「耳硬化症」という難聴はご存じですか?症状やなりやすい人の特徴も解説!
「耳硬化症」という病気をご存知でしょうか。あまり知名度は高くありませんが、耳硬化症は伝音難聴と呼ばれる病気で進行していくと日常生活に大きな支障をきたすものです。
しかし耳硬化症は手術をすれば治る病気です。でも、原因や治療方法など分からないことが多いと不安があるのではないでしょうか。
今回は耳硬化症について詳しく解説します。耳硬化症について知りたい方はぜひ最後までご覧になってください。
監修医師:
五藤 良将(医師)
目次 -INDEX-
耳硬化症の原因と症状
耳硬化症はどのような病気ですか?
耳硬化症を発症すると騒音環境下では逆によく聞こえるという現象が起こることがあり、これはWillis錯聴と呼ばれています。左右の症状の差が少ない場合や病気がゆっくり進行している場合には、難聴・耳鳴り・耳閉塞感がないことも多いです。
しかし症状は個人差があり、病気の進行速度や症状の出現にはさまざまな要因が関与していると考えられています。
原因を教えてください。
初期には骨が変性し脆くなりますが、その後は骨の治癒反応が起こり病巣が硬化性病変に移行します。骨が硬くなることでアブミ骨の可動性が損なわれ、伝音難聴が進行するのです。
女性の発症率が高いことや人種差があることから、遺伝的要因が関与していると考えられています。他にも麻疹の潜伏感染説や女性ホルモンの影響も考えられていますが、具体的な原因はまだ解明されていません。
症状を教えてください。
40歳頃には明確な自覚症状が現れます。難聴の進行は個人差があり、平均的には1年に2〜3dB程度の聴力低下を示し、中等度の難聴(約60dB程度)まで悪化することが多いです。また、左右の耳で進行の度合いが異なることもよく見られます。
耳鳴りは約2/3の患者さんに、耳閉塞感は約1/3の患者さんに現れ、約10%の患者さんにめまいがみられます。
耳硬化症を発症しやすい人の特徴を教えてください。
しかし遺伝的な要素やホルモンの関与が示唆されていますが、具体的な遺伝子やホルモンの関係はまだ明確には分かっていません。詳細なリスク要因や発症メカニズムについては解明できていないこともあり、さらなる研究が求められています。
今後の研究によって、耳硬化症のリスク要因や発症メカニズムをより深く理解することが期待されています。
耳硬化症の診断と治療
耳硬化症はどのように診断されますか?
CT画像処理を行い、耳硬化症病変を強調することで客観的な評価を補完する方法が研究されています。統計的な解析により、放射線科医の診断能(耳硬化症病変の同定率)の向上を評価できます。
検査方法を教えてください。
純音聴力検査では、低音域で気骨導差の大きい伝音難聴が示され、2kHzを中心に骨導閾値の上昇が見られること(Carhart’s notch)も特徴的です。また、音響性耳小骨筋反射は得られなくなります。側頭骨のレントゲンやCT検査では異常は見つかりませんが、内耳骨包の脱灰像が側頭骨CTで見られれば、耳硬化症の診断はほぼ確定となります。
アブミ骨筋反射は最も重要な検査であり、耳硬化症が進行するとこの反応が消失します。高度進行性の耳硬化症では内耳の骨が変性し、CT検査で海綿状変性の所見が見られることもありますが、中等症以下の耳硬化症ではこれらの所見はまれです。
耳硬化症の治療方法を教えてください。
補聴器も効果があり、患者の状態や希望に応じて手術または補聴器を選択するでしょう。完全な難聴の場合には人工内耳を埋め込む手術も必要です。手術はアブミ骨の一部を取り除き、人工耳小骨で再建する方法です。
手術にはリスクもありますが、聴力の改善が見込まれます。医師との相談の上、最適な治療法を選ぶ必要があります。
耳硬化症は完治するのでしょうか?
この人工耳小骨は一生使えるため、取り換える必要はありません。術後15年以上にわたって聴力が良好なまま維持されるケースもあります。
ただし先述した通り手術の成功率は80〜90%ありますが、効果は個人によって異なるため、完全な治癒を保証するものではありません。
耳硬化症の予防
早期発見のポイントを教えてください。
適切な対策や治療が行われることで、社会生活や健康への影響を最小限に抑えられます。聴力の変化は気づきにくいこともあるため、少しでも聴力に違和感があると感じたときはかかりつけの耳鼻咽喉科に相談してください。
耳硬化症の予防方法はあるのでしょうか?
ただし、耳硬化症の具体的な原因はまだ分かっておらず、明確な予防方法は存在しません。早期発見が重要なので、難聴を自覚した場合はかかりつけの耳鼻咽喉科で検査を受けることをおすすめします。
最後に、読者へメッセージをお願いします。
医師は適切な検査と診断のもと、患者にあった最善の治療方法を提案してくれます。手術や補聴器の使用に関して不安がある場合には担当の医師に相談してください。患者にあった最適な方法を提案してくれます。
編集部まとめ
耳硬化症は罹患率が低く、今回はじめて聞いたという方も多いでしょう。聞きなれない病名の場合、完治するのか不安になる方も多いです。
しかし耳硬化症は手術によって完治でき、補聴器を使って改善することもできます。そのためには早期の検査と適切な治療が大切です。
まわりの音が聞こえにくいなどの違和感を覚えたら迷わずかかりつけの耳鼻咽喉科に相談してください。そのままにしておくと日常生活にも影響が出てくるようになります。
過度な騒音や生活習慣病の予防、耳にやさしい環境づくりなど、予防策も心がけましょう。