「肘内障」という幼児に見られる脱臼のような病気はご存知ですか?医師が監修!
公開日:2023/08/01

幼児の腕を引っ張ったときに、急に痛がって泣き出し腕が動かなくなってしまうことがあります。
骨折でもしたのかと心配になりますが、もしかするとそれは、肘内障(ちゅうないしょう)かもしれません。
普段聞き慣れない名前かもしれませんが、実は決して珍しくない疾患なのです。
この記事では、幼児に多くみられる肘内障について解説しています。小さなお子様がいるご家族は特に、肘内障について知っておいてください。

監修医師:
郷 正憲(徳島赤十字病院)
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徳島赤十字病院勤務。著書は「看護師と研修医のための全身管理の本」。日本麻酔科学会専門医、日本救急医学会ICLSコースディレクター、JB-POT。
目次 -INDEX-
肘内障の原因や確認方法

肘内障とはどのような状態ですか?
肘内障とは、輪状靭帯と呼ばれる肘の靭帯から橈骨頭(とうこっとう)が外れかかっている、いわゆる亜脱臼を起こしている状態です。
俗にいう「腕が抜けた」状態と捉えて頂いて良いでしょう。
俗にいう「腕が抜けた」状態と捉えて頂いて良いでしょう。
原因を教えてください。
肘内障は、腕を引っ張ったときに多く発症します。
具体的には親が転んだ子供を起こそうと腕を引っ張ったり、遊んでいるときにお友達に引っ張られたりして発生することが多いようです。
その他にも遊んでいて転んだ際に不自然に手をついたら突然動かせなくなってしまったケースも発生しています。また1歳未満の赤ちゃんの場合には、寝返りが原因となる場合もあります。
多くの場合は腕を引っ張ったりねじったりしたときに発生していますが、原因がはっきりしない場合も少なくありません。子供のうちは橈骨頭が小さいため、腕に引っ張りとねじりの力が加わると骨の回転を支えている輪状靭帯から抜け出てしまい、肘内障を引き起こしてしまうのです。
具体的には親が転んだ子供を起こそうと腕を引っ張ったり、遊んでいるときにお友達に引っ張られたりして発生することが多いようです。
その他にも遊んでいて転んだ際に不自然に手をついたら突然動かせなくなってしまったケースも発生しています。また1歳未満の赤ちゃんの場合には、寝返りが原因となる場合もあります。
多くの場合は腕を引っ張ったりねじったりしたときに発生していますが、原因がはっきりしない場合も少なくありません。子供のうちは橈骨頭が小さいため、腕に引っ張りとねじりの力が加わると骨の回転を支えている輪状靭帯から抜け出てしまい、肘内障を引き起こしてしまうのです。
肘内障の症状は?
突然肘を痛がって曲げなくなったり、腕をやや曲げた状態で下げたまま動かさなくなったりします。腕を下げた状態を保っているときは痛みが治まっていますが、腕に触れようとすると痛がって泣き出すこともあります。
痛い方の手首をもう片方の手で支えるように抑えて動かさなくなることもあり、手首を痛めているように見える場合もあるため注意してください。激しい痛みはあるものの、関節腫脹・熱感・発赤などの症状はみられません。
痛い方の手首をもう片方の手で支えるように抑えて動かさなくなることもあり、手首を痛めているように見える場合もあるため注意してください。激しい痛みはあるものの、関節腫脹・熱感・発赤などの症状はみられません。
肘内障の確認方法を教えてください。
受傷時の状況・痛みの程度・肘を下げたまま動かさない様子などを総合して肘内障を疑います。腕を下げていれば痛みが治まっているため、泣き止んでいる子もいるでしょう。
ただし痛みが治まっているだけで治っているわけではありません。肘内障を確認するためには、バンザイのポーズができるかどうかを見ると分かりやすいです。
肘内障であれば、痛みのために腕を上げられません。ただし骨折などの可能性が残っている場合は、更なる検証が必要です。
痛む場所・腫れがないか・指の変色がないか・触られている感触があるかなどの確認を行い、痛みの原因を明らかにしていくのです。
受診時には骨折や脱臼と見分けるため、レントゲンを撮影して骨や関節に異常がないかを確認する場合もあります。ただし実際には問診と診察を経て、患部に腫れなどがなく骨折や脱臼の可能性が完全に否定されれば、レントゲンによる検査を行わないケースも存在します。
ただし痛みが治まっているだけで治っているわけではありません。肘内障を確認するためには、バンザイのポーズができるかどうかを見ると分かりやすいです。
肘内障であれば、痛みのために腕を上げられません。ただし骨折などの可能性が残っている場合は、更なる検証が必要です。
痛む場所・腫れがないか・指の変色がないか・触られている感触があるかなどの確認を行い、痛みの原因を明らかにしていくのです。
受診時には骨折や脱臼と見分けるため、レントゲンを撮影して骨や関節に異常がないかを確認する場合もあります。ただし実際には問診と診察を経て、患部に腫れなどがなく骨折や脱臼の可能性が完全に否定されれば、レントゲンによる検査を行わないケースも存在します。
何歳くらいの子供に起こりやすいですか?
肘内障は生後6ヶ月くらいの赤ちゃんと2〜6歳の幼児に多くみられ、7歳以上になると発症頻度が低くなります。
これは骨格や靭帯が発達するにつれて亜脱臼が起きなくなるためです。
また、肘内障になりやすい子となりにくい子がいることも分かっており、男児より女児に、右手より左手に起きやすい特徴があります。
これは骨格や靭帯が発達するにつれて亜脱臼が起きなくなるためです。
また、肘内障になりやすい子となりにくい子がいることも分かっており、男児より女児に、右手より左手に起きやすい特徴があります。
肘内障の治療方法や整復方法

