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「急性胆嚢炎」を発症すると現れる症状・原因はご存知ですか?医師が監修!

 公開日:2023/05/29
「急性胆嚢炎」を発症すると現れる症状・原因はご存知ですか?医師が監修!

急性胆嚢炎は、胆嚢にできる急性の炎症です。胆嚢は、消化液である胆汁を一時的に貯める袋であり、胆嚢に炎症が起こるとさまざまな症状が現れます。

軽症は手術などで治りやすいですが、治療開始が遅れて病状が進むと、重症化して重篤な合併症を引き起こしてしまう場合もあるので注意が必要です。

この記事では、急性胆嚢炎を引き起こす原因についてご紹介します。加えて、症状・検査方法・治療方法・注意点なども詳しく解説していきます。

「急性胆嚢炎について詳しく知りたい方」・「気になる症状がある方」・「経過について知りたい方」はぜひ最後までお読みください。

中路 幸之助

監修医師
中路 幸之助(医療法人愛晋会中江病院内視鏡治療センター)

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1991年兵庫医科大学卒業。医療法人愛晋会中江病院内視鏡治療センター所属。米国内科学会上席会員 日本内科学会総合内科専門医。日本消化器内視鏡学会学術評議員・指導医・専門医。日本消化器病学会本部評議員・指導医・専門医。

急性胆嚢炎の原因と症状

診察をする女性の医師イメージ

急性胆嚢炎はどのような病気ですか?

急性胆嚢炎とは、胆嚢に急性の炎症が起こる病気です。胆嚢は、肝臓で作られる胆汁を一時的に貯める袋です。胆汁は大切な消化液であり、食物(特に脂肪)の消化を促します。しかし、さまざまな原因で胆汁の流れに障害が起きたり、胆嚢に感染が起きたりした場合には炎症が起きてしまいます。
その原因の多くは胆石です。急性胆嚢炎の多くは、早期に治療を開始して、手術をすることで治ります。しかし、時には腹膜炎・敗血症などの重篤な合併症を起こしてしまうので注意が必要です。
状態が悪化すると手術ができなくなったり、治療が長引いたりするので、早めに医師の診察を受けることが重要となります。

どのような症状がみられますか?

急性胆嚢炎の症状で最も多いのは、上腹部痛です。痛みは主に、みぞおちから右わき腹にかけて強く出現し、吐き気・嘔吐を伴う場合もあります。また、炎症が悪化すると発熱がみられます。
同じような症状は胆石症にもみられますが、症状が断続的です。一方、急性胆嚢炎では炎症で胆嚢が腫れてしまうので、症状もしばらく続きます。
これらの症状が出た場合は早めに受診し、医師による正確な診断・適切な治療を受けることが重要です。

急性胆嚢炎を発症する原因を教えてください。

発症する原因の約85〜95%は胆嚢結石です。胆石が胆管にあると、狭窄・閉塞を起こして胆汁流れが悪くなります。胆嚢内に胆汁が滞ると、胆嚢粘膜が刺激されて傷つき、炎症を引き起こしてしまうのです。
また、細菌感染も原因の1つとして挙げられます。食事・腸管・血液などから細菌が運ばれて胆嚢に侵入して増えると、炎症をきたす場合があります。その他の原因には、胆嚢の機能低下・血行障害・アレルギー反応などがあるので、加えて注意が必要です。
発症全体の約17%は重篤化する可能性がありますが、その原因としては高齢・糖尿病などが挙げられます。

女性が急性胆嚢炎になる原因を教えてください。

急性胆嚢炎における女性の発症率は、男性に比べて約2倍だとわかっています。先述したように、急性胆嚢炎の原因の多くは胆石です。女性は男性より胆石の発症が多いことが分かっていますので、胆石の発症に比例して、急性胆嚢炎の発症も増えると考えられます。
胆石は女性ホルモンの影響・肥満・過食・不規則な食生活などが原因です。まず、女性ホルモンの影響としてはエストロゲン・プロゲステロンが関わっています。エストロゲンは胆汁中にコレステロールを排泄する働きを持ちますが、コレステロールが過剰に排泄されてしまうと、胆汁が固まりやすくなり胆石になるのです。
また、プロゲステロンの作用で胆嚢の機能低下が起こった場合にも胆石が起こりやすくなります。妊娠中の胆嚢炎の原因には、これらの女性ホルモンの影響が考えられています。
次の原因としては、ストレス・ダイエットなどによる食生活の乱れです。食生活が乱れた結果生じた胆石が原因となって急性胆嚢炎を発症します。過食になると、その大量の食べ物を消化しようとして胆汁の分泌量が増えるため、胆嚢を過剰に刺激し炎症を起こします。
また、妊娠中の急性胆嚢炎の原因の多くは胆石であるとの報告はありますが、妊娠により急性胆嚢炎のリスクが高まるかは分かっていません。

急性胆嚢炎の検査方法や治療法

説明する医師

受診するべき初期症状はありますか?

