「妊娠高血圧症候群」を発症すると現れる症状・原因はご存知ですか?医師が監修!
妊娠高血圧症候群は、妊婦さんの20人に1人は発症するとされており、妊婦さんだけでなく赤ちゃんにとっても危険な状態を引き起こす可能性がある、妊活中・妊娠中の女性にぜひ知っておいていただきたい病気です。
今回は、妊娠高血圧症候群についてQA形式でご紹介します。なりやすい人・症状・治療法・予防法についても取り上げますのでぜひ参考にしてください。
監修医師:
前田 裕斗(医師)
目次 -INDEX-
妊娠高血圧症候群になりやすい人や症状
妊娠高血圧症候群とは?
妊娠前から高血圧である場合には高血圧合併妊娠と呼ばれ、妊娠高血圧症候群の病態の1つとして分類されるため注意してください。
妊娠20週目以降に高血圧を発症している場合を、妊娠高血圧症候群と呼びます。妊婦さんの20人に1人の割合で発症するといわれており、発症率が比較的高いことが特徴です。
妊娠34週までに発症した場合には、重症化する可能性が高くなります。
そうなると高血圧だけでなく、痙攣・脳出血・肝機能障害など引き起こす可能性があり、きちんと治療を行っていくことが必要です。
場合によっては赤ちゃんが亡くなってしまうこともあり、妊娠高血圧症候群は非常に危険な病気であるとわかります。
妊娠高血圧症候群になりやすい人の特徴は?
- 年齢が35歳以上である・15歳以下である
- 初産である
- 血縁者、特に母や姉妹に高血圧の人がいる
- 血縁者に糖尿病の人がいる
- BMIが25以上である
- 甲状腺機能異常がある
- 多胎妊娠である
- 以前に妊娠高血圧症候群と診断されたことがある
上記に該当する場合には、妊娠高血圧症候群を発症するリスクが高いです。
もちろん必ずかかるというわけではなく、なりやすい傾向にあることを念頭に置いていただけたらと思います。
どのような症状がありますか。
場合によっては急激な体重増加・頭痛・むくみ・視界がチカチカするといった症状が起こることもあります。
重症になった場合には、母子ともに危険な症状が起きるため注意しなければなりません。
例えば妊婦さんであれば高血圧・脳出血・痙攣・蛋白尿・肝臓や腎臓の機能障害・常位胎盤早期剥離といった様々な症状が引き起こされます。
赤ちゃんであれば、胎児発育不全・胎児機能不全・胎児死亡といった症状が起きるかもしれません。
胎児への影響はありますか。
さらに胎盤の血流が低下すると、胎盤の血管が詰まってしまい、胎盤梗塞が起こります。それによりさらに胎児発育不全が進み、胎盤が分娩前に剥がれてしまう常位胎盤早期剥離や胎児死亡が起こることもあります。
妊娠高血圧症候群の診断や治療方法
どのような検査が行われますか。
妊婦検査では必ずこの2つの検査が行われますが、これは妊娠高血圧症候群を発症していないかを調べるためです。
血圧測定では、最高血圧が140mmHg以上または最低血圧が90mmHg以上であると診断が下されます。尿検査は、腎機能が低下していないかを調べるために行います。
診断はどのように行われますか。
診断された際、臓器の異常がなく、妊婦さんと赤ちゃんに問題がないと判断されれば自宅療養と経過観察となりますが、重症や合併症が認められる場合には万が一に備えて入院しなければなりません。
妊婦さんと赤ちゃんの両方の命を守るには必要な対処のため、医師の指示に従いましょう。
治療方法を教えてください。
一方、早産になってしまう週数では出産することができない場合もあります。その場合、血圧のコントロールや臓器の障害が起こらないように以下の3つの治療が行われます。
- 安静:血圧を上げないよう、安静に過ごすことが求められます
- 食事療法:体重を増加させないこと、塩分・脂肪分・糖分を撮りすぎないようにすることが求められます
- 薬物療法:血圧を下げる降圧薬を用いることで血圧をコントロールします
薬物療法は、高血圧が重症の場合に用いることが一般的です。
ただ急激に血圧を下げてしまうと、赤ちゃんに悪影響を及ぼす可能性があるという報告もあり、慎重に判断しなければなりません。医師の指示に従いましょう。
妊娠を終えたのちには自然と高血圧が治る傾向にあります。場合によっては妊娠後も症状が長引くこともあるため、その場合は妊娠後も注意して血圧管理をするよう治療を進めます。
妊娠高血圧症候群の予防・注意点
妊娠高血圧症候群の予防方法を教えてください。
- 塩分は1日6g未満にする
- アルコールを控える
- BMI値が25を上回らないよう体重管理する
- 野菜や果物を積極的に摂取する
- 有酸素運動を30分以上行う
- 禁煙する
ご自身のライフスタイルを見直し、上記のような習慣を身につけられるようにしておきましょう。発症のリスクを下げられるかもしれません。
また、妊娠高血圧症候群を発症するリスクの高い人に低用量アスピリンという薬を妊娠初期から飲んでもらうことで発症予防ができるという報告もあります。気になる方は医師に相談してみましょう。
出産後に注意した方が良いことはありますか。
授乳中になるため、赤ちゃんに影響を与えないお薬をもらうことが大切です。産後は赤ちゃんの健康を第一に考えがちですが、ご自身あってこその赤ちゃんであることを忘れず、健康を心がけましょう。
最後に、読者へメッセージをお願いします。
しかし、適切な治療と管理ができていれば、母子ともに健康でいられる可能性が高まります。
過度に心配せず、正しく恐れながら医師の指示に従って治療を進めましょう。妊娠高血圧症候群の原因はまだわかっていませんが、発症リスクが高くなる可能性のある人は判明しています。
高血圧症候群を予防するためには、健康的な生活習慣を心がけることが大切です。
母子に危険が及ぶ場合には、帝王切開による妊娠帰結が必要となる場合もあります。医師やご家族と十分に検討して判断しましょう。
編集部まとめ
妊娠高血圧症候群は、妊娠中に高血圧を発症する病気です。重症になると様々な合併症を引き起こす恐れがあり、生命に関わることもあります。
完治する治療法は確立されていませんが、発症リスクを下げる方法は判明しています。妊活中・妊娠中の方は今一度ご自身のライフスタイルを見直し、改善するようにしましょう。
妊娠高血圧症候群と診断されても、慌てず、医師の指示に従うことが大切です。基本的な治療法としては、安静にし、食事に気をつけるといった生活指導が行われます。
妊婦健診で毎回検査が行われるため、発見が遅れるケースはほとんどありません。しかし、自宅にも血圧を測定できるものがあると安心です。
自宅で血圧を測定した場合には、妊婦健診の際にその報告をしましょう。
妊娠高血圧症候群は妊婦さんの20人に1人は発症するといわれている、発症率の高い病気です。多くの情報を集め、この病気についての知識を深めておくことをおすすめします。
参考文献