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「ブドウ球菌性熱傷様皮膚症候群」にかかりやすい人や感染経路はご存知ですか?

 公開日:2023/09/22
「ブドウ球菌性熱傷様皮膚症候群」にかかりやすい人や感染経路はご存知ですか?

ブドウ球菌性熱傷様皮膚症候群という症状をご存知でしょうか。

あまり耳慣れない症状ですが、私たちの身近にいる細菌が原因で発症し、誰でも重症化する可能性のある病です。

本記事ではブドウ球菌性熱傷様皮膚症候群の原因・感染経路・予防方法などについて解説します。

人によっては命にかかわる危険のある重篤な病ですので、本記事で知識をつけ、感染した際に適切な対処をとれるよう備えてください。

高津 光雄

監修高津 光雄

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【経歴】
福岡県立九州歯科大学歯学部 卒業

【資格】
厚生労働省 臨床研修指導医
前歯でも噛める入れ歯 認定医

ブドウ球菌性熱傷様皮膚症候群(SSSS)とは?

子供の手 火傷

ブドウ球菌性熱傷様皮膚症候群の原因は?

ブドウ球菌性熱傷様皮膚症候群の原因は、黄色ブドウ球菌への感染です。黄色ブドウ球菌が虫刺され・傷口などから体内へ侵入し、皮膚を剥脱させる毒素を作り出すことで発症します。
この黄色ブドウ球菌は食中毒の原因菌として度々メディアで取り上げられるため、聞いたことがある人も多いのではないでしょうか。食中毒の原因菌と聞くと大変恐ろしいもののように感じますが、実際は健康な人の表皮にも存在する常在菌の1種です。
産生する毒素は強いですが無症状の人が多く、基礎疾患のある人・免疫力が低下している人でなければ、感染しても軽度の症状で済む細菌です。

症状について教えてください。

ブドウ球菌性熱傷様皮膚症候群にかかると、下記の症状が現れます。

  • 患部が熱傷(火傷)のように赤くただれる
  • 皮膚がずるむける
  • 強い痛みを伴う
  • 発熱を伴う

いわゆる「とびひ」が重症化したものとイメージしてもらうと良いでしょう。一般的なとびひと違うところは、既に発症している部位の近くではなくとも症状が現れる点です。
通常、とびひが広範囲に及ぶときは水泡から滲出した液の付着・掻き壊しなどにより広がります。しかしブドウ球菌性熱傷様皮膚症候群は、血液循環により体中に毒素が運ばれるため、滲出液の付着を条件としなくとも発症することがあるのです。
また発熱を伴う点も、一般的なとびひと異なる点といえるでしょう。

ブドウ球菌性熱傷様皮膚症候群にかかりやすい人とは?

ブドウ球菌性熱傷様皮膚症候群にかかりやすい人は、抵抗力の弱い人です。6歳以下の子どもに好発する傾向があるため、乳幼児・小児がかかりやすい病といえるでしょう。
新生児がかかることもあり、その場合は「新生児剥脱性皮膚炎」と呼ばれます。稀に大人も発症しますが、多くの場合は溶連菌を原因とする水泡を伴わないものがほとんどで、ブドウ球菌性熱傷様皮膚症候群とは区別されます。
しかし中には大人がブドウ球菌性熱傷様皮膚症候群を発症・重症化したケースも報告されているため、抵抗力が弱っている自覚のある人は注意するようにしましょう。

ブドウ球菌の潜伏期間はどれくらいですか?

黄色ブドウ球菌の増殖スピードは非常に早いため、1日で症状が現れます。毒素が急速に全身にまわるため、軽度のとびひと見ていると、一気に重症化していくケースも珍しくありません。
滲出した液にも黄色ブドウ球菌が増殖するため、どんどん全身に広がっていきます。このように短期間で一気に症状が広がるのがブドウ球菌性熱傷様皮膚症候群の特徴といえるでしょう。

ブドウ球菌性熱傷様皮膚症候群に後遺症はありますか?

ブドウ球菌性熱傷様皮膚症候群は、乳幼児・小児がかかった場合には予後は良好であることが多いです。そのため後遺症の心配はほとんどありませんが、アトピー性皮膚炎を患っている場合は、稀に敗血症を引き起こすことがあります。
敗血症とは、細菌が産生した毒素が血中にまわることで臓器の正常な働きが阻害される、全身の炎症反応です。これは命に関わる重篤な病態ですので、早急に治療を開始しなければなりません。
ほとんどは溶連菌感染により引き起こされるものですが、稀に黄色ブドウ球菌によっても引き起こされるため注意が必要です。

ブドウ球菌性熱傷様皮膚症候群の治療

医者と親子

治療法を教えてください。

ブドウ球菌性熱傷様皮膚症候群の治療法は、抗菌剤軟膏の塗布・内服や点滴による抗生物質の投与が基本です。
具体的には、軟膏は1日に1〜2回塗り直し、患部が広範囲に及ぶ場合はガーゼで覆い滲出液が他の部位に付着するのを防ぎます。抗生物質は症状の程度により内服薬か点滴による治療が行われます。内服が可能な場合には通院による治療もできますが、重症の場合には入院し、点滴による治療が必要です。
これらは黄色ブドウ球菌の増殖を抑えることを目的とし、経過観察しながら併用していきます。しかし中には抗菌剤が効かない薬剤耐性菌(メチシリン耐性黄色ブドウ球菌)も存在するため、適宜効果の認められる治療薬への変更も検討していきます。
また、症状の根幹にアトピー・アレルギーなど別の要因が絡んでいる場合には、そちらの治療も併せて行うことが重要です。これらの要因を解決しないままブドウ球菌性熱傷様皮膚症候群の対処だけ行っても、良好な結果は得られないでしょう。
総合的に判断しながら、症状の完治を目指していきます。

ブドウ球菌性熱傷様皮膚症候群になったら注意することはありますか?

