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「絨毛がん」という妊娠をきっかけに発症するがんはご存じですか?医師が監修!

 公開日:2023/07/24
「絨毛がん」という妊娠をきっかけに発症するがんはご存じですか?医師が監修!

絨毛とは子宮内に作られた胎盤を構成する組織のことで、この絨毛の細胞から発生するのが絨毛がんです。

主に妊娠をきっかけに発症し、特に胞状奇胎になった患者さんの1%〜2%がなるとされています。

また進行が早く、脳や肺などに転移しやすい悪性度が高いがんとなっています。そのため、無症状で進行したのち、初期症状が出たときにはすでに転移している場合もあります。

しかし、最近では絨毛がんに抗がん剤がよく効くことがわかってきており、早期発見できれば子宮を摘出せずに抗がん剤のみでの治療も可能です。

本記事では、絨毛がんの原因・症状・治療などについてわかりやすく説明していきます。

また絨毛がんの予後や治療後の妊娠の可否についても説明していきますので、ぜひ最後までご覧ください。

馬場 敦志

監修医師
馬場 敦志(宮の沢スマイルレディースクリニック)

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筑波大学医学群医学類卒業 。その後、北海道内の病院に勤務。 2021年、北海道札幌市に「宮の沢スマイルレディースクリニック」を開院。 日本産科婦人科学会専門医。日本内視鏡外科学会、日本産科婦人科内視鏡学会の各会員。

絨毛がんの原因や症状

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絨毛がんとはどのようながんですか?

絨毛がんとは、絨毛細胞から発生するがんです。絨毛は子宮内に作られた胎盤を構成する組織のことで、胎児との酸素や栄養素などの交換をこの絨毛を通じて行っています。
このがんは進行が早く全身に転移しやすいのが特徴で、悪性度の高いがんです。また血行性転移がしやすいことから、肺・肝臓・脳などに転移しやすいのが特徴です。

絨毛がんはどこに発生するのですか?

絨毛がんには「妊娠性」と「非妊娠性」の2種類が存在します。
妊娠性の場合、子宮内に作られた胎盤に存在する絨毛細胞から発生し、非妊娠性の場合では卵巣や精巣などの生殖細胞から発生します。そのため絨毛がんは種類によっては女性のみならず、男性にもかかる可能性のある病気です。
また非妊娠性は妊娠性よりも治りにくい特徴を持っています。

原因を教えてください。

原因は明確にはわかっていませんが、妊娠関連が主な原因とされています。特に胞状奇胎になった患者さんの1〜2%が、絨毛がんとなっています。
胞状奇胎とは異常妊娠の1つで子宮内で異常な受精卵が増殖し、このとき胎児が育たずに絨毛細胞がむくんでぶどうの房状になる病気です。この胞状奇胎は若年妊娠(15歳以下)または高齢妊娠(35歳以上)の方が発症しやすいです。
また正常分娩や流産などの胞状奇胎以外の場合でも、稀に発症することがあります。
さらに発症までの期間には個人差があり、長い場合だと妊娠終了から数年以上になることもあります。

絨毛がんの症状は?

最も多い症状は不正出血です。また腹痛を伴わない突発的な出血が見られることもあります。
絨毛がんは妊娠初期に発症しやすく、不正出血があっても妊娠の影響だと勘違いする可能性が高いので注意が必要です。
一方で無症状で進行していき、転移病変の症状によって気付くこともあります。
例えば肺や脳などに転移があった場合には、せきが止まらない・頭痛が続くなどといった症状が現れるため、これらの症状があってから初めて絨毛がんと気付く場合があります。このときにはすでにがんが進行している可能性もあるので、注意が必要です。

絨毛がんの検査や治療方法

提案する医師

どのような検査が行われますか?

