「涙腺がん」の初期症状・原因・早期発見のポイントはご存知ですか?医師が監修!
涙腺とは、涙を作り目の表面の細胞の保護・栄養・洗浄などの役割がある非常に重要な腺です。
涙腺を作る細胞ががん化することによって涙腺がんになってしまいます。
涙腺がんの初期症状は痛みが無いこともあり、受診を先延ばしにしてしまう場合がほとんどです。
しかし、症状が進行してしまうと手術が困難になってしまったり、最悪の場合視力を失ったりする場合もあるのです。
今回の記事では、涙腺がんの特徴・症状・原因・受診を検討するべき初期症状・治療方法・後遺症などを詳しく解説します。
気になる症状のある方は、お近くの医療機関にご相談ください。
監修医師:
郷 正憲(徳島赤十字病院)
目次 -INDEX-
涙腺がんの症状と原因
涙腺がんとはどのような病気でしょうか?
- 良性腫瘍(海綿状血管腫、デルモイド嚢腫、炎症性偽腫瘍、涙腺の多形性腺腫、神経鞘腫)
- 横紋筋腫
- 悪性リンパ腫
- 涙腺がん
良性の涙腺腫瘍の場合でも、周囲の組織に悪影響を与える場合は手術の適用になります。そして涙腺にできる悪性腫瘍には、横紋筋肉腫・悪性リンパ腫があります。
横紋筋肉腫は子供に多い悪性腫瘍で、悪性リンパ腫は成人に多いのです。その他、成人にみられる涙腺がんは悪性度が高い傾向にあります。
涙腺がんでみられる症状を教えてください。
- 涙腺(上まぶたの外側)の膨張
- 眼球突出
- 眼球の変位
- 複視
涙腺がんになると、涙腺の膨張による眼球突出・眼球の位置異常・物が二重に見える複視などの症状が表れます。涙腺は両目上まぶたの外側に位置していて、その部位に腫瘍ができると、外見上まぶたの外側が腫れたように見えることがあるのです。
そして、涙腺にできた腫瘍が大きくなると、すぐ下にある眼球を圧迫します。それによって眼球が飛び出て見えたり、眼球の位置が変わったように見えたりします。他に腫瘍の圧迫によって、ものが二重に見える複視が起きるなど、見え方にも影響をおよぼすのです。
そして、涙腺にできる腫瘍は痛みのある場合と無い場合の両方があるのです。痛みが無い場合に、受診をためらって重症化してしまう場合があります。痛みが無い場合でも、上まぶたの腫れ・眼球突出・眼球の変位・複視などがあったら、早めに眼科を受診しましょう。
発症の原因は何でしょうか?
涙腺腫瘍の中でも悪性リンパ腫の発症の原因は、白血球の仲間であるリンパ球にあることがわかっています。また、近年広まり始めたlgG4関連疾患は、血液中に存在する免疫グロブリンが原因で涙腺・舌下腺・膵臓・胆嚢・肝臓に腫瘍ができるのです。
このように腫瘍の性状によって様々な原因が考えられるのです。
涙腺がんはどのような方がなりやすいのでしょうか?
また悪性リンパ腫は成人に多く、高齢者になるにつれて悪性度が高くなる傾向にあるといわれています。
このように、涙腺がんは誰でもかかる可能性のある病気なので、早期発見・早期治療が重要になります。
涙腺がんの治療方法
受診を検討するべき初期症状を教えてください。
- 上まぶたの腫れ
- 眼球突出
- 眼球の変位
- 複視
涙腺にできたがんによって、上まぶたの外側に腫れ・しこりを感じることが多いです。他に腫瘍による眼球突出がみられたり、眼球の位置異常がみられたりしたら受診をおすすめします。
また、涙腺がんの初期症状は痛みが無い場合もあるため、自分では気づきにくく放置されがちです。眼球突出・眼球の位置異常・まぶたの腫れなど外見上の変化に気づいたら受診を検討しましょう。
どのような検査で診断されるのでしょうか?
- CT検査
- MRI検査
- 眼科検査
- 採血
- PET-CT
CT・MRI検査では、涙腺がんの大きさ・部位などを調べます。他にがん細胞を栄養する血管・腫瘍の種類を調べるために造影MRI検査が行われています。
次に眼科検査では、視力検査・眼圧検査・眼球突出度検査・眼位検査などを行い、視力や機能に問題が無いかを確認するのです。さらに眼球運動に異常が無いか調べるための検査が行われる場合もあります。
また採血では、悪性リンパ腫やlgG4関連疾患があるかどうかを調べることができます。
最後にPET-CTでは、腺様嚢胞癌などの悪性度の高いがんを疑う場合に行われる検査で、全身転移の有無を調べるために行われます。
涙腺がんの治療方法を教えてください。
- 摘出手術
- 抗がん剤治療
- ステロイド剤投与
- 放射線治療
腫瘍が良性の場合などは摘出手術が基本になります。しかし、涙腺の周辺は狭い場所に血管や神経などが密集しているため、難しい手術になる場合もあります。例えば、腫瘍が悪性リンパ腫の場合は、抗がん剤治療や放射線治療などが主になります。
lgG4関連疾患の場合は、ステロイドの全身投与が行われるのです。多形腺腫の場合は、摘出手術が主になります。腺様嚢胞癌の場合は、摘出手術と重粒子線治療という特殊な放射線治療が行われる場合もあります。
このように涙腺がんの治療は腫瘍を生検して種類を判別してから、適切な治療が選択されているのです。
涙腺がんの後遺症
涙腺がんに後遺症はありますか?
- 複視
- 眼瞼下垂
- 視力低下
- 血管新生緑内障
腫瘍の摘出手術を行った場合に、腫瘍の周りにある神経・血管・筋肉などの組織を傷つけてしまう恐れがあります。そのため、後遺症に複視・眼瞼下垂・視力低下が起こる可能性があるのです。
複視は、ものが二重に見える状態です。眼瞼下垂はまぶたが垂れ下がり、視野が狭くなったり、目が開けにくくなったりします。
また、涙腺がんの再発時に重粒子線照射という治療を行う場合がありますが、その場合に後遺症として血管新生緑内障を発症する場合もあるのです。
涙腺がんを早期発見するポイントを教えてください。
涙腺は上まぶたの外側にあるので、その部位の腫れがあれば涙腺がん・涙腺腫瘍が疑われます。また、他人から目元の違和感を指摘されて気づく場合もあります。
このように自覚症状が無い場合もあるので、少しの違和感に気づくことが重要になるのです。
最後に、読者へメッセージをお願いします。
症状が悪化する前に治療を行うことによって、健康な目を保ちましょう。
編集部まとめ
ここまで涙腺がんの特徴・症状・原因・受診を検討するべき初期症状・治療方法・後遺症などを解説しました。
涙腺がんは、普段から健康に気を使っていたとしても、幅広い年齢の方にかかる可能性がある病気です。
初期症状は痛みが無い場合があり、軽いまぶたの外側の腫れや眼球突出などでは受診をためらってしまう方も多いと思います。
しかし、重症化してしまうと治療が困難になったり、視力が落ちてしまったりする場合があります。
そのため涙腺がんの初期症状に早く気づき、初期の段階で治療することが重要になります。
気にある症状がある方はなるべく早めにお近くの眼科を受診しましょう。
参考文献