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「食道胃接合部がん」の症状や原因はご存知ですか?ステージについても解説!

 更新日:2023/07/04
「食道胃接合部がん」の症状や原因はご存知ですか?ステージについても解説!

食道胃接合部がんとは、食道と胃の境目付近である接合部に発生するがんのことです。日本人の胃がんは減少傾向にありますが、手間にある食道から胃に通じる部位にがんが増えてきました。そして食道胃接合部がんは世界的に増えているがんのひとつです。

発症の要因としては、喫煙・過度の飲食・不規則な食生活・ストレスなどが挙げられます。食道と胃は異なる粘膜細胞からなっているため、食道胃接合部がんは、食道がん・胃がんのそれぞれの特徴による症状があります。

この記事では、食道胃接合部がんの特徴・症状・原因・診断方法・生存率など詳しく解説します。

中路 幸之助

監修医師
中路 幸之助(医療法人愛晋会中江病院内視鏡治療センター)

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1991年兵庫医科大学卒業。医療法人愛晋会中江病院内視鏡治療センター所属。米国内科学会上席会員 日本内科学会総合内科専門医。日本消化器内視鏡学会学術評議員・指導医・専門医。日本消化器病学会本部評議員・指導医・専門医。

食道胃接合部がんの症状と原因

医者

食道胃接合部がんとはどのような病気でしょうか?

食道胃接合部がんは、食道と胃の接合部である食道の下部分と胃との境目あたりに発生するがんのことです。食道と胃の接合部の粘膜細胞で発生し、粘膜細胞に腫瘍ができます。
さらに、食道胃接合部がんが発生すると食道や胃の内側にがんが広がることがあります。食道胃接合部がんは、従来食道がんあるいは胃がんとして判断され治療されてきました。しかし、海外をはじめ症例が増えてきたことにより、これらとは分類されて診断されます。

症状を教えてください。

初期では、食道がんと同様に症状がさほどありません。しかし、飲食時に食べ物が飲み込みづらくなったり、熱いものを飲んだ時に喉の奥がしみる感じがしたりといった症状があります。
食道胃接合部がんが進行していくと、食道の内部が狭くなっていくため、飲食物が途中でつっかえたり、引っかかったりするように感じ、さらに大きくなると水などの流動物しか通らなくなり、食道から胃への通路を塞ぎます。
その結果起きるのが、食事の量の減少とそれに伴う体重減少です。胃の影響としては、食道胃接合部がんによって胃酸の逆流がおきます。そのため、胃の不快感を定常的に感じたり、胸やけの症状が増えたりします。これらによっておきてしまうのが、胃に負担をかけ、食事の量が減り、栄養を十分とれなくなるという悪循環が起こるかもしれません。

発症する原因を教えてください。

食道胃接合部がんの発症原因はまだ明確にはなっていませんが、いくつか原因が考えられています。そのひとつが、胃酸逆流です。長期間にわたる胃酸の逆流によって、食道胃接合部の粘膜が損傷し、がんが発生する可能性につながるのです。これにピロリ菌の減少が後押ししています。ピロリ菌への対策が進みにつれ胃の感染症に対する対応はできますが、ピロリ菌がいないことによって酸度の強い胃液が分泌されることに繋がります。これらが原因で高まるのが、食道胃接合部がんのリスクの1つです。
がん全般にその原因のひとつといわれる喫煙や過度の飲酒も、食道胃接合部がんのリスクを増加させます。これは、食道・胃同様に食道胃接合部の組織に損傷を与える原因です。さらに、生活習慣病である急激な体重増加や慢性的な肥満も発症リスクに影響を与えます。特に肥満は代謝異常を引き起こすため、発症を促進させます。

食道胃接合部がんになりやすい方の特徴を教えてください。

生活習慣の乱れが原因の大きなひとつと考えられています。高脂肪の食事・栄養の偏った食事・過度な塩分摂取など、食生活の変化により栄養バランスが乱れたことで食道胃接合部がん発症のリスクが高まります。長期間の喫煙や過剰な飲酒も要因のひとつです。さらに、この2つを同時に習慣的行うのは悪化し続けるため良くありません。
肥満や体重の急激な増加は、代謝の異常を引き起こしてしまいます。特に肥満は慢性的な細胞の炎症の原因になりますので、食道胃接合部がんの発症リスクを高めます。

食道胃接合部がんの治療と手術

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食道胃接合部がんはどのように診断されますか?

