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「耳介軟骨膜炎」という耳の病気はご存じですか?ピアスをする人は要注意!

 公開日:2023/07/28
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耳介は一般的に「耳」の部分を指します。耳介軟骨膜炎とは、感染症が原因で耳に炎症を引き起こす病気です。

炎症が進行すると軟骨の壊死による耳の変形などが起こるため、早期より適切に治療を進める必要があります。

また「再発性多発軟骨炎」といった国の指定難病とも初期症状が似ているため、鑑別診断が非常に大切です。

今回は耳介軟骨膜炎について症状・原因・治療などについて詳しく解説します。聞き慣れない病気ですが、早期からの対処が非常に大切になるため知識を身につけましょう。

五藤 良将

監修医師
五藤 良将(医師)

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防衛医科大学校医学部卒業。その後、自衛隊中央病院、防衛医科大学校病院、千葉中央メディカルセンターなどに勤務。現在は「竹内内科小児科医院」の院長。日本抗加齢医学会専門医、日本内科学会認定医。

耳介軟骨膜炎(じかいなんこつまくえん)の原因と症状

女性の耳

耳介とはどこの部位でしょうか?

耳介は一般的にと呼ばれる部分のことをいいます。耳は内耳・中耳・外耳と3つの部分に分かれています。耳介は外耳の部分に位置して、耳の一番外側にあり飛び出している部位です。
周囲の音を集めて外耳・中耳・外耳に音を伝える役割があります。耳介は外に露出している部分のため傷を負ったり、感染したりなどのリスクが高い部分でもあります。耳介は軟骨の上に薄い皮下組織があり、皮膚に覆われている構造をしており、耳介にある軟骨が耳介軟骨です。
耳介軟骨を覆っている皮下組織は薄いため、外傷や損傷などにより軟骨が露出しやすく感染が波及しやすいため注意が必要です。

耳介軟骨膜炎の症状を教えてください。

耳介軟骨膜炎の主な症状は以下の通りです。

  • 炎症(腫脹・熱感・発赤)
  • 耳介全体の肥厚(分厚くなる)
  • 痛み(自発痛・厚痛)
  • 灼熱感
  • 膿瘍
  • 変形

炎症を主とした上記の症状が出現します。耳介軟骨膜炎では出現する症状に関しては病気の進行状況において違いがあるため、注意しましょう。発症初期では腫脹・熱感・発赤・耳介の肥厚・痛みが主な症状になります。
中には激しい痛みを伴い、全身の発熱を引き起こすケースもあるため注意が必要です。発症から時間が経過して炎症が進むにつれて、軟骨膜と軟骨の間に膿瘍を形成して触診でもわかるようになります。
治療が進まずに炎症が長引いてしまうと耳介軟骨の壊死などを引き起こし、耳介が飛び出してカリフラワーのような変形が出現するため早期からの治療が大切です。

原因を教えてください。

耳介軟骨膜炎は外傷などにより、細菌が入ることによる細菌感染が主な原因になります。細菌を引き起こす菌はさまざまですが、耳介軟骨膜炎の起因菌としては緑膿菌・黄色ブドウ球菌が多いです。
緑膿菌は生活環境を中心に広く分布している細菌で、健康な方が感染を引き起こすことは稀です。黄色ブドウ球菌は食中毒の原因になる細菌で、埃・動物・鳥類・人の皮膚などに広く分布しています。緑膿菌・黄色ブドウ球菌ともに広く分布している細菌で感染症などを引き起こすことは少ないです。
しかし免疫力が低下しやすい高齢者・糖尿病を保有している方・透析を実施している方などは感染を引き起こす危険性があります。そのため感染しやすい方は注意が必要です。またピアスを普段から装着する方は、常に感染のリスクがあるため毎日消毒するなど対策をしましょう。

耳介軟骨膜炎の合併症はありますか?

耳介軟骨膜炎は目立った合併症は出現しませんが、鑑別すべき疾患として再発性多発軟骨炎があります。
再発性多発軟骨炎は原因不明の指定難病で、全身の軟骨に慢性的に炎症が再発する自己免疫疾患です。耳介軟骨膜炎と再発性多発軟骨炎の診断に鑑別が必要な理由は、再発性多発軟骨炎における炎症の発生しやすい部位として耳介軟骨が最も多いことが挙げられます。
再発性多発軟骨炎は、マクアダムスの診断基準を用いて診断して耳介軟骨膜炎などと鑑別します。また再発性多発軟骨炎では気道の炎症などで呼吸器症状が出現するため呼吸困難を伴うことがあるため注意が必要です。
耳介軟骨膜炎と再発性多発軟骨炎は治療方法が異なるため、注意して診断することが非常に大切になります。

耳介軟骨膜炎(じかいなんこつまくえん)の治療方法

処方薬

耳介軟骨膜炎は何科を受診しますか?

