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「ラクナ梗塞」という脳梗塞はご存知ですか?原因や症状・後遺症など徹底解説!

 公開日:2023/07/26
ラクナ梗塞

ラクナ梗塞は脳梗塞のひとつです。「一度は耳にしたことがあるけど、どのような病気なのかよく分からない」と思う方も多いのではないでしょうか。

以下の記事ではラクナ梗塞の原因や治療法など、ラクナ梗塞に関する様々な疑問について解説しています。

「自分や家族がラクナ梗塞になった場合、どのような治療が行われるのか知りたい」と思う方は、ぜひ参考にしてください。

甲斐沼 孟

監修医師
甲斐沼 孟(上場企業産業医)

プロフィールをもっと見る
大阪市立大学(現・大阪公立大学)医学部医学科卒業。大阪急性期・総合医療センター外科後期臨床研修医、大阪労災病院心臓血管外科後期臨床研修医、国立病院機構大阪医療センター心臓血管外科医員、大阪大学医学部附属病院心臓血管外科非常勤医師、大手前病院救急科医長。上場企業産業医。日本外科学会専門医、日本病院総合診療医学会認定医など。著書は「都市部二次救急1病院における高齢者救急医療の現状と今後の展望」「高齢化社会における大阪市中心部の二次救急1病院での救急医療の現状」「播種性血管内凝固症候群を合併した急性壊死性胆嚢炎に対してrTM投与および腹腔鏡下胆嚢摘出術を施行し良好な経過を得た一例」など。

ラクナ梗塞の原因や症状

頭痛

ラクナ梗塞とはどのような病気ですか?

ラクナ梗塞とは、脳実質を穿通する小動脈の狭窄性病変のことで、脳の深い部分を流れる細い血管が詰まり生じる脳梗塞の1つです。
主幹脳動脈から枝分かれして、脳実質を穿通する小動脈である「穿通枝」は、脳の深い部分に酸素や栄養を送り届けるのが役割です。この穿通枝が詰まると、脳の深い部分に血液が行きわたらなくなり、脳細胞が壊死することで様々な症状を引き起こします。

ラクナ梗塞の原因は?

 ラクナ梗塞は動脈硬化によって引き起こされることが分かっており、具体的にはそれぞれ以下のような理由により血栓ができやすくなります。

  • 加齢・喫煙・飲酒・高血圧・糖尿病による動脈硬化の促進される
  • 喫煙や飲酒には血管を収縮させる作用があり血栓ができやすくなる
  • 高血圧や加齢に伴う血管老化では、血液の循環不良が起こりやすくなり、血栓ができやすくなる
  • 糖尿病により高血糖の状態が続くと、脳の血管が傷つき、傷ついた部分から血塊が発生することで血管が詰まりやすくなる

喫煙・飲酒・高血圧・糖尿病などの生活習慣が動脈硬化の原因となり、ラクナ梗塞の発生と深く関係しているのが明らかです。

症状について教えてください。

ラクナ梗塞の一般的な症状は以下の通りです。

  • 口の歪みなどの顔面神経麻痺
  • 言葉を発しにくくなる言語障害
  • 立ち上がって歩くことが難しくなる歩行困難や運動麻痺
  • 頭痛
  • 手足の感覚に異常を来す感覚障害

一方でラクナ梗塞は梗塞巣が小さいため、症状は無症状もしくは軽微で経過し、気付かないケースが多くみられます。特に高齢者の場合、生活に支障をきたすほどの症状でなければ、「年のせい」や「加齢に伴う変化」として済まされてしまうことも多いでしょう。
例えば、視床梗塞によって指・手掌・同側口角周囲にみられる手口感覚症候群や異常感覚は見逃されやすくなります。ラクナ梗塞は無症状や軽微症状で経過することが多く、起きている症状にも気付きにくいのが特徴です。

ラクナ梗塞の好発部位はどこですか?

ラクナ梗塞の3分の1はレンズ核に発生しており、特に被殻に多くみられ、続いて橋・視床・内包・側脳室外側などの白質に好発します。
また、ラクナ梗塞は複数発生している「多発性ラクナ梗塞」となっている場合が多いのが特徴です。ラクナ梗塞は、大脳基底核・視床・橋などの終末動脈である穿通枝動脈の梗塞、もしくはアテローム血栓性脳梗塞の場合、皮質下の梗塞がよく確認されます。

ラクナ梗塞の検査や治療法

診察

すぐに受診すべき症状を教えてください。

 すぐに受診すべき症状は顔の麻痺・腕や足の麻痺・言語障害の3つです。顔の麻痺では、片側の口角が下がったり、そこからよだれが出たりする症状がみられ、笑顔を作る際に左右同程度に口角が上がらない状態となります。
腕の麻痺では、手の平を上にして両手を伸ばし、床と水平になるまで挙げたままキープ可能かを確認します。片腕だけ力が入らず下がり落ちてしまう状態の場合、腕の麻痺の前兆の可能性が高いです。
言語障害とは、言葉がうまく出てこないことや、呂律が回らないなどの症状を指し、短い文章をいつも通りしゃべることができるかを確認します。これら3つの症状のうち、1つでも当てはまる症状がある場合はすぐに受診すべきです。

どのような検査が行われますか?

