「心タンポナーデ」の予兆となる症状・原因はご存知ですか?医師が監修!
心タンポナーデは、心臓の周りの心膜(心臓を包む膜)内に血液や液体がたまって、心臓が圧迫されることで起こる病気です。この病気は、心膜内の圧力が急激に上昇することによって、心臓が正常に機能しなくなり、命に関わることもあります。症状が現れた場合には、速やかに医療機関を受診することが大切です。また、予防のためにも、原疾患の早期発見・治療が必要です。この記事では、詳しく解説していきます。
監修医師:
甲斐沼 孟(上場企業産業医)
目次 -INDEX-
心タンポナーデとは?
心タンポナーデとはどんな病気ですか?
これによって、心臓が圧迫され、正常なポンプ機能を果たせなくなります。
典型的な症状は、ふらつきや息切れ、胸部圧迫感などです。
重症例では、血圧の急激な低下や失神を引き起こすこともあります。
心タンポナーデの診断は、身体診察、心電図、胸部X線検査、超音波検査などによって行われます。
心タンポナーデの治療には、緊急の手術が必要な場合があります。
手術によって、心臓周囲の余分な液体が排出されます。
また、症状の軽度な場合は、抗生物質や利尿剤などの薬物療法が行われることもあります。
心タンポナーデの原因はなんですか?
この貯留が大量にあるいは急速に増加すると、心のう内圧が上昇し、心臓に負荷がかかります。
この状態が長時間続くと、心臓のポンプ機能が低下し、重度の心不全やショック状態を引き起こすことがあります。
また、大動脈解離、心筋梗塞、心膜炎、悪性腫瘍外傷、心臓カテーテル検査・治療、外科治療など様々なものがあります。
これらの原因は、心膜内にある心のう液の分泌や排出に影響を与えることがあります。
たとえば、心臓カテーテル検査や外科治療によって、心膜に傷がつくことがあり、心のう液の貯留を引き起こすことがあります。
定期的な健康診断や、身体の異変に対する早期の対応が、心タンポナーデの予防につながります。
心タンポナーデの症状にはどんなものがありますか?
急性の場合、心臓が圧迫されるために心臓のポンプ機能が阻害され、循環不全や呼吸困難、胸部圧迫感、意識障害、チアノーゼなどの症状が現れます。
症状の重症度は、貯留する液体の量や速度によって異なります。
液体の貯留が急速かつ大量である場合は、症状が急速に進行し、緊急手術が必要となることがあります。
慢性的な病気が原因で発症した場合、心タンポナーデの症状としては、息切れや全身のだるさ、呼吸困難などが現れます。
また、病気が進行するにつれて、症状が悪化することがあります。
この場合の、治療には慎重な検査や経過観察が必要となります。
治療法は、心タンポナーデの原因に応じて、手術的処置、心膜穿刺、薬物療法などがあります。
また、予防的な心膜穿刺や積極的な液体制限が必要な場合もあります。
心タンポナーデの治療
心タンポナーデの治療法を教えてください
治療法として、輸液、強心薬の投与が行われ、必要に応じて心エコーを使用した心膜穿刺(心臓の膜に針を挿入して液を排出する手法)が実施されます。
穿刺が困難なケースでは、剣状突起下アプローチを用いて液体の排出が行われることもあります。
慢性的な心膜液蓄積に対処するためには、心膜切開(開窓手術)が行われることもあります。
大動脈解離や心筋梗塞による心臓の破裂などの状況では、それぞれの原因に対処する外科的治療が必要となります。
心タンポナーデを放置するとどうなりますか?