耳介軟骨膜炎は炎症を引き起こすため、何科を受診するか悩む方も多いと思いますが、耳のスペシャリストである耳鼻咽喉科を受診しましょう。
耳鼻咽喉科の医師は耳に関しては多数の症例数を診察しているため、先述した再発性多発軟骨炎との鑑別診断など安心できることが多いです。耳に腫脹・熱感・痛みなどの初期症状が出現した場合は耳鼻咽喉科を受診して、早期より適切な治療・処置を受けることが大切です。
進行するカリフラワー耳のような変形も防げるでしょう。また進行して変形してしまった場合は「形成外科」に相談することも可能です。

治療方法を教えてください。

治療は軟骨壊死による耳介変形の予防を中心に検討することが大切です。そのためには早期より炎症の改善も目的に抗菌薬が開始されます。抗菌薬の治療前段階として血液培養などで、起因菌を同定した上で抗菌薬を選択することが多いです。
しかし同定が困難な場合においては、先述した緑膿菌・黄色ブドウ球菌による細菌感染が多いことを考慮して、緑膿菌に有効な抗菌薬が使用されることが推奨されています。症状が進行して膿腫などが形成されている場合は、抗菌薬治療に加えて排膿処置が必要になります。
膿腫を放置しておくと軟骨膜剥離による軟骨壊死を引き起こす危険性があるため、早期より実施することが大切です。変形を防ぐためにも軟骨や軟骨膜は保護する必要があります。場合によっては耳介軟骨が壊死した部分に対して、デブリードマン(壊死部分をメスで取り除く手術)なども検討されるでしょう。

治療期間はどのくらいですか?

感染の原因になった起因菌によって差はありますが、治療期間は1〜2週間程度になります。先述した抗菌薬による治療を中心に進めます。
また抗菌薬は自己判断で中止すると、原因となった起因菌が耐性菌となり薬剤が効かなくなる危険性があるため注意が必要です。抗菌薬などは必ず医師や薬剤師の指示に従って、定められた期間は飲みきるようにしましょう。

耳介軟骨膜炎(じかいなんこつまくえん)の予後

ピアス 女性

耳介軟骨膜炎は再発しますか?

ピアスを常時使用する方などは再発する危険性があります。ピアスを装着しているとピアス穴周囲の耳介軟骨などは清潔を保てずに、外部の環境に晒されている状態になります。
先述した緑膿菌・黄色ブドウ球菌は人の皮膚にもいる細菌のため常に感染リスクを抱えていることになるでしょう。そのため感染対策が大切になります。基本的な手洗い・うがいに加えて、生活リズムの確立・早寝早起き・適度な運動を心がけて免疫力を高めることが予防に繋がります。
また原因がないのに何度も耳介部分の炎症を繰り返す場合は、再発性多発軟骨炎との鑑別が大切です。早期から医療機関を受診して医師の指示に従い、適切な治療を進めましょう。

耳介軟骨膜炎の後遺症はあるのでしょうか?

耳の変形が主な後遺症になります。耳の変形に関しては、適切な治療を進めずに放置したり、症状が進行したりすると出現します。特徴的な変形として耳介が外に飛び出した「カリフラワー耳」が有名です。
変形の主な原因は、炎症が長引いたことによる耳介軟骨の壊死です。そのため早期より適切な治療を受けることが、後遺症を残さないためにも非常に大切になります。
耳介の変形などにより見た目の変化が気になる場合は形成外科の医師に相談することも一つの方法です。

最後に、読者へメッセージをお願いします。

耳介軟骨膜炎は炎症を主な症状とする耳の細菌感染による病気です。放置したり、適切な治療を受けたりしないと耳の変形などを引き起こすリスクがあります。耳に違和感や炎症の症状が出現した場合は「耳鼻咽喉科」の受診を進めてください。
また指定難病である再発性多発軟骨炎との鑑別が大切になります。初期症状が耳介軟骨膜炎と混同されやすいため、原因が不明な場合や何度も繰り返す場合には医師に相談しましょう。

編集部まとめ

問診
耳介軟骨膜炎は炎症を中心としてさまざまな症状を引き起こす耳の感染症です。炎症が進行すると耳介軟骨が壊死して、耳が変形するなどの危険性もあるため注意が必要になります。

原因になる緑膿菌・黄色ブドウ球菌は健康な方に感染することは稀ですが、免疫力の低下している高齢者や糖尿病を患っている方などは注意が必要です。

またピアスを着用している方などは、常に耳介軟骨が外気と触れている状態のため感染リスクが高いでしょう。

治療は抗菌薬が第一選択になります。治療期間は起因菌により多少の差はありますが、1〜2週間程度で終了することが多いです。

また難病である再発性多発軟骨炎との鑑別が大切になります。耳介軟骨による炎症が原因不明の場合や繰り返す場合には早期から耳鼻咽喉科の医師に相談して適切な治療を進めてください。

この記事の監修医師