受診するべき初期症状として、「痛み」が挙げられます。痛みは、右上腹部・みぞおちに突然現れることが多く、持続的です。背中痛が生じる場合もあります。
また、胆汁の流れが悪くなることで、吐き気・嘔吐を引き起こしてしまいます。特に、食後に起こりやすいのが特徴です。そして炎症がある場合の反応として発熱もみられます。これらの症状が現れたら、すぐに受診をすることをおすすめします。
重症化を防ぐためにも、早めに受診して診断を受け、適切な治療を受けましょう。

何科を受診すれば良いでしょうか?

急性胆嚢炎の心配がある場合、消化器内科・消化器外科を受診しましょう。消化器科医は、急性胆嚢炎に対して専門的な知識・技術があるため、正確な診断・適切な治療においても期待できます。
病院によっては、特に肝臓・胆道・膵臓を専門とする肝胆膵外科などもあるので、症状が出た場合はすみやかに受診するようにしてください。自力で専門医がみつからない場合には、まずかかりつけ医に相談し、専門医の紹介を受けることも可能です。
合併症・持病を持っていたり、全身状態が悪かったりした場合には、他の科を連携して、チーム体制で治療にあたるケースも多くあります。

急性胆嚢炎の検査方法を教えてください。

診断・病態把握のための検査方法には、診察・血液検査・画像検査などがあります。触診・打診などで痛みの部位・痛みの程度・腫大・圧痛などの症状が確認できます。特に右上腹部の腫れを触知でき、自発痛・圧痛については、「急性胆道炎・胆嚢炎診療ガイドライン(2018年)」においても診断基準として重要なポイントです。
血液検査では、白血球・CRP値を調べて炎症反応の有無・程度を確認します。また、肝胆系酵素(ALP・γ-GPT・ AST・ALT・ビリルビンなど)の値から機能状態を調べます。画像検査には、超音波検査・CT検査などがあり、どちらも診断に有効です。
胆嚢の腫大・胆嚢壁肥厚・胆嚢結石・周囲の体液貯留などが急性胆嚢炎の特徴所見なので、注意深く読影します。これらの検査は、医師が正確な診断を行い、適切な治療方法を選択するために大変重要です。

どのような治療を行いますか?

急性胆嚢炎の治療は手術が一般的です。手術適応・手術時期を決定する前の初期治療として、絶食・点滴に加え、抗菌剤・鎮痛剤の投与を行います。
症状が出現し診断を受けてから、なるべく早期の手術がよいとされていますが、重症度・合併症・全身状態を考慮して慎重に検討することが重要です。緊急を要して直ちに手術・ドレナージを行うケースもあれば、症状・全身状態が安定してから手術を行うケースもあります。
手術は、腹腔鏡下胆嚢摘出術が標準です。腹腔鏡下胆嚢摘出術は、腹部に小さな穴を開けて行うので、開腹に比べて痛みが少なく済みます。
また、手術時間が短く術創も小さいので体に対する負担が最小限で済み、早期退院が可能です。発症の原因が胆石の場合は、胆石を除去する処置を行う場合もあります。これらの治療方法は、急性胆嚢炎の重症度・合併症・全身状態などを考慮して決定します。

手術をした場合の入院期間を教えてください。

急性胆嚢炎で手術をした場合の入院期間は、患者の状態によって変わります。一般的には、腹腔下胆嚢摘出術では術後3〜4日開腹時術では術後5〜7日で退院退院となる場合が多いです。
しかし、術後の経過には個人差があります。特に、炎症が強い場合・合併症を伴っている場合・全身状態が安定していない場合などは、状態が落ち着くのを待って退院します。
したがって、入院期間も通常よりは長くなり数週間に及ぶケースも少なくありません。また、術前の初期治療が長引いた場合などは、全体的にみると入院期間が長くなります。

急性胆嚢炎の予後

お腹を触るミドル世代の女性(笑顔)

急性胆嚢炎は治る病気ですか?

