「涙嚢炎」を発症すると現れる症状・原因・発症しやすい人の特徴はご存知ですか?
目の病気の1つに涙嚢炎(るいのうえん)という病気があることをご存じでしょうか。新生児、もしくは高齢者に多くみられる疾患です。
涙嚢とは目から流れてきた涙が通る器官で、袋状になっています。その器官に菌が入り込むことで炎症が起きます。
涙嚢炎を含む目の病気は見えづらさが出てくるだけでなく、見た目も悪いため早急に治療したいと思うことも多いでしょう。
今回は涙嚢炎の症状・原因・なりやすい人などについて解説します。大切な目を守るためにも知っておくと良いでしょう。
監修医師:
郷 正憲(徳島赤十字病院)
目次 -INDEX-
涙嚢炎とは
涙嚢炎はどのような病気でしょうか?
しかし、何らかの原因により涙の流れが悪くなり行き場を失った涙は涙嚢に溜まります。狭い空間に細菌の付いた涙が長時間溜まっていることで増殖し、結果的に炎症が起きてしまうのです。
涙嚢炎を引き起こす原因菌は様々で、主な菌としてブドウ球菌・肺炎球菌・レンサ球菌・緑膿菌・真菌などです。どの菌も身近に存在する菌になります。
症状を教えてください。
- 目やにが増える
- 涙が多くなる
- 目頭周辺の皮膚が赤くなる
- 腫れ
- 強い痛み
急性の場合、赤み・腫れが頬のあたりまで広がるとともに痛みも増します。個人差はありますが、あまりの痛さに夜起きることもあるでしょう。また、涙嚢がある部分を押すと膿が出る場合もあるでしょう。押して膿が出れば良いですが、炎症が酷すぎると涙小管まで影響を及ぼします。涙小管というのは涙嚢の近くにある管で、目から鼻につながっている細い管です。
目はもともとうるおいを保つために少量の涙が常に分泌されていますが、余剰分を鼻に流すことで目から涙が流れ続けないようにしています。この涙小管に炎症が至ることで涙小管が狭小化し、涙が流れなくなってしまう結果、目から涙が止まらなくなってしまうこともあるのです。
慢性の場合は膿が溜まる程度です。なお、急性涙嚢炎は慢性涙嚢炎が急激に悪化して起こります。そのため、悪化させないためにも早期治療が不可欠です。この他に、涙嚢から出てきた膿により結膜炎を合併する場合もあります。
涙が増えただけでは病気が隠れていることに気付きにくいでしょう。しかし、涙が増えた・目やにが増えたはサインになっているため、見逃さないようにしましょう。
原因を教えてください。
先天性の場合は成長とともになくなるケースが多いため、自然となくなるケースがほとんどです。しかし、後天性は加齢・繰り返す鼻炎や蓄膿症・結膜炎などが原因で涙小管が狭くなると考えられています。
この他に、鼻腔の炎症・耳鼻科系の手術・外傷などによっても涙小管が狭くなってしまうのです。後天性の多くは他から派生して起きているため、防ぐためにも早めに受診すると良いでしょう。
どのような人がなりやすいのでしょうか?
先天性の場合は成長につれてなくなることが多いため、無理に治療をするよりかは経過観察すると良いでしょう。それでも改善せず変わらず起こる場合は治療が必要になるでしょう。
涙嚢炎の治療と手術
どのような検査で診断されますか?
中には、膿が混じっていることもあります。その場合、涙嚢炎を確実に起こしています。炎症具合によっては腫れているところを少しだけ穿刺し、膿を採取し原因となった菌を調べるのです。この他に、CTによる画像診断もあります。
治療方法を教えてください。
膿を出しある程度落ち着いたら、抗菌薬や抗生物質を投与し中に残っている原因菌をなくします。基本的に急性涙嚢炎は手術は必要ありませんが、何度も繰り返す場合は手術も考えたほうが良いでしょう。慢性涙嚢炎の主な治療方法は抗生物質の投与・涙嚢洗浄・涙道へ細い針金を通すです。
あくまでも応急処置のような治療であり、この治療方法での根治は難しいでしょう。慢性涙嚢炎は放っておけば急性涙嚢炎を起こすだけでなく、繰り返す治療により角膜を傷付ける可能性もあります。角膜が傷付けば失明の恐れもあるため、あまり良い治療とはいえません。
安全にそして根治を目指すのであれば、涙嚢鼻腔吻合術や涙嚢摘出手術を選択するのも1つです。先天性涙嚢炎の場合、炎症がなければマッサージすることも可能です。マッサージにより閉塞部が広がりやすくなります。
しかし、前述のとおり先天性涙嚢炎は自然に解決することが多いため、マッサージをしなくても問題ありません。また何もないとはいい切れないため、いきなりマッサージをするのではなく、まずは小児科や眼科に受診すると良いでしょう。
抗生剤はどのようなものが使われますか?
涙嚢炎の原因菌であるブドウ球菌やレンサ球菌などのグラム陽性菌、インフルエンザ菌などのグラム陰性菌に有効的です。
涙嚢炎の手術について教えてください。
まずは涙道内視鏡併用涙管チューブ留置術や涙嚢鼻腔吻合術を行います。この手術にて根治を目指すことが可能です。しかし、ドライアイの症状が酷く涙の分泌がほとんどない方は、涙が通る道を新しく作ったり通したりする必要がありません。
そのため、涙嚢ごと取ってしまう手術を行う場合があります。あくまで涙嚢炎に対する手術方法であり、必ずしないといけないわけではありません。なる度に嫌な思いをする・症状に耐えられないなどある場合は考えてみるのも良いでしょう。
涙嚢炎の再発
再発することもあるのでしょうか?
ただし、チューブを留置し涙道を開放する手術は再発する可能性があるため、涙嚢炎を繰り返している方は他の方法にて涙嚢炎の再発を防ぐと良いでしょう。
市販の目薬を使用しても良いでしょうか?
また、長期間使用すれば菌に対し耐性が付くこともあります。早期に症状を改善するためにも、まずは受診しましょう。
最後に、読者へメッセージをお願いします。
目やにが増えた・涙目がすごいなど違和感を少しでも覚えたら、速やかに受診しましょう。早期発見により治療はもちろん、大切な目や周辺の器官を守ることにつながります。
編集部まとめ
新生児や高齢者に多くみられる涙嚢炎について解説しました。急性は慢性に比べると症状も強く出る傾向にあるため、辛いものがあるでしょう。
一度罹患すると、何かの拍子で再発する可能性があります。
しかし、涙嚢炎は根治する方法もあるため、まずは症状が悪化しないためにも目に異変を感じたら速やかに受診するようにしましょう。