「アキレス腱断裂」の全治・放置するとどうなるかご存知ですか?医師が監修!
アキレス腱の役割やアキレス健断裂についてご存じですか?
本記事では主にアキレス腱断裂の原因や症状、治療などについて以下の点を中心に紹介します。
・アキレス腱断裂とは
・アキレス腱断裂の治療
・アキレス腱断裂の予防
アキレス腱断裂について知るためにぜひ最後までお読みください。
監修医師:
甲斐沼 孟(上場企業産業医)
目次 -INDEX-
アキレス腱断裂とは?
アキレス腱はどのような役割をはたしますか?
これにより、私たちは歩行や走行時にふくらはぎの筋力をかかとに伝えられます。
アキレス腱は、足首の伸展屈曲運動を可能にし、体重を支える際の力の伝達にも貢献します。
また、アキレス腱は様々なスポーツや身体活動において、パフォーマンス向上にも関与しています。
アキレス腱断裂の症状を教えてください
突然の痛み:アキレス腱断裂が起こると、突然強い痛みが感じられます。この痛みは、腓腹筋やアキレス腱が切れた瞬間に発生します。
切れたような感覚:アキレス腱が断裂すると、足首の後ろに切れたような感覚が生じることがあります。この感覚は、アキレス腱が一瞬にして切れたことを感じるものです。
腫れと内出血:アキレス腱断裂では、断裂部周辺に腫れが生じることがあります。また、内出血も見られることがあります。これは、断裂による組織の損傷によるものです。
歩行困難:アキレス腱が断裂すると、足首の運動が制限されます。歩行や走行時に足首を伸ばすことが困難になり、足を地面にしっかりとつけることが難しくなる場合があります。
足首の動き制限:アキレス腱が断裂すると、足首の可動域が制限されます。通常、足首を曲げ伸ばす動作が制限され、自由な動きが制約されることがあります。
アキレス腱断裂を疑った場合は、医師の診察を受けることが重要です。
正確な診断と適切な治療が行われることで、早期回復への道が開かれます。
アキレス腱断裂の原因を教えてください
突然の運動負荷:アキレス腱は、急激な運動やジャンプ、突然の方向転換などによる強い負荷に晒されると断裂することがあります。例えば、テニスやバスケットボールなどの激しいスポーツにおいて、急なスプリントやジャンプをした際にアキレス腱が断裂することが多く報告されています。
適切な準備不足:適切なストレッチやウォームアップをせずに激しい運動をすると、アキレス腱が弱くなり断裂しやすくなります。十分な準備運動は、アキレス腱を保護するために重要です。
疲労:長時間の運動や疲労が蓄積した状態での運動は、アキレス腱の負担を増加させます。疲労が蓄積すると、アキレス腱が柔軟性を失い、断裂のリスクが高まります。
年齢と組織の変化:年齢とともに、アキレス腱の組織は弱くなり、柔軟性が低下します。中高年の人々はアキレス腱断裂のリスクが高まります。
先行するアキレス腱の問題:アキレス腱に炎症や損傷がある場合、断裂のリスクが増加します。アキレス腱の炎症(アキレス腱炎)や腱の変性(腱性変性)が、断裂の予兆となることがあります。
アキレス腱断裂は予期せぬ怪我であり、予防策が必要です。
適切な準備運動、適度な休息、アキレス腱の柔軟性を保つストレッチ、適切な靴の使用などがアキレス腱断裂のリスク軽減に役立ちます。
アキレス腱断裂の手術とは?
アキレス腱断裂の手術は何をしますか?
麻酔:患者は手術中に快適な状態を保つために全身麻酔または局所麻酔を受けます。執刀医師と麻酔科医は、適切な麻酔方法を選択します。
切開:医師はアキレス腱断裂部の近くを切開します。通常、断裂部に近いふくらはぎの筋肉の腱部分が切られます。
腱の再接続:切開した腱の断片を繋ぎ合わせ、アキレス腱を再接続します。これには、特殊な縫合技術や腱を補強するための糸(ステッチ)が使用される場合があります。
補強材の使用:いくつかの手術では、アキレス腱を補強するために人工的な補強材(例:テノンプラスティ、アキレス腱移植)が使用されることがあります。これは、腱の修復と強度の回復を支援します。
創部の閉鎖:アキレス腱修復が完了した後、医師は切開部をきれいに閉鎖し、縫合します。これにより、傷の治癒が進みます。
手術後、患者は通常、固定具(キャストやブーツ)を使用して足首とふくらはぎを保護します。これにより、アキレス腱が適切に癒着するまでの間、安定性と保護が提供されます。
手術後は、リハビリテーションプログラムが開始され、徐々に足首の可動域と筋力を回復させるための運動や物理療法が行われます。
アキレス腱断裂の手術療法とはなんですか?
