「化膿性リンパ節炎」を発症すると現れる症状・原因はご存知ですか?医師が監修!
「風邪かな…」と思っていたら、首に大きなしこりができてきた場合には、化膿性リンパ節炎の可能性があります。
化膿性リンパ節炎は、細菌やウイルス感染が原因でリンパ節に炎症が起き、膿が溜まって腫れてしまう病気です。
多くの場合、早期に発見できれば抗生剤の服用のみで回復します。しかし、膿の溜まったしこりが大きくなれば、切開して膿を出すことが必要です。
また、化膿性リンパ節炎によく似た疾患もあります。そのため、早期に適切な診断を受けることが重要でしょう。
今回は、化膿性リンパ節炎の特徴的な症状・原因・受診の目安・治療法など、詳しく解説します。
監修医師:
竹内 想(名古屋大学医学部附属病院)
化膿性リンパ節炎とは?
化膿性リンパ節炎とはどのような病気か教えてください。
主な症状は、リンパ節の腫れ・痛み・患部の熱感などです。
「化膿性」という名の通り、炎症を起こした部分に膿が溜まってしまいます。
化膿性リンパ節炎は、一般的に小児期で発症することが多い病気です。細菌やウイルスの感染が原因となるため、咽頭炎や扁桃炎などに関連して発症する頻度が高いです。
化膿性リンパ節炎ではどのような症状がみられますか?
例えば、耳下腺・頸部・腋窩・鼠径部などです。
化膿性リンパ節炎の症状は、それらの中でも頸部に発症することが多いのが特徴です。
症状としては、リンパ節に痛み・腫れ・熱感などが現れます。
炎症が進行すると、リンパ節が腫れて硬くなり、触ったときに痛みを感じるようになります。
腫れた部分の内部には膿が溜まり、次第に膿瘍と呼ばれる膿の溜まった袋が形成されてしまうのが特徴です。
膿瘍が形成されれば、切開して膿を排出しなくてはなりません。また、この膿瘍は低年齢であるほど大きくなることが多いというデータもあります。
化膿性リンパ節炎は何が原因で発症することが多いですか?
小児では、上気道炎に伴って発症することが一般的です。上気道炎とは、いわゆる「風邪」です。
例えば、急性咽頭炎・急性喉頭炎・急性副鼻腔炎などにリンパ節が反応し、炎症が起こります。
一方、成人の場合には、虫歯菌が原因となって発症するケースも多いです。
また、小児の場合には、川崎病や亜急性壊死性リンパ節炎でもリンパ節の腫脹がみられます。そのため、他の疾患との鑑別を慎重に行う必要があります。
化膿性リンパ節炎の特徴や受診目安
化膿性リンパ節炎の特徴を教えてください。
- 発熱
- リンパ節の腫脹
- 患部の痛みや熱感
化膿性リンパ節炎はリンパ節に炎症が起こることによって発症します。
そのため、発熱を伴うのが特徴です。また、多くの場合は風邪が引き金となりますので、発熱を伴う風邪症状がある場合には注意しましょう。
通常の風邪でも一時的にリンパが腫れることはあります。しかし、化膿性リンパ節炎の場合、しこりが徐々に大きくなっていくのが特徴です。また、しこりが硬くなったり数が増えたりする場合には悪性腫瘍の可能性もありますので医療機関を受診してください。
化膿性リンパ節炎は、その名の通り、リンパ節が炎症を起こして膿が溜まってしまう病気です。
例えば、ケガをして傷口からばい菌が入って腫れてしまった状態をイメージすると分かりやすいかもしれません。
感染による炎症反応が起きるため、患部が腫れて痛みや熱感を伴うのが特徴的な症状です。
化膿性リンパ節炎を放置してしまう危険性を教えてください。
それに伴い、痛みも増していきます。
一般的に症状が軽度の場合には、抗生剤の服用のみで回復することが多いです。
しかし、放置して膿瘍が大きくなってしまった場合には切開して膿を出す必要があります。
また、小児で発症した化膿性リンパ節炎は、川崎病や亜急性壊死性リンパ節炎と症状が似ています。川崎病の場合、心臓の血管にこぶができてしまうことも多いです。
亜急性壊死性リンパ節炎では、胃一過性の免疫不全や血球貪食症候群という難病を伴うケースもあります。そのため、放置せず早期に受診することが重要です。
化膿性リンパ節炎の受診目安を知りたいです。
そのため、発熱・患部の腫れ・痛み・熱感などがみられます。
患部の腫れが次第に悪化している場合やしこりが硬くなっている場合には、すみやかに受診しましょう。
通常、ふつうの風邪などの場合にもリンパ節が腫れることはあります。しかし、その場合は、豆粒程度のしこりが触れる程度です。
例えば、巨峰大くらいの大きさになるようでしたら、詳しい検査を受ける必要があるでしょう。
また、隣り合うリンパ節にまで炎症が及んでいる場合には、しこりの数が増えることもあります。
また、悪性の腫瘍である可能性も多いので注意してください。
病気や病気の治療により免疫不全の状態にある人は、炎症性の疾患にかかりやすくなります。心当たりがある場合には、すぐに主治医に相談しましょう。
化膿性リンパ節炎は何科を受診したら良いですか?
