「ポルフィリン症」になると現れる症状・原因・診断基準はご存知ですか?
ポルフィリン症は、ヘム合成酵素活性に先天的および後天的異常が発生することによる代謝異常です。
非常にまれな疾患で10万人に数人の割合でしか発生しません。
遺伝性または後天性の原因でポルフィリン合成回路の酵素が機能せずに引き起こされ、いくつかの種類がありそれぞれ病状や原因は異なります。
ポルフィリン合成回路はヘムやクロロフィルなどのポルフィリン化合物を生合成するプロセスです。
ポルフィリン合成回路は、生体内では主に肝臓や骨髄で行われます。
発病すると現れるのは、光線過敏症・消化器症状・神経症状などの病状です。
この病気についての原因・病状から診断・治療・予後まで解説しますので、ぜひ参考にしてください。
監修医師:
甲斐沼 孟(上場企業産業医)
目次 -INDEX-
ポルフィリン症の原因や病状
ポルフィリン症の原因を教えてください。
この病気で発病を起こす要因は蓄積したヘム前駆体です。欠乏している酵素によって前駆体の種類や発生病状は異なってきます。この病気にはいくつかの異なる病気があり、ヘムを合成するのに必要な酵素のうちの1つが欠損することが原因です。それぞれの酵素の欠損は酵素の合成に関係する遺伝子の損傷・変異によって起こります。
ポルフィリン症の症状を教えてください。
最も一般的な症状は、腹部の激しい痛み・便秘・吐き気・嘔吐などの消化器症状で、筋力低下・感覚障害・てんかん発作・精神症状なども発病します。皮膚型は皮膚が日光にさらされたとき皮膚症状が生じるポルフィリン症です。皮膚の光過敏・水疱・かゆみ・色素沈着・毛髪の異常などが見られ、神経系や消化器系に影響を及ぼすことがあります。
ポルフィリン症は精神病状もあると聞きましたが…。
さらに、末梢神経系・中枢神経系・自律神経系などに1つ以上の病状があります。末梢神経系では四肢痛・背部痛・筋力低下などです。中枢神経系では不安・幻覚・妄想・行動の変化などが見られます。自律神経系では嘔吐・便秘などです。なお、精神症状に対する治療法はまだ確立されていません。
好発年齢は何歳くらいなのでしょうか?
- 急性間欠性ポルフィリン症は21歳から30歳くらい
- 異型ポルフィリン症は21歳から50歳くらい
- 遺伝性コプロポルフィリン症は21歳から30歳くらい
急性型は女性が多く、妊娠可能な年齢での発病が多くなっています。また皮膚型では次の通りです。
- 先天性赤芽球型ポルフィリン症の約半数が幼年から若年まで
- 骨髄性プロトポルフィリン症は6歳から30歳くらい
- 晩発性皮膚型ポルフィリン症と肝赤芽球型ポルフィリン症は31歳以降
ポルフィリン症の診断方法や治療方法
ポルフィリン症の診断方法を教えてください。
急性型につながる酵素欠損が親に存在するときは、子どもが思春期を迎える前に検査を受けさせましょう。次に二次性ポルフィリン尿症検査を行い尿中のポルフィリンと前駆体を測定して、ポルフィリン症の診断が下されます。
診断基準はどのようなものですか?
一例として、急性間欠性ポルフィリン症の場合を掲載します。
- 臨床所見で思春期以降に発病し種々の程度の腹痛・嘔吐・便秘・四肢脱力・痙攣や精神異常・高血圧・頻脈・発熱を認めるが、皮膚症状は認められない。
- 検査所見で①尿中のデルタアミノレブリン酸が正常値平均値の3倍以上増加し、②ポルホビリノーゲンが正常値平均値の10倍以上増加する。
- 遺伝子検査でポルフォビリノーゲン脱アミノ酵素遺伝子の異常を認める。
- 除外診断で器質的な急性腹部疾患・他のポルフィリン症を否定できる。
- 参考事項で家族歴・既往病状・発作誘因を認める。(発作誘因はある種の薬物・性ホルモンのアンバランス・タバコ・アルコール・感染症・カロリー摂取不足・各種ストレスなど。)
- 診断のカテゴリーで次のA.B.のいずれかを満たすものを急性間欠性ポルフィリン症と診断する。A.臨床所見のいずれかおよび検査所見の①②双方を満たし除外診断を否定できるもの。B.臨床所見のいずれかおよび遺伝子検査を満たし除外診断を否定できるもの。
ポルフィリン症の治療方法を教えてください。
急性型では、発作を引き起こす要因を除去しヘモグロビンやグルコースなどの輸液を行います。重症の場合に必要なことがあるのはヘム製剤投与・人工透析などです。皮膚型では皮膚への日光や化学物質の刺激を避けるようにします。サングラスや帽子などで皮膚を保護するのも有効です。鉄分やビタミンB12などの栄養素の補給や肝臓移植などの手術も必要に応じて行われます。
一般的に、発作を予防するためにアルコール・薬物・感染症・ストレスなどのトリガーとなる要因を避けることが必要です。誘因や増悪因子を避けることで、発作や皮膚症状を予防したり軽減したりすることができます。発作時に行われるのは対症療法や補充療法です。対症療法では痛みやかゆみなどの病状を和らげるため鎮痛剤やステロイド剤などが使用されます。補充療法で投与されることがあるのは、欠損している酵素を補うためのヘモグロビン製剤やヘムアルグリナーゼなどです。
手術が必要になることはありますか?
また、日光に対する感受性を低下させるために、β-カロテンや抗酸化剤を服用することもあります。手術が必要になることは稀です。ただし、この病気によって誘引される合併症がある場合は手術を行う必要があります。たとえば、肝臓がこの病気が原因で障害されたときは肝移植、皮膚に潰瘍や癌ができたときは切除手術です。
ポルフィリン症の予後
ポルフィリン症の予後を教えてください。
皮膚型は皮膚や肝臓などに長期的な障害を与える可能性がありますが、適切な治療や生活習慣の改善によって予後は安定します。予後を知ることは患者や家族にとって重要な情報であり、治療方針や生活の見通しを立てる際に必要不可欠です。
ポルフィリン症は完治しますか?
発作の予防には、食事や睡眠の管理・ストレスの回避・薬物の使用制限などが重要です。また、遺伝カウンセリングを受けることで自分や家族の病気のリスクや遺伝子の状態などを知ることができます。専門医や患者会などと連携して情報を得たり、相談したりすることも大切です。
最後に、読者へメッセージをお願いします。
この病気は現在のところ完治する方法はありませんが、適切な治療と生活管理で発作を予防したり軽減したりすることはできます。このQ&Aではポルフィリン症について解説しますので、この病気に関心のある方や患者さんは、ぜひ参考にしてください。
編集部まとめ
ポルフィリン症の原因・メカニズム・診断・治療法・予防・対処法などを理解すれば、この病気と上手に付き合っていくことが可能です。
また、この病気に関する情報の共有によって患者さん同士や医療関係者とのコミュニケーションを円滑化できます。
この病気は難しい病気ですが、一人で悩まずに専門医や支援団体に相談してください。読者の皆様にとって、このQ&Aがこの病気についての有益な情報源となることを願っています。
参考文献