「上腸間膜動脈症候群」の原因や症状はご存じですか?痩せすぎには要注意!
公開日:2023/09/13
腹腔内における消化器官の一部を包む腹膜の1つに腸間膜があります。この部位に関連するのが上腸間膜動脈症候群です。
腹膜は腹腔内の臓器や組織を保護し支持する役割を果たしていて、腸間膜は小腸や大腸などの腸管やその他の腹腔内臓器を吊り下げている組織です。これらの膜によってそれぞれの臓器が適切な位置に保たれています。
上腸間膜動脈症候群は、腸間膜動脈が他の血管や組織によって圧迫されることで引き起こされるものです。
ではどのような症状があり、何が原因なのでしょうか。また検査方法・予後・予防についても詳しく説明します。
監修医師:
甲斐沼 孟(上場企業産業医)
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大阪市立大学(現・大阪公立大学)医学部医学科卒業。大阪急性期・総合医療センター外科後期臨床研修医、大阪労災病院心臓血管外科後期臨床研修医、国立病院機構大阪医療センター心臓血管外科医員、大阪大学医学部附属病院心臓血管外科非常勤医師、大手前病院救急科医長。上場企業産業医。日本外科学会専門医、日本病院総合診療医学会認定医など。著書は「都市部二次救急1病院における高齢者救急医療の現状と今後の展望」「高齢化社会における大阪市中心部の二次救急1病院での救急医療の現状」「播種性血管内凝固症候群を合併した急性壊死性胆嚢炎に対してrTM投与および腹腔鏡下胆嚢摘出術を施行し良好な経過を得た一例」など。
目次 -INDEX-
上腸間膜動脈症候群の症状や原因
上腸間膜動脈症候群とはどのような病気ですか?
上腸間膜動脈症候群は、十二指腸のちょうど水平脚のところが腸間膜根部と大動脈や脊椎との間に挟まれることで通過障害をきたしてしまう病気です。比較的珍しく稀な病態といえます。通過障害は、腸間膜動脈が他の血管や組織によって圧迫されることで引き起こされます。
圧迫されると血流が制限されるため、腸の酸素供給が不足するためです。腹部大動脈と上腸間膜動脈とに挟まれている角度は、通常45度から60度くらいが正常といわれていますが、それが20度以下になるなど非常に狭くなるとこの症状が出やすくなります。
圧迫されると血流が制限されるため、腸の酸素供給が不足するためです。腹部大動脈と上腸間膜動脈とに挟まれている角度は、通常45度から60度くらいが正常といわれていますが、それが20度以下になるなど非常に狭くなるとこの症状が出やすくなります。
症状について教えてください。
症状として多いのが、腹部の中央部や上腹部で発生する腹痛です。特に食事後に痛みが増すことがあります。また、腹部の不快感によって吐き気や実際に嘔吐することもあります。
このような症状は特に上腹部もおきますが、一度吐いてしまうと調子が良くなるようです。腹部大動脈 と上腸間膜動脈との間で挟まれることで起こる症状ですので、腹痛が起きた時に体位を変えて四つん這いになると楽になる場合があります。これは、挟まれた角度が広がるために症状が緩和するためです。
症状としては腹部の膨満感があげられます。腹部が膨らんだように感じるのが特徴です。こういった症状もあり食欲不振になりやすく、食事の際に食欲が低下します。また、食事が減り消化不良になることから、体重が減少することもあります。
このような症状は特に上腹部もおきますが、一度吐いてしまうと調子が良くなるようです。腹部大動脈 と上腸間膜動脈との間で挟まれることで起こる症状ですので、腹痛が起きた時に体位を変えて四つん這いになると楽になる場合があります。これは、挟まれた角度が広がるために症状が緩和するためです。
症状としては腹部の膨満感があげられます。腹部が膨らんだように感じるのが特徴です。こういった症状もあり食欲不振になりやすく、食事の際に食欲が低下します。また、食事が減り消化不良になることから、体重が減少することもあります。
原因を教えてください。
上腸間膜動脈症候群の直接的な原因は、上腸間膜動脈が他の組織や構造によって圧迫されることによる通過障害です。この血流制限の原因として考えられるのが若年層における痩せすぎによるものです。
成長期において、体重はそれほど増えないのに身長が伸びてしまうことで体が少し細身型になります。また、ダイエットにより痩せすぎてしまうこともあります。そうなると上腸間膜動脈症候群の症状が出やすいです。
