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「E型肝炎」の症状や原因はご存じですか?感染経路や食中毒の違いについても解説!

 公開日:2023/07/31
「E型肝炎」の症状や原因はご存じですか?感染経路や食中毒の違いについても解説!

E型肝炎はE型肝炎ウイルスに汚染された食べ物や水を摂取することで感染する病気です。

この病気はかつては食べ物や水の管理が杜撰な発展途上国で感染する病気だと考えられてきました。

しかし、近年では日本でも発症する事例が報告されており、年々感染者数が増加傾向にある病気でもあります。また、世界的にも毎年2000万人がE型肝炎に感染しているといわれており、決して他人事ではありません。

そのため、E型肝炎についての知識を持っておくことは今後の健康を維持するためにも重要といえるでしょう。

そこでこの記事では、E型肝炎について知っておくべき知識として、 E型肝炎の特徴や原因・症状・治療方法などについて詳しく解説をします。

郷 正憲

監修医師
郷 正憲(徳島赤十字病院)

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徳島赤十字病院勤務。著書は「看護師と研修医のための全身管理の本」。日本麻酔科学会専門医、日本救急医学会ICLSコースディレクター、JB-POT。

E型肝炎の特徴

ポイント

E型肝炎とはどのような病気ですか?

E型肝炎は、E型肝炎ウイルス(HEV)によって引き起こされる感染症であり、肝臓に炎症を起こす疾患です。世界中で発生している病気で、世界中で毎年300万人もの人が急性E型肝炎を発症し、7万人がこの病気に関連して死亡しています。かつてはこのE型肝炎は発展途上国への旅行者の感染事例が多かったため、海外への渡航歴のない日本人にとっては馴染みのない病気として捉えられていました。
しかし、近年では渡航歴のない人もE型肝炎を発症するケースがみられており、また国内での感染者数も年々増加傾向にあります。一般的な致死率は0.5%〜4%程度とされており、無症状のまま感染に気づかないケースも少なくありません。しかしながら、妊婦がE型肝炎に感染した場合には劇症化しやすいことが報告されており、劇症化した場合には致死率が20%にも達することがあります。中国ではE型肝炎のワクチンが開発・承認・生産されていますが、まだ他の国では承認されていないため、ワクチンを接種することはできません。

E型肝炎の感染経路を教えてください。

E型肝炎の主な感染経路は経口感染だと考えられています。より具体的には、E型肝炎ウイルスに汚染された食べ物や飲み物を摂取することによって発生します。加熱が不十分な肉類や不衛生な状況下において処理された飲食物を摂取することによって、ウイルスが人体に侵入して肝臓の機能が低下するのです。それに対して、人間間の接触による感染は比較的まれです。
せきやくしゃみによる飛沫感染や、物理的な接触による感染は報告されていません。そのため、日常生活を送る中で他人からE型肝炎に感染する可能性は低いです。ただし、輸血や臓器移植を介した感染の可能性は存在しています。また、妊娠中の母親から胎児への母子感染も報告されています。

E型肝炎と食中毒の違いを教えてください。

E型肝炎と食中毒は原因・症状・治療方法のそれぞれにおいて異なっています。E型肝炎はE型肝炎ウイルスという特定のウイルスによる感染が原因となっているのに対して、食中毒はウイルスだけでなく細菌・寄生虫なども原因です。
また、E型肝炎の症状では主に肝臓に炎症が起こることによって黄疸や倦怠感が現れるのに対して、食中毒は消化器系に問題が生じることで吐き気・嘔吐・腹痛・下痢などの症状が出ます。最後に治療方法についてはE型肝炎ではほとんどの場合は自然に治りますが、食中毒では脱水症状への対策として抗生物質が必要となる場合があります。

E型肝炎の症状と原因

頭痛い

E型肝炎の症状を教えてください。

E型肝炎の主な症状は、急な発熱・体のだるさ・食欲不振・吐き気・嘔吐・皮膚や白目の部分が黄色になる黄疸です。これらの症状は一般的には安静にしていれば治る軽い症状で終わり、黄疸が出ない場合も多くあります。そのため、そもそもE型肝炎にかかったことに気が付かないケースが多いです。
ただし、まれに劇症化するケースもあり、その場合は注意が必要です。劇症化した場合には肝臓が機能不全となることによって、意識障害・眠ったまま呼びかけに応じない肝性昏睡・血が止まりにくくなるなどの症状が生じる可能性もあります。劇症化した症状は劇症肝炎や急性肝不全といわれ、早急に適切な対応が必要です。

E型肝炎の原因は何ですか?

