「ヘッドホン難聴」の症状・原因・セルフチェック法はご存知ですか?医師が監修!
ヘッドホン難聴について、若い方を中心に難聴の症状を訴える方が多くなっています。
ヘッドホン難聴の主な原因は、大音量で長時間音楽などを聴いていることです。
これにより徐々に聴力の低下や耳鳴りを引き起こしてしまうからです。
ここでは、ヘッドホン難聴の主な症状や原因、そしてヘッドホン難聴の治療方法・予防方法・セルフチェックの方法などもくわしく解説していきたいと思います。
監修医師:
和佐野 浩一郎(医師)
目次 -INDEX-
ヘッドホン難聴の主な症状と原因
ヘッドホン難聴の主な症状を教えてください。
ヘッドホン難聴になる原因は、ヘッドホンやイヤホンで長時間大音量で音楽を聞いていることがあげられます。これにより、音を伝える内耳の蝸牛(かぎゅう)という器官の「有毛細胞」が壊れ、次第に音が聞き取りにくくなっていきます。
長時間のヘッドホンやイヤホンの使用は耳に直接音が入るため耳に負担がかかるので、適度に耳を休ませるようにしましょう。聞こえにくいなどの症状が出てきたなと感じたら、すぐに耳鼻咽喉科を受診することをおすすめします。
ヘッドホン難聴は若い年代での発症が多いのでしょうか。
これはWHO(世界保健機関)などでも問題になっており、特にWHOが警鐘を鳴らす年代は12歳〜35歳が主な対象になっています。実際にあったケースを紹介しましょう。
- 高校生が連日長時間の音楽を聴いていたため次第に音が聞こえにくくなり、耳鳴りが始まった
この事例から、「オーディオ難聴」ともいわれ問題視されています。
ヘッドホン難聴の原因について詳しく知りたいです。
しかし長時間音を聞くことにより、その音を伝える有毛細胞が傷付いて壊れてしまいます。一度壊れてしまうと二度と回復させることはできません。長時間の音を聴き続けることにより、聴力が徐々に低下し、音や人との会話でも聞き取りにくくなっていくのです。
ヘッドホン以外の原因は、例えばコンサートやライブなどで大音量の音楽を聴くことものちに耳鳴り・聴力低下の原因となるため注意が必要です。コンサートなどの「音響外傷」で、聴力が低下することもありますが、一過性のものなので治療を受けることで治ることもあります。
しかし、長い期間に渡って騒音曝露が続いたことによる騒音性の難聴の場合は急性の経過ではないため聴力は元には戻りません。今後のことも考えてなるべく大きな音を長い時間聴くということは避けましょう。
ヘッドホン難聴の診断と治療方法
ヘッドホン難聴の診断について教えてください。
耳鼻咽喉科で聴力検査をする場合、防音室でヘッドホンを両耳に当て、段階的に音を出し一番低い音がどのくらいの段階で聞こえているかを測定します。具体的な周波数の数値は、125ヘルツ~8000ヘルツまでの7種類です。
この検査の結果、おおむね5段階の聴力に分けられます。5段階の検査結果を以下に挙げてみます。
- 聞こえが悪くない(正常)
- 少し聞こえが悪い(軽度難聴)
- かなり聞こえが悪い(中等度難聴)
- ほとんど聞こえない(高度難聴)
- 聞こえない(重度難聴)
これにより、聞こえのレベルが分かり正常か難聴かの診断ができるのです。難聴を防ぐためにも定期的に、耳鼻咽喉科で聴力検査を受けてみることをおすすめします。
ヘッドホン難聴のセルフチェック方法はありますか?