従来、食道がんあるいは胃がんとして分類されていた経緯から、これまでは食道と胃のどちらに偏っているのかの判断や、組織的にどちらの細胞からがんが発生しているのかの判断によって、食道がんまたは胃がんと判断されていました。
しかし転移の仕方をみるとできた場所が大きく影響することがわかってきています。日本では、西の定義により、食道胃接合部の上下2cmの範囲にがんの中心部がある場合に食道胃接合部がんと診断されます。

治療方法を教えてください。

症状が軽く早期の状態で発見された場合であれば、内視鏡による切除で対応できますが、通常は、一般的に行われる外科手術を行います。
手術で行うのは、がんの発症部を中心にした、食道・胃・その周りのリンパ節の切除です。また、進行状況によっては手術の前後に化学療法を用いた抗がん剤治療を行うこともあります。今のところ食道胃接合部がんに特化した抗がん剤治療というものはありません。そのため、がんの組織型から判断したり、食道と胃のどちらの細胞から発生してるかなど細かい状況から判断したりして治療を行っていきます。

食道胃接合部がんの手術は難しいのでしょうか?

早期段階であれば、内視鏡によって行われますので、さほど難しい手術とはいえません。しかし、進行していた場合はその周りの組織への移転が考えられるため、手術範囲の広くなり、その分難易度が上がります。がんの範囲によっては、全体または一部の食道・胃を切除します。その後行われるのが、残された食道・胃の再建や腸を使った食道と胃の再接合です。
場合によっては腹腔鏡やロボット支援手術などの技術を使って、手術の負担を減らすことも検討されます。ざまざまな状況が考えられる食道胃接合部がんの手術は、一般的に高度で複雑な手術です。がんの進行度・大きさ・周りの組織への転移・担当医師の技術など多くの条件が加味されます。

食道胃接合部がんのステージについて教えてください。

食道胃接合部がんのステージは、食道がん・胃がんのステージ判定に合わせて行われています。ステージは、TMN分類の組み合わせで判断されますが、部位によっても判断が複雑に変わります。簡単にいえば、0期では内視鏡による検査などで粘膜内にがん細胞がある状態です。I期ではがんが粘膜下層あたりまで浸潤し、II期は深部組織に浸潤しています。
III期は、食道胃接合部周囲の組織・他の臓器にまで影響している状態です。IV期は、がんが食道胃接合部以外の部位に転移している状態になります。しかし前述したように、実際のステージの判断は食道胃接合部がんの部位により胃がんと扱うか食道がんと扱うか異なるため、大変複雑な判断となります。

食道胃接合部がんの予後

ベット

食道胃接合部がんの生存率を教えてください。

食道胃接合部がんだけの統計レポートが少なく単体での情報はありません。
しかし、一般にがんと診断された場合に5年相対生存率で見ると、2009年から2011年の統計で、男性では、食道がんが40.5%、胃がんが67.5%、全部位では62%です。女性では、食道がんが45.9%、胃がんが64.6%、全部位では66.9%です。

食道胃接合部がんは転移しやすいのでしょうか?

食道胃接合部がんは、進行すると周りの臓器やリンパ節に転移しやすくなります。特にリンパ節へ転移した場合の特徴は、リンパ節からがん細胞が広がり他の細胞へ転移するという進行です。食道・胃などを含み食道胃接合部あたりでは、リンパ節へのがんの移転は比較的よく見られる傾向にあるといわれています。一般的にがん細胞は血液循環を通して転移します。
食道胃接合部も例外ではありません。特にがんが進行していくと、本来の部位から離れた臓器への転移が見られることがあります。とはいえ、全ての食道胃接合部がんが必ず転移するわけではなく、患者個人の健康状態やがんの進行度合いによって変わってきます。

食道胃接合部がんの手術後の食事での注意点はありますか?

食道胃接合部がんは、栄養を接種するために必要となる食道・胃両方に関係する部位に発症します。そのため、手術後は、流動食から初めて徐々に食事を通常の食事へ変えていく方法が一般的です。まずは少量の食事にするか、回数を増やしてとるようにします。胃への負担を考えると一度に大量の食事をとることはおすすめできません。
ただし、栄養バランスは常に考慮して、食事プランを細かく計画しましょう。メニューについては刺激の強いものや繊維質なものは避けるようにします。これらは胃に負担をかけてしまい、余計な胃液分泌を促します。

最後に、読者へメッセージをお願いします。

食道胃接合部がんは、食道がんや胃がんとは別の発症部位として認識されてます。
しかし、症状や治療は発症部位の周りも影響しますので、かかりつけ医と相談しつつ治療をおこなうことが大切です。

編集部まとめ

女性
これまで、食道がん・胃がんとして治療されてきた食道胃接合部がんは、別の部位として判断され治療され始めています。

症例や対処では、早期発見で生存率も高くなり重症化も防げるので、少しでも気になることがあったらかかりつけ医にご相談にください。

この記事の監修医師