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「ファロー四徴症」という先天性の心疾患はご存知ですか?医師が監修!

 公開日:2023/09/19
「ファロー四徴症」という先天性の心疾患はご存知ですか?医師が監修!

ファロー四徴症とは、難病に指定されている先天性の心疾患の一つです。「ファロー」はフランス人医師の名前で、病態生理を提唱したために名付けられました。

病名を初めて聞いたという人もいるでしょう。聞きなれない名前だと感じる人もいるかもしれません。

ここでは、ファロー四徴症について解説します。特徴・原因・検査・手術などについても紹介するので参考にしてください。

甲斐沼 孟

監修医師
甲斐沼 孟(上場企業産業医)

プロフィールをもっと見る
大阪市立大学(現・大阪公立大学)医学部医学科卒業。大阪急性期・総合医療センター外科後期臨床研修医、大阪労災病院心臓血管外科後期臨床研修医、国立病院機構大阪医療センター心臓血管外科医員、大阪大学医学部附属病院心臓血管外科非常勤医師、大手前病院救急科医長。上場企業産業医。日本外科学会専門医、日本病院総合診療医学会認定医など。著書は「都市部二次救急1病院における高齢者救急医療の現状と今後の展望」「高齢化社会における大阪市中心部の二次救急1病院での救急医療の現状」「播種性血管内凝固症候群を合併した急性壊死性胆嚢炎に対してrTM投与および腹腔鏡下胆嚢摘出術を施行し良好な経過を得た一例」など。

ファロー四徴症の特徴や原因

悩む人

ファロー四徴症とはどのような病気ですか?

チアノーゼを伴う先天性心疾患です。大動脈と肺静脈を分ける仕切り壁が、体の前方にずれることで心臓にさまざまな症状が認められます。
病気自体は、早い段階で発症が発見されていました。しかし、発症の原因や罹患した際の具体的な身体状態については解明されていませんでした。
病理生態が提唱されたのは、今から約130年ほど前のことです。フランス医師のフェローが原因や身体機能の状態などを突き止め、提唱しました。チアノーゼを伴う先天性心疾患は複数ありますが、その中でも代表的な疾患です。

ファロー四徴症の4つの特徴について教えてください。

ファロー四徴症の主な特徴は、下記の4つです。

  • 心室中隔欠損:左右の心室を分ける壁(心室中隔)に大きな穴が認められます。新生児1,000人に3人の割合で存在し、先天性心疾患の中ではもっとも発症頻度の高い疾患です。半数近くは生後1年以内に自然閉鎖するといわれています。
  • 大動脈騎乗:大動脈が本来あるべき場所よりも前方へ移動し、心室中隔欠損の上に乗っているように見える心疾患です。心室中隔欠損も併発しています。
  • 肺動脈狭窄・漏斗部狭窄:大動脈が通常よりも太く、本来の位置よりも前方へ移動していることで肺動脈が細くなっている疾患です。それにともない、肺動脈の右室出口部分(漏斗部)も細くなります。
  • 右室肥大:右心室が肥大する疾患です。肺動脈狭窄により血液が送りづらくなることが原因で発症します。

どのような症状が出るのですか?

生後まもない時期には、心雑音が認められます。生後2か月以上になるとチアノーゼ発作がみられ、泣いたり興奮したりすると呼吸困難を起こすので危険です。
また、この発作は入浴時に起こる可能性もあります。全身の血管が拡張することで、肺に供給される血液量が減少するからです。発作が軽度の場合は、機嫌が悪くなることがあるでしょう。
しかし、症状が重くなると意識不明やけいれんを起こすことがあります。多くのケースでは10分程度で回復しますが、長時間続くと死亡する確率が高まるので注意してください。

ファロー四徴症の原因について教えてください。

心臓は受精8週以降から出産までの間で、形作られます。その過程の中で起こる形成異常が原因です。心臓の大動脈・肺動脈の間と右心室・左心室の間のそれぞれの壁がねじれて心室中隔欠損を生じ、その派生でほかの3つの症状も発症すると考えられています。
壁のねじれによって、適切な場所に神経系の細胞や二次心臓領域細胞が移動できないからです。しかし、原因は一つだけではないため、明確にはなっていません。なお、チアノーゼの発作については、酸素濃度が低い血液が全身を流れるために起こることがわかっています。

ファロー四徴症は遺伝するのですか?

通常は、他の特定の病気を発症することによって発生するといわれています。現在の研究や病院の報告によると、両親のいずれかがファロー四徴症に罹患していた場合、一親等内での再発率は約3%です。
明確に「遺伝する」とはいえませんが、先天性であることから遺伝との関係性も否定することはできないでしょう。

ファロー四徴症の検査や手術

レントゲンと聴診器

どのような検査が行われますか?