病院を受診したほうがよいのはどのようなケースですか?
肘内障と似た症状を訴えていても、骨折しているケースがあります。
肘内障を疑う症状が出た場合には、早めに小児科や整形外科を受診しましょう。
- 痛い部分が腫れてきた
- 手の指が変色してきた
- 腕を動かしていないときでも常に痛みがある
肘内障を疑う症状が出た場合には、早めに小児科や整形外科を受診しましょう。
病院ではどのように治療を行いますか?
骨折など他の原因が否定され、肘内障の診断が下りたら徒手整復を行います。これは、器具や麻酔などを使わずに外れかけた関節を元の位置へと戻す方法です。整復法には2つの方法があります。
1つは撓骨頭の部分に片手を置いて圧をかけ、もう一方の手を使って腕を内側方向へ倒すように圧をかける「回内法」です。
もう1つは回内法と同じく撓骨頭の部分に片手を置いて圧をかけた状態で腕を外側方向へと倒し、更に肘を曲げる「回外・屈曲法」です。どちらの整復法でも成功すると「コクッ」という音がして肘が元の位置に収まります。
整復が成功するとほどなくして痛みも解消されるため、大泣きしていた子供も泣き止むことでしょう。スムーズに腕が動き、バンザイのポーズも難なくできるようになります。
1つは撓骨頭の部分に片手を置いて圧をかけ、もう一方の手を使って腕を内側方向へ倒すように圧をかける「回内法」です。
もう1つは回内法と同じく撓骨頭の部分に片手を置いて圧をかけた状態で腕を外側方向へと倒し、更に肘を曲げる「回外・屈曲法」です。どちらの整復法でも成功すると「コクッ」という音がして肘が元の位置に収まります。
整復が成功するとほどなくして痛みも解消されるため、大泣きしていた子供も泣き止むことでしょう。スムーズに腕が動き、バンザイのポーズも難なくできるようになります。
自宅で整復しても大丈夫ですか?
ネットで検索すると治し方の動画が出てきますが、自宅での整復はリスクが伴います。間違った方向へ腕を引っ張ると、悪化してしまうこともありますので注意が必要です。
また整復が難しいケースや、肘内障だと思ったけれど実は骨折していたといったケースもあるため、肘内障を疑う場合は医療機関を受診してください。
また整復が難しいケースや、肘内障だと思ったけれど実は骨折していたといったケースもあるため、肘内障を疑う場合は医療機関を受診してください。
肘内障の過ごし方や予防方法

