「成人T細胞白血病」の初期症状・原因・白血病との違いはご存知ですか?
おもに高齢になってから発症する血液の病気の一つに、成人T細胞白血病があります。白血病という名前が付きますが、実は通常の白血病とは原因が異なる疾患です。
いくつかのタイプに別れている疾患で、タイプによっては予後があまり良くありません。また、現在のところ発症を予防する方法も見つかっていない疾患です。
この記事では、成人T細胞白血病とはどのような病気なのかについてご紹介します。また、症状や治療・検査方法についても見ていきましょう。
監修医師:
甲斐沼 孟(上場企業産業医)
目次 -INDEX-
成人T細胞白血病の原因や症状
成人T細胞白血病の原因は何ですか?
白血球のT細胞がHTLV-1に感染すると、がん化した細胞(ATL細胞)が増殖し、成人T細胞白血病を発症します。HTLV-1に感染している人は日本全国で約120万人いると推定されていますが、全ての人が発症するわけではありません。
どのような症状が出るのでしょうか?
T細胞は体の免疫に関係があるため、免疫不全の状態から感染症にかかりやすくなるのも特徴です。具体的な感染症として、日和見感染症があります。日和見感染症により肺炎を併発すると、倦怠感・発熱といった症状が現れます。
成人T細胞白血病の初期症状を教えてください。
成人T細胞白血病は発症するまでは症状が出ないことが特徴です。そのため、なかなか感染したことに気が付きにくいでしょう。定期的に抗HTLV-1抗体を検査することにより感染を早期発見できます。成人T細胞白血病の検査については後の項目で詳しく解説するため、そちらをご覧ください。
成人T細胞白血病と白血病の違いを教えてください。
成人T細胞白血病は1976年に発見され、当時は白血病の一種と考えられていましたが、その後の研究によりウイルスが原因であることが明らかになりました。
成人T細胞白血病の感染経路を教えてください。
性交渉では、男性から女性に感染するケースが多いですが、逆のケースもあるでしょう。輸血による感染については、現在は献血時にHTLV-1に感染していないか調べる検査が行われているため、新たに感染する可能性はほとんどありません。
成人T細胞白血病の検査方法や治療方法
成人T細胞白血病の検査方法を教えてください。
また、病変の広がりや合併症の有無などを確認するために、CTやMRIのような画像検査や中枢神経の検査も行う場合もあるでしょう。
成人T細胞白血病の検査項目は何ですか?
- 白血球の数
- リンパ球の数
- 抗HTLV-1抗体の有無
- 異常な細胞の数や割合
- 肝機能
- 腎機能
- カルシウム値
- LDH値
- アルブミン値
- HTLV-1遺伝子
- BUN値
上記のような項目から、血液中で増えている異常な細胞がT細胞かどうかを確認します。特に確定診断では、血液を使ってがん細胞にHTLV-1の遺伝子が入っているかを確認することが重要なポイントです。
治療方法を教えてください。
- 急性型
- リンパ腫型
- 慢性型
- くすぶり型
このうち、急性型・リンパ腫型・一部の慢性型(予後不良因子を持つ)は病気の進行が早く、早急な治療を必要とします。具体的には、化学療法や造血幹細胞移植などが治療方法です。化学療法は抗がん剤を用いてがん化したT細胞を減らす治療方法になります。その後、適切なドナーが見つかった場合は、同種造血幹細胞移植が行われるでしょう。
これは、造血幹細胞をドナーから移植し、血液を作る機能を回復する治療方法です。この治療で効果が得られない場合は、分子標的治療薬や緩和的放射線療法などが行われます。成人T細胞白血病の病型がくすぶり型、予後不良因子を含まない慢性型の場合は治療は行われず、経過観察と皮膚病変の治療が行われるでしょう。
成人T細胞白血病の予後
成人T細胞白血病の予後を教えてください。
ただし、同種造血幹細胞移植を行えた場合は治癒が期待できるでしょう。くすぶり型・予後不良因子を持たない慢性型の場合、治療は必要ありませんが、急性型に転化する可能性があります。その場合はすぐに治療を開始する必要があるでしょう。
成人T細胞白血病の生存率を教えてください。
慢性型の場合は、2年生存率は52.4%、4年生存率は26.9%と高くなります。くすぶり型では、2年生存率が77.7%、4年生存率は62.8%と高いです。
最後に、読者へメッセージをお願いします。
発症するとしても高齢になってからの場合が多いでしょう。現在のところ発症を予防する方法はありませんが、ウイルスに感染しているかどうかは抗体検査で発見可能です。もし、リンパ節の腫れ・皮膚の症状・原因不明の発熱・全身倦怠感・腹部や背中の圧迫感や痛みなどがある場合は、血液内科のある病院で診療を受けましょう。
編集部まとめ
成人T細胞白血病は、遺伝子異常を原因とする通常の白血病とは違い、HTLV-1というウイルスに感染することが原因の疾患です。
おもな感染経路には母子感染・性交渉・輸血があります。病型は、急性型・リンパ腫型・くすぶり型・慢性型の4種類です。
病型にもよりますが、おもな症状としてはリンパ節や臓器の腫れ・発疹・発熱・腫瘤などが挙げられます。また、合併症としては、感染症や高カルシウム血症などがあるでしょう。
検査は血液検査・骨髄検査・画像検査などが行われます。治療法は最初に抗がん剤による化学療法が行われ、ドナーがいれば同種造血幹細胞移植が有効です。