「性同一性障害」の症状・特徴・治療方法はご存知ですか?医師が監修!
趣味・趣向・恋愛・仕事・人間関係など、生活の様々な場面で男女の違いを意識させられる状況は非常に多いです。
性同一性障害は、男性の身体を持っているのに、自分は女性として生きるのがふさわしいと感じる状態です。逆に女性の身体を持っているのに、男性らしくなりたいと強く感じる場合もある状態です。
性同一性障害を抱えていると、自分を否定したり、身近な方との間に壁が生まれてしまったりすることに繋がります。
今回の記事では、性同一性障害の特徴・いつ気がつくのか・症状・原因・診断・周囲のサポートについて紹介します。
気になる症状のある方は、ジェンダー外来・性同一性障害専門外来などにご相談ください。
監修医師:
伊藤 有毅(柏メンタルクリニック)
精神科(心療内科),精神神経科,心療内科。
保有免許・資格
医師免許、日本医師会認定産業医、日本医師会認定健康スポーツ医
目次 -INDEX-
性同一性障害とは
性同一性障害とはどのような障害でしょうか?
しかし、近年では性の多様性を受け入れる考え方が広まってきています。そのため、性同一性障害を精神障害というよりは、性の多様性の一部と考えられるようになったのです。
また、性同一性障害は患者個人の精神的な問題だけではなく、社会がどのようにして受け止めるかという社会的な問題も大きく関わっています。
トランスジェンダーとはどのように違うのでしょうか?
性同一性障害とトランスジェンダーの違いは、性別適合手術の必要性です。性同一性障害の場合は手術をした又は、しようと思っている方が該当します。一方、トランスジェンダーの場合は、手術は必要としていません。
どのような症状がみられますか?
- 自らの性別を嫌悪する
- 男性または女性らしい体つきになることに抵抗を感じる
- 身体とは反対の性別が好むファッション・趣味などを好む
- 身体とは反対の性別に自分との強い同一感を抱く
- 身体とは反対の性別の役割を果たそうとする
性同一性障害では、自らの生物学的な性を受け入れられなかったり、反対の性として振る舞いを好んだりします。心と身体の性の不一致で、精神的に不安定になってしまったり、社会的に受け入れられなかったりするのです。
性同一性障害を抱えている方は、日常生活もままならない状況になり、困難を抱えている場合も少なくありません。
性同一性障害を抱えていることにいつ頃気がつきますか?
このような変化が起こったときに、自分の身体に嫌悪の気持ちが強くなります。恥ずかしさや嫌悪感から、男性なら体毛を剃り、女性なら乳房を隠したりするのです。このような身体の変化に対して嫌悪感を抱き、反対の性への同一感を抱く場合は性同一性障害の疑いがあります。
子供の頃にみられる性同一性障害の特徴はありますか?
例えば、見た目は女の子ですが、ままごと・人形遊びなどには全く興味がないのです。その代わり、戦隊ヒーローごっこ・追いかけっこ・虫取りなど男の子が好みそうな遊びを好む傾向にあります。反対に、見た目は男の子ですが、電車や恐竜などのおもちゃには興味がなくドレスやアクセサリーで遊ぶのを好む場合もあるのです。
また、性同一性障害を自覚している子供の中には、自分がいじめられるのを恐れて隠す子供もいます。そのような場合は、自分の中で葛藤が抑えられず親や家族と衝突してしまう場合もあるのです。
性同一性障害の原因と診断
性同一性障害の原因を教えてください。
このように、考えられる原因はいくつかありますが、現段階では研究データも少なく解明されていません。
どのように診断されるのでしょうか?
- 生物学的な性別を決める
- ジェンダー・アイデンティティの決定をする
- 生物学的な性別とジェンダー・アイデンティティが不一致していることを明らかにする
まずは、染色体・ホルモン・性器の検査を行って、生物学的な身体の性を決定します。次に、生活史・趣味趣向・考え方・性別的役割の現状などをカウンセリングして、心の性を決定します。そして、身体の性と心の性が決まったら、それらが一致していないことを明らかにするのです。
不一致を明らかにするために、その他の性分化疾患や精神的な疾患の有無、社会的理由による性別の変更ではないことを確認します。性同一性障害の診断は、このような流れで行われているのです。
性同一性障害の治療方法を教えてください。
- 精神療法
- ホルモン療法
- 外科的な療法
まず精神療法を行い、本人にとってどちらの性で生きるのが適切かを判断します。このような精神療法では解決できず、身体を心の性に合わせようとするときに、ホルモン療法を行います。
次に、外科的な療法では、2段階に分けて手術が行なわれているのです。患者が女性の場合、第1回目の手術では、子宮と卵巣の摘出・乳房の切除・尿道の延長・膣閉鎖をします。第2回目の手術では、陰茎形成を行うのです。患者が男性の場合は、陰茎や睾丸を切除後に、膣形成を行います。また、豊胸手術・喉仏や声帯の手術なども行われているのです。
このように性同一性障害の治療方法は、精神療法・ホルモン療法・外科的な療法の3つがあり、患者の状況によって選択されています。
性同一性障害のサポート
性同一性障害と診断された場合、どのようなサポートが受けられますか?
また、性同一性障害の患者が治療を受けられる施設も限られているのです。その上、治療に保険が適用されないため、性同一性障害を抱えている方へのサポートは不十分だといえます。
しかし、性同一性障害を専門的に支援している団体は全国に複数あります。また、小学校などの教育現場では、授業中の対応・制服や体操着や水着などの服装・髪型といった教職員によるサポートが行われている場合もあるのです。
性同一性障害当事者を取り巻く環境の法整備には多くの課題がありますが、性同一性障害の患者のサポートをしている団体もあります。相談先が見つからないという方は、専門機関への相談をおすすめします。
家族はどのように向き合えば良いでしょうか?
治療を受けられない間は、対症療法などで日常生活を維持する必要があります。そのため、周囲の方の精神的なケアが必要です。
もちろん、家族だけで抱えるのではなく、専門家や支援団体等のサポートを受けながら精神的負担を取り除いてあげましょう。
最後に、読者へメッセージをお願いします。
このように、患者を取り巻く環境は、現在でも十分に整備されているとはいえない状況です。しかし、性同一性障害を抱えている方を専門的に支えている支援団体は全国に多くあります。
このような支援団体や専門家の力を借りながら、より自分らしい生き方を見つけてください。
編集部まとめ
ここまで、性同一性障害の特徴・いつ気がつくのか・症状・原因・診断・サポートについて取り上げました。
性同一性障害とは、身体と心の性が一致せずに日常生活に支障を来たすもので、症状には自分の身体への嫌悪感や反対の性への強い同一感などがあります。
また、治療法には、精神療法・ホルモン療法・外科的な療法の3つがあります。
性同一性障害を抱える方の家族は、本人の葛藤を受け入れて十分な治療が受けられるまでの間、心の負担を取り除いてあげることが重要です。
未だに、性同一性障害を抱える方にとっては十分な支援が受けられない状況にありますが、支援団体や専門家や家族や友人に支えてもらいながら、より良い生き方を見つけてください。
参考文献