「ファイファー 症候群」はいつわかるかご存知ですか?医師が監修!
公開日:2023/05/20
みなさんは「ファイファー症候群」という病気をご存知でしょうか。
ファイファー症候群は国の難病に指定されている病気です。その発症原因はいまだに解明されておらず、治療法も確立されていません。
分からないことが多い病気なので、情報が少なく不安になる方が多い病気です。
この記事ではファイファー症候群のよくある質問をまとめています。発症の原因や検査・治療方法・合併症・予後について詳しく解説していきます。
監修医師:
白井 沙良子(医師)
プロフィールをもっと見る
小児科医(日本小児科学会専門医)。慶應義塾大学医学部卒業。総合病院にて研修を修了し、現在はクリニックにて、様々な感染症やアレルギー疾患の診療、乳幼児健診、育児相談などを担当。オンライン医療相談、医療記事の執筆・監修、企業向けセミナーなども通じて「エビデンスに基づいた育児情報」を発信している。
目次 -INDEX-
ファイファー症候群の症状と原因
ファイファー症候群とはどのような病気ですか?
FGFR2遺伝子(時にFGFR1遺伝子)の 変異が原因で、先天的な頭蓋骨や顔面骨(基本的に下顎を除く)の形成異常がおこる病気です。赤ちゃんの脳は生後6カ月までに2倍の大きさになり、2歳を迎えるころには大人の脳の90%まで成長します。この脳の成長に対応できるよう、赤ちゃんの頭蓋骨は7つのプレートに分かれた状態で生まれてきます。
それぞれのプレートにはすき間があり脳の成長と共に繋がっていくのですが、ファイファー症候群の場合、脳が完全に発達する前にプレートが癒合してしまいます。それにより、脳の発達が妨げられたり、眼球が突出したり、呼吸が障害されたりする病気です。
それぞれのプレートにはすき間があり脳の成長と共に繋がっていくのですが、ファイファー症候群の場合、脳が完全に発達する前にプレートが癒合してしまいます。それにより、脳の発達が妨げられたり、眼球が突出したり、呼吸が障害されたりする病気です。
症状を教えてください。
症状は軽いものから重いものまでさまざまです。比較的軽い症状には、頭痛・嘔吐・吐き気が挙げられます。これらは頭蓋骨が小さいことにより起きる症状で、頭蓋骨内の圧が高くなることで誘発されます。
呼吸がしにくくなったり、噛み合わせが悪くなったりするのも頭蓋骨が小さいことによるものです。手足の指の一部に癒合が認められることもファイファー症候群の特徴です。症状が重い場合は、運動発達や知的発達が遅れる場合があります。
呼吸がしにくくなったり、噛み合わせが悪くなったりするのも頭蓋骨が小さいことによるものです。手足の指の一部に癒合が認められることもファイファー症候群の特徴です。症状が重い場合は、運動発達や知的発達が遅れる場合があります。
発症する原因を教えてください。
ファイファー症候群は遺伝子異常が原因の病気です。原因遺伝子であるFGFR2(時にFGFR1)が、何らかの理由により変異することで発症します。
親が罹患者の場合、50%の確率で発症する可能性があります。FGFRは線維芽細胞増殖因子受容体(せんいがさいぼうぞうしょくいんしじゅようたい)と呼ばれる遺伝子で「成長因子」の一種です。
ファイファー症候群はこのFGFR1・FGFR2の変異によるものですが、どのように変異するのかメカニズムはほとんど解明されていません。
親が罹患者の場合、50%の確率で発症する可能性があります。FGFRは線維芽細胞増殖因子受容体(せんいがさいぼうぞうしょくいんしじゅようたい)と呼ばれる遺伝子で「成長因子」の一種です。
ファイファー症候群はこのFGFR1・FGFR2の変異によるものですが、どのように変異するのかメカニズムはほとんど解明されていません。
ファイファー症候群はいつわかりますか?
ファイファー症候群は遺伝子の検査をはじめ、画像検査などの結果から診断します。X線検査などの画像検査では、頭蓋縫合早期癒合・顔面骨の低形成を診断していきます。
発症時期は症状の程度によりさまざまですが、多くの場合1歳以内に発症するとされています。
発症時期は症状の程度によりさまざまですが、多くの場合1歳以内に発症するとされています。
妊娠中にファイファー症候群と判明することもありますか?
たとえば妊婦健診での超音波検査で、赤ちゃんの脳に水が貯まる水頭症が見られる場合は、何らかの疾患をうたがいます。ファイファー症候群でも水頭症は見られますが、他にも水頭症をきたす疾患は様々あります。
その他羊水検査なども含めて、妊娠中に確実にファイファー症候群だと診断できることはありません。
その他羊水検査なども含めて、妊娠中に確実にファイファー症候群だと診断できることはありません。
ファイファー症候群の検査と治療方法
ファイファー症候群はどのような検査で診断されますか?
