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「横紋筋肉腫」ができると現れる初期症状・原因はご存知ですか?医師が監修!

 公開日:2023/09/07
「横紋筋肉腫」ができると現れる初期症状・原因はご存知ですか?医師が監修!

横紋筋肉腫はおもに小児に見られる悪性腫瘍の一つです。100万人あたりで4〜5人程度の頻度で発症する珍しい腫瘍といえます。

そのため、横紋筋肉腫とはどのような腫瘍なのか知らない方もいるでしょう。この記事では横紋筋肉腫がどのような疾患なのか詳しくご紹介します。

また、横紋筋肉腫の症状・治療方法・予後についても見ていきましょう。横紋筋肉腫について知りたい方は参考にしてください。

武井 智昭

監修医師
武井 智昭(高座渋谷つばさクリニック)

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【経歴】
平成14年慶應義塾大学医学部を卒業。同年4月より慶應義塾大学病院 にて小児科研修。平成16年に立川共済病院、平成17年平塚共済病院(小児科医長)で勤務のかたわら、平成22年北里大学北里研究所病原微生物分子疫学教室にて研究員を兼任。新生児医療・救急医療・障害者医療などの研鑽を積む。平成24年から横浜市内のクリニックの副院長として日々臨床にあたり、内科領域の診療・訪問診療を行う。平成29年2月より横浜市社会事業協会が開設する「なごみクリニック」の院長に就任。令和2年4月より「高座渋谷つばさクリニック」の院長に就任。

日本小児科学会専門医・指導医、日本小児感染症学会認定 インフェクションコントロールドクター(ICD)、臨床研修指導医(日本小児科学会)、抗菌化学療法認定医
医師+(いしぷらす)所属

横紋筋肉腫の原因や症状

親子に説明する医師

横紋筋肉腫はどのような病気ですか?

横紋筋肉腫は横紋筋にできる悪性腫瘍です。横紋筋は正常に発達すれば本来は筋肉の骨格筋になります。
進行の速いがんで、体のどの部位にも発症しますが、発症する頻度が高いのは次の部位です。

  • 頭頸部
  • 眼窩(眼の奥)
  • 頭蓋の内部
  • 泌尿生殖器(膀胱・前立腺・精巣・膣)
  • 四肢(腕・脚)
  • 体幹・その他の部位

横紋筋肉腫は体の他の部位にも転移するがんです。肺への転移が多くみられますが、その他にも骨・骨髄・リンパ節に転移する場合があります。

横紋筋肉腫の原因を教えてください。

横紋筋肉腫の原因はたいていの場合不明です。ただし、最近の研究により、一部の横紋筋肉腫の発生には遺伝子の変異が関係していることが分かってきました。遺伝子が突然変異する理由については良く分かっていません。
また、次のような疾患の合併症として発生するケースも報告されています。

  • 神経線維腫症1 型(NF1)
  • Li-Fraumeni 症候群
  • 遺伝性網膜芽細胞腫

こうした疾患は先天的な遺伝子の異常による疾患です。

症状(初期症状)について教えてください。

横紋筋肉腫は全身に発生しますが、腫瘍が発生する部位によって、症状(初期症状)は異なります。
基本的には腫瘍ができた部位の腫れや痛みがおもな症状です。最初のうちは腫れのみですが、腫瘍が大きくなって周囲の組織を圧迫し始めると痛みを伴います。
膀胱に横紋筋肉腫が発生した場合は、血尿が出たり、尿が出にくかったりといった症状が出るでしょう。
はじめに横紋筋肉腫が発生した部位から、他の臓器に転移して初めて症状が出るケースもあります。

横紋筋肉腫になりやすい人はどのような人ですか?

横紋筋肉腫を発症しやすいのは子どもです。日本では年間90人ほどの子どもに横紋筋肉腫ができるといわれています。子どもの中でも年長児(平均年齢7歳)が発症年齢の場合が多く、約62%は10歳以下です。
おもに子どもに発症するとはいえ、大人が発症するケースもあります。米国の調査では、30歳以上の発症が全年齢層の40%を占めるとのデータもある疾患です。

横紋筋肉腫の診断や治療

子どもの手を取る医師

横紋筋肉腫はどのように診断されますか?

横紋筋肉腫は次のような検査を行って診断されます。

  • 血液検査
  • 尿検査
  • 画像検査
  • 骨髄検査

発生した部位によっては髄液検査が行われる場合もあります。また、病型によっては異常遺伝子が関係しているため、遺伝子診断が行われる場合もあるでしょう。最終的には腫瘍の一部またはすべてを切り取る生検を行って診断を確定する流れです。
詳しい検査方法については次の項目でご紹介します。

検査方法を教えてください。

画像検査では次のような検査が行われます。

  • CT検査
  • MRI検査
  • PET-CT検査
  • 核医学検査(タリウムシンチグラフィ・骨シンチグラフィ)

上記の検査により腫瘍の場所・大きさ・広がりなど病気の進行度を確認します。血液検査や尿検査も腫瘍が臓器にどのような影響を与えているかを調べる検査です。
生検では腫瘍の一部またはすべてを切除して組織を顕微鏡で詳しく調べます。生検により腫瘍が悪性腫瘍かどうか、また悪性度について判断ができるでしょう。
また、病型が分かれば治りやすさも判断できます。胎児型であれば比較的治りやすく、胞巣型であれば比較的治りにくいといった具合です。
胞巣型の場合には胎児型には見られない「キメラ遺伝子」が発現している場合も多くあります。そのため、PCR法と呼ばれる遺伝子診断でキメラ遺伝子の存在を確認する検査も行われる場合があるでしょう。

どのような治療が行われるのでしょうか?

