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「黄色靭帯骨化症」という中高年の男性に多い病気はご存知ですか?医師が監修!

 公開日:2023/08/02
「黄色靭帯骨化症」という中高年の男性に多い病気はご存知ですか?医師が監修!

黄色靭帯骨化症は、脊髄周囲になる靭帯に異常が発生することで起こる症状です。国が指定する難病の1つであり、中高年の男性が発症する傾向にあります。

難病という言葉を聞くと不治の病を連想してしまいますが、早期発見ができれば外科手術を行わず投薬治療で日常生活を過ごすことができるため過度に心配する必要はありません。

今回は黄色靭帯骨化症について解説していきます。早期治療を行うための知識として、役立てれば幸いです。

甲斐沼 孟

監修医師
甲斐沼 孟(上場企業産業医)

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大阪市立大学(現・大阪公立大学)医学部医学科卒業。大阪急性期・総合医療センター外科後期臨床研修医、大阪労災病院心臓血管外科後期臨床研修医、国立病院機構大阪医療センター心臓血管外科医員、大阪大学医学部附属病院心臓血管外科非常勤医師、大手前病院救急科医長。上場企業産業医。日本外科学会専門医、日本病院総合診療医学会認定医など。著書は「都市部二次救急1病院における高齢者救急医療の現状と今後の展望」「高齢化社会における大阪市中心部の二次救急1病院での救急医療の現状」「播種性血管内凝固症候群を合併した急性壊死性胆嚢炎に対してrTM投与および腹腔鏡下胆嚢摘出術を施行し良好な経過を得た一例」など。

黄色靭帯骨化症の原因と症状

座る人

黄色靭帯骨化症とはどのような病気ですか?

黄色靭帯骨化症とは、黄色靭帯と呼ばれる脊髄の後ろに存在する靭帯が硬く分厚くなることで発症する病気です。このような靭帯の変化は骨化と呼ばれ、これにより脊椎を圧迫されるためさまざまな症状を引き起こします。
有名な症状として下肢の脱力やしびれに加え、背中と広範囲で痛みが生じるのが特徴です。上肢と呼ばれる肩口・手の部分に症状は基本的に発生しません。
症状が進行すると歩行困難や、転倒を繰り返すこともあるため、症状を自覚したら速やかに神経内科・整形外科へ受診を行いましょう。

黄色靭帯骨化症の原因を教えてください。

他の靭帯にも骨化傾向が多く見られる場合、遺伝的に骨化が起こりやすい体質の可能性があります。親戚に靭帯骨化症の人がいないか確認してみましょう。
他に考えられる原因として、カルシウム・ビタミンDといった骨の成長に必要な成分の過剰分泌が原因だと考えられています。このように黄色靭帯骨化症の原因は複数存在し、 1つに絞ることは難しく、明確な原因は現在分かっていません。
また発症が確認されているのは男性が多く、糖尿病などの成人病を合併することも多く確認されています。また一部のスポーツ選手も発症することから身体への強い負担も発症の原因ではないかという指摘もされていますが、因果関係は現在分かっていません。

どのような初期症状がありますか?

初期症状として代表的なのは、下肢に力が入らなくなったりしびれるような感覚に襲われるものです。一般的に上肢には症状が発生しませんが、骨化した脊髄の場所によっては手に痺れを感じたり動かしにくくなることもあります。
痛みに関しては個人差がありますが、痛みを感じるケースは珍しいです。痛みを伴う場合は腰や足に発生することが多く、原因として骨化で神経が圧迫され痛みが生じていると考えられます。
また骨化により脊椎が狭くなる狭窄が起きることで、歩行障害が発生するのも初期症状の1つです。

黄色靭帯骨化症の進行速度を教えてください。

進行速度には個人差があり、初期の自覚症状を認めて病気が発覚してから数年ものあいだ初期症状だけで問題なく生活できる人もいます。逆に骨化が急激に進み外科手術が必要になる場合もあるなど、個人差が非常にあるのが特徴です。
進行速度に応じて投薬治療や外科手術を使い分ける必要があるため、発症した場合は日常生活の変化に気を付けましょう。また転倒や脊髄周辺への衝撃により、急激に症状が悪化することも珍しくありません。
下肢のしびれによる歩行障害が発生した場合、手術が必要かどうか主治医に相談してみましょう。

黄色靭帯骨化症の診断と治療

医師

黄色靭帯骨化症の検査方法を教えてください。

検査は診察を始めとして、レントゲン・MRI・CT検査を使用するのが一般的です。診察では現在自覚している症状の聞き取りや、親族に同様の症状を持つ人がいるか確認が行われます。
遺伝性のある症状のため、診察を受ける前にあらかじめ確認しておきましょう。黄色靭帯骨化症で発生する初期症状の一部は椎間板ヘルニアや、脊髄周辺の骨が変形する狭窄が原因の可能性が考えられます。
そのため、症状を認識したら速やかに神経内科や整形外科に受診し診察を受けましょう。

どのように診断されますか?