リンパ節の腫れがみられる疾患で小児期に発症しやすいものとしては、「川崎病」が挙げられます。
川崎病は高熱・頸部リンパ節の腫脹・目の充血・口唇の紅潮・いちご舌などが主な症状です。
川崎病の場合、心臓の血管にこぶができてしまうこともあります。
高熱やリンパの腫れは化膿性リンパ節炎とよく似ているため鑑別が重要です。
成人の場合には、耳鼻咽喉科へ受診しましょう。基礎疾患がある人や病気の治療中の人は、一度かかりつけ医に相談することをおすすめします。
化膿性リンパ節炎の治療方法や日常生活での注意点
化膿性リンパ節炎ではどんな治療をしますか?
多くの場合、抗生剤の投与により症状の改善がみられます。
しかし、膿瘍と呼ばれる膿の溜まった袋ができてしまっている場合には、抗生剤だけでは効きません。
膿を排出する必要があります。この場合、針を刺して膿を出す「穿刺」という方法や患部を切って膿を出す「切開」という方法が適用されます。
化膿性リンパ節炎の治療期間はどのくらいですか?
投与期間については、重症度や膿瘍形成の有無によって異なります。
また、膿瘍が形成され外科的手術での排出が必要となった場合には、さらに治療期間は延びることになるでしょう。
入院での治療が必要となった場合、膿瘍が形成されていないケースでは入院期間は1週間程度です。
一方、膿瘍が形成されたケースでは、最低でも10日以上の入院が必要で、最長では20日間という報告もあります。
化膿性リンパ節炎の治療中、もしくは治療後に注意することはありますか?
抗生剤の服用方法を守らなかった場合、耐性菌ができてしまい、抗生剤が効かなくなってしまいます。
そのため、抗生剤の服用を中断したり服用頻度・時間を守らなかったりするのは大変危険です。
処方された薬の用法・用量は必ず守りましょう。
しかし、小児の場合には薬を嫌がって飲まなかったり吐き出してしまったりすることもあるかもしれません。
また、副作用が出ることもあります。そのような場合には、かかりつけ医や薬剤師に相談してください。
とにかく、十分な睡眠や食事を心がけ、症状の改善に努めましょう。治療後も免疫力が低下して再発する可能性も考えられます。
普段から、うがい手洗いなどの基本的な感染対策や規則的な生活を心がけることも重要です。
さらに、化膿性リンパ節炎は口の中の菌が原因で起こる病気でもあります。定期的に歯科検診を受け、虫歯や歯周病などは早めに治療しておくと安心です。
最後に、読者へメッセージをお願いします。
特に、十分な免疫が獲得できていない乳幼児で多く発症しやすいです。乳幼児の場合、自分の症状を言葉で伝えることは難しいでしょう。
そのため、注意深く全身状態を観察してあげることが重要です。
また、化膿性リンパ節炎は大人でも発症することがあります。この場合、虫歯の放置などが原因となることも多いです。
虫歯や歯周病は放置せず、早めに治療しておくように心がけましょう。
編集部まとめ
発熱やリンパ節の腫脹といった症状が現れる化膿性リンパ節炎について解説しました。化膿性リンパ節炎は小さなお子様には発症することが多い疾患です。
乳幼児の場合、自分で違和感や痛みを詳しく伝えることは難しいです。特に、風邪を引いてしまった場合などには、リンパに腫れがないか確認しましょう。
乳幼児の場合、普段と違うと感じるときは早めに受診すると安心です。すみやかに受診してください。
また、大人の場合でも化膿性リンパ節炎を発症することがあります。虫歯や歯周病などが原因となることが多いので、定期的に歯科検診を受けましょう。
参考文献