ラクナ梗塞の検査には問診・神経学的検査・画像診断があります。問診とは医師による直接的な診察で、実際に起きている症状などから総合的に診察します。
神経学的検査とは、神経の伝導性などについての検査で、反射・感覚・筋力・神経の評価に役立てる検査です。
ラクナ梗塞は脳ドッグ等で行われるMRI画像の検査結果で診断でき、早期に発見したい場合には脳MRI検査の拡散強調画像という撮影方法が用いられます。
また拡散強調画像とフレア画像を組み合わせて、ラクナ梗塞の中から比較的最近発症したものを区別することも可能で、微小出血を伴うラクナ梗塞には「T2スター強調画像」が効果的です。
血管周囲腔拡大はフレア画像でも脳脊髄液と等信号を呈するため、ラクナ梗塞はフレア画像において、T2強調画像と同様に高信号となります。
そのためフレア画像の利用により、脳脊髄液との信号強度差によって、鑑別性能が大きくなるのが特徴です。

治療方法を教えてください。

超急性期から慢性期にかけて、発症経過日数によって治療方法は変わります。ラクナ梗塞は基本的に症状が軽症である場合が多く、点滴治療が第一選択となります。
点滴治療とは血液の固まりができるのを抑える「抗血栓薬」や、脳細胞を保護する薬の「脳保護薬」などを使用した治療です。
一方で、発症から4.5時間以内かつ症状が強い場合や出血リスクが低い場合は、t-PAと呼ばれるアルテプラーゼの静脈注射による血栓溶解療法が行われます。
発症4.5時間以降から発症14日以内の場合は、経口抗血小板薬であるアスピリンの投与もしくは、トロンボキサン合成酵素阻害剤であるオザグレルナトリウム点滴の静脈注射を実施します。発症から15日以降の場合の治療は以下の3種類です。

  • 抗血小板療法
  • 脳循環代謝薬の投与
  • 頸動脈内膜剥離術や頸動脈ステント留置術などの外科的治療

このようにラクナ梗塞の治療方法は発症経過日数によって変わります。

手術が行われるケースはあるのですか?

ラクナ梗塞に対して頸動脈内膜剥離術(CEA)や頸動脈ステント留置術(CAS)などの手術が行われるケースがあります。
頸動脈内膜剥離術は、頸部の内頸動脈に血管が狭くなっている状態である狭窄が確認された場合、動脈硬化で厚くなった血管壁を取り除く手術です。
ラクナ梗塞の原因となっている病巣を取り除くことで再発を予防します。頸動脈ステント留置術は、金属製のメッシュ状の筒(カテーテル)を狭窄部に留置して広げる手術です。
ラクナ梗塞の原因となっている病巣を金属で覆い、広げることで再発を予防します。

ラクナ梗塞のリハビリや後遺症

リハビリ

どのようなリハビリが行われますか?

ラクナ梗塞に対するリハビリは、麻痺そのものと、それに付随した臥床(がしょう)による筋力低下などの機能回復の遅れを最小限とするための早期離床と機能訓練の実施です。
どちらも医師の指示のもと、運動禁忌や心疾患の有無を考慮した上で離床訓練が開始され、血圧変動等のバイタルサインのチェックと並行しながらリハビリを開始します。
早期離床訓練とはベッドから離れて臥床しない時間を作ることであり、梗塞の拡大リスクに合わせて介入方法を変えながら実施します。
具体的な訓練方法はベッド上でのリハビリ・ベッドサイドで座位の保持・ベッドサイドにて麻痺の無い健側を用いて起立と着席を繰り返すものです。
これらは患者の疲労を考慮しながら実施し、リハビリ内容を拡大できそうであれば麻痺側下肢がある場合には下肢装具を用いて、歩行訓練へと移行します。
機能訓練とは運動機能の他、日常生活や認知などの機能を回復させることを目的とした訓練で、ラクナ梗塞によって生じた後遺症や障害によって内容は異なります。
また専門家による訓練は、障害を改善するだけでなく、退院後のより快適な生活を送るためのサポートも目的の1つです。
早期離床と機能訓練は理学療法士と作業療法士が発症日から可能な限り実施し、病棟スタッフや家族とも連携しながら自主訓練も実施することで、退院後の生活に困らないためのリハビリを行います。

後遺症が残ることはありますか?

ラクナ梗塞の後遺症には、片麻痺や上下肢の麻痺による運動機能の低下・言語機能障害の出現・認知機能低下・視覚障害・感覚障害などが挙げられます。
これらの後遺症は梗塞部位や大きさ・治療のタイミング・治療の効果・リハビリへの取り組みによって異なります。運動機能の低下では、腕や脚の筋力低下や歩行困難が起き、言語機能障害では言葉の出しにくさや理解力の低下が代表的です。
また認知機能障害による記憶力の低下や注意力の散漫・感覚障害による手足の痺れ・視覚障害による視野欠損などの後遺症が残る場合があります。

最後に、読者へメッセージをお願いします。

ラクナ梗塞は早期の受診や、発症後すぐの対応が重要となります。「受診すべき3つの症状」に当てはまる場合には、ためらわずにすぐに病院を受診するようにしましょう。
またラクナ梗塞は、高血圧や喫煙などの生活習慣との関連性が深いことも明らかであるため、再発予防のためには抗血小板薬の服用などの治療と併せて、普段の生活習慣を見直すことも大切です。

編集部まとめ

まとめ
小さな血管が詰まって生じる脳梗塞であるラクナ梗塞について解説しました。ラクナ梗塞は発症経過時間によって治療方法が異なり、発症後に行われるリハビリも様々です。

またラクナ梗塞は、片麻痺や上下肢の麻痺による運動機能の低下・言語機能障害の出現・認知機能低下・視覚障害・感覚障害などの後遺症が残る場合もあり、発症の予防には生活習慣を見直すことが大切です。

ラクナ梗塞について詳しく知りたい方はぜひ記事を参考にしてください。

この記事の監修医師