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「肺アミロイドーシス」という難病指定されている病気の症状はご存じですか?

 公開日:2023/08/10
「肺アミロイドーシス」という難病指定されている病気の症状はご存じですか?

アミロイドーシスとは聞き馴染みのない病気だと思う人も多いでしょう。

実際に発症する方は日本であれば100万人のうち、3人程の方しか罹患されません。

また病態自体も複雑なうえに、国内でも難病指定されていて、研究の対象とされている疾患です。

今回はそのような難病アミロイドーシスが、肺で障害が引き起こる原因や治療法などの情報を解説します。

竹内 想

監修医師
竹内 想(名古屋大学医学部附属病院)

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名古屋大学医学部附属病院にて勤務。国立大学医学部を卒業後、市中病院にて内科・救急・在宅診療など含めた診療経験を積む。専門領域は専門は皮膚・美容皮膚、一般内科・形成外科・美容外科にも知見。

肺アミロイドーシスの原因と症状

検診受診票

肺アミロイドーシスとはどのような病気ですか?

アミロイドーシスは、病態としてβシート構造を持っている液体に溶けやすいタンパク質が何らかの変化により溶けにくくなる状態です。更にナイロン状のアミロイド線維を作り全身の臓器の外に蓄積・沈着することにより、臓器に障害を引き起こす疾患を指します。
そして一口にアミロイドーシスと申し上げても種類があり、難解な疾患という点が特徴的です。大きく分類すると、アルツハイマーやプリオン病のように単一での臓器のみにアミロイド沈着を引き起こす限局性アミロイドーシスと、複数の臓器に対してアミロイドが沈着する全身性アミロイドーシスに分けられます。
肺アミロイドーシスは、全身性アミロイドーシスの部分症としても肺に限局したものにも同じ病名がつけられるのです。更に肺アミロイドーシスは気管支型・結節型・びまん性肺胞隔壁型の3パターンの分類となります。
びまん性肺胞隔壁型の免疫性アミロイドーシス(ALアミロイドーシス)には全身性アミロイドーシスになるものと、肺に限局した2つの病気があります。アミロイドになる前の細胞として、アミロイド前駆物質が36種類確認されていて、これらの物質が病気を引き起こします。
よく診断される種類は免疫性アミロイドーシス(ALアミロイドーシス)・AAアミロイドーシス・透析アミロイドーシス・家族性アミロイドーポリニューロパチー(FAP)・老人性全身性アミロイドーシス(SSA)があります。
特に免疫性アミロイドーシス(ALアミロイドーシス)・家族性アミロイドーポリニューロパチー(FAP)・老人性全身性アミロイドーシス(SSA)は難病指定がされています。それにより医療費の補助が受けられる対象疾患とされているので、もし罹患した場合は医療機関に相談してみましょう。

原因を教えてください。

肺アミロイドーシスは原因となるタンパク質が凝集してアミロイドとなった後臓器に沈着して発病します。しかしアミロイドが発生する流れについては、原因となるたんぱく質の種類によって異なるため細かいメカニズムは解明されていません。

症状を教えてください。

形態では同じにみえますが、アミロイド原因物質は多様な違いがあるため、それによりタイプや症状が異なります。一般的な全身性アミロイドーシスの症状をあげると、心臓・腎臓・胃腸・自律神経の障害などが確認され、更に舌・甲状腺・腎臓が腫れる症状がみられます。
アルツハイマーでは認知症状が、脳アミロイドアンギオパチーでは脳出血などの脳卒中の症状も出現します。部分によって症状名も相違があるので、余計に全体が掴みにくいことでしょう。
結節性肺実質型は肺アミロイドーシスの罹患者に約40%を占め、その症状は呼吸困難・咳の自覚症状がみられることがありますが、自覚症状は乏しく悪性腫瘍の除去のために生検または手術の判断となることが多いです。結節(しこり)は単独または多数でみられたり、石灰化が確認されたり空洞を伴ったりとがありますが特徴的といえる所見はありません。
びまん性肺胞隔壁型アミロイドーシスも自覚症状がみられず、無症状で生前診断例も呼吸器症状も乏しいとされています。また病理解剖をしても、6割の方は生前に呼吸器症状がみられなかったという結果も出ました。
そして症状にもよりますが多発性骨髄腫に罹患した患者さんに、呼吸困難などの症状が現れたときは、肺胞出血や肺及び心アミロイドーシスの合併による心不全の疑いがあることがあります。確認されている症例は、多発性骨髄腫に罹患しても部分的に寛解の効果が得られており、その間に悪化も改善もなく不変です。
今後多発性骨髄腫の寛解か悪化かで、肺アミロイドーシスの病状も変化するかの長期予後も含めた検査が必要となります。
気管気管支アミロイドーシスは、アミロイドが気管や中枢側気管支に沈着する限局性アミロイドーシスで、稀な疾患とされています。症状は上記二つの症例より、呼吸器疾患の要素が強く反映されており、咳・たん・血液混じりのたん・呼吸の際にゼーゼー、ヒューヒュー音混じりの呼吸症状がみられることがポイントです。

無症状の場合もあるのでしょうか?