横紋筋肉腫の治療は次の3つの方法で行われます。

  • 外科手術
  • 化学療法
  • 放射線治療

外科手術は手術により病変部位を切除する治療法です。1回の手術で腫瘍を完全に切除できる場合には切除手術が行われます。
ただし、横紋筋肉腫は脳など重要な臓器との境目で発生するケースが多く、切除が難しい場合も多い疾患です。そのため、生検のみを行ったあとに化学療法をまず行って、腫瘍を縮小させてから手術を行う場合があります。
化学療法は抗がん剤を用いた治療です。抗がん剤には次のものが標準的に使用されます。

  • ビンクリスチン
  • アクチノマイシン
  • シクロホスファミド

最低でも半年間は抗がん剤を使用した治療が行われます。
なお、シクロホスファミドは一定量投与すると不妊症になるリスクがあるため、副作用の少ない薬剤や精子や卵子を保存するなどの方法が用いられる場合もあるでしょう。
手術しても腫瘍が残っている場合や、がんが中リスク・高リスクの場合は放射線治療が行われます。

横紋筋肉腫の予防

医師と親子

横紋筋肉腫は早期発見できますか?

横紋筋肉腫は自覚症状がなく、発症頻度も低いため、早期発見が難しい疾患です。腫瘍が大きくなってから気付くケースも少なくありません。子どもにできる他のがんと同じく、はじめは風邪や胃腸炎と考えられるケースもあるでしょう。
また、遺伝子の変異が原因と考えられるものもありますが、基本的には発症する原因も分かっていません。そのため、特定の予防法もないことが現状です。

横紋筋肉腫の予後を教えてください。

横紋筋肉腫の予後は次のような要素により異なります。

  • 発症した年齢
  • 腫瘍の部位
  • 腫瘍の転移の有無
  • 病型
  • 遺伝子異常の有無
  • 切除した腫瘍の量

例えば、発症した年齢が1歳以上10歳未満の場合、予後は良好です。しかしながら、発症年齢が1歳未満10歳以上の場合は予後があまり良くありません。
また病型は大きく、胎児型と胞巣型の2種類に分けられ、胎児型と呼ばれる病型では、胞巣型と比べて予後は良いとされております。
上記の要因を組み合わせ、低リスク・中リスク・高リスクに分類されます。横紋筋肉腫の再発は低リスク群で10~20%、中間リスク群で20~30%、高リスク群で40~70%であります。
再発は、診断後2年以内の再発が多いです。また、横紋筋肉腫の治療が終了したあとに合併症を引き起こすケースもあります。そのため、病気が治癒したあとも長期的なフォローが必要な疾患といえるでしょう。

最後に、読者へメッセージをお願いします。

横紋筋肉腫はおもに子どもに見受けられるがんですが、大人に発症する場合もあります。自覚症状がないため、早期発見が難しい疾患です。腫瘍が大きくなってから気付くケースも少なくありません。
しかしながら、たいていの場合はがんが転移する前に診断されます。学齢期の小児の場合、頭頸部で発生するケースが多く、全体の35%を占める状況です。
眼の近くに発生した場合は、涙があふれる・眼が痛い・眼球が突出するといった症状が現れます。また、鼻や喉の近くで腫瘍ができた場合は、鼻づまり・声の変化・粘液や膿が含まれた鼻水などの症状があるでしょう。このような症状が続いたり、悪化したりする場合は病院で診察を受けましょう。

編集部まとめ

子どもと話す医師
この記事では横紋筋肉腫がどのような疾患なのか紹介してきました。おもに小児の横紋筋に発症する悪性腫瘍で、体のどの部位でも発症する可能性があります。

発症する原因は不明ですが、最近の研究では遺伝子の変異によるものがあることが分かってきています。進行が速く、転移する可能性が高いので早めの治療が必要です。

横紋筋肉腫の症状は腫瘍が発生した箇所によりますが、基本的には腫瘍が発生した部位の腫れや痛みがあります。また、硬いしこりが発生する場合もあるでしょう。

治療方法は外科手術・化学療法・放射線治療を組み合わせて行われます。検査により、ステージやリスク分類を行い、それに基づいて治療方針が決められるでしょう。

横紋筋肉腫の予後については、発症した年齢・腫瘍の部位・転移の有無によって異なります。胎児型と呼ばれる病型では比較的予後は良いでしょう。

この記事の監修医師