「子宮肉腫」を発症すると現れる初期症状はご存知ですか?医師が監修!
子宮肉腫は、子宮の壁に肉腫が発生する女性の生殖器に関する病気です。発生率は非常にまれですが、自覚症状が少なく早期発見の難しい病気で、肉腫が大きくなれば子宮全摘手術や化学療法などが必要になります。予防法や治療方法が確立されていない「稀少がん」のひとつであり、早期発見・早期治療が重要となる病気です。今回は子宮肉腫について、その症状・診断方法・治療方法について解説します。治療後の再発率や生存率についても触れますので、ぜひ参考にしてください。
監修医師:
郷 正憲(徳島赤十字病院)
目次 -INDEX-
子宮肉腫の症状と原因
子宮肉腫とはどんな病気でしょうか?
子宮肉腫と総称されますが、これは子宮の筋肉から発生する悪性腫瘍の総称です。 実際には子宮癌肉腫・子宮平滑筋肉腫・子宮内膜間質肉腫などがあり、子宮内膜間質肉腫はさらに低異型度子宮内膜間質肉腫・高異型度子宮内膜間質肉腫に分類されています。40代以降の女性に発症が多い病気です。
とはいえ発症率はまれで、2019年の日本産婦人科学会による調査によると、1年間に日本全国で診断・治療された患者さんは476名でした。後述しますが、よく診られる良性の子宮筋腫とは異なる病気です。
初期症状はどのようなものがありますか?
- 生理周期によって変化する腹部の腫れや痛み
- 血液の排出量や期間が増える月経異常
- 排尿や排便障害
- 疲れや貧血
ただしこれらの症状は他の病気にも起こることがあるため、確定診断には診断検査が必要です。例えば月経が不規則になって、月経量が多くなったり痛みがあったりするようになったときに婦人科にかかり、内視鏡検査を受けると子宮肉腫が発見されることがあります。
また子宮筋腫の手術を受けたら肉腫であることがわかり、追加療養となるなど、手術後に診断がつくことも多い病気です。
子宮肉腫の診断と治療
子宮肉腫の診断のポイントを教えてください。
また、病理検査によって肉腫が上皮性か非上皮性かも判別できます。診断方法を紹介しましょう。
- 婦人科診察:子宮の大きさや形状が異常な場合に実施
- 子宮内膜検査:子宮内膜の異常な変化や腫瘍が見られる場合に実施
- 超音波検査:子宮内に腫瘍が見られる時に実施
- 生検:子宮肉腫の細胞が見られる場合に検査
- CTやMRI:子宮肉腫の範囲や大きさを決定するために使用
一方この病気は子宮筋腫と見た目がよく似ており、子宮筋腫と子宮肉腫は判別が非常に難しい病気です。良性の子宮筋腫と診断されて摘出手術を行った後、生検で肉腫と判明するケースなど、手術後に診断がつくことも多いです。
その場合は手術後に再び肉腫に対する追加治療を検討します。また非常にまれな病気なこともあり、治療経験が乏しい病院では、子宮筋腫や腺筋症と区別がつかずに治療されることも少なくありません。
病院に専門医がいない場合は、セカンドオピニオンや転院で今一度検査を受けることを選択肢に入れてもいいでしょう。またこの病気は、病理診断が非常に重要です。
不安があるときは病理相談だけでも受けて、診断名が妥当かどうか確認しましょう。婦人科腫瘍専門医という資格をもった医師がいれば、適切な治療を選択してもらえる可能性が高く安心です。
どんな治療を行いますか?
例えば、患者さんが高齢であったり生殖に必要なかったりする場合は、手術を避け放射線や化学療法などの治療が選ばれることもあるのです。それぞれの治療方法について述べましょう。
- 手術:子宮肉腫を全摘する手術(子宮全摘)を行うことが一般的です。また、軽度な病変の場合には子宮肉腫部分を切除する手術(部分子宮切除)を行うこともあります。
- 放射線療法
- 化学療法
- 薬物療法:薬物は、子宮肉腫の発症や進展を防ぐ効果があります。
子宮肉腫は希少で症例が少ないと聞きました。
肉腫が大きくなっていくにつれて下腹部の痛みや出血などの症状が現れることがありますが、これらの症状は軽度であり、早期に発見することは困難です。定期的な婦人科検診や子宮頸がんの検診などを受けることで早期発見に繋がります。
子宮肉腫の治療後について
子宮肉腫は再発することが多いのでしょうか?
一方、放射線療法や化学療法の場合、再発率は高くなることがあります。また病期が進行している腫瘍の場合は、再発しやすい傾向があります。
特に子宮肉腫は、再発率が高いがんのひとつであり、再発した場合は進行性のがんとなりがちなので注意が必要です。
子宮肉腫の治療後について教えてください。
また手術後6か月〜1年ごとに再度内視鏡検査を受けることが推奨されています。放射線療法や化学療法の場合は、治療終了後に再診を受け、療養終了後も定期的に追跡管理を受けることが推奨です。
追跡管理には、内視鏡検査・穿刺検査・放射線検査などがあります。治療後の経過を見ながら適切な追跡管理を行うことで、再発や進行を早期に発見でき、早期の治療を施せます。
最後に、読者へメッセージをお願いします。
発見には定期的に婦人科検診を受けることが必要ですので、少なくとも2年に1回は婦人科でがん検査を受けることをおすすめします。
編集部まとめ
子宮肉腫は発生がまれな希少がんで、予防方法や治療方法が確立されていない病気です。
患者さんの自覚症状が少なく発見が遅れることがあり、肉腫が大きくなれば、治療も大掛かりなものになります。
また子宮筋腫と非常によく似た見た目のため、手術後に診断が下ることも少なくありません。その場合は腫瘍専門の医師にセカンドオピニオンを求めるなど、再度情報を集めることがおすすめです。
この病気の早期発見のためには婦人科で定期的な検査を受ける必要があります。定期検診をしっかり受けることをおすすめします。