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「脾臓腫瘍(ひぞうしゅよう)」は再発リスクが高い?症状や予後について解説!

 公開日:2023/08/15
「脾臓腫瘍(ひぞうしゅよう)」は再発リスクが高い?症状や予後について解説!

脾臓には古い赤血球を破壊して除去したり、血小板を蓄えたりする役割があります。リンパ球もたくさんあり、免疫機能にも関わりが深い臓器です。

脾臓に発症する病気として血液に関する病気がありますが、腫瘍ができる場合もあります。

脾臓に腫瘍ができることは稀なのですが、悪性リンパ腫などの悪性腫瘍ができることもあります。

この記事では脾臓腫瘍について不安を抱えている人向けに、症状や検査・治療方法、予後などを詳しく解説していきましょう。

中路 幸之助

監修医師
中路 幸之助(医療法人愛晋会中江病院内視鏡治療センター)

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1991年兵庫医科大学卒業。医療法人愛晋会中江病院内視鏡治療センター所属。米国内科学会上席会員 日本内科学会総合内科専門医。日本消化器内視鏡学会学術評議員・指導医・専門医。日本消化器病学会本部評議員・指導医・専門医。

脾臓腫瘍(ひぞうしゅよう)の症状

体調の悪い女性

脾臓とはどのようなものですか?

腹部の左上に位置するリンパ器官です。脾臓は、古くなった赤血球を破壊する役割を持ちます。健康な赤血球も脾臓を通りますが、老化したものだけ脾臓に引っかかり処分します。
ほかにも、血液中を流れる血小板を蓄えて、いざという時に放出しているのも特徴のひとつです。血小板は、出血を止めるために活躍する血液細胞です。怪我をした際に血小板の数が少なければ出血がなかなか止まりません。しかし、健康的な脾臓には常に3分の1ほどの血小板が蓄えられており、万が一の事態に備えています。
また、血液中に侵入した病原菌・細菌などのウイルスの処理といった免疫機能を高める役割も担っています。つまり、脾臓は血液の健康を維持するために不可欠な臓器です。

脾臓腫瘍はどのような病気ですか?

脾臓に腫瘍ができる病気です。脾臓に腫瘍ができることはあまりありませんが、悪性リンパ腫のような悪性腫瘍ができる可能性は否定できません。
悪性リンパ腫は、脾臓内のリンパ球とよばれる細胞がガン化する病気です。主に化学療法で対処します。放置しておくと危険なので、場合によっては悪い部分の切除や全摘出を検討する必要があります。また再発リスクが高く、手術後も安心はできません。
そのため、注意を払いながら日常生活を送らなければなりません。

脾臓腫瘍の症状を教えてください。

腫瘍ですから、腫れ・しこりが症状として現れることが多いです。しかし肋骨に守られるような形で身体の内部にある脾臓は、自身で触っても腫れ・しこりの有無は分かりません。健康診断などで偶然発見されるケースが多々あります。
また体重の減少・発熱・倦怠感といった症状の改善が見られない場合は要注意です。全身症状が長引いているときは、我慢せず通院しましょう。
インフルエンザなどの脾臓腫瘍とは別の病気の可能性もありますが、原因不明のケースで精密検査を行ったときに脾臓腫瘍が発覚することも考えられます。

良性の場合は危険性はありませんか?

良性の腫瘍は血管腫・リンパ管腫・過誤腫・嚢胞などです。本当に良性なのか、それとも良悪中間型の腫瘍なのかといった判別が重要視され、万が一悪性腫瘍である可能性が捨て切れなければ腫瘍摘出術を実行する可能性は十分あります。
ただし、良性だと確定診断できる場合は経過観察による対応が可能です。

脾臓腫瘍(ひぞうしゅよう)の検査と治療

検査

脾臓腫瘍の検査方法を教えてください。

主に腹部に超音波をあてて検査します。人間ドックの検査にもある項目なので、健康診断等を利用して健康維持に努めるのもおすすめです。超音波検査時に脾臓に黒いしこり・周りが黒くて中央部分のみ白いしこり・白と黒が混ざりあっているしこりなどが映った場合は要注意。悪性腫瘍の懸念があるため、精密検査を行うべきです。
上腹部CTなどの画像検査により良性・悪性の判別を行います。CT装置を使用することで、ガス・脂肪により見えにくい部分まで深い観察が可能です。医療機関にもよりますが、およそ5〜10分と短時間で撮影が終了するため、あまり不安になる必要はありません。
悪性腫瘍の場合、悪性リンパ腫・血管肉腫・リンパ管肉腫・転移性腫瘍と診断されることが多いでしょう。

どのように確定診断が行われるのでしょうか?

