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「胆管がん」の症状・原因・発症しやすい人の特徴はご存知ですか?医師が監修!

 公開日:2023/05/08
「胆管がん」の症状・原因・発症しやすい人の特徴はご存知ですか?医師が監修!

胆管がんは、普段はあまり聞き慣れない病名かもしれません。

胆管がんは、初期症状に乏しいため早期発見が難しいがんで、早期診断・早期治療が遅れることが多い病気です。

今回は、胆管がんの症状・原因・治療方法などについてご説明します。

「胆管がんについて気になっていた」・「胆管がんと言われたが治療について知りたい」など、胆管がんについて詳しく知りたい方はぜひ参考にしてください。

甲斐沼 孟

監修医師
甲斐沼 孟(上場企業産業医)

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大阪市立大学(現・大阪公立大学)医学部医学科卒業。大阪急性期・総合医療センター外科後期臨床研修医、大阪労災病院心臓血管外科後期臨床研修医、国立病院機構大阪医療センター心臓血管外科医員、大阪大学医学部附属病院心臓血管外科非常勤医師、大手前病院救急科医長。上場企業産業医。日本外科学会専門医、日本病院総合診療医学会認定医など。著書は「都市部二次救急1病院における高齢者救急医療の現状と今後の展望」「高齢化社会における大阪市中心部の二次救急1病院での救急医療の現状」「播種性血管内凝固症候群を合併した急性壊死性胆嚢炎に対してrTM投与および腹腔鏡下胆嚢摘出術を施行し良好な経過を得た一例」など。

胆管がんの特徴

診察

胆管がんの特徴を教えてください。

胆管がんとは、胆道がんの1つで胆管に発生するがんです。肝臓の中の肝内胆管にできるがんを肝内胆管がん、肝臓の外の肝外胆管にできるがんを肝外胆管がんと呼びます。
胆管がんのステージ(病期)は取り扱い規約により、Ⅰ〜Ⅳ期に分かれています。がんが胆管の中だけにとどまるものがⅠ期、胆管壁をこえるが他の臓器への広がりがないものがⅡ期です。そして、壁をこえて隣接する臓器・リンパ節へと広がっているものがⅢ期、さらに広がって他の臓器に転移しているものがⅣ期となります。
胆管がんは、女性より男性の方がやや多い病気です。50歳代を過ぎると男女問わず右肩上がりに発症率が上がり、70〜80歳代の高齢者に最も多くみられます。胆管にがんができると胆汁が流れにくいので、黄疸・腹痛などの症状が現れます。
しかし、初期症状に乏しいため、気づいたときには重症化しているケースも多いのが特徴です。そして、これらの症状は他の疾患でも見られるため診断が遅れる場合もあり、治療が難しいがんの1つです。

どのような症状がみられますか?

胆管がんは、肝内胆管がん・肝外胆管がんによって症状の出方が多少違います。肝内胆管がんは、初期には症状が出ない場合が多く、進行すると黄疸がみられるようになります。一方、肝外胆管がんでまずみられるのは黄疸です。黄疸は、胆管にがんができて胆汁の流れが悪くなるために起こります。
黄色の皮膚・黄色の白目・茶色っぽい濃い尿・皮膚のかゆみ・白っぽい便色などが黄疸の詳しい症状です。その他の症状としては、腹痛・悪心嘔吐・発熱・全身倦怠感・体重減少などがあります。
胆管がんは、肝内胆管がんか肝外胆管がんかによって、症状の程度や症状が出るタイミングが違います。これらの症状がある場合は、すみやかに医師の診察を受けましょう。

発症の原因を教えてください。

胆管がんは、原因が明確ではありません。しかし、胆石が胆管を塞いで炎症を引き起こす胆石症・原発性硬化性胆管炎などの病気が関係している場合があります。また、先天的な膵胆管合流異常症も、胆管がんを引き起こす可能性が高いです。
通常の場合、胆汁・膵液とはそれぞれ別々に十二指腸へと流れ込みます。しかし、先天的に膵胆管合流異常があると、十二指腸へと流れ込む前の胆管で2つが混ざってしまいます。その結果、胆管がんを引き起こしてしまう可能性があるのです。
その他には、印刷工場で使用される化学物質(ジクロロメタンなど)も胆管がんの原因の1つであると報告されています。

胆管がんはどのような方がなりやすいのでしょうか?

