「膿胸」を発症すると現れる症状・原因はご存知ですか?医師が監修!
膿胸とは、その名の通り、胸腔内に膿が溜まる病気のことです。膿胸は細菌感染により引き起こされ、時に呼吸困難を引き起こすこともあります。
また、膿胸には急性膿胸と慢性膿胸の2種類があります。特に、急性膿胸では急激に悪化するリスクが高いため、早期に治療を開始することが重要です。
一方、慢性膿胸の進行は比較的緩やかですが、状態によっては開胸手術が必要となることもあります。
どちらにしても膿胸は再発しやすい病気ですので、適切な治療を受け、生活習慣に気をつけることが重要です。
今回は、胸水との違いや症状・原因・治療方法から手術や生存率まで、気になる疑問について詳しく解説していきます。
監修医師:
甲斐沼 孟(上場企業産業医)
目次 -INDEX-
膿胸(のうきょう)とは?
膿胸(のうきょう)はどのような病気でしょうか?
また、膿胸には急性膿胸と慢性膿胸があります。一般的に、発症してから3か月以内を急性膿胸といい、3か月以上継続しているものを慢性膿胸といいます。
急性の場合は、発症が急激で重症化のリスクが高いのが特徴です。一方、慢性膿胸では症状が緩慢で重症化はしにくいものの回復しにくく、手術が必要になることもあります。
さらに、膿胸は細菌感染症ですので、急激に悪化することで敗血症を引き起こす可能性もあります。敗血症により様々な臓器がダメージを受ければ、最悪の場合死に至る可能性もあるため注意しましょう。
胸水との違いを教えてください。
その中でも、細菌感染によって胸腔内に膿が溜まる炎症性の病態を膿胸といいます。
どちらも、胸痛や呼吸困難といった症状が現れるのが特徴です。しかし、感染性・非感染性という点で大きく異なります。
また、胸水では液体全般を指すのに対して、膿胸では膿が貯留することを意味します。
症状を教えてください。
特に高熱を伴うことが多く、また、咳に関しては痰の絡まない乾いた咳が出ることも特徴的です。
呼吸困難については、重症の場合、深い呼吸やゼーゼーと音が聞こえるような喘鳴を伴います。
さらに、胸痛は、感染した部位により痛みを感じる位置や痛みの強さが異なります。
その他にも、体力や免疫力の低下・食欲減退などの全身症状が現れることも多いです。
しかし、慢性膿胸の場合は、発熱や胸痛の症状がみられないことも多いです。
また、慢性膿胸になるとフィブリンが胸腔内に溜まり、厚い膜が形成されます。それにより肺に空気を取り入れにくくなり、呼吸困難が引き起こされます。
発症する原因は何でしょうか?
しかし、外傷・肺炎などの呼吸器系の疾患・呼吸器系の手術などにより、胸腔内に細菌が侵入することで引き起こされるのです。
また、免疫力が低下した人や糖尿病などの慢性的な基礎疾患を患っている人も膿胸の発症リスクが高くなります。
どのような人がなりやすいのでしょうか?
- 胸部外科手術を受けた人
- 胸腔内に留置カテーテルやドレーンを使用している人
- 呼吸器疾患を患っている人
- 長期療養中の人
- 免疫力が低下している人
その他にも、飲酒・喫煙・慢性的な咳・食道や気管支の疾患などが膿胸の発症リスクを高めるといわれています。
膿胸(のうきょう)の治療と手術
どのような検査で診断されるのでしょうか?
まず、胸部X線検査では胸腔内に液体が貯留しているかどうかを確認します。
そして、胸腔内に貯留した液体の量や形状などを判断するために用いられるのがエコー検査です。
さらに、CT検査で膿瘍の大きさや炎症の程度を詳しく調べます。
膿胸の場合、胸腔鏡検査により胸腔内の膿を採取し、細胞診で感染菌の種類を特定するのが一般的です。
治療方法を教えてください。
また、ドレーンというチューブを胸腔内に挿入し、膿を排出する方法を胸腔ドレナージといいます
。特に、急性膿胸においては、早い段階で抗生剤投与と胸腔ドレナージを行うことが重要です。
感染が重篤な場合やドレナージでの十分な効果が得られない場合には、手術が必要になることもあります。
手術は必要でしょうか?
