「肺アスペルギルス症」の症状や原因を解説!免疫機能が低下している人は要注意!
更新日:2024/01/09

肺アスペルギルス症を知っていますか? 本記事では肺アスペルギルス症について以下の点を中心にご紹介します。 ・肺アスペルギルス症の症状・原因 ・肺アスペルギルス症の種類 ・肺アスペルギルス症の治療法 肺アスペルギルス症について理解するためにもご参考いただけますと幸いです。 ぜひ最後までお読みください。

監修医師:
竹内 想(名古屋大学医学部附属病院)
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名古屋大学医学部附属病院にて勤務。国立大学医学部を卒業後、市中病院にて内科・救急・在宅診療など含めた診療経験を積む。専門領域は専門は皮膚・美容皮膚、一般内科・形成外科・美容外科にも知見。
目次 -INDEX-
肺アスペルギルス症とは
肺アスペルギルス症とはどんな病気ですか?
肺アスペルギルス症の主な症状は以下の通りです。
・長期間にわたる咳(痰が伴うこともある)
・喀血
・息切れや息苦しさ(肺の病変が進行している場合に現れやすい症状)
・胸部の不快感や痛み
・発熱
これらの症状が現れた場合は、早期の診断と治療が重要です。肺アスペルギルス症の症状は他の呼吸器疾患と類似しているため、医師の診断が必須となります。
肺アスペルギルス症の原因は何ですか?
肺アスペルギルス症の原因は以下のようになります。
慢性呼吸器疾患がある:
肺結核後、肺気腫、気管支拡張症などの慢性呼吸器疾患がある場合肺の免疫機能が低下し、アスペルギルス菌の感染リスクが高まります。
免疫機能が低下している:
免疫機能が低下している場合、体がアスペルギルス菌に対抗する能力が弱まります。例えば、HIV/AIDSやがん治療を受けている人、臓器移植を受けた人などが該当します。
高齢者:
高齢者は免疫機能が低下しているため、アスペルギルス症の発症リスクが高まります。
糖尿病:
糖尿病患者は、免疫機能が低下しているだけでなく、高血糖状態がアスペルギルス菌の繁殖を促進するため、感染リスクが高まります。
長期間にわたる抗生物質の使用:
長期間にわたる抗生物質の使用は、腸内の正常な細菌叢を破壊し、アスペルギルス菌の増殖を促す可能性があります。
これらの要因が組み合わさることで、肺アスペルギルス症の発症リスクが高まります。注意が必要な方は、早期の診断と適切な治療を受け、病気の進行を抑えるよう心掛けましょう。
肺アスペルギルス症の種類
慢性肺アスペルギルス症とはどのような病気ですか?
慢性肺アスペルギルス症は、アスペルギルス菌が肺に慢性的に感染し、炎症や組織の病変を引き起こす疾患です。一般的に、免疫機能が低下している方や基礎疾患を持つ方に見られます。
症状には慢性的な咳、喀血、呼吸困難、胸痛などがあります。画像検査や痰の検査により診断されます。治療には抗真菌薬の投与が行われ、炎症の抑制や感染の制御を目指します。しかし、慢性肺アスペルギルス症は治癒が困難であり、持続的な治療および医師による管理が重要です。
侵襲性肺アスペルギルス症(IPA)とはどのような病気ですか?
侵襲性肺アスペルギルス症(IPA)は、アスペルギルス菌が肺に侵入し、深刻な感染症を引き起こす疾患です。一般的に、免疫機能が低下している方に見られます。
症状は非特異的であり、発熱、咳、呼吸困難などが現れます。画像検査や血液検査により診断されます。IPAは重篤な病気であり、迅速な診断と治療が重要です。治療には抗真菌薬の投与が行われますが、感受性や治療反応には個人差があります。早期の診断と適切な治療が必須です。また、予防策として、リスクのある方は免疫機能を維持し、アスペルギルス菌の曝露を避けることが重要です。
アレルギー性気管支肺アスペルギルス症とはどのような病気ですか?
アレルギー性気管支肺アスペルギルス症は、アスペルギルス菌に対するアレルギー反応が原因で起こる肺の疾患です。アスペルギルス菌の胞子が吸入されると、免疫系が過剰に反応し、気管支や肺組織に炎症やアレルギー反応が引き起こされます。
主な症状には、喘息の悪化、慢性的な咳、喀血、呼吸困難などがあります。画像検査や肺機能検査によって診断されます。治療には、抗真菌薬の投与やステロイドの使用が行われ、炎症やアレルギー反応の抑制が目指されます。また、アスペルギルス菌の曝露を避けるための対策も重要です。
肺アスペルギルス症の治療法
肺アスペルギルス症の検査方法はどのようなものですか?