一般的な手術療法は以下の通りです。
切開と腱の修復:医師はアキレス腱の近くに切開をし、断裂した腱を正しい位置に再接続します。切開部からアキレス腱にアクセスし、特殊な縫合技術を使用して腱を修復します。
補強材の使用:一部のケースでは、アキレス腱の修復と強度を向上させるために、補強材が使用されることがあります。例えば、アキレス腱の周りに人工的なテープや糸を巻き付けることで、腱の安定性を高められます。
固定具の使用:手術後、固定具(キャストやブーツ)が使用されます。これは、手術部位の保護と安定性を提供し、アキレス腱の修復が適切に癒着するまでの間、動きを制限します。
リハビリテーション:手術後、リハビリテーションプログラムが開始されます。これには、物理療法や運動療法が含まれます。リハビリテーションの目的は、アキレス腱の強度と可動域を回復させ、正常な機能を取り戻すことです。
手術療法は、アキレス腱の修復と再建を促し、患者の回復を支援します。
手術後の正確なケアとリハビリテーションの遵守は、成功率と完全な機能回復のために重要です。
手術療法は、保存的治療が効果的でない場合や特定の状況において推奨されることがあります。
アキレス腱断裂の保存療法とはなんですか?
主な保存療法には以下があります。
キャストまたはブーツの装着:アキレス腱の断裂部を固定するために、キャスト(ギプス)や特別なブーツを使用します。これにより、断裂した腱を安定させ、治癒を助けます。
保護と安静:腱の修復を促進するために、活動制限と安静が重要です。過度な運動や負荷を避け、アキレス腱に負担をかけないようにします。
氷や圧迫:アキレス腱の周囲の腫れや炎症を軽減するために、氷や圧迫を使用します。これにより、痛みや腫れの緩和が期待できます。
物理療法:物理療法は、アキレス腱の柔軟性や筋力を回復させるために使用されます。範囲運動、ストレッチ、筋力トレーニングなどが含まれます。
保存療法は、一部の患者にとって有効とされている治療法です。
ただし、保存療法では完全な機能回復に時間がかかることがあり、再断裂のリスクがある場合もあります。
リハビリテーションでは何をしますか?
範囲運動とストレッチ:足首の動きを改善し、アキレス腱の柔軟性を回復させます。
筋力トレーニング:ふくらはぎや足首の筋肉を強化し、安定性と力を回復させます。
歩行訓練:正しい歩行パターンの再習得と安定性を向上させます。
機能トレーニング:日常生活の動作(階段の上り下り、跳躍など)を再現し、機能的な回復を促します。
スポーツや特定の活動に特化したトレーニング:スポーツや特定の活動に戻るためのトレーニングや動作再教育をします。
リハビリテーションの目的は、アキレス腱の機能を回復させ、正常な生活活動やスポーツに戻るための能力を向上させることです。
個々の症状や手術の種類に合わせてカスタマイズされるため、医師の指導のもと行われます。
アキレス腱断裂の治療や予防に関して
アキレス腱断裂の全治にはどれくらい時間がかかりますか?
以下は一般的な回復のタイムラインです。
手術後の初期段階(0-6週間):手術後、アキレス腱の修復部位が癒着し、傷が癒合します。この期間では、固定具(キャストやブーツ)が使用され、非荷重または部分的な負荷で歩行が制限されます。
中間段階(6-12週間):固定具が除去され、リハビリテーションが本格化します。範囲運動、筋力トレーニング、歩行の改善が行われます。軽負荷の活動が始まり、アキレス腱の強度と柔軟性が回復します。
後期段階(3-6ヶ月):筋力と柔軟性の向上が続きます。機能トレーニングが進み、日常生活の活動やスポーツに戻る準備が始まります。パフォーマンスの向上とアキレス腱の安定性の向上が重視されます。
完全回復(6ヶ月以上):個人の状態や回復の進み方によりますが、一般的には完全な機能回復には6ヶ月以上かかることがあります。一部の患者では、1年以上かかる場合もあります。
ただし、完全な回復には個人の要因や治療法、リハビリテーションの遵守度などが影響します。
医師やリハビリテーション専門家との定期的なフォローアップを通じて、回復の進捗状況を確認し、適切な治療とリハビリテーションプランを立てることが重要です。
アキレス腱断裂を放置したらどうなりますか?
