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「成人T細胞白血病」の初期症状・原因・白血病との違いはご存知ですか?

 公開日:2023/08/23
「成人T細胞白血病」の初期症状・原因・白血病との違いはご存知ですか?

おもに高齢になってから発症する血液の病気の一つに、成人T細胞白血病があります。白血病という名前が付きますが、実は通常の白血病とは原因が異なる疾患です。

いくつかのタイプに別れている疾患で、タイプによっては予後があまり良くありません。また、現在のところ発症を予防する方法も見つかっていない疾患です。

この記事では、成人T細胞白血病とはどのような病気なのかについてご紹介します。また、症状や治療・検査方法についても見ていきましょう。

甲斐沼 孟

監修医師
甲斐沼 孟(上場企業産業医)

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大阪市立大学(現・大阪公立大学)医学部医学科卒業。大阪急性期・総合医療センター外科後期臨床研修医、大阪労災病院心臓血管外科後期臨床研修医、国立病院機構大阪医療センター心臓血管外科医員、大阪大学医学部附属病院心臓血管外科非常勤医師、大手前病院救急科医長。上場企業産業医。日本外科学会専門医、日本病院総合診療医学会認定医など。著書は「都市部二次救急1病院における高齢者救急医療の現状と今後の展望」「高齢化社会における大阪市中心部の二次救急1病院での救急医療の現状」「播種性血管内凝固症候群を合併した急性壊死性胆嚢炎に対してrTM投与および腹腔鏡下胆嚢摘出術を施行し良好な経過を得た一例」など。

成人T細胞白血病の原因や症状

相談

成人T細胞白血病の原因は何ですか?

成人T細胞白血病は、HTLV-1(ヒトT細胞白血病ウイルス1型)というウイルスに感染することが原因です。
白血球のT細胞がHTLV-1に感染すると、がん化した細胞(ATL細胞)が増殖し、成人T細胞白血病を発症します。HTLV-1に感染している人は日本全国で約120万人いると推定されていますが、全ての人が発症するわけではありません。

どのような症状が出るのでしょうか?

成人T細胞白血病の症状には、リンパ節や臓器の腫れ・発疹・発熱・腫瘤などがあります。また、ATL細胞の臓器への浸潤があると、下痢・便秘・頭痛などの症状が現れるケースもあるでしょう。血液中のカルシウム濃度が高くなる場合(高カルシウム血症)もあり、倦怠感・意識障害が起きることもあります。
T細胞は体の免疫に関係があるため、免疫不全の状態から感染症にかかりやすくなるのも特徴です。具体的な感染症として、日和見感染症があります。日和見感染症により肺炎を併発すると、倦怠感・発熱といった症状が現れます。

成人T細胞白血病の初期症状を教えてください。

成人T細胞白血病の初期症状には発熱・全身倦怠感・食欲不振・リンパ節の腫れ・皮膚症状(発疹・しこりなど)があります。もし他に明らかな疾患がないにもかかわらず、上記のような症状を発症した場合は成人T細胞白血病の可能性があるため、すぐに血液内科を受診しましょう。
成人T細胞白血病は発症するまでは症状が出ないことが特徴です。そのため、なかなか感染したことに気が付きにくいでしょう。定期的に抗HTLV-1抗体を検査することにより感染を早期発見できます。成人T細胞白血病の検査については後の項目で詳しく解説するため、そちらをご覧ください。

成人T細胞白血病と白血病の違いを教えてください。

成人T細胞白血病はHTLV-1(ヒトT細胞白血病ウイルス1型)というウイルスが原因で起こり、がん化した異常細胞が増殖していく疾患です。それに対して白血病はおもに遺伝子異常が原因で血液細胞が腫瘍化し増殖する疾患という違いがあります。
成人T細胞白血病は1976年に発見され、当時は白血病の一種と考えられていましたが、その後の研究によりウイルスが原因であることが明らかになりました。

成人T細胞白血病の感染経路を教えてください。

成人T細胞白血病の感染経路には、母乳・性交渉・輸血があります。成人T細胞白血病の原因になるHTLV-1というウイルスはリンパ球に潜んでいるため、リンパ球が含まれている母乳・精液・血液で感染する疾患だからです。おもに母乳を通して感染するケースが多いことから、現在では妊婦検診にもHTLV-1への感染がないかを調べる検査が含まれています。
性交渉では、男性から女性に感染するケースが多いですが、逆のケースもあるでしょう。輸血による感染については、現在は献血時にHTLV-1に感染していないか調べる検査が行われているため、新たに感染する可能性はほとんどありません。

成人T細胞白血病の検査方法や治療方法

検査

成人T細胞白血病の検査方法を教えてください。

成人T細胞白血病では、まず血液検査を行います。血液検査で異常が認められた場合は、骨髄検査(骨髄穿刺・骨髄生検)が行われるでしょう。骨髄検査は皮膚を消毒し、局所麻酔を行ったあと、腸骨(腰の骨)に針を刺して骨髄組織を採取する検査です。骨髄にがん細胞が広がっていないかを調べる目的があります。
また、病変の広がりや合併症の有無などを確認するために、CTやMRIのような画像検査や中枢神経の検査も行う場合もあるでしょう。

成人T細胞白血病の検査項目は何ですか?