治った後の過ごし方を教えてください。
腕を痛がったりかばったりする様子がなければ普段どおりに過ごして構いませんが、可能な限りはアクティブに遊びすぎないように注意して過ごしたいものです。治療後も痛みが続くようでしたら、肘内障以外の原因が考えられます。
気になる症状が残っている場合は、整形外科を受診してください。また治療後しばらくの間は再発しやすいため、腕を強く引っ張らないように注意が必要です。
気になる症状が残っている場合は、整形外科を受診してください。また治療後しばらくの間は再発しやすいため、腕を強く引っ張らないように注意が必要です。
肘内障の予防方法は?
肘内障のおよそ50%は、手を引っ張ったことが原因で起こっています。そのためお子様の手を引っ張らないことが一番の予防方法といえるでしょう。
とはいえ危険回避のため、つい子供の手を引っ張ってしまうこともあるかと思います。お子様と手を繋ぐ際は、肘内障を起こしていない方の手を繋ぐなどの配慮をすると良いでしょう。
どうしても手を引っ張らなくてはならないシーンに遭遇したときは、肘より上の腕を持つようにしてください。また普段から大人と手を繋ぐときは、子供が大人の指を握るように繋ぐ癖を付けておくと、肘内障を引き起こすリスクが減らせます。
とはいえ危険回避のため、つい子供の手を引っ張ってしまうこともあるかと思います。お子様と手を繋ぐ際は、肘内障を起こしていない方の手を繋ぐなどの配慮をすると良いでしょう。
どうしても手を引っ張らなくてはならないシーンに遭遇したときは、肘より上の腕を持つようにしてください。また普段から大人と手を繋ぐときは、子供が大人の指を握るように繋ぐ癖を付けておくと、肘内障を引き起こすリスクが減らせます。
肘内障は一度起こると繰り返しますか?
肘内障は一度起こると繰り返しやすい特徴を持っています。特に治療後の数日間は再発しやすいため、注意が必要です。
元気なお子様の動きを制限することは難しいとは思いますが、できるだけ肘に無理な力が加わらないような生活を心がけましょう
また、肘内障は輪状靭帯の成長とともに発生率が低下します。何度も繰り返している子でも、7歳以上になると発生頻度の減少がみられます。
逆に10歳を過ぎても繰り返すようなら、骨や腱にトラブルが起きているかもしれません。整形外科を受診し、原因を明らかにして適切な治療を受けましょう。
元気なお子様の動きを制限することは難しいとは思いますが、できるだけ肘に無理な力が加わらないような生活を心がけましょう
また、肘内障は輪状靭帯の成長とともに発生率が低下します。何度も繰り返している子でも、7歳以上になると発生頻度の減少がみられます。
逆に10歳を過ぎても繰り返すようなら、骨や腱にトラブルが起きているかもしれません。整形外科を受診し、原因を明らかにして適切な治療を受けましょう。
最後に、読者へメッセージをお願いします。
肘内障は6歳までの幼児に多くみられ、決して珍しいものではありません。小さなお子様のいるご家族にとっては、ごく身近に潜んでいる疾患といえるのです。
腕を引っ張ったときや腕を下にして転んだときに起こりやすく、急に痛がり始めたり腕をやや曲げた状態で下げたまま動かさなくなったりしたときには肘内障が疑われます。しかし腕を痛がる中には骨折しているケースなどもあるため、安易な自己判断は危険です。
また、ネットで検索すると自宅でできる整復法の動画も出てきますが、リスクを伴うためやめておきましょう。肘内障が疑われた場合には、早めに整形外科を受診してください。
腕を引っ張ったときや腕を下にして転んだときに起こりやすく、急に痛がり始めたり腕をやや曲げた状態で下げたまま動かさなくなったりしたときには肘内障が疑われます。しかし腕を痛がる中には骨折しているケースなどもあるため、安易な自己判断は危険です。
また、ネットで検索すると自宅でできる整復法の動画も出てきますが、リスクを伴うためやめておきましょう。肘内障が疑われた場合には、早めに整形外科を受診してください。
編集部まとめ

「肘内障」という疾患名は、普段あまり耳にする機会がない人もいるのではないかと思います。
しかし実は、幼児が遭遇する可能性が最も高い外傷の1つだといわれており、小さなお子様のいるご家族にとっては身近な存在なのです。
寝返りを打ったり転んだりした拍子に発生することもあるため、完全に防ぐことが難しい疾患でもあります。
手を引っ張らない・肘内障を起こしにくい方の手を繋ぐ習慣を付ける・危険回避の際は上腕部を引っ張るなど、大人ができる予防法は普段から実践しておきたいものです。
もし肘内障を疑うような症状が現れた場合には、速やかに整形外科を受診しましょう。