「皮様嚢腫」を発症すると現れる症状・原因・手術方法はご存知ですか?
皮様嚢腫(ひようのうしゅ)とよばれる病気をご存知でしょうか。皮様嚢腫とは女性の卵巣に深く関わりがある病気です。
しかし、自覚症状がなく早期発見は難しいため、症状が進行してしまうことも多いです。
そこで、本記事では以下の4点について詳しく解説していきます。
- 皮様嚢腫の症状と原因
- 検査と治療法
- 皮様嚢腫になりやすい方
- 手術後の再発と後遺症について
本記事を参考に、皮様嚢腫に関する知識を深めていただき、早期発見・解決につなげてください。
監修医師:
馬場 敦志(宮の沢スマイルレディースクリニック)
目次 -INDEX-
皮様嚢腫の症状と原因
皮様嚢腫とはどのような病気でしょうか?
卵巣嚢腫全体の15〜25%を占めており、人体の元となる胚細胞にできる腫瘍です。良性腫瘍であるため進行速度が比較的遅く、初期段階では人体への影響はほとんどありません。しかし、自覚症状が出にくいため、発見が遅れてしまうケースが多い点には注意しましょう。
また、薬剤や自然治癒では治せないため、摘出手術が必要になります。
どのような症状がみられますか?
- 腹部の張り
- 下腹部の痛み
- 便秘
- 頻尿
とくに腫瘍の大きさが5~6cm以上になると茎捻転が起こるリスクが高くなります。茎捻転とは、腫瘍が肥大化することで卵巣と子宮をつないでいる部分がねじれて下腹部に激しい痛みや嘔吐が起こる状態です。
腫瘍は肥大化する過程で破裂するケースもあり、その場合は緊急手術となるでしょう。また、極めて稀に皮様嚢腫が産生する抗体によって若年女性がNMDA脳炎を発症し、意識障害・呼吸不全を起こすことがあります。
もし少しでも異常を感じたら、早急に産婦人科で検査を受けるようにしましょう。
皮様嚢腫を発症する原因を教えてください。
結果、受精していないため中途半端な組織が形成されてしまい、残った皮膚細胞や毛髪の成分が溜まることで皮様嚢腫ができると考えられています。
どのような方が皮様嚢腫になりやすいのでしょうか?
皮様嚢腫は悪性化することもあると聞きましたが…。
良性腫瘍とは、進行速度が遅く、人体への影響がほとんどない腫瘍のことです。経過と共に、腫瘍が大きくなると人体にさまざまな悪影響が表れ始めます。さらに腫瘍の大きさが5~6cm以上になると「茎捻転」を引き起こし、嘔吐やショック状態に陥ることもあります。
また、腫瘍は肥大化すると破裂するケースもあり、下腹部の激しい痛みの原因となるため注意しましょう。ショック状態や破裂による激しい痛みの場合緊急手術となるため、できるだけ早期発見のために定期的な検査が大切です。
皮様嚢腫の検査方法
皮様嚢腫の検査方法を教えてください。
- 超音波検査
- 血液検査(腫瘍マーカー)
- MRI検査:磁気を使用して子宮や卵巣の状態を画像化して調べることが可能
- CT検査:X線を使って身体の内部を撮影し、子宮や卵巣の状態を調べることが可能
内診後、まずは超音波検査を行い腫瘍の大きさや位置、良悪性かを確認します。超音波検査による腫瘍の正診率は90%程度といわれていますが、まれに超音波検査のみでは診断できないケースがあるのです。その場合、血液検査やMRI・CT検査をふまえて詳細な検査を行っていきます。
MRI・CT検査は超音波検査では見られない腫瘍の内部を調べられるため、腫瘍の良悪性の正確な判断に役立ちます。産婦人科で検査を受ける際は、上記4種の検査方法を揃えている病院を選ぶと正確な診断を行ってもらえるでしょう。
どのような治療を行いますか?
- 卵巣嚢腫摘出術:腫瘍部分だけを摘出する手術
- 付属器摘出術:腫瘍部分とともに卵巣・卵管を取り除く手術
また、上記どちらの手術にも「開腹手術」と「腹腔鏡手術」2つの術式が選択可能です。2つの術式の違いとして、開腹手術は悪性腫瘍の場合腹部を20cm程度、良性の場合は5~10cm程度切開して、直接臓器に触れながら手術を行います。
20cm程度、良性の場合は5~10cm程度切開して、直接臓器に触れながら手術を行います。対して、腹腔鏡手術は5~10mmほどの穴を数か所開けて、炭酸ガスでお腹を膨らませてから腹腔鏡を入れます。お腹の内部の様子をモニターで確認しながら手術を行う方法です。どちらの手術方法も、以下のような基準によって決められます。
- 患者の年齢
- 腫瘍の大きさ
- 腫瘍の部分摘出
- 卵巣の全摘出か正常部分を残すか
摘出手術を行う際は、上記の事項を踏まえた上で医師と相談し、適切な治療方法を選択してください。
皮様嚢腫の手術の入院期間について教えてください。
上記で挙げた「開腹手術」と「腹腔鏡手術」の2種類があります。開腹手術は、手術時間が短い利点がある反面、身体への負担が大きく入院期間が長いです。
加えて、退院後の復帰も遅くなることが多いです。一方、腹腔鏡手術は手術時間は長くなりますが、身体への負担が少ないため入院期間も短くなります。また、退院後の復帰も早いです。
それぞれの手術方法の特徴を把握して、入院期間の長さだけでなくしっかりと治療ができる方を医師と相談して選択しましょう。
皮様嚢腫の再発
皮様嚢腫は再発するのでしょうか?
有効な再発予防方法がないため、定期的に診察を受けましょう。
手術後は妊娠しにくくなるのでしょうか?
また片方だけでも卵巣が残っていれば妊娠の可能性はあるため、手術後の妊娠を希望する方は、卵巣を残して嚢腫部分を摘出する手術を選択することをおすすめします。
最後に、読者へメッセージをお願いします。
その場合、腫瘍はすでに大きくなっているため手遅れになる前にもっと早く見つける必要があります。腫瘍が大きくなるとお腹が全体的に張るような症状が出ます。
症状が表れるのも皮様嚢腫のサインのため、覚えておくとよいでしょう。気になる方は、症状が出ていなくても定期的に産婦人科で検査を受けることで、早期発見につながるでしょう。
編集部まとめ
ここまで皮様嚢腫の原因や症状、検査・治療法・入院期間・再発などについて解説してきました。
皮様嚢腫は卵巣の病気のため、女性の方にとってはデリケートな問題でしょう。妊娠をきっかけに皮様嚢腫が見つかるというケースも少なくありません。
皮様嚢腫の明確な原因は分かっていませんが、急にお腹の張り・下腹部の痛み・便秘・頻尿などの異変を感じたら産婦人科で検査を受けましょう。
皮様嚢腫と診断された場合、今後妊娠を希望するかどうかによって手術方法は変わってきます。妊娠を希望する方は、卵巣を残して腫瘍部分を摘出する手術を選択しましょう。
本記事が、皮様嚢腫に悩む方やこれから手術を受ける方の参考になれば幸いです。