目次 -INDEX-

  1. Medical DOCTOP
  2. 医科TOP
  3. 病気Q&A(医科)
  4. 「胆道がん」を疑う症状・原因はご存知ですか?ステージについても解説!

「胆道がん」を疑う症状・原因はご存知ですか?ステージについても解説!

 公開日:2023/06/30
「胆道がん」を疑う症状・原因はご存知ですか?ステージについても解説!

現在、日本人の2人に1人は一生のうちに何らかのがんになるといわれており、がんは身近な病気になっています。生活習慣によって予防はできますが、完全にならないようにするのは困難であり、早期発見・早期治療を行うことが何よりも大切です。

「胆道がん」は胆道にできるがんの総称であり、発症した部位によって分類が異なります。胆道の役割、胆道がんの分類・検査・治療・予後について解説します。

もしもの時に早期発見できるよう、がんの知識を深めていきましょう。

甲斐沼 孟

監修医師
甲斐沼 孟(上場企業産業医)

プロフィールをもっと見る
大阪市立大学(現・大阪公立大学)医学部医学科卒業。大阪急性期・総合医療センター外科後期臨床研修医、大阪労災病院心臓血管外科後期臨床研修医、国立病院機構大阪医療センター心臓血管外科医員、大阪大学医学部附属病院心臓血管外科非常勤医師、大手前病院救急科医長。上場企業産業医。日本外科学会専門医、日本病院総合診療医学会認定医など。著書は「都市部二次救急1病院における高齢者救急医療の現状と今後の展望」「高齢化社会における大阪市中心部の二次救急1病院での救急医療の現状」「播種性血管内凝固症候群を合併した急性壊死性胆嚢炎に対してrTM投与および腹腔鏡下胆嚢摘出術を施行し良好な経過を得た一例」など。

胆道がんの症状や罹患率

白いシャツを着た女性

胆道は身体のどの部分にありますか?

その名の通り、胆道とは胆汁が通る道のことです。肝臓で作られた胆汁という消化を助ける液を小腸に運ぶために胆道があります。
胆道は、その役割から肝外胆管・胆のう・十二指腸乳頭の3つに分けられ、肝外胆管は肝門部領域胆管・遠位胆管に分かれます。
肝外胆管は、肝臓から十二指腸まで胆汁が通る管のことです。胆のうは胆汁を一時的に貯める袋であり、食事をすると、胆のうから胆汁が十二指腸に送り出されます。
十二指腸は小腸の一部であり、胆汁の流れを調整しています。胆管と十二指腸のつなぎ目が十二指腸乳頭です。

胆道がんの症状は?

胆道がんは、がんが発生した部位によって、胆道がん・胆のうがん・乳頭部がんに分かれます。しかし、その症状は様々です。
最も多くみられる症状は黄疸であり、続いて右脇腹の痛み・体重減少・発熱・だるさ・食欲不振があります。
胆汁には黄色のビリルビンが含まれているのですが、がんによって胆道が詰まったり狭くなったりするとビリルビンが血液に流れ込み、黄疸が出現します。
多くは、皮膚・白目が黄色くなったり、尿の色が濃くなったりです。また、十二指腸に排出されるビリルビンの量が減るため、便中のビリルビン量が減り便が白っぽくなります。
胆道がんは初期での症状出現は少ないのですが、部位によって症状の出方が多少異なるため、少しでも気になった場合は受診するのがおすすめです。

胆道がんの原因は?

未だ研究段階であり、確実な原因は分かっていません。
「膵・胆管合流異常」・「原発性硬化性胆管炎」・「先天性胆道拡張症」など、他の病気が胆管にダメージを与えてリスクになったり、肝臓の病気が胆道に影響を与えてリスクになったりするといわれています。
他にも、生活習慣から糖尿病・肥満・メタボリックシンドロームは胆道がんのリスクを高めるといわれますが、詳細は不明です。

胆道がんの罹患率を教えてください。

日本での年間罹患率は2.2万人であり、全てのがんの中で12番目に多いがんです。単純計算では、10万人に対して17人です。
知名度が低いがんですが、罹患率は高いといえます。年齢は50代男性に多いのですが、胆道がんの種類によって差があります。

胆道がんの病期(ステージ)について教えてください。

胆道がんの進行度は、がんの深達度(T)・リンパ節転移の有無(N)・遠隔転移の有無(M)という3つの要素から成り立つTNM分類に基づいてステージが決定します。
ステージを決定することは、その後の治療計画を立てたり、生存率の目安になったりするため重要です。
またがんの治療を行う中で治療に合わせて病院を変えるような時、ステージが決まっていると病院・施設間のやり取りをスムーズに行えるのも利点の1つです。
ステージを決めるためにいくつかの検査を行うのですが、がんができた部位によって、胆管がん・胆のうがん・乳頭部がんに分かれるためそれぞれでステージ分類されます。
ステージが決まると、そのステージごとに推奨されている最適な治療法を患者と医師で相談して決めます。
ステージ分類としては、壁内に腫瘍がとどまっている場合はⅠ期もしくはⅡ期・隣接する臓器やリンパに広がっている場合はⅢ期・それより更に広がっていたり転移をしていたりする場合はⅣ期です。

胆道がんの検査と治療

レントゲン

どのような検査が行われますか?

