「子宮外妊娠」の症状・原因・発症する確率はご存知ですか?医師が監修!
子宮外妊娠とは、子宮内膜以外の場所に受精卵が着床してしまうことです。正しくは「異所性妊娠」といいます。
その名の通り、本来着床するべき場所以外の卵管などに受精卵が着床してしまいます。そのまま妊娠経過が進めば、卵管破裂などの危険も考えられるため注意が必要です。
この記事では、子宮外妊娠の症状・わかる時期・原因・検査・治療・再発についても詳しく解説します。
監修医師:
伊藤 有毅(柏メンタルクリニック)
精神科(心療内科),精神神経科,心療内科。
保有免許・資格
医師免許、日本医師会認定産業医、日本医師会認定健康スポーツ医
目次 -INDEX-
子宮外妊娠とは
子宮外妊娠とはどのような症状でしょうか?
子宮内膜以外とは、具体的に卵管・卵巣・子宮頸管などです。その中でも最も発生しやすいのは卵管妊娠です。異所性妊娠の95%以上は卵管妊娠であるといわれています。本来着床すべき場所とは異なる場所に着床することで、卵管破裂・腹腔内出血などのリスクが高まります。しかし、初期の段階では自覚症状はほとんどありません。
軽い腹痛やお腹の張りを感じることもありますが、ご自身で気付くのは難しいでしょう。なお、腹腔内で出血が進んだ場合には、腹痛・嘔気・嘔吐などの症状がみられることもあります。腹腔内で大量出血が起きれば、出血性ショックにより動悸や意識障害などの危険な状態に陥る可能性もあります。
子宮外妊娠はいつわかるのでしょうか
このとき、卵管周囲の出血や腹腔内の出血が確認されることも考えられるでしょう。
原因を教えてください。
- 40歳以上
- 経産婦(特に前回の出産から5年以上経過している場合)
- クラミジア感染症などによる骨盤内炎症性疾患の既往がある
- 過去に卵管部の手術を受けたことがある
- 子宮外妊娠の既往がある
- 子宮内避妊具使用中の妊娠
- 子宮内膜症を患っている
- 体外受精や胚移植による妊娠
子宮外妊娠は20代〜30代によくみられますが、40歳以上では10代と比べて3倍の発症率になるといわれています。また、出産経験がある方で前回の出産から5年以上経っている場合もリスク因子の1つです。
さらに、子宮内避妊具の使用中に妊娠をした場合には、約2〜5%の割合で子宮外妊娠が引き起こされることもあります。避妊具を使用しているからといって安心せず、生理が遅れた場合には産婦人科へ受診するようにしてください。
どのくらいの確率で子宮外妊娠が起こるのでしょうか?
しかし、先にお伝えしたリスク因子に該当する場合には注意しましょう。既往歴などに不安がある場合には、産婦人科へ相談することもおすすめです。
子宮外妊娠の検査と治療
子宮外妊娠でもつわりは起こりますか?
異所性妊娠は早期治療が重要ですので、生理が2週間以上遅れている場合には妊娠判定を行いましょう。
子宮外妊娠は妊娠検査薬でどのような反応が出ますか?
しかし、生理周期に乱れがある場合などは、妊娠5週目に入っても胎嚢が確認できないケースもあります。そのため、5週目を過ぎて胎嚢が確認できないからといって異所性妊娠であるとは限りません。
病院ではどのような検査を行いますか?
腹腔内出血を確認するために、ダグラス窩穿刺という検査を行うこともあります。これらの検査で確定診断ができない場合には、子宮内除去法や腹腔鏡を用いた検査で確定診断を行います。
子宮外妊娠の治療方法を教えてください
着床した部位ごと卵管を切除することで、根治性を高めます。しかし、手術部位とは逆の卵管で異所性妊娠が起こる可能性は否定できません。
その他の術式としては、卵管保存術という方法です。卵管を残して受精卵のみを取り除く方法ですが、術後に再手術や薬物療法が必要となるケースもあります。なお、手術以外にMTXなどの薬剤を使用する薬物療法のみで治療するケースや待機療法が適用できる場合もあります。
子宮外妊娠の再発・次の妊娠
子宮外妊娠の場合、出産には至らないのでしょうか?
本来着床すべきではない場所への着床ですので、妊娠の継続は困難です。妊娠反応が陽性であるものの、着床箇所が確認できない場合には、手術によって着床箇所を確認するケースもあります。腹腔内出血を起こす前に発見し、治療することが重要です。
子宮外妊娠は再発すると聞いたのですが…。
先にも述べましたが、異所性妊娠には様々なリスク因子が関連しています。例えば、年齢や腹部手術の既往歴などにより、再発リスクが高まることも考えられます。
その他にも、クラミジアなどの性感染症が原因となることも考えられるでしょう。性感染症が疑われる場合には、まずはそちらの治療を行うことも重要です。
手術後にすぐ次の妊娠はできるのでしょうか?
子宮卵管造影検査にて子宮や卵管などに異常がないことを確認できれば、次の妊娠への準備が整います。しかし、次の妊娠が疑われる場合には早めに受診したほうが良いでしょう。
異所性妊娠は繰り返すこともありますので、慎重に経過をみていくことが大切です。
最後に、読者へメッセージをお願いします。
早期治療のためにも、日頃から生理周期を記録しておくことも心がけましょう。
編集部まとめ
子宮以外の場所に着床してしまう子宮外妊娠について解説しました。現在は「異所性妊娠」と統一されており、近年では比較的重症化せずに早期治療が可能となっています。
とはいえ、早期治療が重要なことはいうまでもありません。生理が2週間以上遅れている場合には、妊娠検査薬を使用することがおすすめです。
基本的には手術療法が選択されますが、場合によっては薬物療法のみで治療できることもあります。
術式も様々ですので、重篤化する前に適切な治療を受けることが大切です。