ストレス性胃炎は、現在「機能性ディスペプシア」と呼ばれている疾患です。
胃カメラ検査などで、胃に特別な症状がないにもかかわらず、胃の機能が低下したり、消化不良を引き起こしたりしている症状がストレス性胃炎の可能性があるものです。胃が張ったりみぞおちが痛んだりする症状がでます。
ストレス性胃炎になると、ちょっとしたことで胃の痛みを感じますので普段の生活に大きな影響を与えてしまいます。ストレス性胃炎の症状・原因を理解して正しい治療ができるようにしましょう。
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大阪市立大学(現・大阪公立大学)医学部医学科卒業。大阪急性期・総合医療センター外科後期臨床研修医、大阪労災病院心臓血管外科後期臨床研修医、国立病院機構大阪医療センター心臓血管外科医員、大阪大学医学部附属病院心臓血管外科非常勤医師、大手前病院救急科医長。上場企業産業医。日本外科学会専門医、日本病院総合診療医学会認定医など。著書は「都市部二次救急1病院における高齢者救急医療の現状と今後の展望」「高齢化社会における大阪市中心部の二次救急1病院での救急医療の現状」「播種性血管内凝固症候群を合併した急性壊死性胆嚢炎に対してrTM投与および腹腔鏡下胆嚢摘出術を施行し良好な経過を得た一例」など。
ストレス性胃炎の原因や症状
ストレス性胃炎が起こる原因を教えてください。
ストレス性胃炎の原因は慢性的なストレスが大半です。また、神経質な性格・食習慣・睡眠不足・過労・過度のアルコールやカフェイン摂取などさまざまな要因が複合的に関係しています。ストレス・長期にわたる肉体疲労・食生活の乱れは、胃の機能と運動を低下させ、すぐにお腹いっぱいになります。また、少量の食べ物でも胃酸が多く出過ぎたり、通常量の胃酸であっても刺激を感じたりする胃酸過多による胃の知覚過敏も原因のひとつです。過剰な胃酸の分泌によって十二指腸にまで胃酸が流れ込むことが原因で、胃の運動機能を低下させる症状を引き起こします。
ストレス性胃炎の症状は?
ストレス性胃炎は、人によって胃のさまざまな症状が慢性的に顕著にあらわれます。最も多く感じるのは胃痛です。胃の上部や中央部に不快感や痛みを感じます。痛みはなんとなく痛いといった軽度のものから食後にくる中程度のものまでさまざまです。痛みは感じないが消化不良を感じることもあります。食べた物を消化しきれていない感覚があり、膨満感や胃もたれになります。吐き気や嘔吐の症状もストレス性胃炎の特徴的な症状です。
また、これにより、食欲が減退したり食べ物への興味が失われたりする場合があります。ストレス性胃炎は心身のバランスとの関係が深いため、不眠症・不安感・集中力低下などの心理的な症状があらわれることもあり、注意が必要です。
ストレス性胃炎が続くとどうなりますか?
ストレス性胃炎が長期間続くと、胃に大きな負担を長期的にかけてしまうため、さらに重大な胃の損傷を引き起こします。ストレス性胃炎は胃の炎症を引き起こすため、炎症が長期間続くことで胃の組織に損傷が生じる可能性があります。これにより起こりうるのが、消化機能や吸収能力の低下です。また、胃の粘膜が傷つくことで腫瘍の発生を促し、胃潰瘍に発展するケースもあります。普段の生活の中で特に大きく影響を与えてしまうのが食事です。ストレス性胃炎が原因で食欲不振を引き起こしたり、食べ物への過敏感から栄養が偏ったりします。
その結果として起こる可能性が高まるのが、十分な栄養を摂ることが難しくなり、栄養不足や体重減少が起こったりすることです。直接的な胃の症状だけでなく、心理的な影響も考えられます。慢性的な胃の不快感や痛みは、日常生活にストレスを与え、うつ症状や不安障害の要因になるかもしれません。
ストレス性胃炎の受診と治療方法
病院を受診する目安を教えてください。
ストレス性胃炎は、なんとなく胃が重いといったような症状が続いた場合に病院で診察や検査を受けて初めて診断されます。そのため症状がある程度進まなければ気づかない場合も多いです。普段から意識して特に思い当たる原因がないのに胃もたれや胃痛が続くといった場合は、なるべく早めにかかりつけ医に相談しましょう。受診すると多岐にわたる検査を行います。時間がかかる場合もありますが、適切な検査を受けることが大切です。検査で異常が見つかった場合であっても、ストレス性胃炎ではない他の病気の可能性もありますので、かかりつけ医としっかり相談することが大切です。
何科を受診すればよいですか?