痩せてしまうと上腸間膜動脈の根部のところにある脂肪が減ってしまい、腹部大動脈と上腸間膜動脈とに挟まれている角度が狭くなってしまうことが原因の1つです。他にも血流の圧迫の理由として、腹部内の腫瘍や腫れ物が腸間膜動脈に圧迫をかけたり、腸間膜動脈やその周囲の血管に異常が生じて血流の制限が引き起こされたりすることもあります。
腸間膜やその周囲の組織に炎症や感染症が生じることで腫れや炎症によって血流が制限されることもあるでしょう。
成長期において、体重はそれほど増えないのに身長が伸びてしまうことで体が少し細身型になります。また、ダイエットにより痩せすぎてしまうこともあります。そうなると上腸間膜動脈症候群の症状が出やすいです。
痩せてしまうと上腸間膜動脈の根部のところにある脂肪が減ってしまい、腹部大動脈と上腸間膜動脈とに挟まれている角度が狭くなってしまうことが原因の1つです。他にも血流の圧迫の理由として、腹部内の腫瘍や腫れ物が腸間膜動脈に圧迫をかけたり、腸間膜動脈やその周囲の血管に異常が生じて血流の制限が引き起こされたりすることもあります。
腸間膜やその周囲の組織に炎症や感染症が生じることで腫れや炎症によって血流が制限されることもあるでしょう。
上腸間膜動脈症候群になりやすいのはどのような人ですか?
上腸間膜動脈症候群は、若年層においては成長期にダイエットなどを含め痩せすぎたために発症することが多いようです。しかし、痩せすぎていれば起こるリスクが高いのではなく、急激に痩せる行為がリスクをあげています。
また、年齢に関係なく特定のリスク要因が存在する人により発症しやすい可能性があります。例えば、高血圧・動脈硬化・糖尿病・高コレステロールなどです。これらは、動脈の異常が起こりやすく、腸間膜動脈にも影響を与える可能性があります。
また、年齢に関係なく特定のリスク要因が存在する人により発症しやすい可能性があります。例えば、高血圧・動脈硬化・糖尿病・高コレステロールなどです。これらは、動脈の異常が起こりやすく、腸間膜動脈にも影響を与える可能性があります。
上腸間膜動脈症候群の検査や治療方法
上腸間膜動脈症候群の検査方法を教えてください。
一般的な血流の検査を行う血液検査で、血液中の炎症マーカーや生化学的な指標を調べます。また、超音波を用いて腹部の血管や臓器の状態を見て、動脈の狭窄や血流の変化を確認も有効です。
超音波検査では、腹部大動脈と上腸間膜動脈の起始部の角度を見れるため、その角度がわかります。腹部CT検査では、詳細な断層画像で血管の異常や動脈の状態を確認します。より詳しく見る場合は、MRI検査です。
また血管造影でコントラスト剤を用いた血管の可視化ができますので、血管の状態や狭窄の程度の確認には有効です。腹痛や嘔吐の症状がある場合、最初に画像診断をします。単純写真を撮り、判断することになるでしょう。
超音波検査では、腹部大動脈と上腸間膜動脈の起始部の角度を見れるため、その角度がわかります。腹部CT検査では、詳細な断層画像で血管の異常や動脈の状態を確認します。より詳しく見る場合は、MRI検査です。
また血管造影でコントラスト剤を用いた血管の可視化ができますので、血管の状態や狭窄の程度の確認には有効です。腹痛や嘔吐の症状がある場合、最初に画像診断をします。単純写真を撮り、判断することになるでしょう。
治療方法を教えてください。
軽度の症状がある場合は、食事の見直しや生活習慣の改善を通じて症状の緩和を図る保存的な治療が行われます。また、血流の改善や症状の軽減を目指して、薬物が処方されることがあります。処方されるのは、抗凝固薬や抗炎症薬などです。
しかし、これらで改善しない場合は、外科的処置を行います。血管内治療の1つが、血管形成術です。狭窄した血管を拡張するためにバルーンを用いる方法です。血流の改善を図るために行われます。また、症状が重篤な場合や他の治療法が効果的でない場合は、腸間膜動脈の一部を切除する手術やバイパス手術などが行われます。
これらの治療方法は、それぞれの患者の状態によって決定されます。
しかし、これらで改善しない場合は、外科的処置を行います。血管内治療の1つが、血管形成術です。狭窄した血管を拡張するためにバルーンを用いる方法です。血流の改善を図るために行われます。また、症状が重篤な場合や他の治療法が効果的でない場合は、腸間膜動脈の一部を切除する手術やバイパス手術などが行われます。
これらの治療方法は、それぞれの患者の状態によって決定されます。
手術が行われるケースもあるのですか?