先ほどお伝えした発症原因を踏まえて考えると、胆道系の疾患がある方がなりやすいといえます。胆石症・原発性硬化性胆管炎など、長期間に渡って胆管内の閉塞・炎症が続いた場合は、細胞ががん化する可能性が高くなります。
また、化学物質であるジクロロメタン・1,2-ジクロロプロペンが使われる印刷工場で働く方も、胆管がん発生のリスクが高いです。これらに加え、先天性の膵胆管合流異常症・家族歴なども胆管がんを発生させるリスクとして挙げられますので、当てはまる場合は特に注意しましょう。

胆管がんの治療方法と手術

病室

胆管がんを疑う場合、何科を受診すれば良いでしょうか?

胆管がんを疑う場合、消化器科(内科・外科)を受診しましょう。特に、肝臓・胆のうなど消化器疾患の検査・治療を行っている専門医への受診がおすすめです。肝胆膵内科・肝胆膵外科など専門科のある病院もあります。
ご自身で専門医を調べることが困難な場合は、まず、かかりつけ医に相談して専門医を紹介してもらう方法もあります。胆管がんは、早期発見・早期治療が重要なので、気になる症状がある場合にはすぐに専門医を受診しましょう。

どのような検査で診断されますか?

胆管がんの診断でまず行う検査は、血液検査・腹部超音波検査です。
血液検査では、腫瘍マーカー・肝胆道系酵素などを調べて検査を行い、異常を確認します。腹部超音波検査は、胆管がんを疑った場合に最初に行う画像検査です。胆管がんの中でも、特に肝外胆管がんの診断では、80〜90%の確率で診断がつくとされています。
次に行われるのは、CT検査・MRI検査・PET検査です。これらの検査では、がんの有無・広がり・リンパ節転移・他臓器転移などがわかります。MRIの技術を使う核磁気共鳴胆管膵管造影(MRCP)も、より詳しい診断に有効であると報告されています。
また、内視鏡検査として行われるのは、上部消化管内視鏡検査(胃カメラ)・超音波内視鏡検査(EUS)・胆道鏡(POCS)・内視鏡的逆行性胆管膵管造影検査(ERCP)です。いずれも、がんの深さ・広がりをより詳しく調べることが可能です。
また、内視鏡を使って組織を採取する生検を行い、病理検査に活用します。専門医の判断で、これらの検査を組み合わせて、胆管がんを診断します。

治療方法を教えてください。

胆管がんの治療方法は、がんのステージ・年齢・既往・健康状態などを考慮した上で決まります。一般的な治療方法は、手術・化学療法・放射線療法・胆道ドレナージです。
手術は、胆管がんの根治を目的としており、特に早期治療では、手術が第一選択です。手術は胆管の一部または全体を切除するほか、がんの位置によっては肝臓・膵臓・リンパ節を含めた広範囲な切除が必要な場合もあります。化学療法は、手術前のがん縮小目的・がんの切除が不可能な場合に行われます。また、がんの進行抑制・症状の緩和を目的として行われる場合が多いです。しかし、術後の補助療法としての化学療法は、その効果が十分に証明されていません。
放射線療法は、手術でがんが取り切れなかったり、リンパ節への転移があったりした場合に行われます。しかし、その効果は化学療法同様、十分に証明されていません。
また、がんの直接的な治療ではありませんが、黄疸など症状緩和の治療方法として胆道ドレナージがあります。胆道ドレナージとは、胆道にがんができて胆汁の流れが悪くなった場合に、管などを使って排液させる処置です。この方法は、管を体外に出す外ろうと、ステントを使う内ろうとがあります。
このように、胆管がんにはさまざまな治療方法がありますが、専門医の診断・判断によって組みあわせて行われる場合が多いです。

胆管がんのステント留置とはどのような手術でしょうか?

