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『流行性耳下腺炎』の症状・感染経路・どのくらいで治るかご存知ですか?

 公開日:2023/09/04
『流行性耳下腺炎』の症状・感染経路・どのくらいで治るかご存知ですか?

流行性耳下腺炎という疾患名はあまりなじみがないかもしれませんが、おたふくかぜという名称なら聞いたことがある人も多いのではないでしょうか。

流行性耳下腺炎(おたふくかぜ)は重篤な合併症を引き起こす恐れのある感染症で、4歳頃のお子様が多くかかる病気ですが、大人でもかかります。

この記事では、流行性耳下腺炎の原因・症状・治療法・予防法について解説しています。特に予防法は大切ですので、しっかりと確認しておいてください。

望月 義也

監修医師
望月 義也(耳鼻咽喉科望月医院院長)

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耳鼻咽喉科望月医院院長

流行性耳下腺炎の症状や原因

頬を押さえて寝込む女性

流行性耳下腺炎とはどのような病気ですか?

流行性耳下腺炎は通称「おたふくかぜ」と呼ばれている疾患です。ヒトからヒトへと感染し、3〜4年ごとに流行がみられる特徴を持っています。
幼児期から学童期のお子様に多く発症しますが、大人になってからでもかかる病気です。特に妊娠初期の女性が感染した場合は、流産の危険性が高まるとされているため注意が必要です。
流行性耳下腺炎は、一度かかれば終生免疫(生涯に渡って免疫ができる)が付きます。
流行性耳下腺炎は、通常2歳以下のお子様は症状が出ないといわれています。

流行性耳下腺炎の原因を教えてください。

流行性耳下腺炎は、ムンプスウイルスへの感染が原因で発症します。感染してから2週間以上の潜伏期間があるため、どこで感染したのか経路の特定が難しい場合も多いことが特徴です。
ムンプスウイルスの感染力は風疹や麻疹ほど強くありませんが、人口が密集した地域では年間を通して発生しています。1年の中で最も発生しやすい時期は、冬の終わりから春先にかけてです。

どのような症状が出るのでしょうか?

流行性耳下腺炎でみられる主な症状は、両側もしくは片側の耳下腺(耳のすぐ前方下方向にある唾液を作る器官と大唾液腺の1つ)の腫れと痛みです。数日間の発熱を伴う場合も多くみられます。
痛みを伴う耳下腺の腫れは、耳たぶを中心とした場所で起こります。耳下腺が腫れて顔の輪郭が丸く見える様子がおたふく面に似ていることから「おたふくかぜ」と呼ばれているのです。腫れはものを噛むときや飲み込むときに痛みを伴うケースが多く、特に酸っぱいものや硬いものを食べたときに痛みが強く出る傾向にあります。
感染した人の約3分の1は発熱や耳下腺の腫れといった症状が現れません(不顕性感染)。成人が感染すると、小児の場合と比べて症状が重くなる傾向がみられます。

流行性耳下腺炎の感染経路は何ですか?

流行性耳下腺炎を引き起こすムンプスウイルスの感染経路は、主に咳やくしゃみなどの飛沫です。飛沫だけではなく、ウイルスが含まれた唾液が付着したものに触れることでも感染が起こります。
耳下腺が腫れる6日前〜9日後までは、唾液中に感染力のあるウイルスが含まれます。そのため自分自身が感染したことを知らないうちに、他の人へと感染させてしまう可能性が少なくありません。唾液だけでなく尿中にもウイルスは含まれているので、お子様のオムツ交換時などには注意が必要です。

合併症を発症すると聞いたのですが…

流行性耳下腺炎において最も多く発症する恐れのある合併症は髄膜炎で、感染した患者のおよそ1割が発症します。合併症としての髄膜炎は軽症が多いといわれていますが、年間約30人に脳炎が起こり脳に障害などの後遺症が残る恐れがあるため油断はできません。
その他に後遺症が残る可能性のある合併症としては、難聴が挙げられます。聴力を完全に失ってしまうケースはまれですが、数百人に1人の割合で片方もしくは両方の聴力に障害が残ります。聴力の回復は難しいため、補聴器などで補う必要が出てくるでしょう。
その他に引き起こす恐れのある合併症としては、膵炎腎炎が挙げられます。
また思春期以降に罹患した場合、男性では睾丸炎を、女性は卵巣炎を引き起こすことがあります。特に男性の睾丸炎は、男性不妊の原因となる可能性があるため注意が必要です。

