「脂質異常症」の原因・食事の注意点はご存知ですか?医師が監修!
脂質異常症とは、脂質の中でも特に悪玉コレステロールや中性脂肪が多い状態を指します。
コレステロールや中性脂肪は、本来であれば身体の健康に欠かせない重要な物質です。
しかし、多すぎると動脈硬化を引き起こすなどの悪影響を及ぼす可能性があり、脂質異常症は決して軽視できない病気です。
今回は、脂質異常症について詳しく解説します。治療法や予防法についても取り上げるので、今後の参考にしてください。
監修医師:
甲斐沼 孟(上場企業産業医)
目次 -INDEX-
脂質異常症とは
脂質異常症とはどのような病気でしょうか?
どれも身体に欠かせない重要な物質です。コレステロールは細胞膜を構成したり、ホルモン・胆汁の原料になったりします。中性脂肪は体温を保持したり、クッションの役割をしたり、エネルギーを貯蔵したりするものです。
脂質異常症は、そのコレステロールと中性脂肪が異常に多い状態を指します。通常、血液中の脂質は一定の量に保たれるようにバランスが取られているものです。しかし、食事から摂取される脂質の量が多かったり、身体の中で上手に脂質を処理できなくなったりすると基準値から大きく外れた状態になってしまいます。
高脂血症との違いを教えてください。
この理由としては、コレステロールが高い方の中には悪玉コレステロールは正常なのにもかかわらず、善玉コレステロールが低いケースがあることが挙げられます。
この場合を高脂血症と呼ぶのは不適切であると判断され、脂質異常症へと名称変更されました。
どのような症状がみられますか?
他にも狭心症・心筋梗塞・脳出血・脳梗塞のリスクを高めることもあり、放置するべきではない病気といえます。しかし、自覚症状がないので危機意識が芽生えづらく、そのままにしてしまいやすいのが脂質異常症の問題です。
原因を教えてください。
また、動物性食品を多く配合した高カロリーな食事も原因になります。少数ではありますが、上記に当てはまるような項目がなくても遺伝によって脂質異常症を発症することもあります。
他にも甲状腺機能低下症・肝臓病・糖尿病・高血圧といった他の病気が因子になるリスクもあるため、予防が非常に大切です。
脂質異常症の検査と治療
どのような検査で診断されるのでしょうか?
値を正確に調べるため、朝食前の空腹時に測定することが一般的です。診断基準は以下のように定められています。
- 悪玉コレステロールが140mg/dL以上である
- 善玉コレステロールが40mg/dL未満である
- 中性脂肪が150mg/dL以上である
これらのうち、いずれかにでも当てはまる場合には脂質異常症と診断されます。他にも、遺伝性を検査するための家系内調査・アキレス腱の厚さの検査などが行われることが多いです。
治療方法を教えてください。
症状が軽ければ、まずは生活習慣の改善から行います。いわゆる食事療法と運動療法です。食事療法では以下のような治療を行います。
- 総カロリー数を適正値に抑える
- 野菜や果物を多く摂取するよう心がける
- 肉類を控え、青魚を摂取するようにする
- 悪玉コレステロールが高い場合には、卵・マヨネーズ・レバー・すじこなどを控える
- 中性脂肪が高い場合には、炭水化物やアルコールを控える
運動療法では、持続的に運動するよう求められます。例えば、ウォーキング・ジョギング・水泳といった有酸素運動がおすすめです。1回につき30分以上を週3回から4回行うよう推奨されています。
食事療法と運動療法では目標値に近づけられなかった場合や重症の場合には、薬物療法へと踏み切ります。悪玉コレステロールが高い場合にはスタチン系薬剤・脂質吸収抑制剤を処方し、中性脂肪が高い場合にはフィブラート系薬剤が処方されるケースが多いです。
医師の指示に従いながら、目標値に近づけるようにしましょう。
治療薬はどのようなものがありますか?
主に悪玉・善玉コレステロールの値が基準値と外れているタイプの場合には、スタチン系薬剤・脂質吸収抑制剤を使用します。中性脂肪の値が高い場合には、フィブラート系薬剤を使用します。
しかし、治療薬を処方して値だけ正常値に戻しても生活習慣が改善されなければ再発する恐れがあり、良い治療とはいえません。重症の場合を除き、まずは生活習慣を改善する治療から行われるケースが一般的です。
脂質異常症の予防と注意点
脂質異常症は治りますか?
例えば薬物療法で基準値に下がって治ったとしても、生活習慣が改善されていなければまた基準値から外れてしまうでしょう。一度基準値まで下がったからといって、気を抜かずに健康的な生活習慣を続けることが求められます。
予防方法を教えてください。
普段の食生活からバランスの良い食事を心がけ、メタボリックシンドロームにならないよう注意しましょう。アルコールや喫煙は控え、普段から運動する癖をつけておくことも大切です。
食事で注意することを教えてください。
- 豚肉
- 牛肉
- バター
- チーズ
- 卵黄
- チョコレート
- マヨネーズ
- 魚卵
- レバー
- 揚げ物
逆に、以下のような食品は積極的に摂取するよう心がけてみてください。
- 青魚
- 野菜
- 海藻
- 大豆
- 豆腐
- 果物
洋食よりも和食中心の食事がおすすめです。ただ和食中心の食事は塩分量が多くなりやすいので、その点は注意してください。
最後に、読者へメッセージをお願いします。
一度緩んでしまった習慣を引き締めるのは大変ですが、医師と一緒に目標値を目指して頑張りましょう。
きつい制限をかけてしまうと追い込まれて精神的にストレスを感じてしまうため、適度に楽しく行うことが大切です。周囲のサポートも借りながら、生活習慣を改善させましょう。
編集部まとめ
脂質異常症は生活習慣と深い関わりのある病気のため、長期的な自己管理が求められます。改善していくためには我慢を強いられることが多いかもしれません。
しかし、放置していれば動脈硬化・狭心症・心筋梗塞・脳出血・脳梗塞のリスクを高めることがわかっています。今後の健康のためにも、放置してはおけません。
自覚症状がないのでなかなか実感が湧きにくいですが、重篤な病気を発症する可能性があることを忘れず、早期発見・早期治療を心がけるようにしましょう。