血液検査では次の項目が検査されます。

  • 白血球の数
  • リンパ球の数
  • 抗HTLV-1抗体の有無
  • 異常な細胞の数や割合
  • 肝機能
  • 腎機能
  • カルシウム値
  • LDH値
  • アルブミン値
  • HTLV-1遺伝子
  • BUN値

上記のような項目から、血液中で増えている異常な細胞がT細胞かどうかを確認します。特に確定診断では、血液を使ってがん細胞にHTLV-1の遺伝子が入っているかを確認することが重要なポイントです。

治療方法を教えてください。

成人T細胞白血病の治療方法は、病型によって異なります。成人T細胞白血病には次の4種類の病型があります。 

  • 急性型
  • リンパ腫型
  • 慢性型
  • くすぶり型

このうち、急性型・リンパ腫型・一部の慢性型(予後不良因子を持つ)は病気の進行が早く、早急な治療を必要とします。具体的には、化学療法や造血幹細胞移植などが治療方法です。化学療法は抗がん剤を用いてがん化したT細胞を減らす治療方法になります。その後、適切なドナーが見つかった場合は、同種造血幹細胞移植が行われるでしょう。
これは、造血幹細胞をドナーから移植し、血液を作る機能を回復する治療方法です。この治療で効果が得られない場合は、分子標的治療薬や緩和的放射線療法などが行われます。成人T細胞白血病の病型がくすぶり型、予後不良因子を含まない慢性型の場合は治療は行われず、経過観察と皮膚病変の治療が行われるでしょう。

成人T細胞白血病の予後

老人

成人T細胞白血病の予後を教えてください。

成人T細胞白血病の場合、病型により予後が異なります。急性型・リンパ腫型・予後不良因子を持つ慢性型の場合、予後はあまり良くありません
ただし、同種造血幹細胞移植を行えた場合は治癒が期待できるでしょう。くすぶり型・予後不良因子を持たない慢性型の場合、治療は必要ありませんが、急性型に転化する可能性があります。その場合はすぐに治療を開始する必要があるでしょう。

成人T細胞白血病の生存率を教えてください。

成人T細胞白血病の生存率は病型により異なります。急性型の場合は2年生存率が16.7%、4年生存率は5%と低いです。
慢性型の場合は、2年生存率は52.4%、4年生存率は26.9%と高くなります。くすぶり型では、2年生存率が77.7%、4年生存率は62.8%と高いです。

最後に、読者へメッセージをお願いします。

成人T細胞白血病はHTLV-1というウイルスに感染することが原因の疾患ですが、ウイルスに感染後すぐに発症するわけではありません。40年〜60年もの長期間潜伏期間があって、それから発症します。そのため、ウイルスのキャリアであっても発症せずに人生を終えるケースも少なくありません。発症するのはウイルスに感染した人のうち、約5%と考えられています(年間1,000人あたりで0.6〜0.7人)。
発症するとしても高齢になってからの場合が多いでしょう。現在のところ発症を予防する方法はありませんが、ウイルスに感染しているかどうかは抗体検査で発見可能です。もし、リンパ節の腫れ・皮膚の症状・原因不明の発熱・全身倦怠感・腹部や背中の圧迫感や痛みなどがある場合は、血液内科のある病院で診療を受けましょう。

編集部まとめ

検査項目
成人T細胞白血病は、遺伝子異常を原因とする通常の白血病とは違い、HTLV-1というウイルスに感染することが原因の疾患です。

おもな感染経路には母子感染・性交渉・輸血があります。病型は、急性型・リンパ腫型・くすぶり型・慢性型の4種類です。

病型にもよりますが、おもな症状としてはリンパ節や臓器の腫れ・発疹・発熱・腫瘤などが挙げられます。また、合併症としては、感染症や高カルシウム血症などがあるでしょう。

検査は血液検査・骨髄検査・画像検査などが行われます。治療法は最初に抗がん剤による化学療法が行われ、ドナーがいれば同種造血幹細胞移植が有効です。

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