ストレス性胃炎は、一般的には胃腸の病気を専門とする消化器内科を受診することになります。ストレス性胃炎は、ストレスや心の状態が原因となって胃の炎症が起こる病態ですが、症状としてあらわれるのは、胃の不快感・胃痛・胃もたれ・食欲不振などです。そのため、消化器内科が担当することが多くなります。しかし、本来の原因がストレスなどの精神的なものである可能性がありますので、心療内科や精神科などの専門医にも相談できます。症状や自分自身の状況に応じて何科を受診するかが決まりますが、まずはかかりつけ医に相談して、適切な診療科を決めましょう。
どのような検査が行われますか?
ストレス性胃炎の検査では、胃の不調の原因となる病気がないことをまず検査で確認します。単純にストレスを感じているから胃の調子が悪いと決めつけてしまうと、胃潰瘍や胃がんなどの悪性疾患を見逃してしまうことがあるからです。そのため、最初にこれら悪性疾患を含む器質的疾患ではないことを検査で確認します。実際には、詳細な問診・身体診察・血液検査・CT検査・内視鏡検査・ピロリ菌の感染有無等の検査を行います。
治療方法を教えてください。
一般的なストレス性胃炎の治療は、投薬によるものです。酸分泌抑制薬・消化管運動機能改善薬・漢方薬・抗うつ薬・抗不安薬などが使われます。また症状によっては、ヘリコバクター・ピロリ除菌療法などを用いたり、心理療法などを行ったりもします。
ストレス性胃炎は症状が多様であることから、しっかりとした治療方針のもと複数の薬剤を用いて治療することが大切です。さらに、病院での治療だけでなく、普段の生活における改善も治療に大きく影響します。食生活を見直したり、ストレスの原因をなくすための工夫をしたりすることも良い方法です。
ストレス性胃炎の注意点や予防方法
日常生活での注意点を教えてください。
ストレス性胃炎の治療では、投薬治療や精神的アプローチとともに生活習慣の改善も欠かせません。ストレスによる胃のダメージを減らすためにも、生活習慣の見直しは重要です。特に注意したいのは食事です。1回の食事量を控えめにして、その分3食または4食に分けて 食べます。早食いをせずよく噛んでゆっくり食べたり、バランスを考えた食事を摂ったりすることも重要です。次に気をつけたいのは、睡眠を中心とした生活リズムの改善です。習慣化している場合は変えることが難しいですが、自律神経のバランスを良い状態に保つためにも必要なので、少しずつでも改善していきましょう。
ストレス性胃炎を予防する方法はありますか?
ストレス性胃炎は、しっかりと原因が特定できる病気ではないので、これをすれば予防できるといったものはありません。しかし、精神的要因・ストレス・胃酸分泌・感染を予防することはできる可能性があります。普段から、ゆったりとした気持ちを持ち笑顔であることを意識するだけで変わってきます。また、睡眠をしっかりととったり、飲みすぎや食べ過ぎに注意をしたりといったことも重要です。
最後に、読者へメッセージをお願いします。
ストレス性胃炎は、はっきりとした症状が出にくい病気であるため、気づくことが遅くなり重症化する危険があります。単発的な症状であれば気にしない胃の不調やストレス症状であっても、長く続いているときや、下血・吐血・激しい痛みなどが胃にあるときなどはストレス性胃炎の可能性が大きいです。早めにかかりつけ医に相談して対策をとりましょう。
編集部まとめ
普段から生活習慣の改善や食事に気をつけることで発症を減らすことができる病気は少なくありません。今回取り上げたストレス性胃炎もそのひとつです。
普段の生活に慣れている場合、習慣を変えることは簡単にいきませんが、少しずつでも試してみることが重要です。
食事に関しては特に刺激物を避けるようなメニューを積極的にとるなど、胃にやさしい取り組みから始めてみることもおすすめです。
睡眠は、寝る前に刺激のある行動や食事をしないように心がけます。これにより質のよい睡眠をとることができます。
また、生活習慣の改善は、ストレスへの対策にも繋がるので効果的です。ストレスは溜め込まないようにすることが重要ですので、ストレス発散の方法を工夫しましょう。
人によってストレスへの対処方法はさまざまです。自分なりに工夫して、少しでもリスクを減らすように心がけましょう。