「コルサコフ症候群」という認知症はご存知ですか?原因や症状を解説!
コルサコフ症候群とは、ビタミンB1(チアミン)不足により脳が萎縮することで発症するウェルニッケ脳症の後遺症です。
発症すると、長期の記憶障害・見当識障害・作話などの症状が現れるため、認知症のひとつに数えられています。
ウェルニッケ脳症の段階では治療できますが、コルサコフ症候群になると適切な治療法はありません。
そこでこの記事では、コルサコフ症候群の概要・原因・症状・治療法を解説します。
監修医師:
甲斐沼 孟(上場企業産業医)
目次 -INDEX-
コルサコフ症候群の原因や症状
コルサコフ症候群とはどのような病気ですか?
ウェルニッケ脳症とまとめて「ウェルニッケ・コルサコフ症候群」と呼ばれています。ウェルニッケ脳症とは、アルコールの過剰摂取などによりチアミン不足になり、脳幹部に出血がみられる病気です。
例えば、眼球運動障害・精神状態の変化・ふらつきなどの症状があります。そのほかにも、悪性腫瘍・消化管手術・重症のつわりなど、チアミン不足になるすべての病気で発症する可能性があるため注意しましょう。
コルサコフ症候群の原因は何ですか?
このような理由により、アルコールの摂取量が増えてチアミン不足に陥り、脳が萎縮する可能性が高いです。脳は糖質をエネルギー源としており、チアミンは糖質の代謝に必要な栄養素のため、不足すると脳が糖質不足になります。糖質不足になった脳は正常に活動できなくなり、やがて記憶障害や作話などの症状が現れるでしょう。アルコール依存症以外にも、チアミン不足になる病気の場合は発症する可能性があります。
例えば、頭部の外傷(外傷性脳損傷)・低栄養・消化管の切除・透析などです。また、妊娠中のつわりやがんの治療により、経口摂取が難しい場合にチアミン不足を起こす可能性があります。
症状について教えてください。
見当識障害は、自分の名前や年齢・日時・曜日・自分と周囲との関係・自分が置かれている状況などがわからなくなります。また、作話とは自分が覚えていない記憶を補ったり間違った記憶をつなぎ合わせたりして、無意識に話を作ってしまうことです。記憶障害の一種で、本人は嘘をついている感覚はありません。
特に初対面の場合は、作話を見分けるのが難しいです。ウェルニッケ脳症の段階では、精神の錯乱状態・平衡感覚の消失・眠気・よろめき・眼球運動障害
コルサコフ症候群の受診や診断
病院を受診する目安を教えてください。
ウェルニッケ脳症は、早期発見・治療により回復する可能性があります。また、高齢者の場合は、アルコールの摂取量にも注意しましょう。すでにアルツハイマー型認知症や前頭側頭型認知症を発症している場合は、飲酒量のコントロールが難しくなります。
アルコール依存症になると、ウェルニッケ・コルサコフ症候群を発症するリスクが高くなるため注意が必要です。アルコールの過剰摂取が原因の場合は、震え・ふらつき・しびれなどの慢性アルコール中毒の症状が現れます。加えて、長期の記憶障害・作話・慢性アルコール中毒の症状がある場合は、早急に受診しましょう。
何科を受診すればよいですか?
脳神経内科は脳や脊髄・神経・筋肉の病気を診察する内科で、しびれ・めまい・ふらつき・うまく力が入らない・歩きにくさなどの症状があるときに受診します。脳神経内科は全身を診られるため、どこの病気か見極めることが可能です。
例えば、しびれや麻痺は整形外科・手術が必要なときは脳神経外科・精神的なことは精神科など、症状に合わせて最適な診療科目を紹介できます。ウェルニッケ・コルサコフ症候群の疑いがある場合は、脳神経内科で詳しく調べてもらいましょう。
コルサコフ症候群はどのように診断されますか?
まずは血液検査を行い、血糖値・電解質・チアミン濃度を測定します。また、全血球計算・肝機能検査・画像検査などを行い「コルサコフ症候群以外の病気が潜んでいないか」を調べることが特徴です。
その後、チアミン不足があり、記憶障害・見当識障害・作話などの症状がある場合はコルサコフ症候群と診断されます。
治療法はあるのですか?
ウェルニッケ脳症の主な治療法は、チアミンと水分を静脈に投与する方法です。この場合、チアミンは3〜5日間連続で投与し、加えてチアミンの代謝を助けるマグネシウムを注射で投与します。
コルサコフ症候群の症状が現れている場合は完治が難しいため、チアミンの投与を継続するしかありません。低栄養の場合は総合ビタミン剤の投与、アルコールが原因の場合は飲酒を絶ちます。
コルサコフ症候群の予防や注意点
コルサコフ症候群の早期発見のポイントを教えてください。
また、眼球運動障害・精神状態の変化・ふらつきなどの症状がみられる場合は、ウェルニッケ脳症の可能性があります。ウェルニッケ脳症はコルサコフ症候群の前段階にあたり、早期発見できれば治療が可能です。
発見が早いほど治療の効果が期待できるため、疑わしい症状がある場合は早急に受診してください。
コルサコフ症候群を予防する方法はありますか?
普段の生活での注意点を教えてください。
最後に、読者へメッセージをお願いします。
しかし、コルサコフ症候群になる前のウェルニッケ脳症は、早期発見・治療により改善が期待できます。ウェルニッケ脳症が疑われる段階で、早急に脳神経内科を受診してください。
また、アルコールの過剰摂取や偏った食生活は、ウェルニッケ脳症・コルサコフ症候群の発症を促進する恐れがあります。日頃から、規則正しい生活習慣を心がけることが大切です。
編集部まとめ
コルサコフ症候群の概要・原因・症状・治療法を解説しました。
コルサコフ症候群はアルコール依存症などによるチアミン不足により、脳が萎縮することで起こるウェルニッケ脳症の後遺症として発症する認知症です。
記憶障害・見当識障害・作話などの症状があり、コルサコフ症候群に至った場合の治療法はありません。
ただし、ウェルニッケ脳症の段階で早期発見・治療をすることで、改善が期待できます。
ウェルニッケ脳症やコルサコフ症候群の疑いがある場合は、早急に脳神経内科を受診してください。
また、日頃からアルコールの過剰摂取や偏った食生活に注意して、規則正しい生活習慣を心がけましょう。