急性胆嚢炎は多くの場合、早い時期に適切な治療を行うことで治る病気です。主な治療法は胆嚢切除・抗生物質の投与などで、大半は短期間で治ります。ごく軽症の場合には、安静・食事制限だけで自然治癒する場合もあります。
しかし、診断・治療が遅れて炎症が悪化してしまうと腹膜炎・敗血症などの合併症を引き起こし、命に影響を及ぼす危険もあるので注意が必要です。
したがって、急性胆嚢炎が疑われる症状が出現したら、すみやかに受診し、専門医による早期診断・早期治療を受けましょう。急性胆嚢炎の原因の多くを占める胆石がある方は、胆石の治療を行うことで、予防できます。

急性胆嚢炎の死亡率は高いのでしょうか?

「急性胆道炎・胆嚢炎診療ガイドライン(2018年)」によると、急性胆嚢炎の死亡率は1%未満で非常に低いです。以前は、胆嚢摘出術後の早期感染症による死亡が多くみられましたが、現在は医療の進歩により激減しました。
現在では、術後の心不全・心筋梗塞・肝腎不全が原因である場合が増えています。死亡率は、患者の年齢(特に75歳以上)・合併症の有無・治療開始時期だけでなく、治療する側の治療方法選択・技術などにも左右されます。これらの要因をなるべく減らすことが、死亡率を下げるためには重要です。
早期受診・早期治療はもちろん、食生活の見直し・生活習慣の改善・定期健診・胆石の治療などを行うことで、重症化・再発を防ぎましょう。

食事で注意点を教えてください。

急性胆嚢炎では、食事の際に注意する点があります。胆嚢に炎症が起こると、胆嚢の収縮力が弱って消化機能の低下がみられます。そのため、脂肪分・コレステロールを多く含むものは避けて、胆嚢の収縮・胆汁の分泌による刺激を抑えることが必要です。
具体的には、揚げ物・肉の脂身(バラ肉・鶏皮・ベーコンなど)・脂ののった魚(鯖・鰻など)・卵・乳製品などです。反対に食物繊維を多く含むかぼちゃ・里芋・人参などは血中コレステロールの排泄を促すので、積極的に摂るようにしましょう。塩分・糖分は、体内の組織水分量が増えてしまい、胆嚢の浮腫を助長しますので摂り過ぎには注意です。
また、一度に多く食べると胆嚢に負担がかかってしまうため、食事回数を増やして1回量を少量ずつにして食べるようにしましょう。カフェイン・アルコールは、過剰に摂取すると胆嚢に負担がかかるので控えてください。
これらの注意点は、患者の状態によってそれぞれ異なります。医師としっかり相談・確認した上で、ご自身に合った適切な食事を摂るようにしましょう。

最後に、読者へメッセージをお願いします。

急性胆嚢炎は、症状が出て早期に適切な治療を受けることで完治できる病気です。みぞおちあたりの痛みが出ることが多いので、「単なる胃痛かも」とついつい放置してしまうケースもあります。
しかし、治療開始の時期が遅れると合併症を起こして重症化し、敗血症などの重篤な合併症を引き起こしてしまう場合もあるので注意が必要です。急性胆嚢炎に当てはまる症状がある場合は、すぐに医師に相談することをおすすめします。
また、食生活の見直し・生活習慣の改善・定期健診などは再発・合併症予防に有効ですので、積極的に取り組みましょう。

編集部まとめ

パソコンを使う白衣姿の女性
急性胆嚢炎の症状・原因・治療方法・注意点などについて詳しくご紹介しました。

胆嚢に炎症が起こってしまう急性胆嚢炎は、治療を受けることで完治が期待できる病気で、特徴的な症状は右上腹部・みぞおちに生じる突然の痛みです。

超音波検査・CT検査などで診断でき、手術で胆嚢を摘出する治療が一般的です。治療効果も高く予後もよいですが、合併症などがあると重症化しやすいので注意してください。

食事・生活習慣を改善し、胆石など原因を早めに取り除くことで予防できます。今回ご紹介した原因に心当たりがある方は、早めに対処して予防に努めましょう。

この記事の監修医師