胆管がんの治療方法であるステント留置は胆道ドレナージの1つで、内ろうともいいます。胆管のがんが原因で胆汁の流れが妨げられると、黄疸などの症状が出て、スムーズに治療を進めることができません。ステント留置は、ステントという網目状の金属製または樹脂製の管を胆管の中に留置して詰まりを取り、胆汁の流れを正常にする方法です。
ステント留置の手術には、腹部の表面から留置する経皮的な方法と、内視鏡を使ってステントを挿入する方法があります。経皮的・内視鏡的のどちらを選ぶかは、黄疸の状態・全身状態を踏まえて専門医が決めます。
ステント留置後は日常生活を送ることが可能です。しかしステントは、がんの増大による詰まり・定期的な詰まり・抜け落ち・感染などが起こる場合があります。ステントは体内にあり、これらのトラブルに気づきにくいので注意が必要です。
腹痛・黄疸・発熱などの症状がみられた場合は、すぐに受診しましょう。また、ステントの状態を確認するための定期的な受診も大切です。

胆管がんの診断

食事指導する男性スタッフ

胆管がんは生存率が低いと聞いたのですが…。

胆管がんの生存率は、他のがんと比べて低いことがわかっています。国立がん研究センター公表の2009〜2011年の部位別がん5年相対生存率によると、胆のう・胆管がんは男性26.8%・女性22.1%であり、ともに最下位から2番目でした。
胆がんの中でも肝内胆管がんの5年生存率(診断年2013~2014年)をステージ別でみると、Ⅰ期58.9%・Ⅱ期34.6%・Ⅲ期24.2%・Ⅳ期5.6%となっており、ステージが進行するにつれて生存率も下がります。しかしこの生存率は、がんの種類・部位・ステージ・全身状態・治療方法によって変わってきます。
生存率の結果からもわかるように、胆管がんは早期発見・早期治療が大切です。早期発見できると早期から治療を開始でき、状態によっては根治・長期生存が可能になります。気になる症状・胆管がんに当てはまる症状が見られた場合には、すぐに専門医を受診するようにしましょう。

胆管がんと診断された場合、食事で注意することはありますか?

胆管がんと診断された場合、症状の改善・悪化予防・治療効果の向上のために、食事についても注意が必要です。胆管がんでは、腸へと向かう正常な胆汁の流れをがんが妨げるので、脂肪の消化・吸収が悪くなります。したがって、脂肪分を摂り過ぎないようにしましょう。
揚げ物などの油もの・脂肪分の多い肉類・乳製品などの消化しにくいものは避けることが大切です。また、大豆製品・魚などの良質なたんぱく質を取り、香辛料・コーヒー・紅茶は控えめにするよう心がけましょう。加えて、1回の食事量を減らして回数を増やし、腸の消化・吸収の負担を減らすことも重要です。
これらの注意点は、がんの進行具合・症状・治療方法・全身状態によって変わってきます。専門医と相談し、その指示をしっかり守りましょう。

最後に、読者へメッセージをお願いします。

胆管がんは、あまり予後がよくない病気です。初期には無症状の場合が多く、早期発見が難しいことが原因の1つとして挙げられます。発見が遅れてしまうと、早期診断・早期治療が行えないからです。
しかし、少しでも早く症状に気づいて治療に取り掛かることができれば、根治・長期生存が望める病気でもあります。どのような些細なことでも、気になった症状があれば早めに専門医を受診することをおすすめします。

編集部まとめ

医師と患者
胆管がんについて詳しくご紹介しました。

胆管がんは、初期症状に乏しいので気づくことが遅れてしまう場合がありますが、早期発見・早期診断・早期治療で治る可能性がある病気です。

がんはがん検診が厚生労働省で定められているものも多いです。しかし、胆管がんについては、指針として定められている検診はありません。

気になる症状が出現した場合には、早めに専門医を受診して診断・治療を受けるようにしてください。

この記事が、胆管がんについて知りたい方の参考になれば幸いです。

この記事の監修医師