流行性耳下腺炎の治療方法

処方薬

治療方法を教えてください。

有効な治療法は見つかっていないため対症療法が中心で、発熱や耳下腺の痛みには解熱鎮痛剤が用いられます。髄膜炎を併発した際にも対症療法となり、脱水予防のための点滴や解熱鎮痛剤の投与が行われます。
口を開けたり咀嚼したりすると顎や耳の下あたりに痛みが出るため、食事は柔らかくのどごしの良いものを摂りましょう。唾液腺から唾液が出るときにも痛みが発生するため、味の濃いものや酸っぱいものは避けてください。脱水を防ぐために、こまめな水分補給も忘れずに行いましょう。

流行性耳下腺炎はどのくらいで治りますか?

流行性耳下腺炎の主な症状は、通常1~2週間で治まることがほとんどです。発熱は3~4日間続くケースが多いです。
また、この疾患は学校保健安全法によって第二種感染症に定められています。そのためお子様が罹患すると「耳下腺、顎下腺又は舌下線の腫脹が発現した後5日を経過し、かつ全身状態が良好になるまで出席停止」となり登校(登園)はできません。

流行性耳下腺炎のピークはいつですか?

耳下腺の腫れは、症状が現れ始めてから48時間以内にピークを迎え、1週間から10日程度で治まります。
腫れは片側ずつ起こり、両側が腫れる場合は片方が腫れた2~3日後にもう片方が腫れてくるケースが全体のおよそ75%を占めています。残りの25%は片側の耳下腺だけが腫れるケースです。

流行性耳下腺炎の予防

注射を受ける子ども

流行性耳下腺炎を予防する方法を教えてください。

流行性耳下腺炎を予防する最も効果的な方法は、合計2回のワクチン接種です。
ワクチンを接種すると、およそ90%の確率で有効な抗体を獲得できることが分かっています。1歳で1回目の接種を受け、就学前(5歳以上7歳未満)で2回目の接種を受けましょう。1回目と2回目は、28日以上の間隔を開ければ接種が可能です。
ただし日本では任意接種となっています。接種を受ける医療機関ごとに料金が異なりますので、かかりつけ医に個別に問い合わせてください。自治体によっては接種料金の補助を行っているところもあります。お住まいの自治体ではどのような扱いになっているのか、自治体のHPを確認するか保健センターなどに問い合わせてみると良いでしょう。
成人女性が流行性耳下腺炎のワクチン接種を受ける場合、妊娠していないことを確認してからの接種となります。さらに接種後2ヶ月間は妊娠を避けてください。

流行性耳下腺炎の予防接種の名前は何ですか?

流行性耳下腺炎の予防接種は「おたふくかぜワクチン」または「ムンプスワクチン」と呼ばれています。
その他には「MMRワクチン」と呼ばれる麻疹・風疹・流行性耳下腺炎の混合ワクチンも存在します。ただしMMRワクチンは輸入ワクチンのみとなり、接種できる病院も限られていることが特徴です。また、日本国内未承認ワクチンのため、ワクチンの副作用に関する救済補償制度は対象外となっています。

最後に、読者へメッセージをお願いします。

流行性耳下腺炎の多くは軽症で済みますが、中には脳炎や膵炎などの重篤な合併症を引き起こす恐れのある感染症です。有効な治療方法は確立されておらず、発症後は対症療法で症状の軽快を待つことになります。
流行性耳下腺炎の病原菌であるムンプスウイルスは強い感染力を持ち、ヒトからヒトへ感染します。潜伏期間が長く発症前から感染力のあるウイルスが排出されるため、日常生活での感染予防が難しい疾患でもあるのです。
唯一有効な予防方法はワクチン接種です。過去に流行性耳下腺炎にかかったことのある人以外は2回のワクチン接種をおすすめします。

編集部まとめ

聴診器
流行性耳下腺炎はお子様がかかりやすい病気ですが、大人でも感染します。

生涯に渡って難聴などの障害が残る可能性があるほか、大人の場合は睾丸炎や卵巣炎を併発する可能性もあるため注意したい感染症です。

また、妊娠初期の妊婦が感染すると、流産のリスクが高まることも知られています。

様々な合併症の恐れがある流行性耳下腺炎を予防するためには、ワクチンの接種が唯一有効な手段です。

そのためお子様はもちろん、過去にかかったかどうか分からない大人もワクチン接種を済ませておきたいものです。

4年に1度程度の流行期にかかってしまわないためにも、そして周りにうつしてしまわないためにも、ワクチン接種を受けましょう。

この記事の監修医師

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