「褥瘡 (じょくそう)」の治療法・予防法はご存知ですか?【医師監修】
一般的には「床ずれ」として知られる褥瘡は、寝たきりの人に発生する症状です。
正しく予防していないと数時間で発症する場合もあり、重症化すると命の危険に発展することもあるでしょう。寝たきりの人を介護する人は、とくに褥瘡について知っておく必要があります。
本記事では、褥瘡がどのような原因で発生するのかご紹介するほか、治療・予防方法についても詳しく解説します。
褥瘡についての知識を身に付けて、介護にお役立てください。
監修医師:
甲斐沼 孟(上場企業産業医)
目次 -INDEX-
褥瘡 (じょくそう)の原因や症状
褥瘡とはどのような病気ですか?
多くの場合は、皮膚が赤くなったり、ただれたりする程度です。重症になると、筋肉や骨に及んだり、命を脅かしたりするケースもあるでしょう。
褥瘡の発生原因を教えてください。
通常の健康な人の場合、無意識のうちに寝返りを打ったり、姿勢を変えたりして同じ部位に力がかからないようにしています。ところが、病気などにより寝たきりになって自分で体位を変えられない人は、同じ部位に圧力がかかってしまい褥瘡になります。
褥瘡が発生しやすい部位はどこですか?
- 後頭部(頭の後ろ)
- 仙骨部(お尻と腰の間)
- 肩甲骨(背中)
- 座骨部(お尻)
- 大転子部(足と腰の付け根)
- 踵骨部(かかと)
- その他(耳・くるぶし・ひざなど)
寝ているとき・起きているときの体の向きや姿勢により褥瘡ができやすい部分は変わってきます。褥瘡ができやすい部位が分かっていれば予防もしやすくなります。しっかり把握して予防に役立ててください。
症状について教えてください。
さらに症状が進行すると、水ぶくれが発生するでしょう。そして皮膚が破れてただれるようになり、ただれた個所から液がにじみ出たり、うみが出て潰瘍になったりします。最終的には傷口が深くなったり、広がったりして骨が見えるようになる場合もあるでしょう。
そうした部位から細菌が入って感染症を合併すると、最悪のケースでは死に至る場合もあります。そのため、予防や早期の治療が大切です。とくに最初の段階の発赤を見つけたら、注意して観察するようにしましょう。
褥瘡ができやすいのはどのような人ですか?
- 健康や栄養状態が悪い人
- 皮膚が薄く弱い人
- やせて骨が出ている人
- 長期間寝たきりの人
- オムツを使用している人
とくに高齢者の場合、皮膚の弾力性が低下しているため、圧迫やずれなどの刺激に弱い状態になっています。また、褥瘡は血液内の栄養や酸素が皮膚に行き渡らずに発生するため、栄養が不足している人もなりやすいでしょう。
ほかにも、失禁などにより皮膚がふやけた状態になっていると、摩擦が起きやすくなり褥瘡につながるケースもあります。また、抗がん剤やステロイドなど薬の副作用により免疫力が低下している人なども注意が必要です。
褥瘡 (じょくそう)の受診や治療
褥瘡ができたら何科を受診すればよいですか?
そのため、形成外科を受診するのがおすすめです。かかりつけの医師や訪問看護師がいる場合は、最初に相談してみることもできるでしょう。
治療法を教えてください。
また、褥瘡の部位がうんでいるなど感染が考えられるケースでは、抗生剤投与も行われるでしょう。その後、患部を清潔にし皮膚の再生をケアします。もし、ケアしても回復が期待できない場合は、体のほかの部位の皮膚を移植する手術を行うケースもあります。
褥瘡 (じょくそう)の予防やセルフケア
褥瘡を予防する方法を教えてください。
また、皮膚が乾燥していると傷付きやすくなるため、保湿クリームやローションなどを使用して皮膚を潤った状態に保ちましょう。寝たきりなどで尿・便・汗などが皮膚に付着した状態が続くと、皮膚にとって刺激になります。丁寧に拭き取って体の清潔を維持するようにしましょう。
ほかには、毎日の観察を欠かさないようにし、皮膚が赤くなっている部分はないかを確認するのも重要です。異常を感じた場合はすぐにかかりつけ医や訪問看護師に相談しましょう。
自宅でできるセルフケアを教えてください。
できるだけ食べやすい食事を用意したり、お口の清潔を保つようにしたりして、食事量を増やすようにしましょう。食事量を増やすのが難しい場合は栄養補助食品などを活用する方法もあります。飲み込んだり、食べられなかったりする人の場合は食事の形態を変えてみてもよいでしょう。
ほかには、血行を良くするために体を拭く際にマッサージを行うのもよい方法です。ただし、骨が突出している部分のマッサージは逆効果になる場合があるため、避けるようにしましょう。
最後に、読者へメッセージをお願いします。
また、異変がある場合はすぐに医師や訪問看護師などに相談するのも重症化を防ぐうえで欠かせません。褥瘡予防は大切だと分かっていても、介護する側にとっては大きな負担になる場合もあります。訪問介護や入所施設などのサービスを活用して、少しでも負担を軽減するようにしましょう。
編集部まとめ
本記事では、褥瘡 (じょくそう)の発生原因・治療・予防について解説してきました。
褥瘡は、とくに寝たきりの人が体の同じ部位に圧力がかかることによって血流が滞って発生する症状です。皮膚が赤くなったり、ただれたりする場合があります。
また、重症になると筋肉や骨まで達し、感染症によって命に危険が及ぶ場合もあります。そのため、予防が重要になる病気です。
体位を定期的に変えて同じ部位に圧力がかからないようにしたり、体を清潔な状態に保ったりすることが重要です。異変がある場合はすぐに診察を受けましょう。