「一酸化炭素中毒」の症状や原因・予防法はご存じですか?医師が監修!
一酸化炭素中毒、それは体が酸欠になっている状態です。一時的な症状だけでなく、後遺症が残る可能性もありますので注意が必要です。
簡単に予防できますが、目に見えない有毒ガスのため吸入していることに気づかない方がほとんどです。
そのため、気づいたら一酸化中毒になっていたという場合もあります。
症状・予防法から罹患したらどうするべきか、その対応法まで解説していきますので、ぜひ参考にしてみてください。
監修医師:
甲斐沼 孟(上場企業産業医)
目次 -INDEX-
一酸化炭素中毒の原因や症状
一酸化炭素中毒とはどのような病気ですか?
その毒性は強力で少量でも大変危険です。全身に酸素を運ぶヘモグロビンと一酸化炭素が結合すると、酸素とヘモグロビンの結合が阻害され全身に酸素が行き渡らなくなります。
その結果、酸欠となり身体に中毒症状が現れます。これが一酸化炭素中毒です。
一酸化炭素中毒の原因は?
東京消防庁のデータによると、平成27年から令和元年までの5年間でもっとも多かったのは七輪・火鉢・囲炉裏などの炭を使用したことが原因とされる事例です。全体の6割を占めています。
寒いから・暑いからと締め切った部屋で炭を使用したことが原因です。他にも地下室やトンネル内で、ガソリン・エンジン・発電機の使用をする場合も注意が必要です。
不完全燃焼も原因の1つであるため、火気設備・器具の点検・清掃もしっかりと行いましょう。
どのような症状(初期症状)が出るのですか?
- 耳鳴り
- 吐き気
- めまい
- 視力障害
- 判断力低下
- 痙攣
- 意識障害
一酸化炭素の濃度と吸入時間により、中毒症状が変化します。0.04%の濃度で頭痛や吐き気の症状が現れ始め、1.28%を超える濃度を吸入すると3分以内で死に至る危険性があります。
それほど危険な気体なのです。初期症状から重症化するまでの間に呼吸困難の症状が現れることはほとんどなく、知らぬ間に一酸化炭素中毒になってしまうことが多いです。
重症の場合、四肢の自由が利かなくなり、脳細胞が破壊され脳機能障害が残る場合があります。
一酸化炭素中毒の受診や治療法
一酸化炭素中毒は何科を受診すればよいですか?
血液検査でCOHb(一酸化炭素ヘモグロビン)の数値を分析し確定診断します。脳組織は低酸素に弱いため症状が出やすいので、必要に応じてCT・MRI検査で脳の障害を調べることもあるでしょう。
また、練炭などを使用した自殺目的だった場合には、精神神経科と連携して治療していく必要があります。
病院へ行く目安を教えてください。
どのような治療が行われますか?
これはCOHbの数値が高い患者さんに対し、必要に応じて1日1回行います。1回あたり90〜120分かけて特定の圧力環境の下で、100%酸素を吸入する治療法です。
治療回数は患者さんの症状に合わせて、少ない方は7回から多くて20〜30回程度行います。これは世界的にも確立された治療法で全身の低酸素状態の回復と、一酸化炭素とヘモグロビンの結合を早々に解離する効果があります。
気圧を高く設定したカプセルに入り、低酸素状態の体内により多くの酸素を送り込むための治療を24時間以内に行うことで、後遺症の軽減に期待することが可能です。重症の方は必要に応じて、気管挿管し人工呼吸を行うこともあります。
一酸化炭素中毒の予防法や早期発見
一酸化炭素中毒の予防法を教えてください。
暖房器具やガス調理を使用した際は特に注意を払い、30~60分間隔で窓を開けたり換気扇をまわしたりと、密閉空間にしないことが大切です。2箇所以上空気の通り道を作ることで、効率良く換気を行えます。
また、不完全燃焼を防ぐために暖房器具に付けられた排気筒にひび割れや裂け目がないかを日常的に点検しておき、清掃もこまめにしておきましょう。一酸化炭素を発生させない暖房器具の使用を検討することもおすすめです。
建設現場での一酸化炭素中毒も毎年報告されています。なるべく一酸化炭素が発生しない機材を選択する・機械の点検・一酸化炭素濃度の測定も予防法としてあげられています。
早期発見のために気をつけるべきことはありますか?
異常を察知したら警報音で知らせてくれるので、すぐに気づけます。暖房器具使用中に少しでも気分が悪くなり始めたら、すぐに一酸化炭素中毒を疑い換気をしましょう。
冬場など暖房器具を使う機会が増える時期だけでなく、小型湯沸かし器やコンロでも同様に一酸化炭素が発生する機会は多くありますので、常に意識しておくことで早期発見に繋がります。
一酸化炭素中毒で後遺症が残ることはありますか?
意欲低下・認知機能障害・歩行障害などその症状は多岐に渡り、発汗がひどくなったり手指の震え・筋肉の硬直・睡眠障害が起きたりと様々です。
代謝が活発な脳と心臓は一酸化炭素中毒の影響を受けやすく、2~40日後に判断力低下・記憶障害・人格の変化・無欲・無関心・パーキンソン症候群といった遅発性神経障害になることがあります。
明らかな症状がみられなくても、検査で脳に異常が見つかることもあり、その場合は数か月かけて回復することが多いです。
最後に、読者へメッセージをお願いします。
除雪作業が進まず、動けないため車中で暖をとり過ごしていた方がその後死亡していました。これは車のマフラーが雪で埋もれ、排気ガスが車内に入って起きた事例です。
次に飲食店での症例です。ラーメン店でガス式餃子焼き器とガス式炊飯器の着火不良が原因で、従業員全員が中毒症状に陥りました。一般客がこの様子に気づき救急に連絡し、消防隊の調査で発覚しました。
最後の事例も飲食店です。宴会場の食器を食器洗い洗浄機のガス機器で洗浄した際、換気をしていなかったために室内の酸素濃度が低下し、不完全燃焼により洗浄室内にいた複数名が一酸化炭素中毒と診断されました。
ご紹介した事例以外にも、建設現場や飲食店での症例が多く、原因は換気不足によるものです。
予防が可能な病気になりますが、判断を誤るとその場にいる全員が一酸化炭素中毒になってしまうため、過去の症例を参考に今後同じことが起きないよう気をつけましょう。
編集部まとめ
一酸化炭素中毒は油断すると誰にでも起こりうる症状です。キャンプ中にテント内でバーベキューをしていて、一酸化炭素中毒になったという話も耳にします。
暖かくなるとつい眠ってしまったり、何かに集中していたりと換気不足には気がつきにくいものです。そのため、声を掛け合うなど意識することが大切です。
最近は携帯できる便利な一酸化炭素チェッカーという測定器が市販されていますので、早期発見・予防にもおすすめです。この記事がお役に立てたら幸いです。