最初に行われるのは、血液検査と腹部超音波です。無症状であっても、健康診断の血液検査から偶然発見されることもあります。
胆管の内部を確認して、詰まりがあったり狭くなっていたり胆汁が貯まって拡張されたりしていれば、追加でCTやMRI検査が必要です。
その結果、更に詳しい検査が必要と判断されると、内視鏡を使用した検査・生検・細胞診などを行います。

胆道がんの治療方法は?

薬物療法もしくは手術が主流です。緩和を目的とした、放射線治療・薬物療法・胆道ドレナージもあります。
がんをなくすには、手術で取り除くのが最も有効と考えられているため、切除可能な場合は手術が第1選択です。胆道がんになると、黄疸のために食欲が落ちてしまい、体重減少・栄養不足が生じます。
手術をするためには、栄養コントロール・体力強化によって術前の状態をより良くすることも大切です。
胆道がんの手術は他の臓器と比較して難しい場合が多く、周りへの広がりが大きかったり他の臓器に転移していたり取り除くのが困難な部位にあったりすると、薬物療法が選択されます。
薬物療法によって、手術で取り除ける程にがんが小さくなる可能性もあるため、薬物療法と手術を併用することもあります。

胆道がんの手術について教えてください。

胆道がんの手術は、解剖が複雑で血流が豊富である肝・膵臓をともに切除する可能性があることや発生部位によって術式が変わることから難しいとされています。
手術が可能な場合でも、遠隔転移がない・身体が手術に耐えられる状態である・術後の肝臓の機能が回復する見込みがあるなどの条件が揃っていないといけません。
色々な条件をクリアして、手術が可能と判断されるとがんを切除する手術を行います。
詳しくは術式・切除部位によって異なりますが、大抵の場合は、切除後に残った胆管と小腸が繋がるように再建手術が必要です。
術後は合併症を引き起こす可能性も高いため、注意して観察します。よくある合併症として、肝不全・胆汁漏・胸水・腹水・胆管炎が挙げられます。
合併症の多くは術後1週間以内に起こるとされているため、術後に発熱したり、再度黄疸が出現したりすればすぐに担当医に相談することが大切です。

胆道がんの予後や再発

問診

胆道がんの予後について教えてください。

がんの治療成績の指標として5年生存率という言葉があります。これは、治療してから5年後に生きている人の割合のことです。
予後はステージによって変わり、胆道がんは部位によっても変わるのですが、決して良いとはいえません。ステージが低いほど予後は良好であり、ステージが高いと5年生存率は低くなります。
しかし、予後はあくまで過去の成績から決まっています。がんの研究は今現在も行われており、治療法は日々進歩しているため、今の予後を知ることはできません。
また、がんにも個人差が大きく、一気に進行する方・ゆっくり進行する方など様々です。
予後はあくまで目安であるため、自分の状態を知り、しっかり担当医と話し合いながら日々の治療に前向きに取り組むことが大切です。

再発したらどのような治療が行われますか?

手術をして切除しても、局所・遠隔部位に再発することがあります。切除した断面にがんが残っていたり、見えない神経・血管・リンパ節に浸潤していたりするためです。
稀に手術できる条件が揃っている場合は、再切除が選択されることもありますが、多くは薬物による化学療法が主流です。
最近の研究で、新たな薬剤が承認されており、今後も治療法が増えていく可能性は大いにあります。
その他、全身状態が悪く化学療法も行えない場合やこれ以上の治療を望まない場合は、疼痛コントロール・緩和ケアという選択もあります。

最後に、読者へメッセージをお願いします。

胆道がんは、その発症部位から発症リスク・予後・治療法などが異なる複雑な疾患です。
世界的には稀ながんですが、日本では発症頻度が高く、手術ができない場合は予後も不良なため難治性といえます。
しかし現在も研究は続いており、最近ではがんゲノム療法という新しい治療法も拡大されています。医療の拡大を期待して前向きに治療に取り組みましょう。

編集部まとめ

カウンセリング
胆道がんだけに限らず、多くのがんは生活習慣で予防はできるものの、発症を完全に防ぐことは不可能です。

胆道がんは、初期でも血液検査にはっきり異変が現れます。自覚症状がなくとも毎年健康診断を受けていれば、早期発見に繋がります。予後を良くするために早期発見が何よりも大切です。

医療は今後も進歩していくため、早期発見・早期治療を行って、明るい未来を歩みましょう。

この記事の監修医師