心のう液がたまりすぎると、心臓はうまく血液を送り出せなくなり、閉塞性ショックを引き起こすことがあります。
閉塞性ショックとは、心タンポナーデによって心臓が血液を十分に送り出せず、全身の組織や臓器に酸素や栄養素が行き渡らず、多臓器不全を引き起こして死に至る危険がある状態です。
そのため、心タンポナーデが疑われた場合は、速やかに緊急搬送され、治療を開始することが必要です。
心タンポナーデは、命に関わる重篤な病態であるため、発症が疑われた場合には、早期に病院を受診し、迅速かつ適切な治療を行うことが重要です。
定期的な健康診断や、疾患に注意することで、発症を予防することができます。
心タンポナーデは再発しますか?
治療としては、心膜内の液体を排出するために、心臓カテーテル法や外科的手術が行われます。
しかし、心タンポナーデの治療によって、合併症が発生することがあります。
例えば、心臓カテーテル法によって液体を排出する際に、周囲の血管や臓器を損傷することがあります。
また、手術による合併症としては、手術中に出血が発生し、輸血が必要になることがあります。
さらに、治療後の合併症として、再発性心タンポナーデが挙げられます。
この場合、液体が再び心膜内に貯留し、圧迫が再発することがあります。
また、治療によって心臓が損傷を受け、心機能が低下することもあります。
心タンポナーデの治療には、慎重な判断と手技が必要です。
医師と患者は、治療方法について十分に話し合い、リスクと効果を慎重に検討する必要があります。
その他
心タンポナーデは急死するのでしょうか?
緊急外来での診察結果や症状に加えて、心エコー検査を用いて診断が行われます。
治療では、針を用いたり手術を行ったりして、心臓周辺に溜まった血液を取り除きます。
心タンポナーデにおいて、2枚の心膜の間に液体が蓄積され、心臓が圧迫されます。
これにより、心臓内部への血液の流入が困難になり、体に送られる血液量が減少し、ショック状態(血圧が危険レベルまで低下する状況)や急死に至ることがあります。
主な原因としては、大動脈瘤の破裂、進行した肺がん、急性心膜炎、心筋梗塞、心臓手術などが挙げられます。
胸部の傷害も心タンポナーデを引き起こす要因の一つです。
心タンポナーデにつながる胸部の傷害では、刺し傷が最も多いケースです。
心臓の壁が鈍的損傷により裂けることもあり、心タンポナーデが発生しますが、そのようなケースのほとんどは、治療を受ける前に命を落としてしまいます。
心タンポナーデの予兆はありますか?
心のう液の過剰な蓄積が心のう腔内圧力の増加を招き、心臓からの血液の流出量(心拍出量)が低下します。
その結果、血圧の低下や心拍数の上昇(頻脈)が生じ、時にはショック状態に至ることがあります。
心タンポナーデの余命について教えてください。
この病態が急性か慢性かによって、患者の症状や余命が大きく異なります。
急性心タンポナーデの場合、外傷性や心筋梗塞後の心破裂などが原因で、急速に症状が現れ、悪化します。
これにより、ショック死することもあり、迅速な治療が不可欠です。
一方、慢性心タンポナーデでは、心嚢内の液体が徐々に増えるため、初期症状は無症状で進行します。
病状が進行するにつれて、息苦しさや呼吸困難が現れます。
この場合、早期発見と適切な治療が行われれば、予後は比較的良好とされています。
心タンポナーデの余命はケースによって異なりますが、適切な治療が受けられることが最も重要です。
急性心タンポナーデの場合は迅速な対応が必要で、慢性心タンポナーデでは早期発見と適切な治療が予後に大きく影響します。
専門医と緊密に連携し、最適な治療を受けることで、生活の質や余命を改善することが可能です。
編集部まとめ
心タンポナーデは、心臓の周りに液体がたまることで心拍数や血液の循環が悪化する病気です。
心筋梗塞や心膜炎、癌などが原因となり、急性に発症することが多く、放置すると死に至ることもあります。
心嚢穿刺による液の排出が最も一般的な治療法であり、手術や強心剤の投与なども行われます。
治療にあたっては、原因となる疾患の治療も重要です。
心タンポナーデが疑われる場合には、早急に医療機関を受診することが必要です。