「ビタミンA欠乏症」の症状・原因・発症しやすい人の特徴はご存知ですか?
体内のビタミンAが欠乏した状態であるビタミンA欠乏症は、視覚症状に加えて皮膚や粘膜の乾燥などさまざまな症状が表れます。
初期の段階ではサプリメントなどでビタミンAを補充すれば症状は改善されますが、重症化すると失明したり死亡したりする恐れがある病気でもあります。
普段の食事に気を配ることで予防できる病気であるため、発症しないよう気を付けたいものです。今回は、ビタミンA欠乏症の症状・原因・予防法などについて、詳しく解説します。
監修医師:
郷 正憲(徳島赤十字病院)
目次 -INDEX-
ビタミンA欠乏症の症状と原因
ビタミンA欠乏症はどのような病気ですか?
慢性的な栄養不足がみられる発展途上国では多くの患者が存在し、全世界において失明原因の第1位となる病気でもあります。
症状を教えてください。
- 夜盲症:暗順応障害により暗いところでのみ目が見えなくなる
- 昼盲症:目の内部にある網膜が変性し明るいところでものが見えにくくなる
- 眼球乾燥症:目の表面の結膜と角膜が異常に乾燥しものが見えづらくなる
- 角膜軟化症:血管の増殖・浮腫・壊死などにより角膜が混濁し進行すると失明する
発症の原因を教えてください。
食が豊富な日本ではあまりみられない症状であり、失明など重症化するケースは極めてまれですが、偏った食生活が長期間続くと夜盲症などの症状が表れる方もいらっしゃいます。ビタミンAはレチノール・レチナール・レチノイン酸などの総称であり、肉類・魚介類・乳類・卵類・脂肪類・藻類・野菜類など幅広い食材に含まれているため、これらの食材を極端に避けると発症リスクが高まるため望ましくありません。
そのほか、各種疾患などが原因でビタミンA不足となり発症するケースもあります。
どのような方がビタミンA欠乏症になりやすいのでしょうか?
- 妊婦:妊娠によりビタミンAが欠乏しやすくなり、妊娠後期などで夜盲症を訴えるケースもあります。また、ビタミンAの過剰摂取が注意される妊娠初期などに、ビタミンAを過剰に避けることでも発症し得るでしょう。
- 新生児や乳児:新生児や乳児の肝臓にはビタミンAの貯蔵が少なく、母乳などから摂取する必要があります。母乳にビタミンAの含有量が少ないと、新生児や乳児ではビタミンAを十分に摂取できずビタミンA欠乏症を発症する恐れがあるのです。
- 吸収不良症候群:消化器系の疾患であり、脂肪やビタミンの吸収が阻害されるため、ビタミンA欠乏症にも陥りやすくなります。
- 肝疾患:体内のビタミンAのおよそ80~90%は、肝臓へ貯蔵されています。肝疾患などでビタミンAの貯蔵ができなくなると、ビタミンA欠乏症を発症するリスクも上がるのです。
ビタミンA欠乏症の診断と治療
どのような検査で診断されますか?
- 血液検査:血中のレチノール濃度を測定し、低下の有無を確かめます。体内には大量のビタミンAが蓄えられており、初期の段階では血中のレチノール濃度に変化が表れません。また、急性感染症により一時的にレチノール濃度が低下する場合などもあるため、血液検査だけでは診断が難しい場合もあるでしょう。
- ビタミンAによる試験的治療:ビタミンA欠乏による夜盲症などの症状が表れている場合には、試験的にビタミンAサプリメントを摂取し、症状の緩和の有無を確かめます。
- 網膜電図検査:暗順応に支障をきたしているケースでは、網膜に強い光を当て、その反応からビタミンA欠乏症かを判断する眼科検査を行います。
上記の検査から、ビタミンA欠乏症の特徴が認められた場合には診断が確定するでしょう。
治療方法を教えてください。
サプリメントの摂取による治療の他に、レチノールパルミチン酸エステルという油状の添加物を食事に混ぜて摂取する方法もあります。
嘔吐や吸収不良により消化管からの吸収が難しい場合には、注射などで体内に直接投与するケースもあるでしょう。
ビタミンA欠乏症はどのくらいの期間で治りますか?
ビタミンA欠乏症を放置するリスクと予防
ビタミンA欠乏症を放置するとどうなるのでしょうか?
- 成長障害:主に子供で発症し骨の形成不全により身体が大きくならない
- 皮膚や粘膜の角化:乾燥により皮膚や粘膜が肥厚したり角化したりする
- 尿路感染:膣や尿道の上皮細胞が角化し感染症を起こしやすくなる
発展途上国などではビタミンA欠乏症の治療が遅れ、多くの子供が失明したり感染症により死亡したりしています。ビタミンA欠乏症は早期治療が重要なため、夜盲症などの初期症状を放置せず、医療機関で受診するのが望ましいです。
ビタミンAは過剰摂取するのもよくないと聞きましたが…。
ビタミンA過剰症には、短時間で大量にビタミンAを摂取した際の急性症状と、慢性的に摂取して発症する慢性症状があります。
- 急性症状:腹痛・嘔吐・悪心・めまいなどの症状が表れた後に全身の皮膚落屑が認められます。ホッキョクグマのレバーや魚の肝油を大量摂取すると発症することがわかっているため注意が必要です。
- 慢性症状:頭蓋内圧亢進による頭痛やうっ血乳頭・全身の骨や関節の痛み・皮膚の乾燥・体重減少・肝脾腫などが認められます。
また、妊娠初期の方や妊娠を希望する方がビタミンAを過剰摂取すると、胎児に奇形などの影響が出る恐れがあるため注意が必要です。
ビタミンA欠乏症を予防する方法を教えてください。
体内に入ったビタミンAは、タンパク質と結びついて肝臓や全身へ運ばれるため、肉類や魚介類などの食品から摂取すると効率よく吸収できます。
多忙などでどうしても食事に気を配れない時期には、補助的にサプリメントなどで摂取するのもよいでしょう。
最後に、読者へメッセージをお願いします。
しかし、偏った食事を続けていると夜盲症などの視覚症状が表れるケースもあるため注意が必要です。また、妊娠中に極端にビタミンAを避けることで発症するケースも少なくありません。
食事は、バランスよく摂取するのが最も健康的です。普段から食生活に気を配り、ビタミンA欠乏症を発症しないよう努めましょう。
編集部まとめ
今回はビタミンA欠乏症の症状・原因・治療法などについて詳しく解説しました。日本では発症数が少ないですが、世界的にみると多くの発症者が存在する病気です。
ビタミンAは視覚や肌の潤いを保つために大切な栄養素ですが、過剰摂取にも気を付ける必要があります。
バランスよく摂取するためにも、食事に気を配ったりサプリメントなども上手に取り入れたりしたいものです。
夜盲症など視覚症状が表れやすいため、暗所で目が見えにくいと感じる場合には、一度眼科などの医療機関で受診することをおすすめします。