E型肝炎の原因はE型肝炎ウイルスです。このウイルスは糞便から排泄され、糞便に汚染された食べ物や水などを摂取することによって感染します。
特に発展途上国ではE型肝炎ウイルスに汚染された水を飲むことが原因ですが、日本国内では豚・猪・鹿などを十分な加熱をせずに食べることによって感染すると考えられています。

E型肝炎にならないように気をつけるべき食品を教えてください。

E型肝炎の予防として避けるべき食品は、国内では豚・猪・鹿などの肉や肝臓です。これらの食べ物を生で食べたり、加熱不十分な状態で食べたりすることによって感染した事例が報告されています。海外の特に発展途上国においては水にも気を付ける必要があります。水道水などで洗われたカットフルーツもE型肝炎ウイルスに汚染されている可能性があるため、注意が必要です。
そのため、国内では豚・猪・鹿などの肉や肝臓を食べる際にはよく加熱し、国外ではそれに加えて水を飲む際にはミネラルウォーターや一度沸騰させた水を飲むようにした方がよいでしょう。また、中央アジアでは秋に、東南アジアでは雨期にE型肝炎が流行する傾向にあるため、この時期に中央アジアや東南アジアに旅行する場合には特に注意が必要です。

E型肝炎の潜伏期間を教えてください。

E型肝炎の潜伏期間は一般的に15日から60日程度で、平均して6週間程度といわれています。ただし、E型肝炎ウイルスに感染すれば必ず症状が現れるわけではありません。
感染者の中には症状が出ないまま自然に治癒する「無症状キャリア」も存在しています。これらの「無症状キャリア」の人々は自身がE型肝炎に感染していることに気づかないまま日常生活を送り続けることが多いです。

E型肝炎の治療方法

説明

E型肝炎の治療方法を教えてください。

E型肝炎の治療としては一般的に特別な治療は必要ありません。自然に治るため、安静にすることが重要です。ただし、妊娠中の女性がE型肝炎にかかった場合は致死率が20%に達するともいわれるほど重症化し、急性肝不全(劇症肝炎)を発症する場合があります。
その場合には、血漿(けっしょう)交換といわれる人の体に流れている血を健康な血液と病気の血液に分離した後に廃棄した病気の血液量に相当する健康な血液を輸血するという治療が行われることがあります。こうした治療でも肝臓の機能が回復しない場合に行われる治療が肝移植です。肝移植では脳死者からの肝臓の移植や近親者の肝臓の一部を移植する生体部分肝移植が行われます。

E型肝炎は何日で治りますか?

E型肝炎は一般的に治るまで4〜6週間程度かかります。一般的にはこの病気は慢性化することはあまりありません。ただし、劇症肝炎(急性肝不全)に進展した場合には、死亡することもあります。

最後に、読者へメッセージをお願いします。

E型肝炎の致死率は0.5%〜4%程度と基本的には危険な病気ではなく、安静にしていれば自然と治る病気です。
しかしながら、妊娠中などは劇症肝炎へと重症化してしまうこともあります。そのため、E型肝炎にならないように豚・猪・鹿などは十分に加熱して食べたり、海外で水を飲む際にはミネラルウォーターを飲んだり飲食には注意を払うようにしましょう

編集部まとめ

女性
この記事ではE型肝炎の原因とその症状・治療方法・完治するまでの期間などについて解説をしてきました。

E型肝炎は世界中で見られる感染症で、食物や水による感染が主な経路です。そのため、適切な食事と衛生習慣を保つことで感染リスクを減らせます。

また、感染した場合でも多くのケースは安静にすることで自然に回復しますが、症状が重篤な場合や長引く場合には医療機関による専門的な治療が必要となります。

E型肝炎の心配がある場合にはお医者さんに相談するようにしましょう。

この記事の監修医師