主に下記の2つの検査を行います。

  • 心エコー:心室中隔欠損と大動脈騎乗が認められることが診断のポイントです。そのうえで、肺動脈・漏斗部狭窄が認められれば、ファロー四徴症と診断されます。
  • 心臓カテーテル:収縮した際の右心室の圧力が、左心室・大動脈の圧力と等しいことが診断のポイントです。また、肺動脈の圧力は正常値の場合もありますが、低い数値を示す場合もあります。

ファロー四徴症の手術について教えてください。

手術は、乳児期の低酸素血症改善のために行われる「ブラロック・トーシッヒ短絡手術」と、心臓の血液の流れを改善する目的で行われる「心内修復術」の2つがあります。さらに、心内修復術には自己弁温存法・右室流出路パッチ拡大術・ラステリ術の3つの方法があり、症状や年齢によって異なります。

  • ブラロック・トーシッヒ短絡手術:大動脈から肺動脈にかけて血液の流れる通路を確保する手術です。人工血管を用いて行われます。
  • 自己弁温存法:右心室の血液が流れる通路を手術する際に、自分の肺動脈にある弁を残す方法です
  • 右室流出路パッチ拡大術:右心室の流出路に膜(パッチ)をあてて、拡大形成します。
  • ラステリ術:右心室から肺動脈にかけて血液が流れる通路を作る方法です。人工血管などが用いられます。肺動脈閉塞を伴う場合に行われることが多く、1歳半〜2歳ごろの成長した時期に行われる手術です。

心内修復術後、右室流出路や肺動脈が再び狭くなることがあります。その場合は、バルーンカテーテルやステントを用いたカテーテル治療が必要です。
さらに、肺動脈弁閉鎖不全の進行によって、成人期以降に心不全や不整脈を引き起こすかもしれません。発症が認められた場合は、肺動脈弁置換術や経皮的肺動脈弁置換術を行います。

手術後に起こりうる合併症はありますか?

弁付きパッチを使用することで、術後に弁機能不全を発症するケースがあります。かなり時間が経ってから発症する合併症です。肺動脈弁の逆流で三弁逆流・右心房肥大を起こし、その結果右心不全・不整脈を引き起こします。突然死にもつながる危険な合併症です。
海外の研究では、弁付きパッチを使用した手術から約30年後に、約10%前後の確率で不整脈を発症したと報告されています。年齢で見た場合は55歳以上で心房頻拍・心房細動が5割、心室頻拍・心室細動が3割認められたとの報告もあり、弁付きパッチの使用とあわせて加齢も影響しているようです。

ファロー四徴症の予後や注意点

注意

ファロー四徴症の予後について教えてください。

根治手術を受けた場合の予後は良好です。ただし、成人期以降に合併症が起きる可能性があります。心不全や不整脈が認められ、弁付きパッチを使用した根治手術を行った場合に起こるとされている合併症です。
発症した場合は、再手術が必要になるので注意してください。合併症は術後かなり時間が経ってから発症します。そのため、根治手術後も外来で定期的に診察を受けなければいけません。
なお、外科治療を行わなかった場合は、生存率が1年で75%・3年で60%・10年で30%といわれています。年数別の生存率からわかるように、成人期以降も死亡率は増加し続けるので治療を行ったほうがよいでしょう。なお、死亡の原因として低酸素血症・心不全・脳梗塞・脳膿瘍・腎不全などがあげられます。

日常生活で注意するべきことはありますか?

根治手術を受けた場合は、小学校・中学校・高校に「学校生活管理指導表」を提出しなければいけません。術後も急な体調不良に見舞われるなどの可能性がゼロではないからです。
また、症状や状態によっては激しいスポーツが制限される可能性があります。制限されない場合でも、準備運動と水分補給を心がけましょう。
根治手術は人工物を使用した心臓手術になります。そのため抜歯・出血を伴う歯の治療やそのほかの外科手術時には、感染性心内膜炎の予防をしなければいけません。必ず治療の前に医師に、根治手術を受けた経験があることを伝えましょう。また、妊娠出産は心臓に負担をかける可能性が高く、リスクを伴うので担当主治医に相談して心機能を評価してもらってください。

最後に、読者へメッセージをお願いします。

多くの場合、乳児期に発症が認められる病気です。主な治療方法は心臓手術ですが、術後は通常の日常生活に戻れる可能性が高いでしょう。多くの場合、激しい運動は制限されます。
しかし、軽い運動程度なら可能なケースもあるので、医師に相談してみましょう。先天性の心疾患のため、予防は困難です。罹患すると術後も長期にわたって定期的な診察が必要になります。根治手術後も経過観察が必要なので、診察は必ず受けるようにしてください。

編集部まとめ

ハート
ファロー四徴症について解説してきました。

先天性心疾患であるファロー四徴症は、予防が困難な病気です。また、先天性という点から遺伝子は関係していますが、遺伝する病気とは言い切れません。

しかし、現在はさまざまな治療法が確立されています。早期に正しく治療を行えば、日常生活に支障をきたすこともほとんどないでしょう。

治療には医師の助けが必要です。必ず病院に行って診察を受けてください。定期的に医師の診察を受け、上手に病気と付き合っていきましょう。

この記事の監修医師