肺アミロイドーシスは罹患している際の症状として、咳・たんなどの顕在的な症状が現れることもありますが、疾患によっては自覚症状も乏しく無症状となる場合も多いです。全身性アミロイドーシスはアミロイド沈着が起きた臓器ごとの機能障害がありますので、他の臓器との合併症になる可能性もあり比較的分かりやすいものといえるでしょう。
罹患しているかもしれない目安としては全身の衰弱・貧血・心アミロイド沈着による心症状・消化器障害・腎障害・手足のしびれなどが主な症状です。自覚できる範囲で上記の症状がみられる場合は、医療機関にすぐ受診されることを推奨しています。

肺アミロイドーシスの検査と治療

医療費

肺アミロイドーシスの検査方法を教えてください。

肺アミロイドーシスに限らず、アミロイドーシスの検査方法は主に採血・採尿・画像検査・内視鏡を利用し、臓器障害を調査する場合が多いです。アミロイドーシスは、原因たんぱくにより病状が分けられており、その分類にて治療方針も変化がみられる場合もあります。
それにより血清アミロイドAの測定・尿中免疫グロブリンの軽鎖測定・遺伝子検査など多岐にわたる検査も同時進行で行なわれることも覚えておきましょう。

どのようにして診断がつきますか?

アミロイドーシスの確定診断は病変臓器の組織を一部採取(生検)し、その組織を顕微鏡で調べる検査方法が主流です。
コンゴーレッド染色という着色を行いアミロイドが沈着していることを確認し、それぞれのアミロイドたんぱくが染色される抗体を用いた免疫染色という検査も同様に行います。診断のための情報を収集し、どのアミロイドなのかを調査した後に沈着したアミロイドたんぱくの種類を同定できるでしょう。

肺アミロイドーシスの治療方法を教えてください。

アミロイドーシスの治療に関しては対アミロイド療法・根本治療、それに臓器症状に対する対症療法が取られています。以前は各々の症例に対する対症療法が主な治療方法でしたが、現在ではアミロイドーシスの種類によった根治的治療法が発達してきました。
治療そのものに関しては、現場において原発性限局性結節性肺アミロイドーシスの報告・経過を追ったもの自体が少ないです。原発性限局性結節性肺アミロイドーシスはおおむね良好な経過をたどるため、積極介入せず経過観察のみで良いとの論文も発表されています。
全身性アミロイドーシスとは異なり、未治療であっても安定した症状により良性の経過を辿ることが多いですが、中には不幸な経過のものもあります。ただ穏やかだから何もしなくていいというわけではなく、きちんと経過観察を受ける必要がありますので、疑われる症状が出てきた際は医療機関への受診を行いましょう。
また全身性アミロイドーシスの一環としての肺アミロイドーシスの場合は、沈着しているアミロイドにより治療法が違います。どのアミロイド由来なのかを精密検査後に適切な治療が施されるので、治療方針は担当医とよく相談してください。その他にも、多発性骨髄腫に呼吸器症状が出た際には肺アミロイドーシスも併発している可能性がみられることがあり、投薬や化学療法が取られるでしょう。

肺アミロイドーシスの予後

看護師

肺アミロイドーシスは完治するのでしょうか?

アミロイドーシスに罹患すると予後不良とされており、現在でも根治という点にはまだ及んでおりません。しかし限局性肺アミロイドーシスについては良性な経過をたどることが多いので、現状以上に悪くなりにくい疾患だと捉えるといいでしょう。
予後の観点からであればアミロイドーシスの進行状態・患部にて相違はみられますが、疾患に沿った適切な治療か対症療法を行うことにより多くの患者さんで良好な予後が認められるようになりました。全身性アミロイドーシスの一環としての肺アミロイドーシスも、適切な治療を施すことで他のアミロイドーシスと予後の考え方は一緒といえます。

日常生活で気をつけることを教えてください。

アミロイドーシスの症状の一部である舌の腫れ・手足のしびれ・心臓の障害(心不全など)、肺アミロイドーシスであれば呼吸器症状が出てきたら医療機関を受診して、罹患を疑うことも大切です。もう少しかみ砕いた目安を述べるならば、複数の臓器に上記の症状がありかつ、他の疾患では説明の難しい病態がある場合は受診をお勧めする状態といえます。
また仮に罹患した場合、異常のある患部によって生活上の注意点も変わります。消化器や腎臓に異常がある際には、食事制限を受ける可能性がありますので医師に相談しながら生活しましょう。

最後に、読者へメッセージをお願いします。

まずは検査を行い、アミロイドの種類・型・全身性か限局性かを正しく知りましょう。アミロイドの沈着状態により治療法や予後が異なりますので、医師は慎重に精査してから治療に臨みます。最近では各種類のアミロイドーシスに対して新規治療薬が開発され、薬による治療可能な病気となりつつあります。
肺アミロイドーシスは放置して治る症状ではありません。まずは症状が出たらためらわず、専門の医療機関に受診してください。

編集部まとめ

説明をするドクター
今回はアミロイドーシスの説明をしながら、肺アミロイドーシスについての紹介をしました。

アミロイドが体内全体に広まる場合か、一部の臓器に限局しているか、そしてアミロイドの種類によって名称が変わったりするという大変難しい疾患という点を抑えるといいでしょう。

肺アミロイドーシスは症状も一見するとわかりにくく、無症状で経過するものもあれば呼吸器症状がみられる場合もあり多岐にわたります。

またアミロイドーシスに罹患している場合は、手足のしびれや舌の腫れは比較的分かりやすい症状としての目安となるでしょう。

両方にいえることは、ほんの少しの違和感や症状があればすぐに医療機関に受診することです。

肺アミロイドーシスは、すぐ予後不良とされることなく治療が可能な症状検査後は症状に合った治療法を行うことで、予後の確保も良好となります。

また現在では治療薬が開発されてきており治る兆しもみえ始めてきていますので、安心して治療に取り組みましょう。

この記事の監修医師