「肉芽腫性口唇炎」の症状・原因・発症しやすい人の特徴はご存知ですか?
特に自覚症状もなく急に唇が腫れてきたのであれば、肉芽腫性口唇炎(にくげしゅせいこうしんえん)の可能性があります。
肉芽腫性口唇炎は再発を繰り返しやすく、症状がひどい場合には顔面麻痺・雛壁舌・サルコイドーシスを伴う場合もあるため注意が必要です。
本記事では、肉芽腫性口唇炎の症状・原因・治療方法などをご紹介します。
監修医師:
竹内 想(名古屋大学医学部附属病院)
目次 -INDEX-
肉芽腫性口唇炎とは
肉芽腫性口唇炎はどのような病気でしょうか?
膨張の程度は個人差がありますが、症状がひどい場合には弾力のある硬いたらこ唇のようになるのが特徴です。顔面麻痺・雛壁舌を併発することもあり、違和感がある場合にはすぐに医療機関を受診することが求められます。
主な症状は赤み・膨張・ただれなどです。再発性が高く、10代から20代にかけて初発する傾向にあります。
肉芽腫性口唇炎の主な症状を教えてください。
無痛性であることが多く、ただ唇が膨張しているだけといった症状がほとんどです。稀に顔面麻痺・雛壁舌を伴うことがありますが、この場合にはMelkersson-Rosenthal症候群として分類されます。
難病に指定されているサルコイドーシスという病気を併発することもあり、口唇に限らず全身に肉芽腫が確認できる場合には早めに医療機関を受診しましょう。
肉芽腫性口唇炎の原因は解明されていないのでしょうか。
ただ、一般的には以下の5つが原因として挙げられます。
- 口腔内状況の問題
- 食物アレルギー
- 金属アレルギー
- 遺伝
- クローン病
口腔内状況としては、例えば歯石が溜まっていて歯周炎を発症していたり、扁桃炎を発症していたりするケースが代表的です。金属アレルギーは歯科金属で使用していたものによって遅延型アレルギーが起こり、発症へと至ることが多くあります。
この病気については遺伝が関与していることもわかっており、家族内で発症した経験のある方やアレルギー素因が遺伝している可能性が指摘できます。クローン病とは、消化管において炎症が起こることで様々な症状を引き起こす難病です。
肉芽腫性口唇炎は口唇のみに膨張する炎症が起きますが、クローン病は全消化器官において起こります。肉芽腫性口唇炎の診断を受けにきた際に、クローン病であったと判明するケースもあり、両者には関連性があります。
以上のように、この病気の原因は多岐にわたるものです。複雑に絡み合っていることも多いため、正確な原因の特定と適切な治療法の選択が重要となります。
肉芽腫性口唇炎はどのような人に発症しやすいのか知りたいです。
口腔環境が原因となる肉芽腫性口唇炎は、口腔内に異常が見られることが多くあります。歯磨きをきちんとできていない方や定期健診を受けていない方は、発症のリスクが高いといえるでしょう。
肉芽腫性口唇炎の治療方法
肉芽腫性口唇炎の治療方法を教えてください。
アレルギーが原因で発症している場合には、アレルギーを取り除く治療を行います。例えば歯科金属によるアレルギー反応である場合には、パッチテストを行った上で取り替えを行います。
歯周炎などの口腔内環境が原因である場合には、その治療をまず行わなければなりません。その後は抗アレルギー剤・ステロイド剤・抗炎症剤の投与を行って経過を観察します。ほとんどはこうした治療で改善されますが、それでも改善されない場合には外科手術を行うこともあります。
ただし、1年経過しても治らない場合に限るケースであり、さらに手術をしても再発する可能性はなくせないので慎重に検討しなければなりません。
完治までにどのくらいの期間がかかりますか?
この病気が原因で唇が腫れていても、最初のうちは放置していても治ることが多いです。しかし、症状を繰り返すことで慢性的に唇が膨張した状態になりやすく、そうなると完治までの期間も長くかかりやすくなります。
始めのうちから治るからと放置せずに早めに医療機関を受診することが大切です。
早期の治療が重要なのですね。
ただ、肉芽腫性口唇炎は繰り返し発症しやすく、最初のうちは放っておいても治りやすい部分があります。症状に慣れてしまうと「放っておいても治るだろう」と危機感が薄れやすいのが厄介なところです。
もし口唇が腫れたことがあるという場合には、経過観察をせずに受診することをおすすめします。
肉芽腫性口唇炎の検査方法と手術
肉芽腫性口唇炎の検査方法を教えてください。
異常がなければ、口腔内をチェックして衛生状況を確認します。多くの場合は口腔内の環境が悪いために発症しています。
ただ、肉芽腫性口唇炎は原因が多岐にわたるため、1つ1つ検査して可能性を探っていく検査方法を行うことが一般的です。
外科的な手術を行う場合もあると聞いたのですが…。
というのも、肉芽腫性口唇炎は再発性があり、手術をして膨張部分を切除しても、また再発してしまう可能性があるからです。たとえ手術をしても、肉芽腫性口唇炎の原因は除去できません。そのため、手術は他の治療法を試して成果が得られなかった場合に選択されます。
とはいっても、治療が手術にまで至ることはほとんどありません。ごく稀なケースなのでご安心ください。
最後に、読者へメッセージをお願いします。
痛みは感じないことがほとんどですが、自分の目で見えるほどまでに膨張してしまうケースもあり、軽視はできません。場合によっては顔面麻痺・雛壁舌・サルコイドーシスといった難病を併発している場合もあるため、放置せずに医療機関を受診することが大切です。
肉芽腫性口唇炎は再発性が高く、一度治ってもまたできてしまうことがあります。初期のうちは何もせずに治るケースが多いですが、免疫力が低くなる時期と重なると慢性化してしまう恐れがあるため注意しましょう。原因は多岐にわたりますが、適切な治療を受ければ改善します。小さな膨張であっても、早めに受診するようにしてください。
編集部まとめ
痛みはないものの、自分で見えるほど大きく膨張してしまうこともあるのが肉芽性口唇炎の怖いところです。
症状を繰り返すことが多い特徴がありますが、初期のうちはそのままにしても治ってしまう面は注意しなければなりません。
症状に慣れた状態でそのまま放置し続けてしまえば、どこかのタイミングで慢性化してしまいかねません。
口唇が膨張した状態では、外出も食事もままならなくなってしまいます。手遅れになる前に、早めに医療機関を受診することを心がけましょう。