- 手で片耳をふさいで、片方の耳の傍で指を鳴らし両方の耳の聞こえ方の良し悪しを試す。
- ラジオなど画面がないオーディオ機器などで片耳ずつ聞こえ方の違いを試す
ヘッドホンやイヤホンなどをよく使う方は、適度に外して休憩を入れてなるべく長時間付けている状態を避けるようにしましょう。
無音の状態を作ることも大事です。その場合、耳栓などを使ってみるのも良い方法です。
ヘッドホン難聴にはどのような治療が行われるのでしょうか。
有毛細胞が壊れる前の、比較的軽度(初期症状)の場合は耳を安静にしてあげることで治まる場合もあります。耳栓を使ったり、定期的に耳を休めたりなどが効果的です。
またヘッドホンやイヤホンを使用する場合でも、ノイズキャンセリング機能の付いたものを使用することで大音量で聴くのを軽減できます。またコンサートなどで一時的な音響外傷であれば、内服薬や点滴を使用した治療が可能です。内服薬や点滴にステロイド剤を使った薬物療法です。
以下に、主に使われる薬の種類を挙げます。
- 血管拡張薬(プロスタグランジンE1製剤)
- ビタミンB12製剤
- 代謝促進薬(ATP製剤)
なお、以上の薬品を使っても症状が改善しないこともありますので、できるだけ早めの受診とこれらの治療から初めてみましょう。
ヘッドホン難聴の後遺症と予防方法について
ヘッドホン難聴の後遺症はありますか?
- 聴力の低下
- 音の歪みや耳鳴り
- 音楽や人の声などの音に対する感度が低下
以上のような症状が挙げられます。 ヘッドホンやイヤホンなどを長時間使用することは、これらの症状を慢性化することも考えられますので、注意が必要です。
初期症状の場合は、耳鳴りや音の低下のような症状があるので、早めに受診してみましょう。ヘッドホン難聴の後遺症は、治療が遅れると生活に大きな影響を与えかねません。
社会生活や仕事にも支障をきたす可能性があるので、少しでも「最近、聞こえがおかしいな」と感じる点があれば、すぐに医師の診察を受けましょう。
ヘッドホン難聴の予防方法について教えてください。
- 音量の調整:オーディオの音量を抑え、耳の負荷を軽減する。
- 頻繁な休憩:長時間使用の場合、頻繁に休憩を取ることが必要。15分~30分程度の休憩で、耳の負荷を軽減。
- 環境の変化: 音量を抑える。オーディオを使用しない場所で音楽を聴く。
過去の事例としては、デスクトップを長時間使用する高校生が、耳鳴りを訴えて耳鼻咽喉科を受診し、音量を下げ、耳の負荷を軽減するようにアドバイスを受けました。また最適な予防法としては、定期的な聴力検査を受けるなどの対策も、ヘッドホン難聴の予防につながります。
その他には、iPhoneをお持ちの方なら自分が聞いた音の音量や何時間聞いたかなどが記録されますので、利用してみると良いでしょう。また、AirPodsやBeatsとのヘッドホン・イヤホンなら何dBかが正確に記録されるので、おすすめです。
Androidは正確性は少し落ちますが、その代わり何dB・何時間までというように自分で制限をかけることが可能ですので是非利用してみてください。
最後に、読者へメッセージをお願いします。
こうした状況が多くあると、内耳の有毛細胞にダメージを与え、壊れてしまうと元に戻すことはできなくなります。耳鳴りやめまいといった後遺症の可能性も出てきますので、長時間の使用は避け音量を下げ、適度に休憩して耳を休ませることを習慣づけるようにしてみてください。
オーディオ機器を使う機会が多い若い方を中心に、増加傾向にありますのでWHOでも問題視されています。少しでも音の聞こえに不安が出たら、早めに耳鼻咽喉科などの医療機関で、適切な治療を受けることが重要です。
編集部まとめ
現代のコロナ禍の影響もあり、リモートワークやオンラインなどでのやり取りが増えました。こうしたこともヘッドホン難聴を引き起こす要因になっているといわれています。
一度、静かな環境でヘッドホンなどで音楽を聴いてみて、うるさく感じない程度の音量(数値)などを覚えておき、騒音がある場所にいてもそれ以上の音量に上げないようにしましょう。
そして、1時間聴いてからその後30分ほどはヘッドホンやイヤホンを外し、耳を休ませるように心掛けてください。
こうしたちょっとした心掛けで難聴を防ぐことは可能ですので、是非やってみることをおすすめします。