「学習障害」の特徴・原因はご存知ですか?医師が監修!
学習障害は、広汎性発達障害(こうはんせいはったつしょうがい)と呼ばれる発達障害の一種です。
読み書きや、聞く・話す・計算するなどの学習において必要な基礎となる能力が難しかったり、またはうまく表現できないなどの症状のことをいいます。
ここでは、学習障害について具体的な症状や特徴、診断や治療方法、そして学習障害の支援方法などを紹介していきます。
監修医師:
伊藤 有毅(柏メンタルクリニック)
精神科(心療内科),精神神経科,心療内科。
保有免許・資格
医師免許、日本医師会認定産業医、日本医師会認定健康スポーツ医
目次 -INDEX-
学習障害とは?
学習障害とはどのような症状でしょうか?
具体的には、記憶力の欠如、注意力の不足、理解力の低下などが含まれます。学習障害は、診断や治療によって改善することができますが、生涯にわたって焦らずじっくり向き合っていくことが必要です。
子供の場合、どのような特徴がみられますか?
- 読み書きや計算の能力が遅れている。
- 読み書きや計算に興味を持たない。
- 疲れやすい。
- 不安やストレスを感じる。
- 混乱しやすい。
- 手足が震える。
- 注意力を維持できない。
- 目をこすったり、頻繁に視線が他を見る(作業に集中できない)。
また、「読み書きや数学の作業中」においての特徴は以下の通りです。
ただし、それらの特徴が見られるからと言って必ず学習障害であるとは限りません。学習障害か否かはお子さんのご家族だけで判断せず、専門家による検査で正確な診断を受けましょう。
学習障害は何歳くらいでわかりますか?
専門家は、その子に合った適切な診断と支援方法を提供してくれます。
学習障害は遺伝するのでしょうか?
しかし、遺伝的要因だけで学習障害が引き起こされることはありません。あくまで要因の一つであるということです。環境的要因や脳の発達の遅れなども、学習障害を引き起こす原因となります。
遺伝的要因があっても適切な支援を受けることで、学習障害を克服できる場合もあります。
大人が学習障害を発症することはありますか?
しかし大人になってからの発症ではなく、多くは幼児期に発症し大人になってから学習障害が発覚することもあるのです。これは学校時代には特に勉強や生活全般において問題がなかったのに、社会に出て仕事や日常生活を送る中で、なぜか「苦手なことが増えた」ということに気づくことがあるからです。
大人が学習障害を発症する場合の特徴を見てみましょう。
- 難しい文章を読んで理解するのに苦労する
- 書類や手紙の書き方に困難を感じる
- 数字や計算に難しさを感じる
- 時間や空間の関係を理解するのに苦労する
- 記憶力が低下している
- 注意力が維持できない
大人の場合は学習障害が発覚した場合でも、診断や治療によって改善することが可能ですので、前向きに頑張っていきましょう。
学習障害の診断と治療
発症する原因を教えてください。
複数の因子とは、以下の通りです。
- 生物学的因子
脳に関連した病理学的状態や、遺伝的要因 - 環境因子
生後の子育て環境や、学校、家庭環境が影響 - 社会文化的因子
経済的な背景や教育システムなどが影響
学習障害といっても多くは単独の病態ではなく、他の病気や障害と共存していることもあります。学習障害の発症原因は、個人によって異なるため複雑です。
そのため学習障害を疑う場合は、医師や心理カウンセラーなどの専門家に相談することをおすすめします。心理カウンセラーなら、正確な診断を受けられます。
学習障害を疑う場合、何科を受診すれば良いでしょうか?
- 医師による診断
病理学的な要因による学習障害を疑う場合に、神経学や精神科などの専門家に受診することをすすめられる場合があります。 - 心理士による診断
心理学的な要因による学習障害を疑う場合に、療育心理士や学習障害専門のさらに具体的な診断を行う心理士への受診が推奨されることもあります。 - 教育関係者による診断
学校の保健室や、小学校、中学校、高校などの学校のカウンセリング室などに受診することも望ましいです。それぞれの診断結果に基づいて、適切な支援を受けられます。
また診断結果によっては専門家間での調整や、複数の専門家による協力が必要になる場合もあるため、その点も考慮して専門家に相談しましょう。
どのように診断されるのでしょうか?
- 医学的検査
脳の機能や病理学的状態を調べ - 心理学的検査
認知能力や学習能力を評価 - 教育学的検査
学習に関連したタスクに対する能力を評価
また、学習障害の診断には家族や学校からの情報も非常に有効な診断材料になります。
それらの情報を収集することで、学習障害を疑う要因を特定できるのです。
診断の結果、適切な治療プランを立てることができ治療には「教育的介入」「心理療法」「薬物療法」などがあります。
治療方法を教えてください。
- 教育的介入
学習障害特有の方法を用いて、読み書きや数学などの学習能力を改善します。例えば、読み書き能力を改善するためにフォニックベースのプログラムを用いることがあります。フォニックベースとは、子供の識字能力、音韻認識の理解度・達成度を診るという意味合いのものです。 - 心理療法
心理学的なアプローチを用いて、ストレスや不安を軽減し、自己肯定感を高めます。例えば、Cognitive Behavioral Therapy (CBT) という認知行動療法があります。 - 薬物療法
学習障害に関連した症状を軽減する薬物を使用します。例えば、注意力不足症に対して使用される薬物での治療には、それぞれの子供の状況に応じて複数のアプローチの組み合わせが一般的です。家族や学校とも連携し、生活や学習環境を改善することも重要になってきます。
学習障害の支援
学習障害は治りますか?
なぜなら学習障害は人により障害の度合いが異なるので、適切な治療法を選ぶためには専門家に相談することが重要だからです。
学習障害にはどのような支援方法がありますか?
- 教育的支援
特別支援教室や専門の教師による指導を行い、学習障害を抱える子どもたちに適した学習方法を提供 - 心理学的支援
カウンセリングや療育心理学などを行い、学習障害と向き合う際のストレスや不安を軽減 - 薬物療法
学習障害に伴う症状を軽減 - 聴覚・視覚療法
聴覚や視覚に関する問題を改善 - 言語療法
書き言葉や話すことに関する問題を改善 - 身体療法
筋肉や骨格などの身体的な問題を改善 - コミュニケーション療法
コミュニケーション能力を改善 - 職業療法
就労や日常生活の中でのタスクを遂行する能力を改善。これらの支援方法は、症状やニーズに応じて組み合わせることで最適な支援となります。
最後に、読者へメッセージをお願いします。
特に子供が小さいうちは、単なるクセのように見受けられるためにすぐ学習障害とは思えなくても当然です。
そのような場合でも、医師や専門家の指示を仰ぐことでその子に合った適切な診断をしてくれますので、少しでも違和感がある場合は医師や専門家に相談してみることをおすすめします。それにより少しでも早く子供の改善に繋がり、子供の今後の人生にもいい影響となる可能性があります。
大人になってから学習障害が発覚した場合でも同じです。決して改善の予知がなくなることはありませんので、しっかり前を向いてお子さんと一緒に、或は今後の自分のために是非、前へ進んでいきましょう。
編集部まとめ
今回は学習障害について診断や治療方法、そして学習障害のさまざまな支援を紹介いたしました。
学習障害と診断を受けるとそれが子供の問題であった場合、「自分の教育に問題があったか」と思う親御さんもいらっしゃいます。
しかし学習障害はあくまで能力の成長度合いの異なるものなので、良い所は伸ばしていくことも可能です。
障害ではなく個性として受け止めてあげることが、もっとも改善につながる近道になると考え、お子さんと一緒に頑張ってください。
参考文献