下肢のしびれや脱力を感じて受診した場合、まず最初に行われる検査はレントゲン検査です。脊髄の前方が骨化する後縦靭帯骨化症は、レントゲン検査のみで診断を確定することも珍しくありません。
しかし黄色靭帯骨化症の場合、レントゲンのみでは診断確定が難しい場合があります。そのためCTで範囲や大きさを詳しく確認したり、MRIでどのように圧迫されているかを確認することが多いです。

治療方法を教えてください。

治療方法は段階に応じて異なり、大きく3つに分かれています。自覚症状がほとんどなく、投薬や手術といった治療を行わず定期的な検査のみを行うのが1つ目です。この場合、日常生活で胸椎(きょうつい)周辺に負担を掛けないことを心掛けましょう。転倒をはじめとする外部からの衝撃によって、症状が急激に悪化することは珍しくありません。
2つ目は自覚症状があるが、保存療法で対応できると判断された場合です。その場合炎症による痛みを抑えるための鎮痛剤や、筋肉の緊張を緩めるために筋弛緩剤といった薬物治療を行います。
症状の進行により保存療法が難しいと判断された場合、骨化した靭帯の切除などを行い圧迫の原因を取り除く手術を行うのが3つ目の治療方法です。黄色靭帯骨化症は指定難病の1つであるため、公費負担の対象となります。

黄色靭帯骨化症は治りますか?

黄色靭帯骨化症は加齢や遺伝で発症することが多いですが、大部分は症状を自覚するまで悪化しません。手術や投薬治療が必要となるまで重症化することも少ないため、日常生活に気を付けることで症状を抑え込み続けている人も多いです。
そのため黄色靭帯骨化症と診断された場合、完治ではなく悪化しないような生活を送れるように心掛けましょう。悪化した場合でも外科手術を受けることで、大幅に症状が改善します。
負担する費用も非常に少なく済むため、過剰に不安がらずに主治医と相談し正しい知識を持って治療と向き合いましょう。

黄色靭帯骨化症の予防

走る人

黄色靭帯骨化症は予防できますか?

黄色靭帯骨化症は発症する原因がはっきりわかっていないため、確実な予防法は存在しません。しかし発症の兆候や合併する病気は分かっており、それらのケアを行うことが結果として黄色靭帯骨化症の予防に繋がるという見解を持つ医師も存在します。
また黄色靭帯骨化症を発症しているにも関わらず、自覚症状がなく生活を続けている人も多いです。予防ではなく、悪化させる行動や生活を送らないようにすることを心掛けましょう。

黄色靭帯骨化症の予防方法を教えてください。

生活習慣病の1つである糖尿病は、黄色靭帯骨化症の合併症として有名です。そのため食生活を見直し、適度な運動を心掛けましょう。
また骨化症が遺伝的によって発症すると考えられているため、家族・親戚に骨化症を発症した人がいるかどうかを知ることも重要です。また因果関係は不明ですが、全身に強い負担をかけるスポーツ選手が黄色靭帯骨化症を発症するケースも確認されています。
日常生活の中で身体に負担をかけすぎないようにすることも、脊髄の負荷を軽減するために重要です。

最後に、読者へメッセージをお願いします。

黄色靭帯骨化症は国の難病に指定されており、現在も発症する原因が特定できていません。しかし手術が必要になるほど重症になるケースが少なく、適切な治療を続ければ症状が緩和されるため過度に怖がる必要はありません。
下肢に違和感を覚えたり、歩きにくくなったと感じた場合、神経内科や整形外科に受診をしてみましょう。診断もレントゲンやMRIで確定できるため、少しでも早く発見することが治療方針を定めるために重要です。
下肢に違和感を覚えた場合、放置しないで一度脊髄外科などで診察を受けるようにしましょう。

編集部まとめ

医師
今回は黄色靭帯骨化症について、解説してきました。中高年の男性に多く現れる症状ではありますが、加齢や年齢を問わず発症することもあり原因解明にはまだ至っていません。

また発症していても自覚症状がなく重症化もしない場合もあるため、診断を受けた後でも痛みや麻痺が起きないまま過ごす人もいます。

黄色靭帯骨化症は国が指定した難病のため、医療費助成の対象です。そのため治療費が不安な場合でも、安心して治療を受けられます。

認定を受けるにはいくつか条件があるため、医師に相談し認められるかどうか確認を行いましょう。

この記事の監修医師

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