「臍ヘルニア」を成人が発症すると現れる症状はご存知ですか?医師が監修!
臍ヘルニアは小児の時期によく遭遇する疾患の一つです。臍(さい)とは名前の通り「へそ」の部分を指します。
「へそ」部分にヘルニアが起きることを臍ヘルニアといいます。小児に代表的な疾患ですが、成人でも発症するリスクがあるため注意が必要です。
今回の記事では臍ヘルニアの症状・原因・手術・放置した場合の危険性などについて解説します。臍ヘルニアに対する知識を身につけて、適切な対応を心がけましょう。
監修医師:
竹内 想(名古屋大学医学部附属病院)
目次 -INDEX-
臍ヘルニアの症状や原因
臍ヘルニアとはどのような病気ですか?
一般的に臍帯は生後1〜2週間で剥がれ落ち、剥がれ落ちた後、徐々に臍の陥没状態が完成していきます。中には、陥没状態にならずに臍が飛び出したままの状態になることがあり、この状態のことを臍ヘルニアといいます。
主に小児で発症する病気ですが、成人でも発症するケースがあるため注意が必要です。
主にどのような症状がありますか?
しかしヘルニア嵌頓(かんとん)といって「腸管」がヘルニアの出口部分で締め付けられて血流が阻害されてしまうと、さまざまな症状を引き起こすため注意が必要です。
ヘルニア嵌頓の主な症状は以下の通りです。
- 腹痛
- 嘔吐
- 臍の膨隆(整復困難)
上記の症状が出現した場合は処置が必要になります。適切な処置をした場合は大きな問題にはならないため、医師の指示に従うことが大切です。
また小児のヘルニア嵌頓は比較的少ないですが、成人はヘルニア嵌頓に陥りやすいため注意が必要です。
臍ヘルニアの原因が知りたいです。
成人の臍ヘルニアに関しては自然発生することはなく、はっきりとした原因があります。成人が臍ヘルニアを発症する原因は以下の通りです。
- 肥満
- 妊娠
- 腹水(腹に水が溜まった状態)
など腹腔内圧が上昇することが原因として挙げられます。
臍ヘルニアは成人にも起こることがあるのですね。
妊娠などの影響から以前は女性の方が多い病気でしたが、現在では生活習慣の変化に伴い肥満が原因になることも多く、男性の割合も増えてきています。生活習慣に気をつけて予防することが大切です。
臍ヘルニアの検査や手術
臍ヘルニアはどのような検査が行われますか?
成人の臍ヘルニアは立位・座位では臍付近が出っ張り、寝た姿勢では引っ込む特徴があるため、確認が必要です。またCT検査を行い、ヘルニア部分の大きさ・位置・筋肉の状態を確認します。
後述しますが、成人の臍ヘルニアは小児の臍ヘルニアとは違い、自然治癒することはなく手術が必要になります。そのため成人ではCT検査・採血を行い手術に備えることが必要です。
CT検査では腹部の状態や位置関係、筋肉の状態を確認します。採血では手術に備えて糖尿病はないか、血糖コントロールに問題はないかなどの確認をします。
臍ヘルニアの手術について教えてください。
手術日を含めて1泊2日程度の入院で治療は終了して退院が可能です。成人の臍ヘルニアの場合は自然治癒することがなく、ヘルニア嵌頓に陥りやすいため手術が必要です。
手術は自分自身の組織を利用して縫いよせる方法・人工膜(メッシュ)を入れて弱くなった部分を補強する方法の2種類あります。
自分自身の組織を利用する場合は人工物膜を使用しないため術後の感染症などを発症しにくい点がメリットです。しかし、弱くなっている組織を縫い合わせるため、再発のリスクや痛みが強い点がデメリットとして挙げられます。
人工膜を入れて補強する方法は再発のリスクが低いことと術後の痛みが少ないことがメリットです。しかし人工膜を使用するため、術後の感染症にかかるリスクがあるため注意が必要です。
人工膜で補強する方法の代表的な手術にeTEP法があります。eTEP法は腹腔鏡手術で、腹膜外にメッシュを入れてヘルニアを抑え込みます。術後の痛みや合併症が少ないことなどが特徴です。
成人の手術も小児の手術同様に、1泊2日程度の入院で退院が可能です。どのような手術を選択するかは全身状態を確認した上で異なります。医師と相談して、自分自身に適している手術を選択することが大切です。
臍ヘルニアの手術後の注意点は?
- 重いものを持つ
- 激しい運動
- 筋力トレーニング(上体起こし)
術後1週間程度からウォーキングなどの軽い運動から開始するのが目安になります。激しい運動は2週間程度は避けて、徐々に腹圧を高めるような運動へ負荷量を増やしていきます。
上記の開始期間はあくまで目安となるため、運動の開始時期については医師に相談してください。また小児の場合は大人に比べて痛みに敏感なため、痛みを確認することが大切です。
「傷口が膿んでいないか」などは小児では確認できないため、大人が確認するようにしましょう。
臍ヘルニアを放置する危険性
子供の臍ヘルニアは自然に治ることはありますか?
以前は経過観察して自然治癒を待つことが主流でした。現在では「圧迫固定法」を行えば高率で早期に治癒できることが報告されています。
圧迫固定法は絆創膏やガーゼ球などを用いて臍部分を整復固定して修正するなど、医師により方法はさまざまです。症状に合わせて適切な方法などが選択されて、数ヶ月かけて整復します。
2歳までに整復しないケースに関しては本人や家族と協議して手術を検討します。
成人の臍ヘルニアを放置した場合の危険性を教えてください。
ヘルニア嵌頓のまま放置すると、飛び出した臓器が元に戻らずに壊死してしまう危険性があります。場合によっては緊急手術が必要になるケースもあります。医師の指示に従い適切な処置を受けてください。
最後に、読者へメッセージをお願いします。
近年では肥満が一つの要因として挙げられており、生活習慣を見直すことが予防にあたって大切です。肥満に関してはBMI30以上で有意に増加するともいわれているため、適度な食事・運動を心がけて体重の管理を行いましょう。
ヘルニア嵌頓にならないためにも、臍ヘルニアを発症した場合は早期に医療機関を受診して医師の指示に従い行動してください。
編集部まとめ
臍ヘルニアは小児に多い病気ですが、成人でも発症します。また成人で発症した場合はヘルニア嵌頓に陥りやすく、小児に比べて重症化しやすいため注意が必要です。
臍ヘルニアの症状には腹痛・吐き気・腹部の膨張があります。原因としては小児は自然発症するのに対して、成人では肥満などの生活習慣病が一因になるともいわれており、生活習慣を見直すことが大切です。
成人の臍ヘルニアでは自然治癒することはなく手術が必要になります。術後は重い物を持つなどの腹腔内圧が上昇するような激しい運動は控えるようにしてください。
臍ヘルニアはヘルニア嵌頓まで悪化すると腹部臓器が壊死する危険性もあります。医師の指示に従い適切な行動を心がけましょう。