜2杯分の水や牛乳、または生卵を摂取しなければなりません。少しでも体内に取り入れてしまった毒物の濃度を下げるために、水などを早急に取り入れる必要があります。

最後に、読者へメッセージをお願いします。

洗剤中毒は、身近にある物を不注意で摂取することによって簡単になってしまう病気です。家で普段見慣れない物にラベルを貼ったり、見分けがつくように物を区別したり、他人が誤って摂取してしまわないように手や目の行き届かない場所に移動させたり家族間で食品ではないと注意しあったりするといった工夫で、未然に防げます。少しの工夫で、自分だけではなく、周りの大切な人の命を守るようにしましょう。

編集部まとめ

洗剤中毒
ここまで洗剤中毒についてお伝えしてきました。洗剤中毒の要点をまとめると以下の通りです。

・洗剤中毒は、洗剤や化粧品などに含まれる毒素成分を身体に取り入れることで発症してしまう中毒のことである
・洗剤中毒の症状は、取り入れてしまった経路によって異なり、吐き気や腫れといった症状が現れる可能性がある
・洗剤中毒は毒素の排出を促すことで改善できる。また、体内に取り込んでしまわないように目印をつけて区別することで予防方法にもつなげられる

これらの情報が少しでも皆さまのお役に立てば幸いです。最後までお読みいただき、ありがとうございました。

この記事の監修医師