検査方法は、血液検査と画像検査の2つです。
絨毛がんが発症すると、胎盤から分泌されるhCG(ヒト絨毛性ゴナドトロピン)というホルモンが上昇します。そのためまずは血液検査を行い、hCG値が上がっていないかを確認します。この血液検査を行うことで、肝臓機能や腎臓機能の評価も可能です。
続いて絨毛がんを疑われた場合には、以下の3つの画像検査が行われます。

  • 超音波検査
  • MRI検査
  • CT

超音波検査およびMRI検査は、主に子宮内の病巣を評価するために用いられます。MRI検査では造影剤を用いることで画像コントラストが高くなるため、より診断しやすいです。
一方でCT検査は肺に転移病変がないかを調べるために使用されます。これは絨毛がん患者の2/3が肺に転移するためです。
また脳や腹部(肝臓や腎臓など)の転移病変も調べられるため、全身検索にCT検査を使用します。

どのように診断されますか?

がんであるかを診断する確定診断を行うためには、血液検査や画像診断だけでなく、病理診断も行う必要があります。病理診断とは患者さんから採取した細胞や組織を顕微鏡で観察して診断するものです。
しかし、絨毛がんで病理診断を行うには子宮を摘出しなければなりません。そのため、寛解後に妊娠を望む方の場合は確定診断はせず、血液検査と画像診断のみで診断します。
後述するように絨毛がんは抗がん剤で治癒が可能ながんであるため、確定診断はせず、鑑別診断のみで判断することが多いです。

治療方法を教えてください。

一般的な治療方法は、手術と化学療法(抗がん剤治療)です。最近では絨毛がんには抗がん剤がよく効くことがわかってきたので、化学療法のみでの治療が行われています。
化学療法のみで治療を行った場合でも寛解する確率は9割以上と非常に高いです。なお、絨毛がんが転移した病変には放射線治療が用いられる場合もあります。

手術が行われるのはどのようなケースですか?

一般的に化学療法のみでの治療が可能です。しかし、抗がん剤があまり効かない場合や出血の制御が効かない場合には子宮摘出術が行われます。
また転移した臓器によっては手術が必要です。例えば、肺に転移した場合には化学療法での治療は可能ですが、脳に転移した場合には手術(開頭術)や放射線治療が行われます。

絨毛がんの予後や妊娠

親子

絨毛がんの予後について教えてください。

絨毛がんの5年生存率はおよそ90%と非常に治療成績が良いです。しかし、他のがんと同様に全身に転移することがあります。
絨毛がんでは、特に肺・肝臓・脳・腎臓などに転移する可能性が高いです。遠隔転移した場合は、予後は著しく悪化します。

絨毛がん治療後の妊娠は可能ですか?

絨毛がんの治療終了後は、1年以内の再発が多いのが現状です。
この期間内に妊娠をしてしまうと、上述したhCGの値が上昇し、がんの再発と妊娠の有無の判断が付かなくなります。そのため、治療終了後の1年間は避妊が必要となります。
1年間、hCGの値が正常値であれば妊娠の許可が出るので、まずは治療に専念しましょう。なお抗がん剤を使用した場合でも、流産や早産、また奇形児の発生率は抗がん剤を使わなかったときと変わらないので、ご安心ください。

 最後に、読者へメッセージをお願いします。

絨毛がんは主に妊娠をきっかけに発症します。そのため、定期的に検診を受け胎児の状態をしっかり確認することをおすすめします。
またもしも胞状奇胎が見つかり絨毛がんになったとしても、転移がなければ抗がん剤のみで治療できます。したがって、常にご自身の体調変化に気を配り、何か変化があればすぐに病院で検査を受けましょう。
絨毛がんの90%は抗がん剤のみで治療できるので、諦めずに前向きに治療を受けましょう。また子宮の摘出をせず治療終了後hCGの上昇が1年間見られなければ、これまで通りに妊娠することも可能です。

編集部まとめ

笑顔の医師
絨毛がんは主に妊娠がきっかけで発症することが分かりました。また絨毛がんは進行が早く、脳・肺・肝臓などに転移することが分かりました。

さらに転移してから絨毛がんに気付く場合もあるため、何か長引く症状があったらすぐに受診することが大事です。しかし、絨毛がんになったからといって慌てることはありません。

絨毛がんは抗がん剤がよく効くため、適切な治療を受ければ寛解に向かうことができます。また子宮を摘出しなければ、治療が終了してから1年後に妊娠が可能となります。

そのため、何か身体の症状で疑問や不安に思うことがあったら、迷わずに病院へ行き検査を受けましょう。

この記事の監修医師