ブドウ球菌性熱傷様皮膚症候群になったら、患部に触れないよう徹底しましょう。滲出液が他の部位に付着すると、そこから次々に感染が広まってしまいます。患部を掻いてしまいそうなときにはガーゼで覆い、患部に直接触れないようにします。
また患部の状態が落ち着くまで、入浴は避けるようにしましょう。水圧の弱いシャワーやかけ湯で、汗・汚れ・細菌をそっと洗い流すように留めるのが望ましいです。
石鹸は使用できますが患部に多少染みるかもしれません。使用する際はよく泡立て、やさしくなでるようにして洗ってください。

ブドウ球菌性熱傷様皮膚症候群はどのくらいの期間で治りますか?

個人差はありますが、薬の効果が適切に現れた場合、早くて1週間ほどで治ることもあります。しかし先述した薬剤耐性菌が原因だと、治療はこれより長引くのが一般的です。1ヶ月ほどで改善がみられる場合もあれば、3〜4ヶ月経っても完治しない症例もあります。
MRSAと呼ばれる薬剤耐性菌は、ほとんどの抗生物質が効かないとされるうえ、年々増加しているとさえいわれています。そのため抗生物質による効果が適切に現れているか、確認しながら治療を進める必要があるのです。
薬剤耐性菌が増加した原因は、これまでの医療において抗生物質を多用しすぎたためとの見解が有力です。これにより抗生物質の使用は最低限に留める風潮が主流となりました。患者さんの中には、もしかすると「強力な抗生物質を投与して早く完治させてほしい」と考える人もいるかもしれません。
しかし上記の背景により、抗生物質の投与は病状・経過を見極めながら慎重に進めるべきなのです。治療方針は医師の指示に従うようにしましょう。

ブドウ球菌性熱傷様皮膚症候群の感染対策

公園で楽しそうに水遊びする子ども 30

ブドウ球菌性熱傷様皮膚症候群に多い感染経路を教えてください。

ブドウ球菌性熱傷様皮膚症候群は人から人へは感染しません。意外かもしれませんが、あくまでブドウ球菌性熱傷様皮膚症候群の感染経路は、傷口に黄色ブドウ球菌が触れ体内へ侵入することによるものです。
先述したとおり、ブドウ球菌性熱傷様皮膚症候群の原因となる黄色ブドウ球菌は、健康な人の皮膚にも存在する常在菌です。細菌が傷口から体内に侵入した際も、抵抗力が高ければ軽度のとびひや化膿で済むため、治りも良好になります。
つまり、人との接触で黄色ブドウ球菌が移動する可能性はあっても、ブドウ球菌性熱傷様皮膚症候群が感染することはないのです。そのため、入浴で人に移してしまう心配はしなくても良いでしょう。ただし、滲出液が付着したタオルの共有や患部の接触は避けるべきです。
登園・通学においては、滲出液が広範囲にわたり人に移してしまう可能性があるうちは、避けるのが望ましいでしょう。また、プールについても避けることが望ましいです。

予防することはできますか?

ブドウ球菌性熱傷様皮膚症候群の予防には身体を清潔に保つことが重要です。軽度のとびひから重症化することもあるため、傷口・虫刺されなどの部位には触れないようにしましょう。
石鹸を使用した手洗いも効果的です。また小さな子どもだと、鼻孔に指をいれる癖のある子どももいます。原因となる黄色ブドウ球菌は健康な大人の鼻孔に約20%存在するといわれるほど、鼻孔に多く存在する細菌です。
鼻孔を触った手で傷口を触ると感染リスクが高まるため、子どもには鼻孔や傷口を触らないよう、よく言い聞かせるようにしましょう。

最後に、読者へメッセージをお願いします。

ブドウ球菌性熱傷様皮膚症候群の原因となる黄色ブドウ球菌は私たちの身の回りに常に存在する、大変身近な細菌です。黄色ブドウ球菌を日常生活から完全に排除することは不可能に近いため、細菌が存在していても感染しないよう、免疫力を高める生活を送ることが重要です。
疲労が溜まっていると感染しやすくなるだけではなく、治りづらくもなります。睡眠を充分にとり、栄養バランスの良い食事・適度な運動を心掛けましょう。ブドウ球菌性熱傷様皮膚症候群は強い痛みを伴い、入院も必要とする重篤な症状です。
子どもには普段から傷口に触らない・手洗いすることを徹底させましょう。大人が感染することは稀ですが、先述したとおり重症化し敗血症を引き起こした事例もあります。
発熱を伴う痒み・水泡・びらんなどの症状がみられた場合には、早急に受診するようにしてください。

編集部まとめ

親子15

ブドウ球菌性熱傷様皮膚症候群はあまり耳慣れない症状ですが、身近な細菌が原因となる、誰でもかかる可能性のある症状です。

夏場に乳幼児・小児に好発する傾向があるため、手足口病・プール熱・溶連菌感染症などと併せて、感染予防に努めましょう。

もし口・目の周りや脇などに水泡・びらんが認められ、かつ強い痛みを伴うようであれば、早急に受診する必要があります。

早期治療により重症化を防ぐことが可能になるため、迷わず受診するようにしましょう。