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「直腸炎」は食中毒だけでなく性感染症やストレスも原因になる?医師が監修!

 公開日:2023/08/04
「直腸炎」は食中毒だけでなく性感染症やストレスも原因になる?医師が監修!

急な腹痛・下痢・嘔吐などの体調不良を起こしたことがある方も多いのではないでしょうか。

腹痛や下痢などの症状は約2〜3日ほどで治まるため、病院へ受診せず耐えてしまう方もいることでしょう。

ですが、その症状の原因は胃腸炎かもしれません。

炎症を引き起こす原因は非常に多く、感染症などの病気が隠れていることがあります。

本記事では炎症とはどのようなものなのか・炎症が起きる原因・症状と検査方法・治療方法・日常生活で気をつけることについて紹介していきます。

甲斐沼 孟

監修医師
甲斐沼 孟(上場企業産業医)

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大阪市立大学(現・大阪公立大学)医学部医学科卒業。大阪急性期・総合医療センター外科後期臨床研修医、大阪労災病院心臓血管外科後期臨床研修医、国立病院機構大阪医療センター心臓血管外科医員、大阪大学医学部附属病院心臓血管外科非常勤医師、大手前病院救急科医長。上場企業産業医。日本外科学会専門医、日本病院総合診療医学会認定医など。著書は「都市部二次救急1病院における高齢者救急医療の現状と今後の展望」「高齢化社会における大阪市中心部の二次救急1病院での救急医療の現状」「播種性血管内凝固症候群を合併した急性壊死性胆嚢炎に対してrTM投与および腹腔鏡下胆嚢摘出術を施行し良好な経過を得た一例」など。

直腸炎の原因と症状

しゃがむ女性

直腸炎の原因を教えてください。

直腸炎とは、直腸の内層にある直腸粘膜の炎症のことを指します。炎症を引き起こす原因は非常に多いです。よくみられる直腸炎の原因は以下の通りになります。

  • カンピロバクターやサルモネラなどによる一般的感染症(食中毒)
  • ノロウイルスやアデノウイルスなどの病原体による感染性胃腸炎
  • 梅毒やクラミジア感染などの性感染症
  • 潰瘍性大腸炎やクローン病による炎症性腸疾患
  • 薬剤性腸炎
  • 虚血性大腸炎
  • 腸型ベーチェット病

急な腹痛・下痢・嘔吐などの症状がみられた場合は、上記のような病気や感染症を引き起こしている場合があります。特に小さいお子様は、季節の変わり目になるとノロウイルスやアデノウイルスなどの病原体による感染性胃腸炎を発症しやすいため注意が必要です。
また、夏になると食中毒の発症リスクが高くなります。体調不良を起こした場合は様子を見るなど期間を空けず、病院へ受診しましょう。

ストレスが原因と聞いたのですが…

第二の脳と呼ばれる腸ですが、脳と同じように腸もストレスの影響を受けることが判明しています。腸内がストレスを受ける原因は、αディフェンシンという腸内の病原菌を排除して腸内フローラを抑制する抗菌ペプチドという自然免疫に属する物質の減少です。
このαディフェンシンが減少することで、腸内に存在する膨大な種類と数の細菌が常在し集合している腸内細菌叢と腸内代謝のバランスが崩れます。腸内環境のバランスが崩れると免疫力が低下し、胃腸炎を含む感染症や病気を発症するリスクが高まることは明らかです。
さらに、心理的ストレスが潰瘍性大腸炎をはじめとする病気の症状を悪化させることも報告されています。そのため、胃腸炎はストレスが原因と言っても過言ではありません。

直腸炎は性病とは異なりますか?

直腸炎には、梅毒やクラミジア感染などを含む性感染症が影響していることがあります。性交渉から炎症を引き起こす代表的な病気は以下の通りです。

  • アメーバ性大腸炎
  • クラミジア直腸炎
  • 直腸梅毒
  • 扁平コンジローマや尖圭コンジローマなどの肛門病変

またアメーバ性大腸炎を引き起こした場合は、2週間~2ヵ月の潜伏期に梅毒やB型肝炎、HIV感染などの合併症が発症していることもあります。
肛門性交する方に多くみられるのが特徴です。体に違和感を覚えたら、まずは病院へ受診しましょう。

直腸炎の症状を教えてください。

急な腹痛・下痢・嘔吐などの症状が代表的です。ほかにも以下のような症状がみられます。

  • 排便時の痛みを伴うりきみ
  • 発熱
  • 脱水症状
  • 痛みを伴わない出血
  • 水様便や粘血便
  • 直腸からの粘液の排出
  • 肛門と直腸に激しい痛み