しかし、以下のようなケースでは手術の適用となることがあります。一般的に、重症度によって手術が必要かどうかを医師が判断します。
- 抗生物質の投与や胸腔ドレナージで効果がみられない場合
- 感染が重篤な場合
- 胸腔内に留置したカテーテルやドレーンが感染の原因である場合
- 慢性膿胸へ移行した場合
急性膿胸により全身状態が悪く、抗生物質やドレナージによる効果が得られない場合には、侵襲の少ない胸腔鏡下掻爬術という手術を用いるのが一般的です。
一方、慢性膿胸では開窓術や胸膜肺切除術といった開胸手術を行うこともあります。
術式は様々ですので、状況に応じて医師が判断します。
治療期間はどのくらいでしょうか?
ただ、抗生剤による治療には数週間から数か月程度かかるのが一般的です。
また、膿の排出を促すための胸腔ドレナージで効果が得られない場合には、胸腔鏡手術などを行うことが必要です。
重症化した場合には、開胸手術の適用となることもあります。
術式によっては、複数回手術を行う必要があるでしょう。
さらに場合によっては、再発したり治療が長期にわたったりする可能性も考えられます。
膿胸(のうきょう)の予後
生存率は低いのでしょうか?
慢性膿胸の場合、手術がハイリスクとなる可能性はあるものの、最適な処置を受けられれば回復は見込めるでしょう。
しかし、治療が遅れて急激に症状が進行した場合には、敗血症を引き起こすことがあるため危険です。
敗血症により様々な臓器が障害されショック状態に陥れば、命を脅かすリスクが高まります。
さらに、症状が落ち着いたのちに慢性膿胸に移行した場合、一度回復しても再発することが多いのも特徴です。
また、慢性膿胸が長引くことにより悪性リンパ腫を発生することもあります。
さらに、慢性膿胸では発熱や胸痛などの症状がみられず、呼吸障害のみ現れることも多いです。
呼吸時に少しでも違和感があれば、かかりつけ医に相談しましょう。
再発することはありますか?
再発の主な原因は、細菌が胸腔内に残存すること・再感染・免疫力の低下などです。
特に、慢性的な基礎疾患を患っている人や免疫力が低下している人は膿胸の再発リスクが高くなるため注意しましょう。
再発の早期発見・早期治療を行っていくことが重要ですので、治療後にも定期的な検査を受けるようにしてください。
また、飲酒や喫煙の習慣がある人も膿胸になりやすいといわれています。飲酒や喫煙は控え、規則正しい生活を心がけましょう。
最後に、読者へメッセージをお願いします。
発熱や咳など風邪のような症状で始まるため、放置してしまう人も少なくありません。
しかし、膿胸は早期に治療を開始することが何よりも重要です。発熱や咳に加えて、胸の痛みや息苦しさを感じるような場合には、すみやかに医療機関を受診するように心がけましょう。
また、膿胸は再発しやすい病気でもあります。一度膿胸の治療が終了した場合でも、定期的な検査を受けておくと安心です。
編集部まとめ
今回は、細菌感染により胸腔内に膿が溜まってしまう「膿胸」について、お話ししました。
膿胸は、胸腔内に感染が広がることで発熱・咳・呼吸困難・胸痛などがみられる病気です。急激に悪化すれば、敗血症を引き起こすことがあるため注意が必要です。
発熱や咳といった風邪のような症状だからといって軽視せず、少しでも胸の痛みや息苦しさを感じた場合には、医療機関を受診することが大切です。
また、喫煙や飲酒が膿胸のリスクを高める可能性もあるでしょう。健康的な生活習慣を心がけて、日頃から免疫力を高めておくことも大切です。
参考文献