機能低下:アキレス腱の断裂は、足の動きや歩行に重要な役割を果たすため、機能低下が生じます。跳躍やダッシュなどの活動が制限され、歩行にも支障をきたすことがあります。
慢性痛:断裂したアキレス腱は自然には接合しないため、痛みや不快感が継続します。活動時や長時間の立ち上がりなどで痛みが増すことがあります。
筋力低下:アキレス腱断裂により、ふくらはぎの筋肉が使用されずに衰えます。筋力低下や萎縮が生じ、足の力強さや安定性が低下します。
再断裂のリスク:放置すると、アキレス腱は不適切に癒合し、弱くなる可能性があります。その結果、再度の断裂や損傷が起こるリスクが高まります。
長期のリハビリテーション:放置してから治療をした場合、アキレス腱の修復と回復に時間がかかることがあります。長期のリハビリテーションや回復の遅れが生じる可能性があります。
アキレス腱断裂は早期の診断と適切な治療が重要です。
放置せずに、医師の診断と指示に従い、適切な治療法を受けることが重要です。
アキレス腱断裂の後遺症はありますか?
筋力低下:アキレス腱断裂の後、ふくらはぎの筋肉は衰えることがあります。これにより、足の力強さやパフォーマンスが低下する可能性があります。
柔軟性の低下:アキレス腱の断裂や手術後、腱が硬くなり、柔軟性が低下することがあります。これは足関節の可動性に制限をもたらし、日常生活やスポーツ活動に影響を及ぼす可能性があります。
再断裂のリスク:アキレス腱断裂を経験した人は、再度の断裂のリスクが高まる可能性があります。特に適切なリハビリテーションや予防策を講じない場合にリスクが増します。
疼痛や不快感:アキレス腱断裂後、疼痛や不快感が残ることがあります。これは特に長時間の活動や負荷がかかる場合に現れることがあります。
感覚の変化:断裂や手術によって周囲の組織に影響が及ぶことがあり、アキレス腱周辺の感覚に一時的または永続的な変化が生じることがあります。
アキレス腱断裂の後遺症は個人差があります。
適切な治療、リハビリテーション、および予防策の遵守は、後遺症の軽減や回復の促進に役立ちます。定期的なフォローアップと医師の指導を受けることが重要です。
アキレス腱断裂の予防法はありますか?
強化と柔軟性のトレーニング:アキレス腱を含むふくらはぎの筋肉を強化し、柔軟性を向上させるために、定期的な筋力トレーニングとストレッチをします。バランスの取れたトレーニングプログラムを組み込み、アキレス腱への負担を軽減します。
適切な靴と装具の使用:スポーツや活動に適した靴を選び、足首やふくらはぎをサポートする装具(サポーターやテーピング)を使用します。適切なクッション性と足首の安定性を提供する靴は、アキレス腱への負担を減らす助けとなります。
着実な進行と適度な活動:トレーニングやスポーツ活動を進める際には、着実な進行と適度な活動量が重要です。急激な運動量の増加や過度の負荷は、アキレス腱への負担を増やし、断裂のリスクを高める可能性があります。
インジュリープリベンションプログラムの参加:特定のスポーツや活動においては、アキレス腱の予防的なケアをするためのインジュリープリベンションプログラムに参加することが有益です。これには、適切なトレーニング方法やテクニックの指導、体のバランスと柔軟性の向上、予防的なテーピングや装具の使用などが含まれます。
体重管理と健康的な生活習慣:適切な体重を維持し、健康的な生活習慣を実践することも重要です。過体重はアキレス腱に余分な負担をかけ、断裂のリスクを増加させる可能性があります。
これらの予防策はアキレス腱断裂のリスクを減らすために役立ちますが、完全な予防を保証するものではありません。
最後に、読者へメッセージをお願いします。
そのため、症状に悩んでいる場合は、保存的治療や手術などの適切な治療を受けることが重要です。
治療により、足の機能が回復し、日常生活の質が向上し、活動的なライフスタイルを再び楽しむことができるようになります。
編集部まとめ
アキレス腱断裂はどんな病気なのか紹介しました。要点は以下の通りです。
・アキレス腱断裂は、アキレス腱の断裂によって生じる足の怪我で、突然の激痛や腫れ、歩行困難などの症状が現れる
・アキレス腱断裂の治療には保存療法と手術療法がある。保存療法ではキャストやブーツの使用とリハビリテーションが行われ、手術療法では断裂した腱の修復が行われる
・アキレス腱断裂の予防には、ストレッチとウォームアップ、ふくらはぎの筋力と柔軟性のトレーニング、適切な靴と装具の使用、適度な活動と着実な進行、インジュリープリベンションプログラムへの参加、体重管理と健康的な生活習慣が重要である
これらの情報が少しでも皆さまのお役に立てば幸いです。最後までお読みいただき、ありがとうございました。
参考文献