複数の症状が同時にみられることが多くあります。食中毒や病原菌が原因で起こる炎症の場合は、ご自身だけでなく周りの人にも感染している可能性が高いです。周りの人にも炎症の傾向がみられる場合は、すぐ病院へ受診しましょう。
あまり痛みもなく下痢症状だけの場合でも、一日に数回の下痢が2日以上続くようであれば病院へ受診することをおすすめします。

直腸炎の検査と治療

医師

直腸炎の検査方法を教えてください。

さまざまな病気が隠れている可能性を考えて問診や検査は細かく行われます。恥ずかしがらず、正直に医師へ状況を伝えましょう。問診や検査方法は以下の通りです。

  • 東南アジアへの渡航歴の有無
  • 肛門性交の有無
  • 抗菌薬の服用歴の有無
  • 放射線治療歴の有無
  • 同様の症状を持つ家族の有無
  • 最近の食事の内容
  • 肛門周囲の視診と大腸内視鏡検査
  • 便培養
  • 便虫卵と原虫検査
  • 感染症関連の血液検査

これらの問診や検査の結果によっては、追加でHIV感染症の検査を行う場合もあります。

直腸炎の炎症の治し方を教えてください。

ストレスや病原菌から起こった炎症や炎症性腸疾患の場合は、抗炎症薬・抗菌薬・整腸剤などの薬物療法を用いることが一般的です。潰瘍性大腸炎など重症の場合は、ステロイド剤や免疫抑制剤の投与で効果がみられないと手術療法に至ることもあります。
治し方で重要視されるのは、粘膜が治癒しているかです。粘膜の治癒が、その後の発症率に大きく影響します。
また、ストレスを低減する生活習慣の見直しも大切です。治し方のスケジュールは、内視鏡検査の結果を基に医師と相談しましょう。

直腸炎は何日で治りますか?

症状の度合いにもよりますが、カンピロバクターやサルモネラなどによる一般的感染症(食中毒)やノロウイルス・アデノウイルスなどの病原体による感染性胃腸炎であれば3日~1週間程度で治ります。
しかし、性感染症や潰瘍性大腸炎など大きな病気に発展していた場合は、数ヵ月~数年かかることが多いです。再発率も考えると5年~10年ほどは定期検診が必要となります。
あくまでも平均日数なので鵜吞みにせず、ご自身の状態が良くなったことを確認した上で行動してください。

直腸炎の予後

起床

直腸炎は完治しますか?

ひと言で「完治します」とは断言できませんが、炎症のレベルによります。軽度で一般的な食中毒や病原菌の炎症であれば、医師が処方する薬物療法を受ければ数日程度で完治することが多いです。
症状が中度や重度であっても、しっかり治療を受けていれば完治することも可能といえます。しかし、合併症を引き起こすなどさまざまな問題がある場合は「完治します」とは言い切れません。
炎症再発のリスクもあるため、その都度専門医に相談しカウンセリングを受けましょう。

日常生活で気をつけることを教えてください。

腸内環境を整えて免疫力をアップさせるためには、ストレスを低減することが非常に大切です。ストレスは胃腸炎を引き起こす原因になります。そのため、ご自身なりのストレス発散方法をみつけておきましょう。
生活習慣の見直しや環境を調整することも効果的です。また、食中毒や病原菌による病気が発症しやすい夏や季節の変わり目には十分に注意しましょう。
食中毒対策としては、しっかり火が通っているか確認してください。病原菌には換気や手洗いうがいが効果的です。

最後に、読者へメッセージをお願いします。

急な腹痛・下痢・嘔吐を引き起こす胃腸炎には、さまざまな病気や感染症を潜めている可能性があります。また、食中毒や病原菌が蔓延する季節には十分注意してください。
急に体調不良が起きたら、すみやかに病院へ受診しましょう。ストレスを溜め込んでしまうと炎症の発症リスクを高めてしまうため、免疫力を下げない生活や環境を作ることが大切です。
ストレスはさまざまな病気の原因にも直結するため、この機会にストレスへの対処法を見直してみましょう。

編集部まとめ

医師
今回は、急な体調不良を引き起こす直腸炎について詳しくお伝えしていきました。

腹痛や下痢症状は約2〜3日ほどで治まるため、病院へ受診せず耐えてしまう方もいることでしょう。

ですが、胃腸炎には他の病気や感染症が身を潜めているかもしれません。

症状が軽症であればストレスの低減や薬物療法で治せる可能性が高いため、早めの対応が大切です。

食中毒や病原菌などによる感染症は小さいお子様が発症しやすいだけでなく、周りの人にも感染させてしまうなどの悪影響を及ぼします。

炎症対策をしっかり行った上で、少しでも体調不良を起こした場合はすみやかに病院へ受診しましょう。

最後までお読みいただき、ありがとうございました。

この記事の監修医師