「TFCC損傷」の症状や原因を医師が監修!手首に痛みはありませんか?
日常生活において気づかないうちに手首の痛みを感じたり、痛みがひどくなったりした経験はないでしょうか?
痛みが続く場合、それはTFCC損傷かもしれません。TFCC損傷は耳慣れない名前かもしれませんが、実は手首を多用するスポーツ選手などに起こることも多いのです。
そのほか、日常生活でも発症する可能性があります。
この記事ではTFCC損傷について、原因・症状・治療方法などを解説します。スムーズに回復するための留意点などについても解説するので、最後までお読みいただけると幸いです。
監修医師:
郷 正憲(徳島赤十字病院)
目次 -INDEX-
TFCC損傷の原因や症状
TFCC損傷とはどのような病気ですか?
三角線維軟骨複合体は手首の関節部分にあり、クッションの役割を果たすことで手首の衝撃を和らげます。この部分が損傷すると日常生活にさまざまな影響を及ぼすのです。
TFCC損傷の原因は?
つまり、外傷ではなく反復性を伴う動作でも損傷が起こるのです。そのほか、加齢による骨の変形でも起こるとされています。特に骨の変形は手首の可動域に支障をきたすので、徐々に悪化する傾向にあります。
どのような症状がありますか?
- 痛み:TFCC損傷になってまずみられる症状が痛みです。手首の小指側に痛みを感じることが一般的です。この痛みが原因でTFCC損傷の発見につながるケースは多くあります。
- 耐久力の低下:手首の耐久力が低下します。具体的には、重いものをもつときやテニスなど手首を多用するスポーツなどのパフォーマンスに影響します。手首の耐久力が落ちたと感じる場合、TFCC損傷の可能性も検討しましょう。
- 炎症:炎症は目に見える異常として現れます。具体的には手首の腫れ・赤みなどです。炎症が起こっている場合、何らかの細菌が患部に侵入している可能性があるので注意が必要です。
- 可動域が狭くなる:TFCC損傷になると痛みを伴うことが一般的なので、手首を動かしにくくなります。また、可動域そのものも狭くなったように感じます。こちらも手首を多用するスポーツのパフォーマンスなどに影響するので、普段から手首を多く使う方は異変に気付きやすいです。
- クリック音:手首を動かす際、クリックのような音が鳴ることがあります。これは患部の腫れや骨の異常などによって起こる症状です。クリック音が鳴る場合、痛みがなかったとしてもTFCC損傷の可能性が疑われるので医療機関の受診を検討しましょう。
上記のような症状はTFCC損傷の典型的な症状です。悪化を防ぐためにも早期に医療機関を受診しましょう。
TFCC損傷の診断と治療
TFCC損傷はどのように診断されますか?
- 診察:私生活における気になる症状などをヒアリングの上、医師が実際に手首を観察しながらTFCC損傷かどうかの診察を行います。
- レントゲン撮影:レントゲン写真を撮影の上、骨の異常がないかどうかを確認します。基本的に尺骨(しゃっこつ)が橈骨(とうこつ)よりも長い場合、TFCC損傷の可能性が高いです。尺骨とは前腕に通る2本の太い骨のうち小指側の骨で、橈骨は逆に親指側の骨です。
通常は尺骨と橈骨が同じ長さであることが一般的です。この骨の異常が原因となり先述したクリック音などが起こります。 - MRI検査:MRI検査では骨や組織の詳細な画像データを解析するために用いられます。TFCC損傷の程度などをより正確に把握するために用いられるのです。
- 手首のテスト:医師が患部に触れながら、特定の動きで痛みがあるかどうかの確認を行います。TFCC損傷で痛みを感じる部分には特徴があるので、専門の外科医が複数のチェック項目に沿って判断するのが一般的です。
上記の各項目は患者の状況に合わせて選択されます。専門医に相談の上、適切な診療を選択しましょう。
治療方法について教えてください。
保存治療が終了すると、今度はリハビリの工程です。リハビリでは低下した筋力や可動性を取り戻すために筋力トレーニング・柔軟トレーニング・機能トレーニングなどを行うのが一般的です。機能トレーニングとは、日常生活への復帰を想定したトレーニングです。
TFCC損傷においては、物をつかむ・ドアノブを捻るなどの日常動作が該当します。
どのような場合に手術が行われますか?
手術では異常のみられる患部の骨などを正常に戻すことを目的とします。具体的には直径1.9mm程度の関節鏡で患部を観察しながら縫い合わせや切除などを施します。
TFCC損傷の回復や注意点
回復にはどのくらいかかりますか?
一方で手術が必要となった場合、回復までにおおよそ6ヶ月程度要します。ただし、日常生活を送る程度の回復ならより早い段階で実現するのが一般的です。
治療しないで放置するとどうなりますか?
その場合は放置しても悪化の一途をたどることでしょう。痛みが気になる場合は、迷わず医療機関を受診しましょう。
普段の生活での注意点を教えてください。
またテニスなどの手首を多用するスポーツから、日常生活におけるドアノブを捻る行為に至るまで、手首を酷使してしまうタイミングがあります。これらの場面に気をつけて日常生活を送りましょう。
最後に、読者へメッセージをお願いします。
改善がみられない場合は手術も選択肢として検討しましょう。近年は医療技術の発達により、切開を一部分に限定する方法や日帰りでの手術などが主流となってきています。症状が気になる場合は、医療機関へ相談しましょう。
編集部まとめ
この記事ではTFCC損傷について原因・症状・治療方法などを解説しました。
TFCC損傷が起こる原因は主に外傷です。そのほか、手首を多用するスポーツ選手などにもみられることがあります。
症状としては痛み・耐久力の低下・炎症・可動域が狭くなるなどが挙げられます。治療方法は保存治療が一般的です。
保存治療はギプスなどで患部を固定し、自然治癒を図る方法です。それでも回復がみられない場合は、手術の選択肢があります。
TFCC損傷は耳慣れない病名ですが、私たちの誰もが発症する可能性があります。手首はそれほど繊細なのです。
普段の生活から気をつけて、健康な手首を守りましょう。