「血行不良」の症状・改善方法・血流を良くする食べ物はご存知ですか?
「血行不良」というと、特に冬場の寒い時期によく耳にする言葉なのではないでしょうか。
血行不良は冷え性の原因でもあり、わたしたちの生活に身近に存在している症状のひとつです。
しかし身近に存在しているからといって軽視してはいけません。
なぜなら、血行不良が原因で大きな病気を発症してしまうこともあるからです。
この記事ではなぜ血行不良が起こってしまうのか、その原因と症状を明らかにするとともに、ご自身でできる改善方法や受診の目安を解説しています。
監修医師:
竹内 想(名古屋大学医学部附属病院)
目次 -INDEX-
血行不良の原因と症状
血行不良とはどのような状態でしょうか?
わたしたち人間の体には、成人の場合でいうと体重の約13分の1もの血液が流れています。その血液はわたしたちの体の隅々にまで栄養や酸素を運び、老廃物や二酸化炭素を回収してくれるという役割を果たしているのです。
そのような役割を果たしている血液の流れが滞ってしまい、酸素や栄養素が体の隅々にまで行き渡らずに老廃物が蓄積されるという悪循環が起こってしまっている状態が血行不良なのです。
血行不良になる原因を教えてください。
さらに近年では、ストレスによって自律神経が乱れると血液循環機能に悪影響が出ることが解明され、現代病としての一面も持っています。
血行不良で起こる症状を教えてください。
血流が悪くなると、体に温かい血液が行き渡らなくなり体が冷えてしまいます。そして体内に溜まった老廃物をうまく運べなくなり、老廃物が蓄積してむくみの原因にもなるのです。
筋肉に溜まった疲労物質が運べないと、肩こりや腰痛を引き起こします。また、目の血行が悪くなるとかすむ・ショボショボする・痛むなどの症状を伴う眼精疲労が起こります。
さらに血行が悪いと、古い細胞と新しい細胞が入れ替わるために必要な栄養素や酸素を細胞に届けられません。その結果、肌のゴワつき・吹き出物・シミなどの肌トラブルが生じます。なお、目の下にできるクマも、血行不良のサインです。
血流が悪いとさまざまな病気を引き起こすと聞きましたが…。
壊死状態となった組織は表面が黒くなり、最悪の場合剥がれ落ちて指を失ってしまうことがあるのです(閉塞性動脈硬化症)。このように動脈が細くなり、組織が機能を失いかけている状態を虚血と呼び、虚血になると、動脈が血液を送るために収縮する際に痛みを感じるようになります。
この虚血が心臓の筋肉(心筋)に血液を送る冠状動脈で起こると、心筋が酸素不足に陥り虚血性心疾患と呼ばれる状態になります。虚血性心疾患は冠攣縮性(かんれんしゅく)性狭心症・無症候性心筋虚血・心筋梗塞・労作性狭心症の4つに分類され、命にかかわることもあるので注意が必要です。
その他にも、脳梗塞などの重篤な病気を引き起こす可能性があります。
血行不良の治療方法
病院へ行くべき血行不良の症状はありますか?
- 手先や足先のむくみ
- 手先や足先のしびれ・痛み
- 足先が黒く変色してきた
- 動悸・息切れ
- 胸痛
- めまい
- 背中の痛み
手や足に症状が現れたのなら整形外科を受診するイメージが強いと思いますが、閉塞性動脈硬化症の場合は血管に原因が存在します。上記の症状が見られる場合は、循環器内科(循環器科)を受診してください。
どのような検査を行うのでしょうか?
- 動脈超音波検査
- CT検査
- 血管造影検査
一方で動悸や胸痛など胸のあたりに症状が出ている場合は、レントゲンの撮影や心電図で検査を行ないます。その他に、心臓核医学検査や心臓カテーテル検査を実施する病院もあるでしょう。
治療方法を教えてください。
薬物治療では主に血管拡張剤・抗血症板剤・降圧剤・抗不整脈剤利尿剤・強心剤などが使用されます。これらの薬で血流を増やすことを促進したり、血液をサラサラにしたりして血流の改善を図ります。
カテーテル治療は局部麻酔によって行われる治療です。先端に風船の付いたカテーテルを血管内の狭くなっている病変部に挿入し、内側から血管を拡張し血流を確保します。さらに拡張した血管が再び狭くなってしまわないように、ステントと呼ばれる金属製の筒を血管内に入れることもあります。
局部麻酔で行われるカテーテル治療に対し、外科的治療は全身麻酔で行われる治療です。詰まった血管に迂回路を作るバイパス手術を行ったり、動脈の硬くなった内膜を摘出する手術を実施したりします。
血行不良を改善する方法
血行不良を改善する方法を教えてください。
血液のスムーズな循環を促すために、こまめに水分補給をして適度な運動を行いましょう。運動はジョギングやウォーキングなどがおすすめです。また、デスクワークなどで長時間同じ姿勢を続けていると血流が滞りがちになってしまいます。こまめに休憩を取るようにしてストレッチをしたり、体や足を伸ばしたりするだけでも効果が期待できます。
体を締め付けるような窮屈な下着や洋服を着用するのは避けたほうが良いでしょう。特に女性の場合、ハイヒールなどの踵が高い靴を履いていると足への負担が大きく、血流が滞ってしまう原因となります。職場などでは、可能な限りスリッパや踵の低いシューズに履き替えて過ごすことをおすすめします。
体を温めることが血行促進につながりますので、入浴はシャワーだけで済ますのではなく、湯船に浸かる習慣をつけましょう。入浴の際は、37度~40度くらいのお湯に15分程ゆっくりと浸かるようにしてください。副交感神経が優位になり、リラックス効果も得られるのでおすすめです。
血流を良くする食べ物はありますか?
- お酢・梅干し・レモン等の柑橘類に含まれる「クエン酸」
- サンマ・イワシ・サバなどの青魚に含まれる「EPA」
- 海藻類に含まれる「アルギン酸」
- ビタミンやフルーツ類に含まれる「ビタミンC」
- カボチャやアスパラガスに含まれる「ビタミンE」
どれも身近な食品ばかりのため、無理のない範囲で普段の食事に取り入れることをおすすめします。ただしビタミンEはそれ自体が酸化しやすい成分ですので、ビタミンCと一緒に摂取するようにしてください。
市販薬や漢方は血行不良に効果がありますか?
ただし市販薬を服用しても症状の改善が見られない場合には、病院を受診するようにしてください。
最後に、読者へメッセージをお願いします。
ただし手先や足先が黒ずんできたり、動悸・息切れ・胸痛などを感じたりなどの症状が現れた場合には、早めに循環器内科の受診をおすすめします。
編集部まとめ
特に冬場の寒い時期などには手先や足先の冷えを覚え、血行不良を感じる人が多いのではないでしょうか。
しかし「たかが血行不良」と侮っていると、大きな病気を発症してしまう恐れがあります。
また血行不良はむくみや肌トラブルを引き起こしたりと、美しさが気になる人にとっても大敵です。
健康や美しさを維持していくためにも、血行不良の改善は積極的に実践していきましょう。
血行を良くするためには、適度な運動や栄養バランスの取れた食事を心がけ、お風呂でゆっくりと体を温める生活を意識してください。
冷えが気になる人は市販の漢方を取り入れてみるのも良いでしょう。
ただし、生活習慣を改善したり漢方を取り入れたりしても症状が改善しない場合は、一度病院で相談してみることをおすすめします。