肺アスペルギルス症の検査は、まず胸部X線やCTスキャンにより肺の異常を視覚化します。これによりアスペルギルス感染による結節、空洞、結節性病変などが見つかることがあります。次に、痰の検査を行い、痰を採取してアスペルギルスの存在を確認します。菌培養や顕微鏡検査により、アスペルギルス菌が検出されるかどうかが確認されます。さらに、血液検査を行い、血液中のアスペルギルスに対する抗体や抗原を検出します。特定の抗体や抗原の存在は、アスペルギルス感染の証拠となることがあります。また、気管支鏡検査を行い、気管支内に直接カメラを挿入し、肺の組織を詳しく観察します。この検査により、アスペルギルス病変の存在や組織の炎症を確認できます。必要に応じて、肺生検を行い、肺組織のサンプルを採取して病理学的な検査を行います。これにより、アスペルギルス感染の診断や他の肺疾患との鑑別が行われます。
肺アスペルギルス症の治療法はどのようなものですか?
肺アスペルギルス症の治療法は以下のようなものがあります。
抗真菌薬の投与:
アスペルギルス菌に対する抗真菌薬が使用されます。具体的な薬剤は病状の重症度や患者の状態に応じて決定されます。一般的には抗真菌薬の内服が行われますが、重症な場合には点滴投与や吸入薬の使用も検討されます。
基礎疾患の治療:
肺アスペルギルス症は基礎疾患(例:喘息、COPDなど)によって引き起こされる場合があります。そのため、基礎疾患の適切な管理や治療が行われます。
外科的処置:
重度の肺アスペルギルス症や感染性の空洞がある場合には、外科的な処置が必要な場合があります。例えば、感染部分の摘出や空洞の手術的な治療が行われる場合があります。
免疫調節療法:
免疫力が低下している患者では、免疫調節療法が検討される場合があります。これにより免疫機能の改善が図られ、アスペルギルス感染の予防や治療成果の向上が期待されます。
治療法は患者の症状や病態によって異なる場合があります。医師の指示に従い、個別の治療計画が立てられるようにしましょう。定期的なフォローアップや治療の遵守も重要です。
肺アスペルギルス症の余命について教えてください。
肺アスペルギルス症は、侵襲性の場合には死亡率が50%ほどと言われています。また、慢性アスペルギルス症の場合には進行が比較的緩やかですが、長期的な予後を見ると5年生存率も50%とされています。現在では多くの抗真菌薬が出ていますが、それでもなおこの疾患は非常に難治性の高いものと言えます。治療方法や患者の状態によって個別の予後は異なりますが、患者の生存率を少しでも向上させるためには、早期の診断と治療の適切な管理が必要となります。
肺アスペルギルス症になりやすい人はいますか?
肺アスペルギルス症になりやすい人には以下のような特徴があります。
免疫機能が低下している人:
免疫抑制剤を使用している移植患者やHIV感染者など、免疫機能が低下している人は、アスペルギルス感染に対する抵抗力が弱くなります。これは、免疫系が体を守るための主要な防御線であるため、その機能が低下すると、体は感染症に対抗する能力を失います。したがって、これらの人々はアスペルギルス感染のリスクが高くなります。
慢性呼吸器疾患を持つ人:
慢性呼吸器疾患を持つ人(喘息、慢性閉塞性肺疾患など)は、肺の免疫機能が低下し、アスペルギルス感染のリスクが高まります。これは、肺が感染から体を守るための第一線の防御であるため、その機能が低下すると、アスペルギルスなどの病原体に対する防御が弱まります。
高齢者:
年齢が上がるにつれて免疫機能が低下するため、高齢者は肺アスペルギルス症になりやすいと言われています。これは、高齢者の免疫系は若い人々と比較して効率的に機能しないため、感染症に対する防御が弱まります。
先天性免疫不全症を持つ人:
先天性免疫不全症を持つ人は、生まれつき免疫機能が低下しているため、アスペルギルス感染のリスクが高まります。
これらの要素は、個々のリスク要因や状況によって異なります。もし肺アスペルギルス症のリスクがあると思われる場合は、医師と相談し、予防策や早期の診断・治療が重要です。
最後に、読者へメッセージをお願いします。
肺アスペルギルス症は、免疫機能の低下や呼吸器疾患を持つ人にとって深刻なリスクです。入院や高齢もリスク要素となります。予防のためには、免疫機能を高めることや感染症対策の徹底が必要です。早期の診断と適切な治療が重要であり、症状に異常を感じたら医師の診察を受けましょう。日常生活でも湿度管理や衛生習慣に気を配ることが大切です。
編集部まとめ
肺アスペルギルス症についてお伝えしてきました。肺アスペルギルス症についての要点をまとめると以下の通りです。
・肺アスペルギルス症は、カビの一種であるアスペルギルス属の菌が肺に感染し、炎症や病変を引き起こす疾患であり、慢性咳や喀血、呼吸困難などの症状を呈する。
・慢性肺アスペルギルス症や侵襲性肺アスペルギルス症には特に注意が必要であるため、リスクのある方は早期の対策が重要。
・肺アスペルギルス症の治療には抗真菌薬や外科的処置、免疫調節療法が施される場合が多い。
これらの情報が少しでも皆さまのお役に立てば幸いです。最後までお読みいただき、ありがとうございました。