ファイファー症候群とよく似た病気に「アベール症候群」や「クルーゾン症候群」と呼ばれるものがあります。
そのため、症状だけで病名を診断することは難しく、さまざまな検査を行い総合的に診断していきます。代表的な検査は以下の通りです。
そのため、症状だけで病名を診断することは難しく、さまざまな検査を行い総合的に診断していきます。代表的な検査は以下の通りです。
- 画像検査:単純頭部 X 線写真・CT・MRI・脳血流シンチグラフィー・オルソパントモ写真など
- 眼科的検査:視力・眼球突出度・両眼視機能・眼底検査など
- 耳鼻科的所見:単純頭部 X 線写真・CT・ポリソムノグラフィーなど
診断結果によって、その後の治療方法が決まります。
治療方法を教えてください。
基本的には、起きている症状に合わせた治療を行う対症療法になります。ファイファー症候群の特徴である、先天的な頭蓋骨や顔面骨の形成異常に対しては、主に2種類の外科治療があります。それが「頭蓋形成術」「骨延長術(MoD法)」です。
頭蓋形成術は、一度で変形した頭の形を修正して、頭蓋骨の中の容積を大きくする方法です。頭蓋骨に一部骨欠損が生じてしまいますが、1歳以下であればすき間を埋めるように骨が成長していくので、問題ありません。1歳以下の場合には問題にはなりません。
骨延長術は、頭蓋骨に延長器を装着し少しずつ骨を伸ばしていく方法です。人工的に骨の延長を行うだけでなく、体が本来あるべき頭蓋骨の形に戻ろうとする治癒力を利用するため、より自然な頭蓋形態が期待できます。
その他にも、V-Pシャント術・後頭下減圧術・気管切開術・顔面形成術・後鼻孔狭窄・環軸椎固定術・合指症分離術・口蓋形成術などがあります。
頭蓋形成術は、一度で変形した頭の形を修正して、頭蓋骨の中の容積を大きくする方法です。頭蓋骨に一部骨欠損が生じてしまいますが、1歳以下であればすき間を埋めるように骨が成長していくので、問題ありません。1歳以下の場合には問題にはなりません。
骨延長術は、頭蓋骨に延長器を装着し少しずつ骨を伸ばしていく方法です。人工的に骨の延長を行うだけでなく、体が本来あるべき頭蓋骨の形に戻ろうとする治癒力を利用するため、より自然な頭蓋形態が期待できます。
その他にも、V-Pシャント術・後頭下減圧術・気管切開術・顔面形成術・後鼻孔狭窄・環軸椎固定術・合指症分離術・口蓋形成術などがあります。
手術は成長に合わせて何度も行うのですね…。
子どもの年齢・状況・体格に合わせて、その時に必要な手術を繰り返して行く必要があります。これがファイファー症候群の治療が長期化する大きな理由です。
手術を何度も繰り返さなければならないとなると不安になりますが、少しずつ治療を進めていく方法には、子どもへの負担を最小限におさえられるメリットがあります。治療方法が予後に大きく影響してきますので、検査結果に合わせて適切な治療を行うことが大切です。
手術を何度も繰り返さなければならないとなると不安になりますが、少しずつ治療を進めていく方法には、子どもへの負担を最小限におさえられるメリットがあります。治療方法が予後に大きく影響してきますので、検査結果に合わせて適切な治療を行うことが大切です。
ファイファー症候群の合併症を教えてください。
ファイファー症候群の代表的な合併症を紹介します。
- 呼吸障害:脳の成長が妨げられることにより、呼吸障害が引き起こされる。
- 水頭症:脳内に脳脊髄液が過剰に貯まることにより頭痛・吐き気・嘔吐が引き起こされる。
- 手指や足指・四肢の癒合:手や足の指がくっついた状態で生まれてくる。
- 手足の指が短い:身体的な形態異常が見られる。
ファイファー症候群の予後
ファイファー症候群は完治しますか?
完治するかどうかは、症状の程度に関係してきます。脳機能に異常がない比較的軽度な症状の場合、早い時期に適切な手術をすることで改善に向かっていきます。症状が重症であった場合、手術を繰り返すことによる治療の長期化はまぬがれません。
脳以外に肺や内臓への影響がある場合、呼吸障害などの合併症が発症し、さらに治療が複雑かつ長期化します。症状が重い場合、日常生活が送れるまでに改善するには長い時間がかかるといえるでしょう。
脳以外に肺や内臓への影響がある場合、呼吸障害などの合併症が発症し、さらに治療が複雑かつ長期化します。症状が重い場合、日常生活が送れるまでに改善するには長い時間がかかるといえるでしょう。
ファイファー症候群は寿命に影響しますか?
残念ながらファイファー症候群と寿命の関係性を断言することはできません。ファイファー症候群の寿命も、症状の程度に関係していると言えるからです。
また、行われる治療が有効に働くかどうかも大きく関係してくるといえるでしょう。合併症が併発した場合、治療方法は総合的に考えていく必要があります。そのため、適切な時期に適切な治療を受けることが重要になってきます。
また、行われる治療が有効に働くかどうかも大きく関係してくるといえるでしょう。合併症が併発した場合、治療方法は総合的に考えていく必要があります。そのため、適切な時期に適切な治療を受けることが重要になってきます。
最後に、読者へメッセージをお願いします。
まだ解明されていないことも多いファイファー症候群。何度も繰り返す入院と手術に、不安になることも多いと思います。
ですが、常に最善の治療方法を模索しながら改善する道を探っていくしかありません。検査と適切な治療を怠らないことが大切です。
ですが、常に最善の治療方法を模索しながら改善する道を探っていくしかありません。検査と適切な治療を怠らないことが大切です。
編集部まとめ
ファイファー症候群の発症原因や検査・治療方法・合併症・予後について解説してきました。ファイファー症候群は、FGFR2遺伝子の変異によって形成異常が現れる難病です。
主な治療方法には、「頭蓋形成術」「骨延長術(MoD法)」があり、成長に合わせて手術を繰り返す必要があります。
症状の程度によって予後や寿命に違いが出るため、検査結果に合わせて適切な治療を行うことが大切です。
先の見えない治療に不安を感じると思いますが、本記事が参考になれば幸いです。