「全身性アミロイドーシス」を発症すると現れる初期症状・原因はご存知ですか?
全身性アミロイドーシスは、異常なタンパク質が臓器・神経・消化管などに沈着して機能不全を起こす病気です。
臓器・神経・消化管などの機能不全が起こると、手足のしびれ・麻痺・むくみ・衰弱・下血・低血圧・心不全などの様々な症状が起こります。
進行は速い傾向にあり、以前は発症してからの平均余命が約12ヶ月ともいわれていました。
現在では治療の進歩により、完全に寛解することも可能になっています。
今回記事では、全身性アミロイドーシスについて・種類・症状・原因・診断・治療方法・予後・余命について解説します。
気になる症状のある方は、お近くの医療機関にご相談ください。
監修医師:
竹内 想(名古屋大学医学部附属病院)
全身性アミロイドーシスの種類と症状
全身性アミロイドーシスとはどのような病気でしょうか?
症状は、衰弱・心不全・低血圧・手足のしびれなど多岐にわたり、症状のみでの判断は困難です。そのため、診断のためには病変部位の生検・血液検査・尿検査などが必要になります。
全身性アミロイドーシスはいくつかの種類に分類されると聞きましたが…。
- ATTRアミロイドーシス
- ALアミロイドーシス
- AAアミロイドーシス
- Aβ2Mアミロイドーシス
ATTRアミロイドーシスとはトランスサイレチン(TTR)遺伝子の変異が原因となって起こります。ATTRアミロイドーシスには、遺伝性と野生型の2種類です。遺伝性は遺伝が原因で発症し、野生型は加齢によるものといわれています。しかし、明らかな原因は不明です。高齢の男性に多く、むくみ・不整脈・手足のしびれなどの様々な症状を引き起こします。
ALアミロイドーシスは、異常なタンパク質が様々な臓器に沈着する病気です。発症する部位によって、全身性と限局性ALに分類されています。この記事で取り上げている全身性アミロイドーシスは、ALアミロイドーシスに該当します。
また、他にAAアミロイドーシス・Aβ2Mアミロイドーシスがあるのです。これらも異常なタンパク質が原因となりますが、タンパク質の種類が異なるため、別の病気として分類されているのです。
症状を教えてください。
- 蛋白尿
- 尿の障害
- 衰弱
- むくみ
- 息切れ
- 動悸
- 不整脈
- 下血
- 便秘
- 下痢
- 手足のしびれや痛み
- 低血圧
骨髄で作られた異常なタンパク質が血液に乗って全身に運ばれて、これらの症状を引き起こすのです。例えば、腎臓の障害によって、蛋白尿・尿の障害が出ます。そして、心臓の障害によって息切れ・むくみ・動悸・不整脈が起こり、消化管の障害で下血・便秘・下痢などの症状が表れます。
他には、末梢神経や自律神経まで障害されると、手足のしびれや痛み・低血圧・頭痛なども起こるのです。
発症の原因を教えてください。
気にある症状のある方は、お近くの医療機関にご相談ください。
どのような方が全身性アミロイドーシスになりやすいのでしょうか?
なぜ男性が多いのか、理由は明らかになっていませんが、性ホルモンや遺伝子の影響だと考えられています。
全身性アミロイドーシスの診断
受診を検討するべき初期症状を教えてください。
全身性アミロイドーシスの場合、様々な症状が出るため受診の目安がわかりにくいと感じる方もいるかもしれません。普段とは違う体調の変化を感じたら、早期に受診することをおすすめします。
何科を受診すれば良いでしょうか?
現在では、全身性アミロイドーシスへの医師側の体制が整いつつあります。そのため、通常の検査で原因不明の多臓器障害があるとわかると、どの科でも関係なく全身性アミロイドーシスが考慮されるのです。
例えば、手足のしびれで受診した場合も、生理的な衰え以上の症状があり、他に不整脈・心不全もある場合には全身的な疾患の可能性が疑われます。これらの症状に加えて、検尿で蛋白尿が検出された場合にも全身性アミロイドーシスの可能性が高まるのです。
このように、全身性アミロイドーシスは初期症状によって診療科を変えましょう。たとえ専門外の診療科を受診しても、いくつかの臓器に障害がみられる場合には、可能性を考慮してもらえます。気になる症状のある方はお近くの医療機関にご相談ください。
どのような検査で全身性アミロイドーシスと診断されますか?
- 採血
- 血清アミロイドAの測定
- 検尿
- 尿中免疫グロブリンの軽鎖測定
- 画像診断
- 内視鏡
- 病変部位の生検
採血や検尿を行い、血中や尿中に異常なタンパク質がないか、原因となるタンパク質はどれなのかを確認します。また、画像診断によって臓器を確認し、臓器に異常なアミロイド沈着がないか判断します。他に、内視鏡を使って消化管の状態を確認し、病変部位の判断を行うのです。
このような検査を経て、病変部位がわかったら、次は病変部位の生検を行います。この病変部位の生検によって、沈着しているものがアミロイドだとわかると、アミロイドーシスと診断されるのです。同じ病変が全身に表れていれば、全身性アミロイドーシスとなります。
全身性アミロイドーシスの治療方法を教えてください。
- アミロイド沈着を防ぎ、すでに沈着したものを除去する方法
- 症状を緩和する対症療法
以前までは、手のしびれや心不全などそれぞれの症状を緩和させる対症療法が主流でした。しかし、近年は原因となるタンパク質を分析することにより、根本的に治す治療が発展してきています。
根本的治療の例として、薬物療法・臓器移植・血幹細胞の移植・大量の化学療法などです。こういった治療方法の適応は、原因となるタンパク質の性質によって異なります。対症療法は、症状の緩和・バランスの良い食事・リハビリ・ペースメーカーなど症状によって様々です。
全身性アミロイドーシスの予後
全身性アミロイドーシスは進行が早いと聞きましたが…。
症状を悪化させないためには、早期発見・早期治療が重要です。気になる症状のある方は、お近くの医療機関にご相談ください。
全身性アミロイドーシスの余命はどのくらいでしょうか?
余命を延ばすためには、早期発見と適切な治療を受けることが重要です。
早期発見のポイントを教えてください。
また、症状などから全身性アミロイドーシスが疑われる場合は、循環内科・アミロイドーシス専門のクリニック等へ相談するのもおすすめです。
最後に、読者へメッセージをお願いします。
編集部まとめ
記事では、全身性アミロイドーシスの種類・症状・原因・診断・治療方法・予後・余命について解説しました。
病気の特徴として症状は多岐にわたるため、初期症状で判断するのは非常に困難です。
また、治療法に関しては、近年発展を遂げて根本的な治療が行えるようになりつつあります。
しかし、進行が速い傾向にあり、発症してから数年で亡くなってしまう場合もあるのです。
全身性アミロイドーシスは早期発見と早期治療によって、悪化させない必要があります。
気になる症状のある方は、まずは症状に合わせた医療機関にご相談ください。