近年、高レベルの画像診断が可能になってきた背景もあり、超音波エコー診断だけでは見つけにくかった脾臓腫瘍が発見される機会が増えてきました。画像診断で間違いなく良性だと判断できれば確定診断と判断されるでしょう。
しかしながら、多くのケースで確定診断が難しいこともあり、悪性腫瘍の可能性が高ければ摘出術を採用する可能性があります。

治療方法を教えてください。

治療方針は脾臓腫瘍の種類により大きく異なります。まずは化学療法・放射線療法・モノクローナル抗体療法・脾臓摘出術など、どういった方針で治療を進めるかを決めます。
悪性リンパ腫などでは化学療法が効果的ですし、摘出術が効果的な場合もあるため一概にはいえません。治療を行っても患者によっては再発するリスクがあるため、何度も受診・治療を行う必要があります。

脾臓の摘出による体への影響はありますか?

脾臓は人体の免疫機能に大きく関わる臓器です。そのため、脾臓を摘出すると免疫機能の一部が失われるため、感染症への耐性が著しく低下してしまいます。なかでも敗血症・播種性血管内凝固症候群を引き起こす確率が高いです。
基本的に腹腔鏡による摘出と開腹術のどちらかで脾臓を摘出します。腹腔鏡の摘出術のメリットは、手術の痕が残りにくいことです。比較的小さな手術創で済むため、治りも早く、術後の経過さえよければ手術翌日から歩けます。
ただし出血を伴う合併症のリスクが高く、安全性の面では開腹術のほうが勝るといえるでしょう。また、小児の脾臓摘出は死亡リスクが50~80%といわれているため、5歳以下の摘出術は行うべきではありません。

脾臓腫瘍(ひぞうしゅよう)の予後

注射

脾臓腫瘍は完治しますか?

完治する可能性はありますが、再発リスクが伴うことも事実です。脾臓腫瘍の有力な候補である悪性リンパ腫の例だと、治療を進めてもリンパ腫細胞が残る場合があります。
このリンパ腫細胞は検査で検出することが難しく、治療が完了したと思っても、検査結果に表れなかったリンパ腫細胞が増殖して再び症状が出ることが考えられます。治療が終了してから2~4年のうちに特に症状がなく、加えて検査結果に異常が見られなければ治ったといえるでしょう。
しかし、再発の可能性がまったくない状態になるにはどのくらいかかるのかは、未だに不明です。日常生活のなかで脾臓腫瘍の症状に近いものが見られたら、すぐにかかりつけの病院を受診すべきでしょう。

手術後に気をつけるべきことを教えてください。

脾臓が機能しないことによる感染リスクの低減を優先すべきです。肺炎球菌などの細菌への防御機能が著しく下がるため、重度の感染症リスクが生涯を通してつきまといます。患者はもちろん、その家族とともに感染症への配慮が必要です。
発熱時はすぐに病院診断を受け、マラリアなどの感染予防のため熱帯地域への旅行も控えなければなりません。万が一熱帯地域の旅行が避けられない場合は、医師に相談したうえでマラリア予防薬を内服しましょう。
また、定期的なワクチン接種も重要です。肺炎球菌に対するワクチン接種をはじめ、インフルエンザの不活性ワクチンの毎年接種も欠かせません。

最後に、読者へメッセージをお願いします。

感染症の防御機能を持つ脾臓は非常に大切な臓器です。しかしながら脾臓腫瘍をはじめ、脾臓の病気は発見しにくいため、定期的な健診の受診を怠ってはいけません。
もし、脾臓腫瘍の可能性ありと診断を受けたらすぐに病院へ向かってください。ほとんどの病気に対していえることは、早期発見・早期治療が重要ということです
腫瘍を放置しておいても改善される可能性は低く、発熱や倦怠感に悩まされるでしょう。ひとりで悩まず家族に相談するのも大切です。よい方向へと導けるように信頼できる人たちに寄り添ってもらいましょう。

編集部まとめ

医療従事者
脾臓腫瘍の要点をまとめると以下の通りです。

  • 脾臓は細菌・病原菌などを防御する免疫機能を持つ
  • 脾臓に腫瘍ができるのは稀で、健康診断を受けて発覚することもある
  • 脾臓腫瘍は摘出術にて治療可能だが、感染リスクが高まる恐れがある
  • 脾臓摘出後は、今まで以上に感染症対策を行う必要がある

発熱・倦怠感・体重減少といった症状が長く続く場合は、医師に相談して精密検査を受けてみることをおすすめします。

この記事の監修医師