上記で説明したように最初に選択されるのは保存的な治療ですが、そこで症状が改善しない場合は外科的処置が行われる場合があります。最も一般的に行われているのは、腹腔鏡下十二指腸空腸吻合です。
この手術は、腹腔鏡を用いて小さな切開を通じて行うものです。手術用の器具とカメラが腹部に挿入され、外科医はモニターを通じて内部を観察しながら手術を行います。単孔式腹腔鏡下十二指腸空腸吻合術での施術も報告されています。
この手術は、腹腔鏡を用いて小さな切開を通じて行うものです。手術用の器具とカメラが腹部に挿入され、外科医はモニターを通じて内部を観察しながら手術を行います。単孔式腹腔鏡下十二指腸空腸吻合術での施術も報告されています。
上腸間膜動脈症候群の予後や予防
上腸間膜動脈症候群の予後について教えてください。
上腸間膜動脈症候群の予後は症状の程度や早期の診断・治療によって大きく異なります。症状が早期に診断され治療が行われた場合は、食事療法や薬物療法によって症状が改善されますので、その状況を維持することが重要です。特に食事療法を行った場合は元の状態に戻らないように気をつけましょう。
しかし、重度の症状や合併症が進行している場合で手術によって治療した場合は、その施術の内容や術後の状態によって予後は変わってきます。専門医との定期的なフォローアップや相談が重要です。
常に自分の症状を把握し再発や合併症の予防を目指すようにしましょう。
しかし、重度の症状や合併症が進行している場合で手術によって治療した場合は、その施術の内容や術後の状態によって予後は変わってきます。専門医との定期的なフォローアップや相談が重要です。
常に自分の症状を把握し再発や合併症の予防を目指すようにしましょう。
上腸間膜動脈症候群を予防する方法はありますか?
上腸間膜動脈症候群を予防するためには、健康的な食事を摂ることが大切です。野菜・果物・全粒穀物・健康的な脂質を適切な割合で摂るよう心がけましょう。また、適度な運動を行うことで、体重を管理し循環系の健康を維持できます。
特に有酸素運動や筋力トレーニングを取り入れることがおすすめです。上腸間膜動脈症候群は、血流障害への対策が重要なため、禁煙の検討も重要です。喫煙は血管の健康に悪影響を及ぼす可能性があります。また、高齢者であれば普段から血圧とコレステロールの管理を意識しましょう。
これらの予防策は、上腸間膜動脈症候群のリスクを軽減するだけでなく、健康的な生活を維持するためにも行うアプローチです。
特に有酸素運動や筋力トレーニングを取り入れることがおすすめです。上腸間膜動脈症候群は、血流障害への対策が重要なため、禁煙の検討も重要です。喫煙は血管の健康に悪影響を及ぼす可能性があります。また、高齢者であれば普段から血圧とコレステロールの管理を意識しましょう。
これらの予防策は、上腸間膜動脈症候群のリスクを軽減するだけでなく、健康的な生活を維持するためにも行うアプローチです。
最後に、読者へメッセージをお願いします。
上腸間膜動脈症候群は、近年若年層での発症が注目されています。体の成長に関して、生活習慣とのバランスがうまく取れず体重に比べ身長が急成長してしまうことがあります。
さらに、ダイエットにより栄養バランスが偏ってしまうこともあり、これらで起こる痩せすぎが原因となる場合が少なくありません。また、高齢になると痩せすぎからくる発症よりも他の原因によるものが多くなるようです。
一過性の腹痛と思ってしまい発見が遅れることもありますので、常に症状を意識するようにしましょう。
さらに、ダイエットにより栄養バランスが偏ってしまうこともあり、これらで起こる痩せすぎが原因となる場合が少なくありません。また、高齢になると痩せすぎからくる発症よりも他の原因によるものが多くなるようです。
一過性の腹痛と思ってしまい発見が遅れることもありますので、常に症状を意識するようにしましょう。
編集部まとめ
上腸間膜動脈症候群は、早めの症状の特定によって、食事改善などの保存的療法で治療が可能な病気です。
一方で、つい普段の生活の中の単なる症状だと過信してしまうものともいえます。
少しでも気になるようであれば、かかりつけ医や専門の医師に早めに相談するようにしましょう。
参考文献